(はじめに)おじさんライダーのバイク購入記


私は昭和33年9月生まれの45歳(2003年12月現在)、いわゆるおじさんである。
いや、本人はまだまだ充分若いつもりなのだが、最近は髪の毛も少し気になるし、
細かい文字も読みにくくなってきた。
ふと気が付くと「最近の若い者は・・・」なんてことを呟いていたりする。
こういう人間を世間ではおじさんとかオヤジとか言ったりするのだろう。


考えてみれば、小さい頃、おじさんとは自分より遙かに年上の人間で、
どう考えても自分は一生そうなりそうもない生き物だった。

それからもう少し大きくなってみると、自分がいずれおじさんになることは理解できるように
なったが、それは遙か遙か先のことだと思っていた。

30代になった頃にはそろそろ自分の周りの友人にもおじさんらしき連中が現れ始めたが、
自分はまだまだ若者だと思っていた。

40になって初めて気が付いた。
自分の人生はもう半ばを過ぎてしまったのだ!

そう意識したとき初めて私はおじさんになったような気がする。



話が少しそれてしまったが、私はこの歳になるまでバイクというものとは
全く無縁の人生を送ってきた。
自転車くらいなら小学生の頃から乗っていたし、自動車免許も20歳で取得して、
5〜6台の車を乗り継いできた。
しかし何故かバイクという乗り物とは一度も出会うことがなく、それに興味を持たぬまま
この歳になってしまった。


そしてある日、私とバイクとの劇的な出会いがあった・・・わけではない。
私とバイクとの出会いはもっと屈折していた。


事の始まりは2年ほど前のある日、自宅の新聞に入っていた通販の折り込みチラシである。
そのチラシに載っていた「折りたたみ式電動スクーター」というのが私の目を引いた。
銀色の流線型のボディからハンドルと座席が突き出たような、珍妙なスタイルをしている。
価格は19,800円。
これは子供のいいおもちゃになるだろう、と思い、早速購入を申し込んだ。
もちろん自分が乗りたかったからなのだが(笑)。
10日ほどして、商品が届けられた。


電動スクーターにまたがるうちの娘(写真では見えないが、座席が付いている)。

パッケージを見ると、中国製らしい。
さっそく室内で組み立てて乗ってみる。
おお! これは面白い乗り物だ。
アクセルを軽くひねると人が駆けるくらいのスピードで走り回る。
スピードが出過ぎると壁にぶつかりそうになったりして、それがかえって面白い。
ヘッドライトやウィンカー、ホーン、電源キーも付いていて、ちょっとした本物のバイク気分だ。
子供たちもすぐに夢中になった。
休日になると公園へ持ち出しては乗り回していた。
私も一緒になって楽しんだのは、言うまでもない。


この新しい乗り物にすっかり味を占めた私は、さらに2台の電動スクーターを手に入れた。

一つは最近よく見かけるキックボード型のもの(中国製・9800円)。
前のものよりもだいぶ小型でパワーも少ないのだが、作りはずっと精巧で、
折りたたむと片手で持ち
歩けるほどのサイズになる。
立ったまま乗るのがかえってスポーツ的で面白い。
ただ問題点は、バッテリの容量が少なく、連続駆動15分ほどで動かなくなることだ。
パワーも極端に弱く、体重80キロの私が乗ると、目に見えないほどの上り坂でも
みるみる速度を落としてしまう。
それでも平地では結構なスピードが出るので、よく車のトランクに積んでは
あちこちに持ち出して遊んだ。


キックボード型。折りたたむととてもコンパクト。


そして3台目に買ったのが「6.8」というちょっと変わった名前のイタリア製電動スクーター
である。
値段も結構した。正規品で15万円くらいのものを、セールで5万くらいで入手した。
これに乗ってみると、今までの電動スクーターがまるでおもちゃ(実際おもちゃなのだが)
に思えてきた。
モーターはパワフルな400w(0.5ps相当だが、電動にしてはパワフル)。
最高速度25km/h。連続走行距離20Km。
前・後輪サスペンション付き。
速度・距離・バッテリー残量を示す液晶ディスプレイも付いている。
そしてさすがはイタリア製、デザインが最高にカッコいい。



これぞイタリアンなデザイン。けっこう注目される。ウィンカーは自作。


しかもこのスクーターは原付自転車の保安基準を満たしており、公道走行が可能だ。
さっそくナンバーを取得すると、通りに乗り出してみた。

自宅の周辺の狭い通りをフルスロットルで走る。
スピードは自転車を全速力でこいだくらいだが、モーターの小さなうなり以外ほとんど
音がしない。
バイクと較べるとずっと静かな乗り物だ。
坂道では多少スローダウンするものの、余程の急勾配以外はするすると登っていく。
これはまるでこがなくていい自転車だ。

私はすっかりこの新しい乗り物が気に入って、自宅の周辺をあちこちと乗り回した。
スピードがあまり出ないので、大通りは走れないし、バッテリーが心配なので、
家から半径5キロくらいが行動半径である。
それでも充分自転車の代用にはなったし、近所の買い物などにずいぶんと活躍した。
一度は車のトランクに積んで遠出もした。
田舎の車通りの少ない道を全速力で風を切って走るのは、何とも言えない気持ちよさだった。



それからしばらくの間、このスクーターは私の愛用の品だった。
性能的には実に心許ない乗り物だが、それで充分だった。

だが一年ほどするうちに、だんだんと不満な点もクローズアップされてきた。
それは遠出ができないことや表通りを走れないことである。
スタート時や坂道でのパワーのなさも気になった。
もっとパワフルで長距離乗れる乗り物はないだろうか。

そうなると当然関心はエンジン付きの二輪車に向いてくる。
バイクと言っても私は免許を持っていないので、乗るとしたら原付だ。
そう考えると、原付が欲しくてたまらなくなってきた。

「この歳でバイクかよ。」
などと自問もしてみるのだが、欲しい気持ちは抑えようがない。
ネットでライダーたちのツーリングレポートなどを読んでいると、自分もやりたくなってきた。
バイクでキャンプというのも面白そうだ。

あれこれ悩みながらもカタログ類を集め始め、欲しい機種も絞られてきた。
そして最終的にはこういう言葉で自分を納得させた。

「今乗らなかったら一生乗れないぞ。」

そして平成15年11月中旬のある日、私は家の近くのホンダ販売店を訪れると、
店頭にあった黄色のズーマーを注文した。
3日後にバイクは家に届けられることとなった。
かくして幾多の紆余曲折を経て、45歳にして私は人生初めてのバイクを所有することに
なったのである。

注文してから実車が家に届けられるまでの数日間、私は妻に対する言い訳ばかりを
考えていた・・・。


そして我が家のガレージに納まったズーマー。後ろに見えるのはいつかレストアしたい
スバル360。


「原付日記」に続く。


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