MC127を買いました

 

1.動機

 

2006年に父が亡くなり、無人になった実家を整理していると、倉庫の奥から大学時代に使っていたアストロ光学の15cm反射赤道儀が出てきた。大学1年のとき、アルバイト収入で購入した望遠鏡である。久しぶりに見ると、やはりでかい。そして重い。しかし20年間も放っておいたにもかかわらず、主鏡には特にくもりも無く、まだ使えそうな感じだ。

 

実家で組み上げて、いくつかの星を見てみた。土星は、カッシーニの隙間、本体の縞模様がきちんと見える。月を見ると、ガッサンディの内部の細かい起伏が見える。そして最後に見たのがM42、さすが口径15cmで見る星雲は迫力がある・・・。しかし残念ながらこの望遠鏡は大きすぎて、現在の住環境では使えない。ということで業者さんに査定してもらい、引き取っていただいた。

 

アストロ15cmで最後に見たM42が忘れられなくなった。やはり大きな口径で見る星は美しい。考えてみると、ずっと市街地に暮らしてきたこともあり、自分はメシエ天体さえあまり見たことがない。このまま星雲とか星団を見ないまま終わってしまうのも寂しい気がした。そこそこの口径の望遠鏡を買えば、市街地で楽しめる星もあるだろう・・・ということで望遠鏡選びを始めた。

 

2.望遠鏡選び

 

(1)ベランダ観測が主体、(2)軽くて安価で気軽に使えるもの、を条件として望遠鏡選びを始めた。家のベランダは幅が1mくらいしかなく、筒の長い望遠鏡は使えない。またドブソニアンのように架台の位置が低いものは、ベランダの手摺が邪魔になり、低空に向けられないので却下、ということになった。

 

最初に目に留まったのはケンコーのSE120+ポルタ経緯台である。口径12cmの屈折望遠鏡がこの価格とは、私のような古い人間には信じられない低価格である。短焦点ということで色収差がきつそうだが、色収差ならコルキット・スピカで慣れている。そしてこの明るい光学系は魅力である。ということで、これに決めかけた。しかしいざ買うとなると、いろいろと欲がでてきた。夏の透明度の悪い夜など、星雲星団はお手上げだろうし、そんな晩は惑星とかも見てみたい・・・。ということで当初目的から少しそれて、オールラウンドな?望遠鏡も検討してみた。

 

次に候補に挙がったのがビクセンVMC110Lである。とてもコンパクトな望遠鏡で、自分のパートナーとして何処へでも連れていけそうである。その見え味についてはユーザから辛口に評価されているようだが、少なくともコルキット・スピカよりはよく見えるだろう。昔、日本特殊光学からスペース10というコンパクトな望遠鏡が売り出されたが、それとイメージが似ている。一方、同じマクストフなら、国際光器MC127もコンパクトでいい感じだ。海外でMAK127として売られている商品と同じなら、見え味も期待できそうだ。ただマクストフは光学系が複雑なので、メンテナンスが少し心配である。例えば何かの拍子に光軸が狂ってしまった場合、自分には手に追えないだろう・・・。

 

軽量型の望遠鏡なら、ボーグも良さそうだ。軽量・シンプルなつくりは私の好みだ。おそらくこの望遠鏡の設計者は、天体観測の経験が豊富な人なのだろう。コンセプトが素晴らしい。ただ、値段が少し高いのがネックだ・・・。

 

万能型といえばビクセンのED80sfも、短焦点ながらEDレンズを採用していて、星雲・星団から月・惑星まで一通りこなせそうである。決して悪くない。だが、やや普通すぎる・・・。よく似た商品で、タカハシのSKY90というのがある。天下のタカハシなので、光学性能は折り紙つきだろう。しかし値段が高い。もう少し安くて気軽に使えるものが、自分には向いている。

 

ここまであれこれ迷いに迷ったあげく、もう一度原点に戻って考えてみた。自分は写真はやらず、スケッチ主体だ。じっくり落ち着いてスケッチをするには、机に向かって椅子に腰掛けるのが一番である。そこで机にスケッチブックを置いた状態で、覗ける望遠鏡を考えてみた。答えは「卓上型望遠鏡」。そうだ、卓上型望遠鏡だ、ということで探してみると、ビクセンからVIPER-MC90Lという商品が出ている。これならベランダに机を出し、その上に載せて、星をみながらじっくりスケッチができそうだ。しかし問題は架台が電動式ということである。残念ながら、我が家のベランダには電源がない。観測のたびにバッテリーを用意するのも、ズボラな自分には面倒だ。うーん、残念ながらこれも却下。手動の卓上望遠鏡は無いかと探したが、インテリア用とか、子供用のオモチャ以外には無いようだ・・・。

 

このようにどの望遠鏡も決め手が無いまま、あれこれ思い巡らせているうちに一年近くが経過してしまった。車を買うときのように、試乗することができれば良いが、望遠鏡はそうはいかない。秋葉原のヨドバシとか、東京の誠報社とかにも足を運んだが、展示されている望遠鏡も限られている。そうこうしているうちに、木星が東の空に姿を現す季節になった。えーい、もう決めてしまえ!ということで、国際光器MC127に決めてしまった。M42が忘れられず・・・という最初の動機と違うような気もするが、それはMC127を使いながら考えることにした。

 

3.MC127が来た

 

 

国際光器さんにメールで注文すると、すぐに発送日を知らせるメールが来た。待つこと3日、Made in Chinaと書かれた箱とともに送られてきた。来てみると、思っていたより大きくて重い。トイレットペーパーくらいの大きさを想像していたが、少し甘かった。とはいえ、セットした状態でベランダまで運べるので、苦になるほどの重量ではない。

 

(1)ファインダーを買い足す

 

MC127はレッドドット・ファインダーが付属している。これは裸眼で、目の前のスクリーンに写る赤い点に星を導入する方法である。おそらく星座の形がきちんと追える、星のきれいな場所なら便利なシステムなのだろう。しかし私の住んでいる土地は、特に夏は透明度が悪く、肉眼で2等星がやっとである。おまけに目が悪いので、このファインダーの視野では一等星さえ見えない。ということでSynta製の3cm6倍のファインダーを買い足した。

 

(2)接眼鏡を買い足す

 

まず付属のPL32mmで木星を見てみた。倍率は約46倍である。コルキット・スピカ(アクロマート)で黄色っぽい木星を見慣れた目には、色の無い、白っぽい木星は新鮮だ。非常にシャープに引き締まった感じで、縞模様がくっきりと見える。そこで付属のPL10mmを取り出し、150倍に拡大してみた。ところが・・・あれ?縞模様が薄くなってしまったぞ?NEBとか、大赤斑とかは一応見えるのだが、赤道紐のような細い構造が消えてしまった???像が崩れているわけではないので、過剰倍率ではないはずだが。

 

もしやと思い、手元にあった国産のOr6mmに差し替えて見ると、今度はきちんと見える。どうやら付属のPL10mmが、この望遠鏡と相性が良くないらしい。中国製の接眼鏡には当たり外れがあると聞いていたので、これは想定内の出来事である。

 

経緯台での観望には、視野の広い接眼鏡が良いので、スコープタウンのウルトラワイド接眼鏡UW6mmを買い足すことにした。

 

(3)機材インプレ

 

さて、ここで焦点内外像がどうとか、球面収差がどうとか説明できると、読んでいただく方のためになるのだが、残念ながら私には光学的な知識は無い。また過去に使用したことのある望遠鏡もほんの数本である。したがってきちんとしたインプレッションは書けない。以下は1ユーザの主観的な印象として読んでいただきたい。

 

<木星>

 

NEBSEB、大赤斑、フェストーンといった基本的な模様は見える。250倍まで倍率を上げても充分使用に耐える。ただ、撹乱など日々の細かい模様の変化をきちんと追えるかというと少し荷が重そうである。むしろ長期的な、年々の模様の濃淡の変化を追いかけるのに使おうと思う。

 

<月>

 

250倍で見る月面はものすごい迫力である。しばし見入ってしまう。ただし、細かいものがどの程度見えているかというと、プラトー内部の小孔は難しく、またガッサンディ内部の亀裂も無理のようだ。直線壁の隣にある「バート谷」が分解能の限界だ。ただしシーイングが必ずしもベストではないので、これからもチャレンジしていきたい。

 

肝心の星雲、星団はこれからです・・・。夏は透明度が悪く、今のところお手上げです。

 

【追記】2007.12.9

 

<火星>(2007年の小接近)

 

火星が見ごろになってきたので、望遠鏡を向けてみる。3cm6倍ファインダーのおかげで、250倍でも一発導入ができるようになった。ピントを合わせると、極冠と呼ばれる白い部分がまずくっきりと見えた。また薄暗い模様の大まかな分布具合もわかる。ただ凝視すればするほど、かえって模様が見えにくくなるようで、この辺は目の慣れが必要なようである。

 

<土星>

 

明け方には、南中に近い土星が見られる。250倍で導入すると、黄色い帽子をかぶった奇妙な姿が暗闇に浮かぶ。なかなか幻想的である。最近はリングの傾きが小さいが、リングの両端にカッシーニの空隙がきちんと見える。また本体には縞模様が一本入っているのがはっきり見える。

 

<恒星>

 

恒星は小さい円盤像に見えます。この円盤像はエアリーディスクというのだそうで、どんな望遠鏡でも開口端での回折によって、本来点像であるべき恒星がこのように見えるのだそうです(原理はよく知りません)。焦点像、およびピントをずらした像もほとんど正円で、きちんと調整されているようです。少し気になるのは、恒星の焦点像が少し大きいことで、二重星の分解は苦手かも知れません。

 

<筒内気流>

 

マクストフでは、筒内気流が問題になるという話を聞きました。筒内の空気が抜けにくく、主鏡や補正板が外気になじむまで時間がかかるというのです。これまで使ってきた印象では、夏から秋にかけては、室内と屋外の温度差がないので全く問題はありません。望遠鏡を出してすぐ、気持ちよく観望ができます。さて、問題の冬になりましたが・・・以前使っていたニュートン式では、望遠鏡を外に出してから30分くらいは像が大暴れして、まともに見えませんでした・・・MC127では、いきなり大暴れという感じではなく、揺れたりおさまったりを繰り返すような感じで、正直言って筒内気流なのか、本当にシーイングが悪いのか、よくわかりません(すいません)。夜に望遠鏡をベランダに出しておき、明け方に観望する、というスタイルをとると、確かに像が安定します。本当に像が安定するまで何時間かかるかはよくわかりませんが、とりあえず1時間くらい外で冷やしてから使うようにしています。

 

 

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