窓円アパート : 1F - 2F > 階段

一階から二階へと渡る階段。
そうそう、内緒だけどね。
実はここには猫のステアが住みついてる。 赤い毛並みの四角い猫。 階段の形そっくりだから、時々外からやってきた人たちを驚かせては人なつっこくニャアと鳴く。

* * *

1.

階段の側面に並ぶ窓から光が注がれ、15段の階段に小さく丸い光がいくつも差している。
あたたかい光に15段目の階段‥‥階段の形をした猫のステアはむずむずとひげをふるわせた。

そこへ、軽快なステップとともに紳士がやってきた。T氏である。
T氏はお気に入りのキャンデーステッキを右手にご機嫌な様子で階段を降りて来た。

1段、2段、3段、4段‥‥14段目へ来たところでステップが止まる。

「やあ、これはこれは」

T氏はステアのもとへ膝まづくと、その赤い毛並みをゆっくりと包み込むようになでる。

「あなたは美しい」

T氏になでられながら、ステアは目を細めた。

「わたしは、猫が大好きです」

「しかし、階段が大嫌いです」

「しかし」

T氏はさらに続けた。

「わたしは赤が大好きなのです」


ステアは気持ち良さそうに目を細め、じっと黙っている。
T氏は立ち上がり、「ついて来るかい?」と言った。ステアはニャア、とひとつ鳴いてT氏の後を音をたてずに追った。