固体高分子の破壊機構とタフニング
2019年1月22日
山形大学 名誉教授 石川 優
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プラスチックの成型品に力を加えると変形する。さらに強い力を加えると大きな音を立てて製品が壊れて 幾つかの破片になるか、あるいはある力を維持しながら大きく変形して、力を除いても元に戻らなくなる。ガラスように大きな 音を立てて製品が壊れて幾つかの破片になるような破壊をぜい性的破壊と言い、軟鋼、アルミニュウムのように力を除いても大 きな変形が残る場合を延性変形という。ぜい性的な破壊は極めて早い速度で起こり、それが開始してから私達が力を製品から除 いても破壊を止めることはできない。一方延性な製品はそれが起きてから力を除くと変形はその時点で停止する。プラスチック の成型品は、ぜい性的な破壊を起こすより延性的に変形する、言い換えるとタフであることが製品を安心して使用するには優れ ている。プラスチック成型品の形状そしてその製品に用いるプラスチック材料にどのような性質の材料を用いれば、ぜい性破壊 を起こすことはなく、信頼性に優れた製品が設計できるであろうか。それを知るにはプラスチック成型品の塑性変形と破壊の機 構を理解することが必要である。
 
はじめに
1.材料強度の基礎
1.1 固体の理論強度とグリフィスの理論
1.2 固体の変形と応力集中
1.2.1 せん断変形が支配的な変形
1.2.2 体積変形が支配的な変形
1.2.3 ひずみの拘束による応力集中の機構
1.3 応力集中の緩和とタフニング
2.高分子材料の変形と破壊
2.1せん断変形支配の高分子材料の変形と破壊
2.1.1 高分子固体の塑性変形
2.1.1.1 結晶性高分子材料の塑性変形
2.1.1.2 非晶性ガラス状高分子材料の塑性変形
2.1.2 高分子材料のソフトニングとネッキング
2.1.3 配向硬化
2.1.4 せん断変形支配下での破壊
2.1.4.1 熱可塑性高分子の延性破壊
2.1.4.2 熱硬化性高分子の破壊
2.1.5 変形速度が一軸伸張の塑性変形に及ぼす影響
2.1.6 クリープ負荷での塑性変形
2.2. 体積変型支配の高分子材料の変形と破壊
2.2.1 ボイドの形成とその不安定拡張
2.2.1.1 ポイトの塑性変形による不安定拡張
2.2.1.2 ポイトの非線形弾性変形による不安定拡張
2.2.2 ひずみの拘束とボイドの不安定拡張
2.2.3 切り欠きのひずみの拘束によるボイドの不安定拡張
2.2.4 ひずみの拘束による高分子材料のぜい性的破壊
2.2.4.1 非晶性高分子のぜい性的な破壊
2.2.4.2 結晶性高分子のぜい性的な破壊
2.2.5 変形速度が破壊挙動に及ぼす影響
2.2.6 切り欠きを持つ結晶性高分子のクリープによるぜい性破壊
2.2.7 アルミニュウム合金の破壊との比較
2.2.8 高分子材料の破壊条件と破壊力学
3. 非線形弾塑性解析による高分子構造体の強度予測
3.1 高分子構造体の強度の境界条件依存性とタフニング
3.2 非晶性ガラス状高分子(ポリカーボネィト(PC))の強度設計
3.2.1 PCの真応力-ひずみ曲線の推定
3.2.2 PC構造体の破壊条件の推定
3.2.3 種々の境界条件でのPC構造体のタフネスの予測
3.2.3.1 切り欠き先端半径の効果
3.2.3.2 リガメントの厚さの効果
3.2.3.3 試験片の幅の効果
3.3 結晶性高分子(ポリオキシメチレン(POM))の強度設計
3.3.1 POM の真応力−ひずみ曲線とボイドの形成と拡張状態の推定
3.3.2 POMの破壊条件の推定
3.3.3 種々の境界条件でのPOM構造体のタフネスの予測
3.3.3.1 切り欠きの先端半径の効果
3.3.3.2 リガメントの厚さの効果
3.3.3.3 試験片の幅の効果
3.4 プラスチックのタフネスの評価方法と境界条件
4. 微細構造の調整によるタフニング
4.1 数平均分子量がクレイズ強度と降伏応力に及ぼす影響
4.2 分子量分布の幅がクレイズ強度と粘度に及ぼす影響
4.3 i-PPの立体規則性がクレイズ強度に及ぼす影響
4.4 共重合がクレイズ強度と降伏応力に及ぼす影響
5. ひずみの拘束の解放によるタフニング
5.1 ボイドによる体積弾性率の緩和とひずみの拘束の解放
5.1.1 ボイドの分散状態が塑性不安定に及ぼす影響
5.1.2 Gurson モデルを用いた非線形解析(関連流動則) によるポリマーアロイのタフネスの予測
5.1.3 修正Gurson(非関連流動則) モデルよるポリマーアロイのタフネスの予測
5.2 エラストマーのブレンドによるタフニングの効率に影響する因子
5.2.1 分散相の強度がタフネスに及ぼす影響
5.2.2 複合構造のエラストマーとタフネス
5.2.3 マトリツクス樹脂の配向硬化とタフネス
5.2.3.1 部分架橋による配向硬化の調整
5.2.3.2 結晶化条件による配向硬化の調整
5.2.4 熱可塑性エラストマーと樹脂の相溶性がタフネスに及ぼす影響
5.2.5 エラストマーの配向がタフネスに及ぼす影響
5.2.6 表面劣化によるぜい性化のエラストマーブレンドによる抑制
5.3 他の体積弾性率の緩和についての試み
6. 高い剛性とタフネスが両立したプラスチック複合材料の強度設計
6.1 微粒子の充填によるタフニング/td>
6.1.1 無機微粒子のブレンドによるi-PPのタフニンク
6.1.2 カーボン粒子のブレンドによるゴムのタフニング
6.2 繊維の充填によるタフニング
6.2.1 繊維と樹脂が強い界面強度を持つ場合
6.2.2 繊維と樹脂の界面が適切な強度ではく離
6.2.2.1 はく離強度がタフネスに及ぼす効果
6.2.2.2 繊維長のアスペクト比がタフネスに及ぼす効果
6.2.2.3 繊維長への締め付け力がタフネスに及ぼす効果
6.2.3 界面強度の調整によるタフネスの改善の例
6.2.3.1 酸変性低分子量PE改質材によるガラス繊維充填PCのタフニング
6.2.3.2 アラミド繊維によるPLAの弾性とタフネスの改善
7. 終わり

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