イタリア各地巡り


【銘酒名産地〜バッサーノデルグラッパ〜】 ひとくちで火炎放射〜!グラッパ〜

 グラッパというお酒をご存じだろうか?最近はイタリア料理店でもよく見かけるように なったので、名前だけは知ってる人は多いかもしれない。ワインの葡萄を絞ったものを発酵 させて蒸留させたお酒でいわゆる「カストリ酒」となるのだろうか?度数は40〜50度のもの で非常に強いが、イタリア人は食前酒としても食前酒としても飲んでいる、多目的お酒なのだ。 そのほかにも、エスプレッソを飲み干したカップにグラッパを注いで飲んだりすることもあるし、 お菓子の材料に使ったりする。香りも味も愛されているお酒なのだ。

 このグラッパという名称は地名からとったもので、ある夏、ベネチアにいた私たちは 遠足気分で、このグラッパの名産地バッサーノデルグラッパに出かけてみた。

<グラッパの銀行で>

 イタリアという国にいったい毎年どれくらいの日本人が訪れているのだろうか?A航空の機内 でも、有名観光地でも恐ろしいほどの日本人を見かける(私たちもその仲間だが)。が、しかし、この バッサーノデルグラッパのように、なんてことのないお酒と焼き物が名産の土地を訪れる変わり者は 少ないようだ。その証拠に、グラッパの駅から市街に向かう途中の銀行で両替を依頼したときに、 若い男性行員は、福沢諭吉をまじまじと眺め「あの、これはどこの国の通貨ですか?」と、聞いた のには驚いた。日本円ですよと教えると、外貨一覧表みたいなのをとりだし、その写真で確認を し、さらに「いや〜日本円両替するのは初めてなもので...」と入念にコピーまでとっていた のである。彼が新人であったのかもしれないが、ちょっとこれには驚いてしまった。まったく 普通の駅前銀行でである。

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<昼時の街をめぐる>

 イタリア然り、ヨーロッパの国々の駅は街の中心にあることは少ない。このバッサーノも 市街は駅から5分ほど行ったところにある。城壁がぐるりと周りを囲むかんじになっており 門をくぐってはいっていくのである。街はそれほど大きくないが、赤茶色の屋根と、柱廊の つづく建物は、この北部地方でよく見られるかんじの造りである。教会を中心に、広場があり それを囲むようにして建物が建ち並ぶ。街のはずれには、さきほどくぐった門のような入り口 がある。ぶらぶら歩くのにちょうどよい広さである。

 ベネチアを出て1時間ほどで到着するのだが、到着した時間が12時頃であった。ぶらぶら しているうちに、それまで、道を行き交っていた人々の姿が次第にまならになり、先ほどの 門からは、たくさんの学生たちが、自転車にのって街のなかにはいってくる。みんなお昼を 食べに戻ってきたのだ。そうしているうちに、店も次々に閉まり始め、街中閑散としてしまった。 本当に見事なものである。日本人および外国人はこの日私たちだけであったようだった。街に 取り残されてしまったようで、仕方なくというかやむを得ずというか、その辺のレストランで お昼でもたべようということになる。その前に、閉まった店のウインドーを覗き、いろいろ 物色などをしながら...

このように街は閑散とし、猫すらもいない。皆お昼ごはんか?

 ごく普通のトラットリアにはいったのだが、閑散とした街をながめつつ、バッサーノ名物 の彩色された陶器のカラフェにはいった白ワインを飲みながら時間をつぶした。ほんの1時間 ほど行くと、世界の観光地ベネチアがあるのがふしぎなくらい、この街はマイペースである。 食事の時間も1時から3時まできっちりとってある。(閉まっているお店の扉にだいたい 時間は書いてある)早いところで3時。遅いところは4時となっていた。4時に空けて何時に 閉店するのか気になるところだが...。私たちはこの延々と長い昼休みをこのトラットリア ですごし、ワインもなんだか1リットルくらいのんでしまい、しかしまだまだ3時までは時間 があるので、2時過ぎには店を出て再び散歩を始めた。

<グラッパでグラッパを見る?>

 ところで、グラッパ酒の話だが、街のいたるところにその瓶はならべてある。透明なもの が基本であるが、様々なハーブとともにつけこんで、色とりどりのグラッパ。また、ベネチア のいろいろな形のガラス瓶につまったグラッパもたくさんある。いったいどれを選んだらよい のか非常にまようところである。

 昼休みにもかかわらず、空いてるところがある。それはバッサーノの2大グラッパメーカー のひとつPOLIのグラッパ博物館である。ここでは製造の方法や製造に関する機械・機具 を陳列してあるほか、社の製品も試飲販売をしている。ワインに種類が多々あるごとく、 グラッパもその作られる葡萄の品種でカテゴライズされているのである。先客の白人観光客 のおじさんがさかんに試飲を重ねて「おおこれはすばらしい」「おおこちらもよいですね」 などといいながら、40度50度のグラッパを試飲している。うむむ。こちらは食事してきた からいいのだが、ひょとしてこのおじさん、おなか空いていたらやばいのでは?と、こちらが 心配になるほど試飲をしていた。私たちは結局このおじさんに占拠されていたため、試飲は できなかったのだが...蒸留に使うガラスの器具が非常に美しく印象的であった。そういえ ば、この形はちいさいおみやげ用のガラス瓶に再現されていたなあ。

そうです、このフォルム。美しきイタリアンデザインか...高さは1.5mほど(POLI博物館にて)

<街と橋の話>

 博物館の隣には、例のバッサーノ焼きの工房があった。絵皿などが店の外に飾られている。 彩色が明るくいかにも南欧というかんじである。その先には古い大きな屋寝付きの橋がかかる。 この橋は、かつてフランス軍とイタリア山岳兵とが対峙した場所として名高い。勇敢な山岳兵 によってこの橋の手前で敵を食いとめ、侵攻を免れた場所ということである。かつて何度も 破壊されたということだが、そのたびに架けなおされて、この城壁に守られたグラッパの街 の精神的な象徴になっているようである。イタリアの小都市は歴史的にも大きな都市の侵略 と、異民族の来襲との戦いの連続である。こうして、いまでこそ一つの国であるが、こういった 大小さまざまな都市国家の集まりであるイタリアは、城壁のなかにその歴史が凝縮しているの である。この橋の上から両岸を眺め、ここを実にたくさんの歴史と人々が行き交って行ったの だろうなあ、としばし感慨にふけるのであった。ちなみに、この橋の街側のたもとには グラッパの2大メーカーのもうひとつ NARDINI社のグラッパを出すバーがある。その 対岸のたもとには、イタリア山岳兵の戦功をたたえる記念館がある。

橋の上からの風景。窓に赤い花がみえるこの地方らしい建物

<北国の...>

 橋のそばに「橋」というそのままの名前のバールがあるので、一休みしようとはいった。 手前にはパニーノを食べられるスペース。その奥にお酒のカウンターがあり更に奥には いくつかテーブルが並ぶ。食事もバールでもどちらでもOKの店であった。私はピルスナ-を 頼み一杯。イタリアのビールもおいしい、あ、でもグラッパにすればよかったかな?などと 思いつつ、カウンターの壁に貼りつくようにつくられた木のベンチで一休み。同行者はトイレ に行った。しばらくして戻ってきた彼女が「んー。ちょっとびっくりするよ」というので、 私も行って見た。こんな話で何なんだが、トイレもなかなかそれぞれ特徴があるものである。 この辺の北の山沿いはわりと、いわゆるアラブ式で日本のトイレによく似ているしゃがみ式 が多い(ほとんど水洗であるがそうでないのもあったなあ〜)。でも日本とは逆向きになら ないといけないのである。穴のあいているほうが後ろなのでご注意を。あと、足を置く ところがわりと低いところにあるので、水を流すときはいったん離れてからでないと、意外と 水の勢いが強いので水没することになるので注意を...。そして、節電スイッチもポピュラー なので、スイッチの場所を探し当て(だいたい赤いランプがついている)一回つけたから と言って安心していると突然切れてあせることになる。だいたい1分くらいになっているのか、 そのときはあわてず、赤ランプを探しあて「延長」すれば良いのである。でもけっこう焦るので これを読んだひとは、落ち着いて用を済ませることができる...か。ちなみにフランスでも この形式が多いようだ。パリでも安カフェなんかはこれだし、安ホテルも妙に廊下は暗い。 このけちけち節電スイッチがすごく普及しているのである。あわてずこのときも赤ランプを 探せば大丈夫。でもフランスは水圧をかなりかけてあるので、トイレを流すときはイタリア よりも注意が必要である....。重要なことだ、と思う。

 私が文化的考察(?)からもどると、同行者が店のおねえさんと何やら盛り上がって いた。サッカーJリーグサポーターの彼女はめざとく壁にかかったスキラッチ選手の写真 を見つけいろいろ聞いていたらしい。スキラッチはここの出身かどうかはききそびれたが まあ、お店に来てパチリというものであったという。日本では今や知る人ぞ知るスキラッチ だが、さすが元イタリア代表はいつでもスーパースター扱いなのである。おかげで、この 橋屋というバールは「スキラッチの店」ということに私達のあいだではなってしまったのだ。

 そうこうしてるうちに、静まり返っていた街にも人が戻り、店も開きで、先ほどチェック しておいた店で買い物などもできるようになった。意外と都会でみかけるブランドの店は ひととおりそろっており、しかもお客が少ないためゆっくり選ぶことが出来る。人気商品 も売りきれたりしていないし、接客も感じがよかったりして。新製品のカタログを買わなかった 私にまでくれたりして、なんだかすごく得した気分であった。服やアクセサリー以外でも 食料品なども安く、おいしそうなお菓子もあるし、はたまた、巨大生ポルチーニなども店頭に あり、それぞれベネチアからくると非常に安く感じる。私はスペックという生ハムとお土産 のお菓子などをいろいろ購入した。乾燥ポルチーニなどもすごく安くてしかも良い品物であった。

 夕方の列車に乗りベネチアへ向かったが、結局グラッパを買わなかったのに気づいた。 グラッパ焼きも買わなかったし...名物名産ってそんなもんかもしれないなあ...。 まあいいかー、とそのときは思ったが帰りの空港で重い思いを結局することになったの であった。ちなみにその後、ミラノのスーパーでNARDINIの50度のグラッパを見つけ (これは空港では売っていないのだな...)来るたびに購入することにしている。少々 瓶が薄そうなので、割れないかいつもひやひやなのだが...。もう無くなってしまった ので、そろそろ買いにいかねばと思っている、今日この頃。

バッサーノデルグラッパの夕暮れ。高台の街から橋を見下ろす。赤い屋根が印象的な街。

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<バッサーノデルグラッパの行き方>

 ベネチアサンタルチア駅もしくはメストレ駅よりFS国鉄普通列車で1時間ほど。 バッサーノデルグラッパ止まりの便もある。駅から街の中心へは徒歩10分ほど。 城壁の内側が街の中心になる。

 

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