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■肺結核とは
血液透析患者さんにおいては、重要な疾患である
最近の透析患者さんで、不明熱、食欲不振があり、咳もなく胸部X−P検査にて原因が明らかでなっかた。
血液透析中であり、胸部X-Pは、月に一回検査していたが、明らかな所見がない
最後に、突然に両側肺野に陰影が出現し、胃液よりTB菌陽性であった。
反省点としては、胸部レントゲンでは肺結核がとらえきれない。

1.胸部CTを実施すべきであった。
2.抗生物質の投与5日間で効果ない場合、肺結核を疑うべきである
3.喀痰の排泄や咳がない場合でも、胃液の喀痰を調べるべきであった。
反省も含めて、文献の検索もした。
 

最近では糖尿病患者さんや人工透析を行っている患者さんなどの場合、全患者の半数近くに発病する可能性を持つことが指摘されており、結核のハイリスク・グループとして厳重な警戒が呼びかけられています。


 

<結核は「過去の病気」ではない>
 20世紀後半には減少の一途をたどっていたわが国の結核患者数は1997年頃から上昇に転じ、99年には政府による「結核緊急事態宣言」が出されるまで、危機的な状況になりました。その後21世紀に入ってからはやや減少化傾向がみられていますが、それでも人口10万人比率で33.1人と、依然全感染症のなかで上位を占めている病気です。
 このような現象が生じたのは、つぎのような理由があります

。70歳以上の高齢者では免疫力が低下するため、若い時にかかって治った結核が再燃しやすい。
罹患者総数は少ないものの、10代後半の若い人たちでは発生数の減少傾向がみられず、とくに都市部における若年層(特に30〜40歳以下)での感染伝播の可能性についても、同様な警告がなされています。

<結核の病巣は肺だけにかぎらない>
 肺結核患者さんがセキやくしゃみをしたとき、結核菌は周囲にばらまかれ、しばらく空気中をただよっています。周囲の人がその結核菌を吸いこみ、肺で増殖した結果おこるのが肺結核です(図1)。
現在結核感染の多くは肺結核ですが、一部では結核菌が血液やリンパの流れにのって肺以外の臓器に到達し、そこで病気をおこします。例えばリンパ節結核結核性胸膜炎(いわゆる「肋膜」)、骨や関節の結核、髄膜炎、粟粒結核などがあります。

<肺結核が起こるプロセス>
 まだ感染していない人の場合、肺胞に達した結核菌は肺胞内のマクロファージに取り込まれます。結核菌はそのマクロファージ中で増殖し細胞を破壊して細胞外に出たあと、別のマクロファージに侵入して増殖します。このとき、マクロファージから結核菌の侵入がTリンパ球に知らされます。そのTリンパ球はマクロファージと協力して結核菌の増殖をストップさせます。この結果、多くの人は結核菌に対する免疫(抵抗)力を獲得します。
 病巣内の菌数が多かったり免疫力より勝るとき、病巣はそのまま残って肺胞内に「結核結節」と呼ばれる特有の肉芽腫(にくげしゅ=組織体)をつくります。結核菌とマクロファージとの絶え間ない闘いの結果、多くの人は菌の侵入後2〜3週間程度で勝利をおさめます。"勝利宣言"が免疫細胞に伝えられた段階で、結核に対する感染防御機構が成立します。ツベルクリン反応は、このメカニズムを応用したものです。

<危険なのは生き残った菌が勢いを盛り返したとき>
 しかし、この"勝利宣言"は、あくまで一時的なものです。免疫力が高い状態においては、病巣は縮小(瘢痕化)していますが、体力の衰え(高齢、糖尿病、人工透析、栄養不良、エイズなど)によって免疫力が低下した状態のとき、病巣は再燃して菌が肺内に拡大していきます。これが肺結核の基本的な起こり方です(図2)。

 

 言い換えると、肺結核には@菌が最初に侵入したとき生じる一次病変と、A最初の感染からかなりの期間を経て発病する二次病変があり、肺結核の大部分はAのパターンによって起こっています。なお、感染防御機構が成立する前に@の状態で発病するものもあり、結核性胸膜炎や粟粒結核、若年者の肺結核などが該当します。

<結核菌の「感染」と結核の「発病」>
 飛沫感染によって結核菌が体内に入り、マクロファージやTリンパ球との闘いがおこることを結核菌の「感染」といいます。感染の結果、結核菌が免疫力に勝って増殖し続け、何らかの症状や所見(レントゲン写真上の陰影など)をおこす場合を「発病」といいます。
結核菌に感染しても90%以上の人は免疫力が勝つため自然治癒します。発病するのは10%以下です。しかし自然治癒した人でも将来免疫の力が弱くなったとき、再燃して発病することがあります。

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■結核を疑わせる症状

結核が疑われるのは、つぎのような症状があるときです。
2週間以上セキやタンが続く
タンに血がまじる(血痰がでたり、ときに喀血する)
原因不明の発熱(多くは微熱)
胸痛や呼吸困難がある(結核性胸膜炎)
全身倦怠感が続く
食欲不振になり、痩せてきた
寝汗をかく

 ただし、このような症状は慢性気管支炎、肺化膿症、気管支拡張症 肺炎などでも出るため、正確な診断のためには検査が必要です。

結核の検査

   結核が疑われた場合、つぎのような検査が行われます。

1.結核菌検査
 採取した喀痰(や胃液)をスライドに塗抹し、染色したあと顕微鏡で調べます(塗抹検査)。短時間でできるため、よく利用される検査ですが、死滅した菌まで染色されるため、正確度に欠けるのが難点です。
このため、生きた菌の状態を見るために培養検査が併用されます。この検査は、同時に薬剤の耐性も調べられるという利点がありますが、結果が判定するまでに4〜8週間かかります。このような菌検査の短所をカバーするために、最近では分子生物学的検査として、PCR法が利用されることも多くなっています。この方法だと6〜8時間で判定結果が得られます。
2.ツベルクリン反応(ツ反応)
 結核菌の培養濾液を皮内注射して、48〜72時間後に注射跡に現れた発赤(ほっせき)、硬結(しこり)や水疱の大きさから感染の有無を判定するものです。発赤の大きさが10mm以上の場合陽性と判定され、過去(生まれてから現在までのどの時点か)に結核菌感染がおこった証拠とされます。発赤の直径9mm以下であれば未感染者(−)と判定されます。
胸部X線検査
 結核による浸潤や空洞、石灰化巣、胸水などの病変を調べるものですが、感染の初期にはあまり鮮明な病像が捉えられない場合もあります。
気管支鏡検査
 他の呼吸器疾患との鑑別によく用いられます。また、そのさい採取した検体による細菌学的、病理組織学的検査も併用されます。

 

 



■結核の治療

 

 結核の治療は基本的に薬物療法(抗結核薬)で行われます。また、症状の程度や菌の薬剤耐性の有無、副作用などを考慮しながら、2〜4種類の複数薬剤が併用されます。
 なお、結核は結核予防法第35条に基づく命令入所患者医療のため、タンから結核菌が検出された患者さん(排菌者)は指定施設での隔離入院が義務づけられています。治療中、塗抹検査の結果、排菌(−)と判定されたあとは外来治療(通院)に切り替わりますが、治療が終わってからも3年間は6カ月ごとの胸部X線検査が必要です。
 抗結核薬として標準的に用いられるのは、INH(イソニコチン酸ヒドラジド)と、RFP(リファンピシン)です。最低この2剤を6〜9カ月間服用します。
 また、上記2剤で効果が得られないと判断された場合には、2剤+SM(硫酸ストレプトマイシン)またはEB(エタンブトール)の3剤併用療法が6〜12カ月間続けられます。
 このような投与法とは別に、INH+RFP+PZA(ピラジナミド)+SMまたはEBを加えた4剤併用療法(6カ月間)や、菌に耐性があるケースでは別の薬剤が使用されることもあります。
 抗結核薬はほとんどが経口投与(服用)ですが、一部の薬剤(SMなど)は筋肉注射で行われる場合もあります。
 結核の治療で重要なことは、症状の有無にかかわらず、医師の服用中止許可がでるまでのあいだは、きちんと抗結核薬の服用を続けることです。このため、WHOは抗結核薬を第三者(看護師や家族など)の監視のもとで確実に服用させる方法(DOTS)を推奨しており、今後日本でも一部の患者さんに適用される可能性があります。

 



■結核の予防

 

 一般的に行われているものに、ツベルクリン反応陰性者に行われているBCG接種があります。BCGはウシ型結核菌からつくられたワクチンで、乳幼児では結核に対する免疫獲得に効果があります。しかし成人での効果、反復接種の効果は疑問視されています。かつてBCGは接種が義務づけられていましたが、現在では勧奨接種(本人の同意に基づく接種)となっています。

 
肺結核症診断の信頼性の策

 肺結核症の診断においてDNAプローブ法、PCR、MTD、MGIT法等、最近の進歩は著しい。診断の原点に戻ると感染症である肺結核症での従来の検査法(菌検査,塗抹法、従来の培養法等と胸部XP)の重要度は最新の診断手段が加わろうがなかろうが不変と考える。いたずらに最新の診断手段だけに頼らず、従来の手法でどこまで診断可能か、もしくはその信頼性と限界を熟知することが肝要である。その認識を基にしてこそ、最新の診断手段も活用できると考えられる。その趣旨の下において以下述べていく。

医師,技師,患者側の問題点

まず、診断の信頼性と限界を考える前に、診断時に生じる各三者でのバイアスを述べたい。
医師側の問題としては
 1.3回連続喀痰検査の順守がなされていない
 2.胸部XP診断でのoverdiagnosisとunderdiagnosis
 3.患者の症状等診断へのヒントにつながる 問診の軽視
  4.菌検査所見へ過度の信頼性をおく
  5.Doctor's delay
が考えられる。
技師側の問題としては
  1.検査手技の技術上の差がある
  2.コンタミネーション
  3.所見に偽陽性と偽陰性が生じる可能性が常にある
  4.検鏡手技が不十分
  5.精度管理が不十分
が考えられる。
患者側の問題としては
  1.喀痰喀出不良や不適当な検体の存在
  2.Patient's delay
が考えられる。
 上記三者のバイアスをいかに改善していくか、それについての根拠となるevidenceを以下列挙していくこととする。

肺結核症診断改善へのevidence

喀痰検査
 SchlugerとRom2)によれば、塗抹法と従来の培養法はともに良好な感度と特異度を示し、特に培養法において著しいと述べている。もちろん、BoydとMarr3)、が示すように有病率が低くなると偽陽性が生じやすく、塗抹法の信頼性が低下するとの報告もあるが、今までの報告では塗抹法と培養法の信頼性は、精度管理が十分なされていればおおむね良好である。

D.喀撰検査を補う菌検査
 喀痰塗抹で菌が証明しにくいとき、胃液での菌検査を選択するのは妥当である。Bahammamら17)は、胃液と喀痰での塗抹検査の成績を比較し、胃液での塗抹検査の感度19%、特異度100%、陽性適中率95%であり、一方、喀痰塗抹検査の感度45%、特異度99%、陽性適中率92%、陰性適中率88%であると報告している。胃液塗抹検査は喀痰のそれに比し、感度は劣るが特異度は極めて高い検査と位置付けている(表7)。
 気管支鏡による検体採取の有用性については、Kvaleら18)の報告がある。それによると喀痰・胃液検査が十分なされているのであれば、 気管支鏡による検体の培養検査をルーチンにする必要はないと結論している。その理由は検体の約2/3が偽陽性になるからとしている。数回の塗抹結果が陰性で胸部XP上肺結核が疑わしいときにこそ、気管支鏡が有効であると考えられている19),20)。また、気管支鏡の適用はHIV感染ありでも、HIV感染なしと同様に考えてよいとしている21),22)。

E.胸部XP診断
 胸部XP上で肺結核を疑う所見としては表8 に示した23)。しかし、胸部XPのみで喀痰等の菌検査をせずに結核の診断を下すことは大きな間違いである。Gordinら24)は、胸部XP所見のみで喀痰を開始し、後に菌所見で確定された例は48%であり、半分以上が非結核性疾患だったとしている。むろん胸部XP上典型的活動性肺結核の所見がなく、2週間以上の咳、痰、体重減少等がない症例は肺結核でないとしてよい25)。ましてやAIDSを合併している場合の胸部XP所見はAIDSがない所見と大いに異なってくる(表9)26)27)。Greenbergら28)は、喀痰かBALからの培養で結核菌が証明されたAIDS合併症例の胸部XP所見を検討し、32%の症例で活動性肺結核の所見が見出せなかったとし ている。

F.診断率向上の工夫
  Sambら29)は、ブルンジとタンザニアの首都の2大学病院に入院中の2〜3回の塗抹陰性の結核患者で、多変量解析を用いて症状より結核診断が可能かどうか検討した(表10)。その結果によると@3週間を超える咳、A15日を超える胸痛、B痰の喀出がない、C息切れがない、の4項目のうち、2項目を満たすときの診断感度は85%、特異度67%であり、3項目を満たすときの診断感度は49%、特異度86%であった。同様の研究が外来患者にも必要として結論しているが、この手の方法も実際には先進国、途上国を問わず肝要であると考えられる。
 Wilkinsonら30)は、喀痰塗抹検査と抗生剤への胸部XP上の反応より、結核診断アルゴリズムを提唱している(図1)。それによると、胸部 XPと自覚症状から肺結核が疑わしい患者に、3回塗抹検査を施行し、その結果、塗抹陰性のときはアモキシシリン(AMPC)1日1,500 mg分3を5日間投与し、自覚症状の改善や消失があれば肺結核でないと判定する。さらに、 AMPC投与後も症状が持続する患者にはエリスロマイシン1日2,000mg分4を5日間投与し、自覚症状の改善や消失があればやはり肺結核でないと判定する。それでも症状がとれないときは胸部XPと喀痰塗抹を繰り返し、塗抹陰性肺結核として治療するというものである。この手技での結核診断の感度は89%、特異度84%、陽性適中率95%、陰性適中率70%であったと報告している。途上国での地区病院での診断手法として有効と結論している。
 検査結果のモニタリングが悪いと、Creek ら31)の報告にみられるように、最初の塗抹陽性判明から治療まで2週間以上かかる症例を調査したところ25%以上の患者がこれに当てはまったとしている。
 


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