アオリイカの飼育失敗談

某日、大きな台風が過ぎ去った後、久しぶりに操船した時のことである。港にはホンダワラが水面に浮かび、出航前かなりのホンダワラを引き上げていた。その時は気付かなかったのだが、船から降ろしているとその中に孵化前のアオリイカの卵嚢があるではないか。「これはオイシイ発見だ」とばかりにBONの眼は輝いていたことであろう。傍にいた猟師を気にしつつも、施設までホンダワラを持ち帰る。途中やはり怪訝そうな表情で見られているので、素直に話しておいた。なんのことはない。
その日の業務が終わるまで、まだかなりの時間が残っていたので、とりあえずはバケツに海水を汲みその中へ入れておいた。業務が終わると、その足でホームセンターへ直行し、プラケースとエアレーションを購入。すぐさま部屋でセットする。菖蒲沢の海水をそのまま汲み、エアレーションで爆気する。室内は20℃前後で保たれていた。拾ってきた当初は稚イカの形ははっきりみえず、その形が分かるようになったのは一週間経ってからである。

アオリイカ卵嚢 (新しい卵嚢は透明感があり張りがある。稚イカの成長に伴い徐々に茶色く汚れが付着していき、ハッチアウト後はぼろぼろに崩れ去る。ハッチアウトは卵嚢から押し出されるようにして稚イカは下へとポトリと落とされる。その後、直ぐに泳ぎ始める。左画像の卵嚢の一房ごとに稚イカが収まっているのが見て取れるが、分かりますか?黒い眼が二つ点々としていますよ)
あくる日の朝、数匹の稚イカが泳いでいる。なんて可愛い泳ぎ方なのであろうか。しかし、見た目はエイリアンである。そんなことよりも、ハッチアウトを見逃した悔しさを感じずにはいられない。今日は仕事が終わったら張り込みだ、と気合が入る。帰り道、長期戦を予想して栄養ドリンクの白ワインも購入し準備は万端だ。
いざ部屋へ戻ってみると、なんとかなりの数がハッチアウトしてしまっているではないか!とりあえずはグラスを片手にふわふわ泳ぐ稚イカを観察する。その日は結局ハッチアウトは確認できず(見落としていた可能性が大である)。しかし、それよりもこの稚イカをどうするかである。一瞬踊り食いが脳裏をよぎるが、成長を観察するのが目的であったことに我に返る。が、朝産まれたであろう個体は白く透明感なく★になっているではないか。このままではこいつら明日の朝は全滅だ。ん、餌か。それがいけないんだな。換水したかったが、今はアル中の身だ。その日はブラインシュリンプの準備を整えて就寝する。翌朝半数は落ちていたが、車でひとっ走り海へと走り、プランクトン混じりの海水を汲んでくる。貝も食うか?とついでに獲ってくる。食わなきゃ味噌汁にでもするか。とりあえず換水し、孵化させていたブラインシュリンプも与えておく。とりあえず公休日であったので、またまたワイン勝手にじっくり観察。昼飯は焼肉のみ。至福の時である。そして、やっとハッチアウトをみることができたのであるが、それにしても産まれては落ちの繰り返しで原因の究明はなされていない。何なら食ってくれるんじゃ??
稚イカ 稚イカ
その後、約一週間かけてハッチアウトは続いた。或る日、餌としていたブラインシュリンプが★の原因の一つであることが判明した。逆に食われていたらしい。稚イカの身体からは、通常ではありえない部位から墨が吐出されているではないか。良く見ると、ブラインシュリンプは競うように稚イカの周りに群がっている。振り払う稚イカ。この時ばかりは凹みました。不甲斐ないAQUARISTとしての自分に。これを境として卵嚢は海へと返すことにした。ベラの餌とならぬ事を願って・・・。
結局、飼育の方法は見出せなかったわけであるが、課題の給餌についてはこまめなプランクトン入り海水に換えることと、海藻を入れるなどで、付着した微生物を食べてくれるのではないかと予測しているところだ。とにかくアオリイカの成長は早く、捕食も旺盛な類なのだ。寿命が約一年と世代のサイクルが早いこともあり、AQUARISTとしては一日一日に入魂していかなくてはならないであろう。

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