○実用情報館 "Bratschist"

ヴィオラ演奏や楽曲のヴィオラアレンジなどの際に役立つ情報を気ままに載せております。

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○ヴィオラとは

主に西洋音楽において中音域を担当…なんて言ったら堅苦しいか、要はヴァイオリンとチェロの間っこである。高音と低音の橋渡しとでも言おうか。このことからよくヴィオラは"中間管理職"などと揶揄される。名誉なことと受け取ろう。

一応、ヴィオラの発祥を書こう…ヴィオラは16世紀前半くらいに、ヴァイオリン・チェロなどと同じくらいに、ヴァイオリン属として発祥、発展したらしい。やけに"くらい"、や"らしい"、が多いのは勘弁していただきたい。歴史の中だし。

それは置いておくにしても、ヴィオラはヴァイオリン・チェロと同時期に発祥していたわけである。そして少し先の話を言えば、かの有名なヴァイオリン製作者、アントニオ・ストラディヴァリによってヴァイオリン・チェロと同様にサイズが決まった。

だがヴァイオリンは西洋音楽、所謂クラシックにとどまらずに様々な音楽で花形楽器として活躍している。恐らく日本人でも大体の人は弾く真似が出来るであろう。チェロもまた然り、花形とまではゆかずともその知名度はヴァイオリンに勝るとも劣らない。

ここで、ヴィオラに目を向けてみよう。果たしてヴィオラが同時期に発祥、発展していったほかのヴァイオリン属並の知名度はあるだろうか。恐らくないだろう…いや断言できる、そんな知名度はない。なぜこんな惨劇(無論ヴィオリストにしたら、のハナシ)が生まれてしまったのだろうか。

その理由は恐らく1つだ。それは、ヴィオラが中音域を弾くこと。

○目立たない理由

何故に中音域だと有名にならないのか、アルトサックスは中音域でも有名じゃないか!と思う方もいるかもしれない(まあサックスは管楽器なので比べてはいけないのだが)。

確かに、ただ中音域といっただけでは説明にならない。中音というのはお分かりのとおり高音と低音の間っこ…ピアノにおける鍵盤の真ん中周辺と捉えて間違いない。
一般に人間の耳というのは高音のほうが聞こえやすいといわれる。だから、まず何よりも中音は高音にかき消されるのだ。

ここで聞こえやすさでいくと、ヴァイオリン>ヴィオラ、の不等式(不平等式)が成り立つ。

しかし、音が高いほうが聞こえやすいのならば、低音であるチェロよりも中音であるヴィオラのほうが聞こえやすくなるはずである。ただし、ここでは楽器の大きさや音色のことは加味されていない。ヴァイオリンとヴィオラにおいて、大きさは約1.2倍程度である。だがヴィオラとチェロにおいては、大きさは約3倍近くはあると見ていい。あまりにも違いすぎるのだ。

撥弦楽器というのは弦を擦って出来た振動を、本体…つまり箱で大きくして音を成す。つまり、箱が大きければ振動はより大きくなり、出る音も大きくなる、ということである―ちなみに、仕組みが似ているヴィオール属のコントラバスは音が低すぎるために箱の大きさ以前の問題である―。

このため、チェロはヴィオラよりも音は低くとも聴衆には聞こえやすいのだ。もっとも、奏者や奏法、また演奏する曲目によってはこの限りではない。あくまで以上のことは一般的なことを述べたつもりである。

今述べてきた理由…中音域の悲しき定めが、ヴィオラの目立たない所以である。ここで、これらの問題点を解決せんとする疑問も出てくる。

たとえば「音を高くすればいいじゃないか」ということ。
確かにそうすれば音は聞こえやすくなり、ヴァイオリン≦ヴィオラくらいは見えてくるかもしれない。
実際、ヴィオラの名曲といわれる曲…バルトークの協奏曲やブラームスのソナタは結構音が高い。モーツァルトなんて、協奏交響曲ではヴィオラ独奏に対し開放弦を全て半音高く調弦しろという指示(スコルダトゥーラという)をして、自身のヴィオラで初演を行った。ヴィオラに対してヴァイオリンに対抗できる派手さを求めたのだろう。

しかし私Lune Gustardは、ヴィオラで高音ばかりを奏するのはもはや"大きなヴァイオリン"と化してしまうと思う。ヴィオラである必要性がない。

また「楽器自体を大きくすればよいのではないか」とも考えられる。だがこれにも問題がある。

先ほど楽器の大きさについて、ストラディヴァリが決めた、と書いた。ヴァイオリン・チェロは確定された。しかしヴィオラは違ったのだ。実際にヴィオラの大きさをみてみると実にまちまちである。大まかには決まっているのだが、胴の長さにして395〜470mm以上と実に幅がある。なかなかヴァイオリンやチェロのようにはいかない。

だからヴィオラは大きいものから小さい―もちろんヴァイオリン360mmよりは大きい―ものまである。大きければ大きいほどヴィオラらしい音は出るし、音量も出る。
だが、当たり前のようだが、楽器は大きいほうが弾きづらいし疲れる。場合によっては弾けないかもしれない。ヴィオラ奏者…ヴィオリストは楽器選択においてまずサイズから悩まなくてはならないのだ。

だからヴィオラはヴァイオリンよりもやや大きい、というサイズに落ち着いている。そのため聞こえづらく、また目立ちにくいのだ。どうにかならないものだろうか…いやこれは反語になってしまうな、うん。

ここまでヴィオラの欠点を挙げ連ねてきた。つまり、目立たない理由を、だ。
だがもちろんのことヴィオラにはよいところもある。でなきゃ500年も残っていない。

ヴィオラのなくてはならない理由を述べよう。

○ヴィオラが残っている理由
ヴィオラは先ほどから言っているように、中音を弾き、高音と低音の橋渡しだ。

仮にヴィオラのような中音楽器が管弦楽に無いとしよう。高音と低音だけのオーケストラだ。これが和音を奏でると低音の上に高音が浮いている状態になる。つまりは骨抜き状態だ。

このことから"ヴァイオリンはワインのボトル、チェロはラベル。この見た目だけでも買う客はいるが、本当のワイン飲みは味わいや香りといった中身、つまりはヴィオラを見る"という。だからこそ中音は必要なのだ。音楽の潤滑油とでもいえるだろう。

また、ヴィオラは作曲家の楽器とも言われている。それは数々の大作曲家達がヴィオラを愛し、ヴィオラを好んで弾き、ヴィオラを重要な楽器と位置づけたからに他ならない。その例を挙げよう。

これより前に少々述べたが、モーツァルトはヴァイオリンよりもヴィオラを弾くことを好んだといわれ、"協奏交響曲"を始めとして多くのヴィオラが活躍する作品を残している。

ブラームスは、晩年にクラリネット奏者の友人を持ったために2つのクラリネットソナタを作ったが、その両方をブラームス自らヴィオラソナタとして編曲している。この2つの"ヴィオラソナタ"はヴィオラ音楽の中でもと定番曲となっている。

ドヴォルザークは作曲家としてブレイクする以前は管弦楽団でヴィオラを弾いていた。そして有名な弦楽四重奏曲"アメリカ"では冒頭からヴィオラがメロディを受け持ち、この"アメリカ"中、ヴィオラは大活躍する。

スメタナも弦楽四重奏曲"我が生涯より"の冒頭からヴィオラをバリバリ弾かしている。これは数々の作曲家…特に国民学派には影響を与えたと見ていい。

何故これらのように数々の作曲家が目立たないヴィオラを愛したか…その理由は、作曲家がヴィオラの音色に魅せられているからだろう。

ヴィオラの音色というのは非常に表現しずらいものだが…ヴァイオリンといえば"華やか"、"美しい"、"神々しい"など美しい言葉が次々と出るだろう。チェロも"雄大"、"壮大"、"厳格"などと出るだろう。

ではヴィオラの音色は何か。"渋い"…暗いな、よく言えば"力強い"、"渋い"…違うな。色ならば、万緑、深緑よりも深い色。まあ、そんなことは置いておこう。数々の作曲家はその独特な音色に魅せられてきたのだ。そのため、ヴィオラは"作曲家の楽器"と呼ばれる。

ヴィオラの音色に魅せられたのは作曲家だけではない。演奏家も魅せられてきた。

例えば、日本ヴィオラ界の草分けとも言うべき今井信子氏は桐朋学園時代まではヴァイオリンを弾いていたが、大学の演奏旅行で海外に行ったときに"ドン・キホーテ"のヴィオラソロを聴き、その音色に感動しヴィオラに転向したという。

今井氏以外にもヴィオラに魅せられるヴァイオリニストは数多い。そのまま転向してしまう例も少なくない。どころか、有名なヴィオリストのほとんどがヴァイオリンからの転向だ。悲しいかな、これが現実である。

…しまった、いつの間にか話が暗くなっていた、戻そう。要するにヴィオラの音色は多くの音楽家を魅せてきた、ということである。
若干欠点の意見の方が強い気がするが、それは目立たずともなくてはならない、縁の下の力持ちである理由付けになるだろう。きっと。

○ヴィオラの名曲

ヴィオラ自体がマイナーなため、ヴィオラの為の作品は極度にマイナーである。私自身も多く知っているわけではないが、知っているものをここに。
有名な作曲家を書いた。

・モーツァルト;協奏交響曲 KV.364
独奏ヴァイオリン、独奏ヴィオラ、管弦楽[オーボエ2、ホルン2、ヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ、コントラバス]という奇妙な編成の曲。
モーツァルト自身がヴィオリストでもあったからこそ出来た曲ともいえる。
独奏ヴィオラは全弦半音上げの指示があり、ヴィオラらしい渋みと弦の張りによる華やかさが交じり合う独特の音になる。

・ベートーヴェン;ノッティルノ Op.42 ヴィオラ、ピアノ
全6楽章。ベートーヴェンらしい落ち着きのある曲。

・ブラームス;ヴィオラソナタ第1/2番 Op.120 ヴィオラ、ピアノ
第1番は4楽章構成、第2番は3楽章構成。前述の通りクラリネットソナタからの編曲。

・サン=サーンス;アルジェリア組曲(管弦楽作品)
第3曲の主題提示が独奏ヴィオラ。
難易度はさほどでもなく、ヴィオラとしてはとてもオイシイ独奏。

・ドビュッシー;フルート、ハープ、ヴィオラの為のソナタ
全3楽章。牧歌に始まるが全体的に幻想的な曲。フルート・ハープだけではすぐに壊れてしまいそうなくらい薄く、神々しくなるところをヴィオラが入ることにより、曲全体に深みが増し、夢幻のなかにも現実性を持たせている。

・ショスタコーヴィチ;ヴィオラソナタ ヴィオラ、ピアノ
ショスタコさんが書いた最後の曲(遺作)。まるで次第に近づく死を予感させるがごとき不安な曲。
中音であるヴィオラの良いところが満載。

・ヒンデミット;白鳥を焼く男 独奏ヴィオラ、管弦楽
ドイツ民謡によるヴィオラ協奏曲。全3楽章。
身の毛もよだつタイトルは引用している民謡の中に「あぁ、あなたは白鳥を焼く男ではありませんね?」というフレーズがあるため。
白鳥、焼いちゃダメ。ゼッタイ。

○その他のオーケストラ楽器について
友人のトロンボーン奏者が丁寧な説明とまぁまぁなギャグで解説してます。
くわしくは こちら へ。

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