カトマール王立図書館編纂ラトザール古代史より抜粋

 

 今を遡ること数万年前、地球上には、現在よりも多くの人間が住み、万物の霊長としての繁栄を誇っていた。その全人口は、百億にも達したという説がある。もちろん、地球にはそれだけの数の人口を養える食料は無かった。そのため、飢餓と貧困が蔓延していた。一握りの富裕国では、全地球的な規模で広がっていた貨幣と為替システム(古代経済史を参照)により限りある食料を自国のためにかき集め、それは、ともすれば有り余るほどの量になった。信じ難い事ではあるが、飽食で悩む国もあれば飢餓に苦しむ国もあった。富裕国は、先進国と名乗り、その他の国を差別する風潮さえあった。そういう脆弱な国家体系を維持するために自国の納税者の利益確保が全てに優先された。一口で言えば、それは、自然や精神よりも物質に価値の源を置く文明だった(そのため、現在では、物質文明と呼称されている)。地球的な規模での貧富の差の拡大は、たびたび戦争の引き金になった。数多くの巨大な戦争の記録が残っている。中には、数千万人から数億人にのぼる犠牲者を出した戦争もあった。実に、現在の地球上の全人口に匹敵す数の人命が一度の戦争で失われるという事態が日常的に起っていたのだ(ゲッカらの古代戦争周期説を参照)。

 そういう暗黒の時代ではあったが、科学技術は現在よりも発達していたと考えられている。そして、全地球的な規模で広がっていた遠隔通信網(雷と同じ電気の力を利用していたと考えられるが、詳細は不明)により、情報が現在とは異なる意味を持っていた。生物の持つ遺伝担体(生命科学史概論を参照)の中から数十億年もの生命の歴史の中で封印されてきた魔物が解き放たれたのはこの時代である。それも、この通信網に鍵があると言われている(チャラ=リョウの遺伝情報再構成説を参照)。

 戦争の絶えなかった時代ゆえ、それらの科学技術は軍事利用され、更なる悲劇を生むことになる。そして、最後の巨大戦争によって、古代の物質文明はこの地球上から姿を消した。数十億もの人命と共に。現在に生きる我々は、過去の悲劇を繰り返さないために、歴史から学ばなければならない。そのためには、かつての暗黒の時代にも目を向ける必要があるだろう。その全容は断片的で今もって不明な点が多い。そして、それは諸刃の剣でもある。古代の物質文明の根源(暗黒の力の源)が明らかにされた時、それは再び悪用される可能性があることを、我々は忘れてはならないのだ。

 

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