海を見ていた午後@



2004年3月28日   本日走行184km  総走行距離602km


前回奥多摩へ行ってから、3ヶ月近くも間が空いてしまった。
その間近所のお使いに駆り出されるほかは、ガレージの中でひたすら惰眠を貪る我が愛車
ズーマー。
ホームページの更新ももちろん放りっぱなしで、アクセス数も一向に増えない。

これではいかん。

そうだ、バイクもHPも、始めたからには初志貫徹しなければ。
そう思い立ち、ある春の穏やかな朝、久々のツーリングに乗り出した。

さあ今回はどこへ行こう。
前回の奥多摩ツーリングの経験から言うと、原付での日帰りツーリングは200キロくらいが
限界のようだ。
自宅から行ける200キロ未満のコースというと、結構限られてくる。
一つは千葉方面。
房総半島の根本を突っ切って外房まで往復するコース。
もう一つは神奈川方面。
湘南から三浦半島あたりまでを周遊するコース。

う〜ん、そうだなあ、今回は暖かそうな湘南方面へ行ってみよう。



朝8時頃、自宅を出発。
3月末とは言えまだまだ朝の風は冷たい。
しっかりと防寒具を身につけると、環七へバイクを乗り入れた。
日曜朝の環七は普段の渋滞が嘘のようにすいている。
どの車もスピードを出しているので、流れに乗り遅れまいとアクセルを絞った。

右折して246号玉川通りに入ると、こちらも道はすいている。
瀬田の交差点で環八を横切り、そのまま一路西へ。
ビルやファミレスの建ち並ぶ単調な道を、車の流れに乗りながらどこまでも走ってゆく。
30分も走るとお腹がすいてきたので、マックに立ち寄った。
日曜朝のマックはドライブスルーの客で大混雑で、バイト達がカウンターの中を走り
回っている。


まずは朝マック。

腹ごしらえを済まして再び道へ。
郊外らしい町並みの中をしばらく走ると、大和市内に入った。
ここで左折して246号から離れ、あとはまっすぐ南に海を目指して下る。
もう自宅から1時間以上は走っただろうか。
ようやく「江の島」のサインがあらわれ始めた。


江の島は意外に近い。

江ノ島へ向け、40キロくらいの速度でゆっくりと道路を巡航していると、突然後ろから銀色の
カブラが猛スピードで抜き去っていった。
おお、カブラってカッコいいなあ、スピードも結構出るみたいだ。
そう思っていると、今度は大型のバイクに何台も追い越された。
運転しているのは皆、ヤンキー系の兄ちゃん達だ。
対向車線を走ってくる四輪車も、なんだか走り屋的な車種が多い。運転も少し乱暴だ。
そういえば歩道を歩いている人達も皆、どことなくラフな服装だ。
なんだかこの辺りは人種が違うなあ・・・そう考えていて、ふと気が付いた。

そうか、ここはもう湘南なんだ。

海までまだ20キロもあるとは言え、ここは既に湘南の文化圏(?)なのだ。
太陽と、海と、ビーチと、青春の世界なのだ。

湘南をクルージングといえば、何かBGMが欲しいところ。
まさか若大将じゃないし・・・やっぱりサザンか・・・
とか思いながら、口をついて出たのはユーミンの昔の曲だった。

あなたは昔湘南BOY〜
私は昔ヨコスカGIRL〜

そうそう、「コバルトアワー」だ。
このころのユーミンは良かったなあ。
このアルバムも何度繰り返して聴いたことか。

そんなことを思いながら走るうち、前方に奇妙な巨大地球儀が出現。
な、なんだ?


謎の球体

巨大な銀色の球体が二つ並んでいて、その手前に城壁のようなギザギザの壁が
立ちはだかっている。
藤沢市の文化施設か何からしい。
こりゃあ税金の無駄遣いだよ。

そこからもう少し先に行ったところで、今度は巨大PAOが出現。
PAOというのは10年くらい前まで売っていた日産の乗用車のことだが、これの巨大レプリカが
そのまま中古車ディーラーのショールームになっている。
結構作りも凝っていて、ホイールの中央が円いガラス窓になったりしている。
湘南の人々はこういう巨大建造物が好きなのだろうか。
あ然として写真に収めた。


巨大PAOの手前に本物PAOが。運転してみたい。(でっかい方を・・・)

賑やかな藤沢市の中心街を通り抜けると、さあ海はもうすぐそこだ。
心なしか空気にも潮の香りが混じってきたような気がする。
「江の島 右」のサインを見つけて右折すると、路面電車の線路を横切った。
江ノ電がこの辺では路面電車となって走っているみたいだ。
交差点でしばらく待つうちに、信号が赤になり、クラシックな江ノ電の車両がゆっくりと
通過していった。


懐かしの(?)江ノ電

この交差点に面して「扇屋」という和菓子屋があり、客が何人も行列している。
見ているうちにもひっきりなしに客が訪れて、色々と買い込んでゆく。
甘いものは苦手な私だが、ちょっと興味がわいたので、列に並んでいるおばさんに、
みんな何を買うのか聞いてみた。
「江ノ電もなか」というのが名物らしい。
そういえば売場の横には江ノ電の車両の先端部(本物?)がそのままはめ込まれていて、
その窓越しに、中の作業場を覗けるようになっている。
店の前に飛び出た庇の上には、江ノ電のパンタグラフがどかりと乗っている。
この辺のこだわり方がさっきのPAOと同じだ。

江ノ電もなかは話の種に食べてみたい気もしたが、やっぱりパス。


甘いものはちょっと・・・

店を出て百メートルほど行くと、突然視界が開け、海が見えた。
こんもりした緑の小島がすぐ目の前に浮かんでいる。江ノ島だ。

陸地側と島とを結ぶ短い連絡橋を渡り、島の入り口の混雑した一角にバイクを停めた。
こういう観光地に乗用車で来ると駐車場探しが大変だが、バイクの場合はこんな時楽だ。
まだ11時前だが、日曜の江ノ島の参道は既に観光客でにぎわっている。


参道の入り口

鳥居をくぐり、土産物屋にはさまれた細い参道を上っていった。

江ノ島に来るのは何年ぶりだろう。
前に来たときから、もう15年は経っているような気がする。
その頃付き合っていた彼女と二人でこの坂を上って行ったのだ。
その時江ノ島で何をしたのか、どんな話をしたのかはもう忘却の彼方だが、この参道の
賑わいは当時と少しも変わっていない。

15年経って、彼女はもう私のそばにはいない。
あんなに仲が良かったのに、人生ってわからないものだ。
もしかしたらこの世界とは別の可能性の世界があって、その世界では今も彼女と私が
手をつないで、二人でこの坂を上っているかもしれない。
いや、そのほかに小さいのをあと一人か二人連れて。

あちらの私とこちらの私と、どちらが幸福だろうか。・・・

そんなことを考えながら土産物街を通り抜けると、「エスカー」を発見。


謎の乗り物エスカー。

エスカーってまさかエスカレーター?
だとしたらすごいネーミングだ。
と思って入り口を覗いてみると、これは紛れもなくただのエスカレーターだ。
うーん、こんなもの前に来た時あったかなあ。そういえば乗ったような気がしないでもない。
4本のエスカレーターを乗り継いで、江ノ島頂上まで350円と書かれている。
ただのエスカレーターに350円とは高いが、歩くのが面倒なので迷わず乗ることとする。
この辺がおじさんだ(笑)。
周りを見るとエスカーに乗っているのはやはり中年以上が多い。


名前はイケてる(?)が、ただのエスカレーター。


乗り継ぎ地点には、神社があったりする。

4本のエスカレーターを乗り継いで、あっと言う間に頂上に着いた。
しかしエスカーはつまらない乗り物だ。周囲は壁で囲われているので景色が全く見えず、これ
では何のための江ノ島観光だか判らない。
長崎のグラバー邸のように野外エスカレーターにすればいいのに。

島の頂上も大勢の観光客でにぎわっていた。
エスカーの終着点のすぐ先に「コッキング苑」という訳の分からない庭園があり、その先には江
ノ島らしからぬモダンな展望タワーがそびえ立っている。
こんなものあったかな、と思ってよく見ると、去年出来たばかりのものらしい。
入場料500円なのでこれはパス。


そそり立つ展望タワー。江ノ島は進化する。

頂上の広場の先にも道が出来ていて、皆ぞろぞろとそちらへ向けて歩いてゆくので、
つられて私も歩いていった。
両脇に土産物屋の連なる狭い石畳の道が、階段でアップダウンを繰り返しながらずっと
先まで続いている。


土産物屋が続く。

しかし江ノ島の人達は商売熱心だ。
ちょっと立ち止まって商品を見つめようものなら、たちまち声を掛けてくる。
だからなるべく歩くペースを変えずに、横目で店先を覗きながら通り過ぎる。
そういえば井伏鱒二「駅前旅館」という本に、「江ノ島で客引きが出来るようになったら
一人前」というようなことが書かれていた。
それだけ昔からにぎわった観光地なのだろう。

途中建物の途切れたところは断崖絶壁になっていて、下の磯で釣りをする人達が
見下ろせた。


人が豆粒のように見える。

何故か江ノ島には猫が多い。
野良なのか、飼い猫なのか、人が近付いても逃げようともせず悠然と日向ぼっこをしている。






江ノ島の猫は風格がある。

やがて道の先が開けて、神社の境内のような場所になった。
「奥津宮」と鳥居に書いてあるので、いわゆる奥の院の事だろう。
大勢の観光客が参拝している。


奥津宮

神社の脇には石積みの小さな洞窟があって、その中に祠もある。


弁天様の祠

境内を出て先へ歩いてゆくと、道の脇に「龍恋の鐘」という立て札があった。
細い道が雑木林の間へ続いている。
何だろうと思いそちらへ入ってゆくと、突然視界がぽっかりと開けて、海の見渡せる崖の
上のような場所に出た。
見晴らしが良くて、ちょっとロマンチックな感じ。
鉄骨で組まれた小さなボックスが海に向けて建てられており、その中央に小さな鐘が
ぶら下がっている。
親子連れの観光客がその下に立って、がんがんと鐘を鳴らしていた。
ボックスの左右の壁は金属板になっており、そこに細かな文字で日付とカップルの名前が
たくさん刻まれている。
ここで結婚式でも挙げたのだろうか。
足下の金属板になにやら由来が書かれていたが、興味がないのでパス。


龍恋の鐘

鐘の周りを一周してから辺りを見回していると、変なものに気が付いた。
えっ、これなに・・・?
よく見ると、この鐘突き場を取り囲む背の低いフェンスに、無数の南京錠が取り付け
られている。
大きさも形も違う数え切れないほどの南京錠には、それぞれに異なるカップルの名前が
マジックで書かれているのだ。


絶句。

二人の愛を永遠に誓って・・・というのだろうか。
う〜ん、これじゃ日本は滅びるよ。

でもそういえば、15年前彼女と来た時はこんなものはなかったもんなあ。
もしその時二人で錠前を取り付けていたら、今頃どうなっていただろう。
もしかすると、全然違う展開があったりして。
いや、そんなことしたって、結果は同じに決まっている。
人生に「もし」はないのだ。
そんなことを考える私は、ここに錠前を付けに来るバカップルと似たり寄ったりだ。・・・

などと少しおセンチ(死語?)になりながら、もと来た道に戻る。
道はアップダウンを繰り返しながら更に先まで続いていたが、やがて急な下り階段になり、
どうやらその先は島の裏側の船着き場へ通じているようだった。
下まで下りるとまた上るのが面倒なので、この辺で引き返すことにした。



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