月に関する本
月面ガイドブック 高橋実 誠文堂新光社
小望遠鏡で見ることのできる月面の地形を知り尽くしている著者が、いろいろな月の名所を丁寧にガイドしてくれる。口径15cmの望遠鏡で撮影したと思われる月面写真がふんだんに使われていて、望遠鏡で見たイメージと比較しやすい。著者の月面写真テクニックは「高感度フィルム+高速シャッター」だそうだが、なるほど月の細部がよく写っている。
また何と言ってもこの本の白眉は、彗星発見者として有名な池谷薫氏による月面スケッチの数々である。池谷氏が月面観測もされていたことをこの本で初めて知ったが、そのスケッチは詳細かつ丁寧で、その観察力の鋭さに驚かされる。
もし絶版になっているのなら、ぜひとも復刊していただきたい。
月面とその観測 中野繁 恒星社厚生閣
初版は昭和42年で「月面ガイドブック」より古い。国際天文学連合(IAU)が採用しているクレーターの名称について、アルファベット順に索引が掲載されており、各クレーターに関する基本的な情報が網羅されている。望遠鏡でクレーターを観望した後に、そのクレーターに関する情報を確認するのに便利である。本文にはたくさんの先人によるスケッチが掲載されており、月面観望やスケッチの意欲を掻き立てられる。2005年の時点では、出版社に問い合わせることにより購入可能であった。
A Portfolio of Lunar Drawings, Harold Hill, Cambridge University Press
イギリスにおける月面スケッチの名手であるハロルド・ヒル氏による月面スケッチ集。望遠鏡は主に20cmシュミットカセグレンを使用している。陰影法によるスケッチの美しさもさることながら、著者が月の地形のどの部分に注目しているかが、大変参考になる。例えば危難の海では、オニール橋には目もくれず、むしろ南東側の夕暮れに注目して何枚もスケッチをとっており、注目すべき地形として参考になる。本文は当然ながら英語で書かれているので、読むのに少し骨が折れるのが難点。
月の科学 Paul D. Spudis(水谷仁訳) シュプリンガー・フェアラーク東京
アポロ以降の、月に関する研究成果を紹介した一般向けの本は日本ではほとんど出版されていない。この本がほとんど唯一のものではないだろうか。宇宙論に関する本は山のように出版されているにもかかわらず、月は一般の人の科学的関心の対象ではなくなってしまったのだろうか。
この本は月の研究の歴史から始まって、クレーター、海といった基本的な地形から、ライナーγと呼ばれる謎の堆積物にいたるまで、比較的新しい知見に基づいてわかりやすく説明している。特に、比較的新しいはずのリヒテンベルグ・クレーターの光条の一部が、溶岩流に覆われている写真は、つい最近(〜数億年前)まで月に火山活動があったことを示唆していて面白い。
図表が英語のままであるのは残念(キャプションは和訳されているが)。