秩父・長瀞 巡礼の旅@


2004年10月23日   本日走行238km  総走行距離1011km


今年の夏は何かと仕事が忙しくて、せっかくのツーリングの季節というのに
出かける機会を得られずにいた。
週末は台風に見舞われる事も多く、気付いてみればもう10月。
空前の猛暑に見舞われた東京にも秋風が吹き始め、朝晩はめっきり涼しくなってきた。
考えてみると、春に三浦半島めぐりに出かけてから半年過ぎた事になる。
その間我が愛車ズーマーはと言うと、私がご近所のスポーツクラブに週一回通う時以外は、
車庫の中でただ埃をかぶるばかり。
このHPもなかなか更新が進まず、アクセス数は日に日に落ちてきた。
いや、まあ、自己満足のページだから、それはどうでもいいんだけど。
いずれにせよ、そろそろツーリングに出かけたい気がする。


今年10個目の台風が訪れた週の週末、朝起きると天気はめずらしく晴れている。
最近東京は週末に雨が多くて、晴れるのは久しぶりだ。
よし、今日は半年ぶりのツーリングに出かけるとしよう。

思い立ってすぐ出かけられるのが一人ツーリングのいいところだ。
バッグに地図とカメラを詰め、厚めのジャケットを羽織ると準備完了。
ズーマーにまたがり環七に乗り出した。
今日の行き先は埼玉県の秩父・長瀞方面。
7、8年前に一度会社の行事で長瀞を訪れ、川原でバーベキューをしたが、そのとき以来だ。
その時はたしか池袋から電車で行ったのだが、ずいぶん時間が掛かったような気がする。


スタート!

・・・おっと、環七は大渋滞だ。
土曜日の午前中は都内の道はどこも渋滞しているが、これは何故だろう。
バイクだからまあいいようなものの、ちょっと出鼻をくじかれた感じ。
車の間をすり抜けながらそろそろと前へ出るが、トラックに道を阻まれることも多く、
なかなか先へ勧めない。
環七から井の頭通りに入り、環八へ抜けると、ここも大渋滞している。
信号を一つ抜けるにも青信号を2回は待たなければならない状況だ。
しかも大型車が多く、なかなか前へ進めない。
トラックやワゴン車の前になり後ろになりしながら、そろそろと進んでいった。

・・・うーん、ブレーキの感じがちょっと違うなあ・・・。
実は一月ほど前からブレーキのレバーにちょっと遊びがある感じがするのだ。
効きが悪いというのではないのだが、奥までぐっと握らないと完全に効かない。
これはバイクショップに見せたほうがいいかなあ・・・。
そう思いながらしばらく走るうち、ふとミラーを見ると、白バイが後ろに付いている。
「そこの黄色いバイクちょっと横に止めてください。」
「え、俺?」
なんだなんだ。スピード出しすぎた覚えはないぞ。
第一この渋滞の中でだせっこないじゃん。

道路脇に停めると、私と同じくらいの年齢の警官だった。
「あの、何で捕まったかわかりますか?」
「いや、全然」本当にわかんないよ。
「バイクの免許はお持ちですか?」
「いや・・・。」車の免許しかないけど、それとなんか関係あるの?
「原付はですね、道路の左車線を走らなきゃいけない決まりなんです。」
え〜!!
うそー、そんなの知らなかったよー。俺今まで一年もそれを知らずに乗ってたの?
「一点減点ですねー。免許証見せてください。」
「罰金も取るの?」
「五千円ですねー。10月中に納めてください。」
そんなのないだろー。悪気はなかったんだし。しかも先週書き替えたばかりのおニューの
免許で、これから5年間無傷に保ってゴールドにしようと思っていたのに・・・。
でも警官は容赦なく違反切符を書き込んでゆく。
「あのー、じゃあ、2車線の道を右折する時とか、どうすればいいの?」
「それはですね・・・。」なんだか説明を受けたけど、イマイチ納得できない。
まあ警官と喧嘩しても仕方ないし、この場は長い物には巻かれろ、ということで。
このへんおじさんは物分かりが良い。(笑)
五千円はちょっと癪に障るけどなあ。


ショック・・・

気を取り直して再び渋滞の道路に戻った。
100メートルほど先にホンダの看板が見えたので、そこに乗り入れた。
かなり大きなバイク店で、広いショールームとガレージがあり、メカニックが何人も働いている。
若いメカニックを呼び止めて、ズーマーのブレーキのことを話した。
「あー、これは簡単なんですよ。」
メカニックはそう言って、前輪に伸びたブレーキホース(?)の先端のねじをくるくると回した。
「これで手を離した時ブレーキが引っ掛からなければ大丈夫です。」
前輪を持ち上げて手で回した。するすると回る。
ブレーキを握ってみると、おお、この一ヶ月間ずっと気になっていたブレーキレバーの遊びが
すっかりなくなっている。
この間わずか30秒くらいの事だ。料金は無料。
ありがとう、若いメカニックの人。
違反切符でダメージを受けたばかりなので、人の好意が身に沁みる。
捨てる神あれば拾う神あり。いや、ちょっと違うか。苦あれば楽あり。干天の慈雨。
地獄に仏と言ったらちょっと大げさかなあ。

さて、出発早々いらぬ事で時間をつぶしてしまった。
先はまだ長いのに、こんな事ではいつ長瀞につけることやら。
時計を見るともう11時近い。先を急がねば。
しかし環八はどこまで行ってもだらだらの渋滞が続いている。
数年前に渋滞回避のために出来た井荻トンネルに差し掛かったが、ここには案の定
「原付不可」の看板が。
ちぇっ、原付はここでも被差別民だ。
側道に回ると、こちらはさらに激しく渋滞していて、ウンともスンとも動かない。
西武線をまたぐ陸橋のところで十分以上立ち往生してしまった。

そのまま渋滞の中を30分ほど止まったり走ったりを繰り返して、ようやく川越街道に
たどり着いた。
左折して和光市内に入る。この辺から埼玉県だ。
とは言っても、周囲の景色は相変わらずごみごみとしたビルや商店が続き、
殺風景な事この上ない。
道路もどこまで行っても渋滞していて、トラックや乗用車が押し合いへし合いを続けている。
もう自宅を出てから2時間も経つのにこの調子じゃ、何のためのツーリングだか
わかんないよ。

川越街道を10キロほど北上した所でバイパスに入り、そこから有料道路へ抜けた。
富士見川越道路という7キロほどの短い有料道路で、原付はなんと20円。
やっと殺風景な建物や渋滞の車が消えて、ツーリング気分になってきた。
畑や田んぼを両脇に見ながらフルスロットルで駆け抜ける。


やっとツーリングらしくなってきた。

・・・ところで、これのどこが有料道路なの?
と言うのも、この道路はそこら中で別の道路と交差していて、一体どこからどこまでが
有料区間なのか全くわからない。
と言うか、普通の公道に料金所だけ設けたと言う感じ。
もしかするとこの辺の地方自治体かなんかが税金稼ぎに作ったのかもしれない。
よくロシアあたりでは地元のマフィアが道路に勝手に関所を作って通行料を取ってる
とか言うが、似たような事なのかも。
まあ20円じゃ文句も言えないか。

有料道路の中間あたりで、左手にきれいな小川が見えたので、道をそれた。
斜面に沿って黄色い野生の花が群落している。
土手の上にバイクを乗り上げて記念撮影。




黄色いお花と黄色いバイク。

有料道路を抜けて川越市内に入ると、またまた渋滞に飲み込まれた。
道の両脇にはさっきからにぎやかな商業施設が続き、何とも味気ない景色。
空には厚い雲が広がり始め、気温も少し下がってきたようで、なんだか身も心も
どんよりしてしまう。
・・・あーあ、こんなとこ来るんじゃなかった。
これじゃあ渋滞に巻き込まれに来たようなもんだよ。
やっぱりバイクと言えば海だよなあ・・・。
などと、すっかりネガティブになってしまっているのは、先ほどの違反切符のダメージから
まだ抜け出せないでいるからなのか。(笑)

川越街道から左手にそれ、嵐山(らんざん)の方に向かうと、ようやく道はすいてきた。
道の先の方に時折り秩父の山塊もみえる。
この辺で初めて「長瀞」の看板が現れた。


長瀞は遠い。

小川町を抜けるあたりからは道幅もやや広くなり、周囲の景色も田舎らしくなって、
ようやくツーリングの雰囲気になってきた。
それにしても、ここまで50キロほどの道のりを4時間近くかけて走ってきた事になる。
今日は全く難行苦行の旅だ。

高度が上がってきたせいか、身を切る風はかなり冷たい。
この季節にしては結構厚着をしてきたつもりなのだが、ジャケットの裾や襟から冷たい
風が忍び込んで体を冷やす。
・・・そういえばバイクで田舎道を走る時よく思う事なのだが、空気の温度と言うものは
決して一定ではなくて、地形によってめまぐるしく変わるものだ。
両側の切り立った谷底の道を走る時など、山の上から冷気の吹き降ろしてくるのを
はっきりと感じる。
山が途切れて景色が開けると、突然風が暖かく変わる。
空気と言うのは決して一様に広がっているのではなくて、冷たい塊と暖かい塊とが
まだら模様に入り混じっているのだ。
この年になってバイクを乗り始めて、初めてこの事を知った。
昔オープンカーに乗っていた時も、こんな事には気付かなかった。

しばらく走ると道は大きな川を渡った。荒川だ。
道なりに左へ曲がり、川の右岸に沿って走りつづける。
左手を見下ろすと荒川が濁った水を湛えて流れている。
両岸のところどころには灰緑色の岩塊が顔を覗かせていて、このあたりから長瀞だ。
すぐに、「ようこそ長瀞へ」の看板が現れた。


やっと着いた。

いつの間にか道路と川の間には単線の列車の線路が走っている。
地図を見ると、秩父鉄道というローカル線らしい。
少し先に踏切が見えたのでバイクを止め、しばらく待っていると、3両編成の短い列車が
通過していった。


電車vs.バイク

踏切から線路を横切って側道に入り、100mほど行くと、荒川にまたがる橋に出た。
川面よりもかなり高い所に架かっている橋なのに、欄干の高さが腰くらいしかなくて、
下を覗き込むとなんだかおっかない。
数日前の台風のせいで川はずいぶんと増水しているようだ。


荒川を渡る。

橋を渡って川の左岸に入ると、道は川から離れ、緩やかなワインディングになった。
今まで走ってきた右岸の国道よりずっと空いていて、トラックなどもなく、
快適にバイクを走らせる。
このあたりはのんびりとした田舎の風景だ。
残念な事に天気はあまりすぐれず、厚い雲が秩父の山々の上に垂れ込めているが、
今までの長い渋滞を思えばずっと快適な道のりだ。

しばらく行くと道の左手に小さな神社が見えたので小休止。
20段ほどの石段を上って境内に出ると、誰もいない。
境内の隅に子供の遊具が置かれていて、帰って寂しげに見える。
鬱蒼とした林を背景に立てられた社は、古色蒼然とした作りで、なにやら神秘的な感じもする。
賽銭箱の前に立ってヘルメットを足元に置き、道中安全を祈願して二礼二拍手一礼。


名もない寂しげな神社。


道中安全でありますように。

バイクに戻って10分ほど走ると、荒川が再び右手に現れた。
右折して橋を渡り、先ほどの国道に合流して、再び右岸の道を走る。
道の両脇は桜並木が続いていて気持ちがいい。
花見の季節はさぞかしきれいだろう。

少し走ると突然にぎやかな場所に出た。
ハイキング姿のおじさんおばさんや、若者たちのグループ、家族連れなどが大勢
右手の建物から歩いてくる。
ここが長瀞駅だ。前に電車で来た時はここでここで降りた事を思い出した。

しばらくバイクを止める場所を探してうろうろしていると、突然甲高い汽笛の音がした。
えっ、機関車?
そう言えばガイドブックに、毎週末SLが走っていると書いてあった。
私は鉄道マニアではないが、やっぱり見てみたい。
慌てて駅に引き返しSLを探したが、残念、既に機関車は去ってしまって、
煙だけがあたりに立ち込めていた。
線路の先の方から撮影機材を抱えた「鉄ちゃん」達が大勢戻ってくる。
惜しい、タッチの差で逃してしまった。ちょっと悔しい感じ。

そのまま駐車スペースを探して駅前をうろうろしたが、どうもこの辺はごみごみしていて
適当な場所がない。
土産物屋街の脇道を通って川へ向かい、直接川原へバイクを乗り入れた。
この辺が長瀞の一番の景勝地「石畳」だ。
川岸にはテーブル状の巨大な緑石が幾重にも重なって連なり、独特の景観を作り出している。
川の対岸は切り立った崖で、小さな滝が流れ、一幅の山水画のよう。
あたりは大勢の観光客がいて、石の上に上がり、記念撮影とかしている。
一昨日の台風のせいか、荒川は満々と濁った水を湛えて流れている。
すぐ下流の方にはカヌー遊びをする人の姿も見える。
長瀞と言えば渓流下りが有名だが、今日は増水でやっていないらしい。


石畳には大勢観光客が。


ミニ滝の横にはミニ鳥居。(見える?)


カヌーの人達は寒そう。

川原で少し写真をとったあと、駅へ戻る階段を上っていった。
狭い道の両脇に土産物屋が軒を連ねているところは、この前行った城ヶ島や江ノ島と
そっくりだ。
時計を見るともう3時を回っている。かなり空腹なことに気が付いた。
この辺で遅い昼飯としよう。
秩父の名物と言えばやはりそばだが、体が冷えているので何か暖かいものが食べたい。
小さな食堂に入り、鍋焼きうどんを注文した。


「とろめし」って?

うどんが来るのを待っていると、お店のおばちゃんが話し掛けてきた。
「ねえ、あんた国体の人?」
「え?」
「いや、そんなかっこしてるから選手かと思ったのよ。・・・」
何でも今埼玉では国体が行われていて、その中のカヌー競技が長瀞で行われるらしい。
でも、この格好のどこがカヌー選手なんだ?


あつあつ。

うどんの味はともかく、体が内側から温まったので、少しほっとした。
土産物屋で平打ちのうどんと名物豚の味噌漬を買い、川原に戻ると、またバイクにまたがる。
さあ、もう4時近い。そろそろ先を急がなきゃ。
再び国道に戻ると、秩父市方面へ向け一路南へ下った。



(つぎへ)
戻る
戻る