小説「ヴァンパイア・ハーフ 〜ラブ&ライフ〜」
人間とヴァンパイアのハーフの男・レナン。 見かけは人間と殆ど変わらない。 彼は日本へやってきて戸惑うばかり。 人並以上の能力(ちから)がある上、周りの者から白い目で見られている。 彼の目的は単なる兄探し。勿論、兄も人間とヴァンプのハーフだ。 兄であるカイルからの手紙が、途絶えた所為で探す事になったのだった。 最後の手紙から一年待ったが、何の連絡も無い事から、兄の身に何かあったに違いないと思い探しに旅立った。 世界中探しに回ったが、見つからずアジアの方へと。 最後の賭けとしてアジアの小島・日本を選び、その地へ降り立った。 北海道から沖縄まで探し始めた。東京は最後に。 なかなか兄の姿は見つからないが、東京の地を踏んだ時に何かを感じ取る。 兄がこの東京の何処かにいると、そう感じた。レナンは胸を膨らませた。
上京して約一年が経つ。 周りの者は彼女・昌未(まさみ)に対して冷たい者ばかり。 昌未にとって友達と言えるのは冷奈や尚子しかいない。 寂しい生活を送っていた。男友達もいなく恋人もいない。 今やスターであるSMAPやGLAYらは、冷奈の友達で彼等は昌未の事、良く思っていない。 恋愛対象にはならなく、好きな女性(ひと)がいるからでもある。 昌未自身も好きな人はいない。嫌いな人は沢山いるが・・・・・・。 普段と変わらず平凡な生活をしていた昌未の運命は、ある男との出逢いによって変わる。 平凡な生活が180度も変わり、奇怪な事件に巻き込まれていくのだった
レナンの兄探しは、はっきり言って間違いだったのかもしれない。
兄のカイルは人間への恨みが強く、今もある人間の手によって地下牢に閉じ込められていた。 カイルの心には、人間への憎しみが徐々に増していく。 レナンは変わり果てた姿のカイルと再開する事になるのだ。 ”はたして、これでいいのか?”疑問、一つも持たずにレナンは、兄と会う事を夢見て探し続ける。 この所帰るのが遅くなっている。店の掃除のせいだ。 職場の先輩に押し付けられて昌未が、変わりに掃除をしているのだ。はっきりNO!と断れない。 意思もそんなに強くない。大人しく控えめな性格。悪く言えば消極的。臆病な所もある。 勇気が持てず自分自身にも自信を持てないでいる。 冷奈からは”もっと自信を持ちなさい”と言われ続けていた。昌未は既に諦めかけているのだ。 全てにおいて。自分から変わろうとしないから。 そして、今日も遅い日。今の時期、梅雨で湿気が多い6月は、冷奈はN・Yへ行っていて昌未の傍にはいない。尚子も仕事で忙しく会っていない。今は昌未一人ぼっちの状態。先輩達は、身支度して先に帰って行く。「掃除よろしくね。」と昌未に言って店から出ていった。 午前零時。静まり返った店の中で一人掃除をする。ブラインドを下ろして扉に鍵を掛けようとした時、ガチャリと扉が開いた。 倒れこむように男の人が入って来た。 「あのぉ・・・・、どうしたんですか?」 男は何も言わず倒れた。 びっくりした昌未だが、倒れた男の人を中に入れ長椅子の上に寝かせた。 頭や身体に怪我を負い血を流している。オーナー室から救急箱を取り出して、男の人の怪我の手当てをさっさと済ませて掃除に戻った。男の人は気を失っていて昌未は、少しの間だけ寝かせておいた。 手当てをしたその男の人を見て外国人だとすぐ分かった。 ブルーの瞳でブラウン系の髪の毛の色。短髪で凄く格好良い。ハンサムのナイスガイそんな感じ。 彼を見て昌未は少しだけトキメク。けれど、じきに私みたいな女気に掛ける訳ないと決め付けてしまう。そこが昌未のいけない所。掃除終わって帰りの仕度をする頃には目が覚めていた彼。 そして、「ハラ減った・・・。」と独り言を呟く。入って来た昌未に気づいた男・レナン。 「大丈夫ですか?」 彼の身体と怪我を心配して駆け寄る。レナンは不思議そうに見る。 「あのぉ・・・・・大丈夫ですか?」 まじまじに見る昌未。この人大丈夫かなぁ?そう思い始める。レナンは昌未の事見て 「ハラ減った・・・・・・・・・・・・・・。」 と、言い出した。 「お腹空いたの?」 と、聞き返す。次にレナンの口から出た言葉は 「血が欲しい・・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 この言葉を聞いて昌未は呆然。血が欲しいなんて・・・・この人、絶対変!!おかしいよ・・・・。 後退りする昌未にレナンは 「少しだけでいいから欲しい。」と。 自制心が効かず昌未を襲ってしまう。 昌未に抱き付き首筋に牙を立て痛くしないようにして昌未から血を貰った。 死なない程度に。人間は3分の2の血液が無くなれば死んでしまうから、レナンが貰った量は6分の1ぐらい。けれど、昌未は貧血を起こして倒れてしまう。このままじゃ不味く能力が戻ったレナンは、昌未の住んでいる場所を見つけてから代わりに見せの戸締りをして昌未を家まで送っていった。部屋の中まで入って来てベットに寝かせ今日、自分と会った時の記憶を消し替わりの記憶を植え込み部屋を後にした。
それから数日後。 レナンは昌未が働いているレストラン「キャッツ」を拠点にして兄探しを再開する。 店の中で兄の事を聞いて回る。店の外でも同じ事をしていた。 店に入り浸りのレナンを見て先輩達は嫌味ばかりを言う。変な男だと・・・。 昌未はあの日の晩の事覚えていない。店の中で昌未と会ってもレナンの方がビクつく。 何も知らない昌未はレナンにトキメク物を感じるけれど、相手にされないと決め付けているから、彼とはまだ話をしていない。無理だと思い込んでいるから。だが、レナンの方はそうでもなかった。 彼は昌未に仄(ほの)かな恋心を抱くようになっていく。白い目で見る皆よりかは昌未の相手の方が気が楽だった。それに襲ってしまった負い目も少しはあるのだ。――そう、レナンの方から話し掛けた。昌未は消極的だから話せる勇気もなくそれでレナンの方から話し掛けた。それでそのうちに恋心が生まれた。彼にとって一番居心地がいい所でもある。 兄探しをして一週間。兄らしい人物を見たと云う人物が現れて、その人は何処で見たのか話してくれた。 去年の8月か9月に「ウェスタンワールド」と云う店のショーで見たと言う。 その店は何処にあるのか聞くと「調布にあるが、今はやってるかどうか分からないねぇ〜」と言われた。 けれど、レナンは気にせずその店へ直行する。出来るだけ早く兄を見つけたいのだ。 約30分程でその店に着く。開店しているが客はほとんど居ない。レナンは店の従業員にこの男知らないか?と写真を見せて聞いたが誰も知らないと。けど、「オーナーなら知ってるんじゃないか?」と言われてオーナーの所へ行ってみた。オーナーは居るけれど会ってくれない。オーナー室さえも入れてはくれなかった。だけど、レナンは食い下がろうとしない。必死にお願いをした。 「5分だけでもいい。会ってくれ!ある人の事が知りたいんだっ。お願いします。」 レナンの願いが通じたのか、オーナーである寺石と云う人物が仕方なく会うと言ってくれた。 ただ早く帰ってほしいからだ。それで寺石はレナンと会う事に。そして、寺石に写真を見せ、今、何処に居るのか聞くと「分からないな。」と曖昧な返事をした。 「あ、でも・・・確か、長岡と云う男が連れてきた男だよ。ショーの見せ物にするって張り切ってたからよく覚えているよ。だけど、事件が起こってからは姿を消したねぇ、この男と一緒に・・・。」 思い出すように寺石は途切れ途切れで話してくれた。 「その長岡って人は何処に居るんですか?」 レナンは長岡の居場所も知りたかった。その男に会えば兄が何処に居るのか分かると思ったからだ。寺石は 「確か、八王子に住んでる筈だよ。えらく立派な豪邸に・・・。何処にあるのか自分で調べてくれ。」 と、話してさっさとオーナー室へ引き篭もってしまった。 レナンはお礼言って長岡が居る八王子へ向かった。八王子と言っても広い街。 どうやって調べるか迷っていると交番が目に入り、ひょっとして知っているのかもと思ってお巡りさんに聞いてみる事に。 「あのぉー、すいません。長岡さんの御宅を探しているんですが・・・。」 「長岡・・・さぁ、知らないねぇ〜。」 素っ気無い対応にムッとするが・・・。 「豪邸に住んでると聞いてきたんです。」 「豪邸・・・・。」 考え込む巡査。後ろで聞いていたもう一人の巡査が 「その人なら知ってますよ。実業家の長岡圭一郎。でも、なんで彼の家に?」 「それは・・・ちょっと聞きたい頃がありまして。」 「ふぅ〜ん・・・いいですよ、案内します。」 と、レナンをその豪邸ならぬ屋敷まで車で乗せてってくれる事に。 その交番から約20分から30分ぐらいの所で車は屋敷の前で止まる。 周りは民家などなくひっそりと建ってるようだった。 「此処(ここ)ですよ。」 「どうも有り難うございました。」 お礼を言ってレナンは車から降り門の前でインターフォンを鳴らした。 石川巡査はレナンを降ろした後、待たずに車を出した。インターフォンを鳴らして数分、向こう側からガチャガチャと音がしてなんだ?と思ったレナン。時期に女の人の声がした。 「何か御用ですか?」 「長岡さんは居ますか?」 「生憎、今は仕事中で手が離せませんので、後程・・・。」 「待って下さい!!私の話を少しだけでいいんです。居るのなら直接、お話を伺いたいんです。」 「困ります。今、旦那様は仕事中ですので。」 「お願いします。少しだけ時間を・・・。それか伝言を・・・・。」 「伝言ですか?」 「はい、伝言を伝えて下さい。カイル・レイトナーを探していると今直ぐ伝えて下さい。」 「分かりました。」 と、プツリと応答は切れた。 出たメイドは伝言を伝えに長岡が居る書斎へ行き、そのまま伝言を伝える。 その名前を聞いた長岡は反応を示す。 「誰だ、そんな伝言を言ってきた男は?!」 「今さっき来た男です。多分まだ門の所にいると思いますが・・・。」 腹を立てている長岡は駆け足で門の所まで行き、門の所で突っ立ているレナンを見るないやな 「とっとと帰れ!!カイルとか言う男など知らん!さっさと帰らないと警察呼ぶぞっ!!」 と、言われレナンはしぶしぶ帰って行った。でも、あの怒りようを見てあの男、何かを隠している。そうにらんだレナンは渋谷には戻らずそのまま、屋敷の近くで夜になるのを待つ事にした。 屋敷内に入って兄の事を探すと決めていた。不法侵入は悪い事だが兄の為だと言い聞かせていた。
兄・カイル。時は2年前に遡る。 1997年の春。5月の終わり頃だった。カイルが日本へ来たのは。 日本での生活は惨めな物で来たのを後悔していた頃でもあった。 そんな時に一人の少女と出逢った。名前は貴美子。美しい少女で一目で惹かれたカイル。 年も二十歳になったばかりだと言う。二人は急速に恋に落ちていった。お互いに愛し合い結婚しようと決めた仲でもあったが、二人の仲は貴美子の父である長岡圭一郎に知られた。 当然の如く二人は引き離され、あの男と二度と逢うなと言われる。
カイルの方は許しを得ようとするけれど、聞く耳を持たない圭一郎はカイルに娘に逢う事は許さんと手痛い酷い仕打ちをしたのだ。それでも逢いたいカイル。危険を承知で忍び込み貴美子と逢う。何度も父親の知らない所で逢っていた。が、それもバレてしまいカイルは命を狙われる事になってしまった。 圭一郎はチンピラや殺し屋を雇い彼を殺せと。その報酬も出すと言った。つまりは人間狩りみたいなもの。 楽しんでいたけど、それは誤算でもあった。カイルは生き延びていったのだ。 そして、その反対にチンピラ達の無残な死体が次々に発見されたのだ。プロの殺し屋も殺られていた。カイルが全て殺ったのだ。貴美子に逢いたいカイルは死ぬなら一緒にと、もう一度屋敷へ忍び込んだ。 貴美子に逢い再び愛し合う。結婚する事を手紙に書き、弟宛に送った。けど、これが最後の手紙になったのだ。 父親に見つかった二人はリビングに連れ出された。そして、圭一郎はカイルが人殺しだと言う。 「そんなの嘘よ!!彼が人殺しなんてする筈がない!!」 そう父に歯向かうが、本当の事だと断言する。カイルは 「だから、どうした!俺は自分のみを守る為に殺ったんだ。お前が差し向けたチンピラ達を殺って何が悪い!!お前を許すものかっ―――!!」 怒りが込み上げ長岡を殺そうとしたが、長岡の部下が庇いカイルはその男を殺してしまう。 もう既に人間の顔付きでなくヴァンプの顔付きになっていた。 「どうした?!俺が怖いのか?お前を殺してやる。」 と、長岡に掴みかかった瞬間、貴美子はカイルを見て青褪めていた。
カイルを見て”化け物”という言葉が飛び出した。 「貴美子・・・・・、愛してると言ったじゃないか。俺もお前だけを。」 と、貴美子に迫ったが――――――。 「来ないでっ!!私が愛したのはこのカイルじゃない。化け物の相手なんて真っ平よっ・・・・・・・・。」 「化け物?!この俺が化け物だとっ!!裏切るのかっ?」 「お願い来ないで・・・・・・・・、こっちに来ないでっ・・・・・。」 愛した女に化け物呼ばわりされて裏切られカイルは、ハラワタ煮えくり返っていた。 「この俺を裏切るのか!!!!」 そう言ってカイルは愛する女を手に掛けた。それも父親の目の前で・・・・。
娘を殺され圭一郎はカイルを殺そうとしたが、殺すよりも生け捕りにして苦しめる方を選んだのだ。
カイルの正体が吸血鬼だと分かった今、圭一郎はカイルを見せ物に苦しめて最後に殺してやると。それが娘の復讐だ。そう言ってカイルを地下牢に閉じ込めた。何も餌も与えない。生きる糧になる血されも与えなかった。その状態で調布にある店「ウエスタンワールド」のショーにカイルを出させていた。 そう云う日々がずっと続いていたのだ。だが、それも長くは続かなかった。 餌を与えない状態で自制心の無いカイルは店の客を襲う事件が起こった。 女性客の首に噛み付き他の客の前でその女を噛み殺し血を吸い続けた。恐ろしい光景を見た客は失神。 この事件のせいで店は一気にイメージダウン。客がほとんど来なくなってしまったのだ。この事件が起こったのは98年の9月の終わりだった。その日から長岡はカイルを地下牢に閉じ込めたのだ。 それから1年が経ち弟のレナンが探しに日本へ。
とうとう兄の居所が分かり助け出そうとしていた。 カイルはこの1年間、長岡を殺す為だけに生き延びていた。 だが、お思いは人間へと恨みと代わり、殺す殺すと呟く始末。性格も変わっていった。裏切られた女の存在も大きく影響していた。男も女も子供大人も関係無い、全ての人間を殺すと・・・・・。変わり果てていったのだ。 そうとは知らないレナンは夜になった今、長岡の屋敷へと忍び込んだ―――。
壁を乗り越えて簡単に屋敷内に入る事が出来た。 不気味なくらい静かだ。誰も居ないように見えたが、人の気配は感じる。 見つからないように兄を探し始めた。2階、1階と隅から隅まで探すかそれらしい人物はいない。テレパシーで兄の事を呼んでみるが応答は無かった。 能力が無い程弱まっている可能性が強かった。 (何処だ・・・兄さん・・・・・・・) 途方にくれ近くにあった銅像に寄りかかった。 そしたら銅像はゆっくりと動き出して入り口が現れた。 地下牢へ続く入り口。ノブに手をかけドアを開けて階段を下りて行く。 蝋燭の火を頼りにして足元を照らし出してゆっくり歩いていく。
「兄さん、此処にいるのか・・・・・。」 地下牢に響き渡る。けれど、返事は無い。
ずっと奥の方まで歩いていくと牢屋が二つあった。 もう一つの牢屋には誰も居なくもう一つの牢屋に誰か居た。 「?!ひょっとして兄さん?兄さんだよね・・・・。」 レナンは大声で叫ぶ。 その男は声の方へ振り向いた。痩せ細りまるで餓死した人間みたいだった。 死臭の匂いもする。レナンはその男をカイルだと確信する。 「兄さん・・・・・。酷い目に遭ったんだね・・・・・。」 南京錠と繋がられていた鎖を全部ぶち怖して、カイルを地下牢から出して屋敷から出ようとした。 「・・・・・・・・・・コロス・・・・・・・コロス・・・・・・・・。」 カイルの口から低い声がした。 「兄さん・・・・?」 「・・・・・・・・・・コロス・・・・・・・。」 「此処から出る方が先だよ。」 カイル連れて屋敷の外へ出たいのだが、カイルにその気はなく長岡を殺す事した頭になかった。 レナンは裏口よりも正面玄関から出ようとしてカイルを連れていった。 だが、もう一歩の所で外へ出れたものを長岡に見つかったのだ。 「いい度胸してるな。正面玄関から出ようとするとは・・・。」 振り返ると長岡とその部下が何人もいた。 後退りするレナン。カイルを連れているから上手く動けない。 だが、こいつらを倒さない限り外へは出れそうにもなかった。仕方なく・・・・。 「兄さん、此処で待ってて。」 そう言ってレナンは能力を使って部下を倒していった。 殺してはいない。気絶させていっただけ。 そして、気絶している部下の所へカイルは這っていき、部下のうちの一人の手首を取り血液を吸い殺してしまう。カイルの身体は血のおかげで少しずつ元に戻っていった。又一人、もう一人と。レナンが倒していった部下の血を全て吸い能力も元に戻った。それから、長岡に襲い掛かったのだ。
「兄さん!!バカな事はやめろよ!」 「うるさいっ!!俺はこいつを殺す為に生き延びてきたんだ。」 長岡に掴みかかり何度も殴り付ける。 今までの恨みを晴らすように。そして、噛み殺した。 「兄さん・・・・、もういいから行こう。」 「いや、まだだ。血が足りない。屋敷内にいる者全て殺す。」 そう言ってその場から去ってしまう。 まだ屋敷内に残っているメイドや長岡の家族までも手を出した。 レナンは見ていられない。カイルが今夜やった事を黙認するしかなかった。 満足そうに戻って来たカイルは、レナンと一緒に八王子の繁華街へ出向いた。 レナンは早く家へ帰りたかったのに仕方なく付き合う事に。本当の事言えば、昌未がいる「キャッツ」へ寄りたかったのだ。でも、もうこんな時間。店は閉まっている。閉店時間は0時。1時間以上も経っていた。
人間への憎しみや恨みが強いカイルの事が手に取るように分かるレナン。 全人間を一人で守れる訳もなく・・・彼女、昌未の存在を知られるのは一番不味い。 好きな相手だからだ。それに助けて以来カイルは「二人でなら日本だけでもたった一週間で片付く。この世の中から人間を抹殺するんだ。」 と、何度も言ってくるのだ。 「それだけは嫌だ。僕は今のままでいい。平凡にひっそりと暮らしたいだけだ。兄さんも見つかった事だし国へ帰ろう。そうすればやな事も忘れられるよ。」 レナンがそう言っても
「国へ帰るだと?!俺は此処にいるぞ。そして、人間を殺すまで戻らん。帰りたきゃ一人で帰れ!」 そう言い返され言う言葉が出てこなかった。 これ以上何を言っても無駄なような気がした。 カイルに見つからないよう毎晩、昌未の所へ行っていた。 お互い惹かれあってる。そして、よく昌未を家まで送っていた。夜の一人歩きは危ないと言って送っていたのだ。本心を言えば二人きりになりたい訳。だけど、嬉しい気分で家へ戻るとカイルが待っていた。 「とっても嬉しそうだな。」 「兄さん・・・・。どっか行ってると思ってた。」 カイルの前を素通りする。 「・・・女だろう。今まで女に逢ってたな。」 「そんなの兄さんに関係無い。」 「やめとけ。裏切られるだけだぞ。それで泣くのはお前だろう・・・。」 答えずにシャワー浴びる用意してバスルームに直行。 シャワー浴びてる間は待っていたが、出て来た時から同じ事を言ってきた。 「言っとくけど未だそんなんじゃない。それに俺の一方的な片思いだ。」 「嘘だろう。片思いなんてお前らしくないな。」 「だから、ほっといてくれ。自分の事だ。後、絶対に彼女に近づくなよ。」 たとえ相手が誰であろうと手出ししたら許さない。そう心の中で呟く。 「別に興味無いさ。」 心にも無い事を言うカイル。 お互いに心を読みあいそれ以上、何も言わなかった。 どんな女なのかは興味あった。そして、殺ると決めていた。 その翌日の晩・・・。カイルはレナンに化けレストランへ。 相手の女が何処に居るのか知っていた。勝手にレナンの心を覗いたから相手の女の顔と名前は知っている。 レストランに入ってカウンターの所に腰掛ける。じきに店員が来て注文を聞いてきたからカイルは、適当に注文した。周りを見渡すが彼女はいない。まさかバレたか?そう思ったが違った。 昌未は厨房の中だ。今は仕事中。閉店時間までずっと居たカイル。 最近では何も言わず先に帰っていく先輩達。さっさと掃除済ませようとした。 何時もは終わるまで待っているレナン。それに何も言わずにいてくれたが今夜は違った。 「嫌なら嫌だってはっきり言えばいいだろう。・・・・こんな女の何処に惚れたんだか、あいつは。」 「え?何・・・・・。」 手を止める昌未。 「人間の女だから裏切るだろうな。化け物だと罵って裏切る。違うか?」 「レナン?どうしたの・・・・。何か何時もと違うような気がする・・・・。」 「裏切る前に殺してやるよ。どうせ人間はいずれ死ぬ運命だからな。」 「!!・・・・・・どうしたの?何時も優しいのに。別の人みたい・・・・・。」 そう思う昌未。別人に見えて当然だ。カイルなのだから。 「すぐ済むから動くな。」 と言いカイルは首筋に噛み付こうとしたが、昌未はカイルを突き放す。 「やっ・・・・。なんでこんな事するのっ!」 怖くてその場から逃げようとしたけれど、腕を掴まれ壁に戻される。両腕を掴み 「大丈夫さ。すぐ済むし苦しまずにあの世に逝ける。さっきの問いの答えは簡単さ。お前等人間は単なる餌でしかない。俺等にとってはな。―――もとい、お前が人間で俺がヴァンプだからさ。」 「ヴァンプって・・・・・吸血鬼・・・・・・?」 「あぁ、そうさ。」 嫌がる昌未を無理矢理・・・・。首筋に牙を立てたその時、バタンッと扉が開いた。 「昌未さん!!」 レナンが大声出して入って来たのだ。 「え?レナンが二人・・・・?」 パニックになる昌未。目の前にレナンが二人いるのだから。 「兄さん!言っただろう!!彼女に手を出すなって。」 「兄さん?!」 カイルは昌未から手を離し元の姿に戻る。そして、昌未の側にレナンが駆け寄った。 「大丈夫?何かされただろう・・・・。」 昌未は首を横に振る。 「まさか兄さん、全部話したんじゃ・・・。」 「話して何が悪い。これで終わりだな、化け物だと罵られて裏切られたっていいだろう。今、この場で殺せばいい。」 「そんな事しない。」 「殺らないなら俺が殺る。」 と、カイルは昌未に襲い掛かる。 「ふざけるな!!」 カイルの攻撃を避けながら昌未を守ろうとする。 「そんなにこの女が大事か。」 レナンは攻撃せず防御に徹する。側に昌未が居るからだ。 けど、カイルの攻撃を全て交わせる訳はなく一発だけもろに当たってしまう。 倒れ込むレナンに寄りかかる。レナンを抱きかかえる昌未。 「レナン大丈夫?」 「あぁ、平気だ。」 「本当なの?さっきあの人が言ってた事・・・・。」 「あぁ、本当だよ。」 「じゃ、レナンも・・・・・。」 昌未は疑い始めていた。レナンもヴァンパイアで人間を殺そうとしているのかも。そして、自分も殺されるのではないかと・・・・。 「誤解するな、俺は兄さんと違う。殺させないよ。」 そう言って抱き締めた。 そして、好きだと告白もした。そんな二人に横やりを入れ始めたカイル。 「はっ、殺させないか。それは面白いな。好きな女に疑われているのにそれでも好きとはな・・・。化け物だと言って裏切る女だぞ。」 不思議に思う昌未。まるで心の中を覗かれているみたいだと。 「ヴァンプが能力(ちから)を持ってる事忘れるな。隠したって無駄さ。全てお見通しさ。」 レナンを蹴飛ばして昌未から退かせ、そして、昌未の身体に手をかけた時にレナンが 「殺したら兄さんの事殺すからな。逃げても地の果てまで追ってでも必ず殺す・・・。」 そう言った。逆にカイルは 「お前に俺の事が殺せる筈が無い。昔からお前は俺に逆らった事ない良いコだからな、違うか?」 カイルはレナンの性格をよく知っている。 レナンに人殺しが出来ない事よく分かっているからだ。 「さぁそれはどうかな。それは子供の頃の話だろう。今は違う。好きな女の為なら兄さんも殺す。俺は本気だよ。」 レナンの殺気がひしひしと伝わってくる。 こいつ本気だ・・・・。冷汗を掻き始めたカイルは、引き下がるしかなかった。結局、殺る事は出来なかった。 そして、昌未はとっても嬉しかった。怖い目に遭ったけどレナンの心に触れる事が出来たから。 たとえ相手が化け物でも構わない。自分の事をこんなに思ってくれるのはレナンが初めてなのだ。 昌未は優しくレナンを抱き締める。 「昌未・・・・。」 「こんなの初めて。私の事こんなに思ってくれる人、今までに居なかったから。男運無いし嫌われていたから諦めかけてたの。だけど、レナンと出会えて良かった。たとえ、化け物でも構わない。ヴァンプなんか関係無い。それはちょっと怖いけど。側に居てくれればそれでいい。」 「本当に俺でいいのか?別、無理しなくていい。」 「そんな事無い。本当にいいの。私もレナンの事好きだから。」 本当かどうか疑った。心の中を覗いても何もなくレナンへの気持ちしか見えなかった。 お互いに本気だと知り、カイルは馬鹿馬鹿しいと先に出ていった。 結局、諦めるしかなかった。そして、次の問題は冷奈達だった―――。
梅雨も明け夏が始まった7月の中旬に帰って来て、真っ先に昌未に会いに来た。 又、尚子も仕事が一段落して暇が出来、レストランへ来るようになった。 それから二人は昌未に恋人が出来たと知って喜び、どんな人なのか会わせてと言ってきたから二人にレナンを紹介する。だが、この時に冷奈はとても嫌な物を感じる。レナンを見た時に”人間なのかな?”と疑いを持ち始めた。それから度々、会うようになる。昌未の恋人だから当然の事。そして、会う度に疑問は強くなる。だが、その疑問は確信へ変わった。昌未とレナンの会話からとその現場に居合わせてしまった。 丁度、昌未から血を貰っている所を。首筋にたてている牙が見えレナンの正体が吸血鬼だと知った冷奈。 このままだと昌未が危ない。昌未の身を案じて二人を引き離す事に決めたのだ。 それとなくレナンの居場所を聞いた冷奈は唖然とした。昌未の口から出た答えは”一緒に住んでる”そう微笑んで言ったのだ。これじゃまずいと冷奈は、昌未に家へ来ないかと持ちかけたがあっさり断られる。 ”レナンと一緒でもいいよ”と言うと彼に聞いてみると言われた。
その日の晩にレナンに聞いてみたら”別、かまわないよ”と答えてくれ冷奈の申し出を受ける事にした昌未。けど、それは冷奈の策略でもあった。部屋を別々にさせて、二人の会う時間を無くさせなるべく一緒に行動。・・・と言うよりも昌未を何処へ行くのにも連れて行った。そうすれば二人の時間は次第に無くなっていく。現に冷奈の思惑通りに進んでいった。そして、二人の不満も募る。会いたいのに会えない。同じ屋根の下暮らしているのに冷奈のせいで会えないでいた。昌未の為だと思ってやった事が逆に裏目に出た。昌未から迫られる羽目に。 「なんでこんな事するの?部屋だって別々にして。これじゃレナンと会えないじゃない。一緒に居たいのに・・・・。なんで・・・・・。もうこんなの嫌!レナンと一緒に出てく。前みたいに暮すの。」 「それはダメよ。出ていかれちゃ困るわ。」 「なんで冷奈が困るの?」 「それは・・・そうね。困る事ないわね。だけど出てどうするの?又、部屋探ししなきゃならないでしょ。」
「それはそうだけど・・・・。でも、一緒に居たいの。だから、いいでしょう。レナンと同じで部屋に居ても。」 「そんな事許可出来ないわ。」 「どうして許可が必要なのよ・・・・。・・・・・・嫌よ、もう・・・・・・。」 「昌未!!」 止めるが昌未は冷奈を払いのけてレナンの部屋へ行ってしまう。 冷奈はただ心配しているだけなのに。昌未の後を追う。丁度戻って来たレナンとドアの前で会い抱き付いた。 「昌未・・・。」 レナンの方も会いたかったのだ。 「入る?」 うんと縦に頷く。レナンは部屋に招き入れた。でも、ちょっとやばいかも・・・・。 ここん所生き血不足気味。自制心が無い状態でもあった。貧血気味のレナンを見て昌未は心配する。 「レナン大丈夫?なんか顔色良くないみたい。」 「これくらい平気。」 「足りないなら私の・・・。」 「それはよくない・・・。」 「私は平気だから。」 「でもな・・・・。」 「本当にいいの。少しくらいしかあげられないけど。」 レナンがやり易いように服を脱ぎ肩を出した。 「昌未・・・・・。」 愛しくなり抱き締めた。kissしながら首筋へ。痛くしないように牙を立て血を少しだけ貰う。 そのままBedに押し倒し抱こうとした時だ。冷奈が入って来たのは。 「昌未、自分の部屋へ戻りなさい。」 「やだっ!!」 断れて仕方なく。腕っ節の強いボディガードを連れてきて昌未を部屋へ連れてくように命令した。
二人きりになりレナンの方から冷奈に掴みかかる。 「どういうつもりだ?!」 「昌未の為よ。貴方の正体知ってるのよ。吸血鬼なんでしょ。昌未の血が欲しくて付き合ってるんじゃないの、違う?吸血鬼は処女の血を好むって聞いた事あるわ。」 「そんなつもりはない。それに昌未は処女ではないよ。この意味分かるだろう。」 「抱いたというわけね。それなら尚更よ。今後、昌未に会う事は許さないわ。それからこの家から出ていって貰うわ。」 「そんな指図は受けない。出て行く気も無い。」 「そう。それならこっちも考えあるわ。」 「まさか殺すなんて言うなよ。」 「そのまさかよ。でも、私が殺るわけじゃない。それに殺る事になっても貴方のせいに出来るわ。私の親友だから殺すなんてしないけど・・・。貴方の答え次第ね。黙って出て行くか、それとも二人共一緒に死ぬか。どっちにするの?」 レナンは選ぶ事はせず”出て行く”と二つ返事で決めた。 「そのかわり昌未に手を出すな。」と一言だけ言って出て行った。 レナンは兄の元へ。昌未は仕事場にも行けず。レナンが出て行った事も知らず気持ちは募る一方。 「あの男の事は忘れなさい。所詮無理なのよ。もっといい男紹介してあげるわ。人間のね・・・・。」 昌未は冷奈の事嫌いになり始めていた。レナンと引き離された事を根に持っている。
一方、レナンの方は案の定、カイルに散々言われた。裏切られたのだろうと――。 「違う。きっと兄さんと一緒の運命だよ。最後の手紙に結婚するって書いただろう。」 聞かれても何を言わないカイル。 「誰かの手によって引き離された・・・。そう考えれば辻褄が合うからな。まだ一人身でいる兄さん見てると。俺もそうだよ。昌未の友達に正体がバレて引き離された。それもよりによってその友達が筒井財閥のお嬢様・・・・。」 兄の前で愚痴を零す。 「お前、それでいいのか?」 「兄さんこそ人間の復讐はどうした?やらないのか?」 わざと話題をそらす。 「やってるさ。毎晩殺してる。だけど、思ったより手強くてな。それに人間が多過ぎる。一人じゃダメだ。レナンお前が居れば簡単なのにな。」 「俺はやらないよ。前にも一度言ったと思うけど。」 「お前わざと話題変えただろう。さっきの質問に答えてないぞ。」 「大体分かるだろう。俺が考えてる事ぐらい。取り返すに決まってる。」
兄弟共考える事は一緒。やる事は似ている。大切な人を守る気持ちは同じなのだから。 それに能力(ちから)を使えば、どんなに厳重な警備や防犯設備が相手でも簡単に侵入出来る。 冷奈はきっと取り返しに来るだろうなと予想し、二重三重の警備を強化する。 そして、レナンが来るまでの間、昌未の相手は拓哉達だった。冷奈が紹介した男とはSMAPやGLAYら、拓哉達なのだ。嫌いだと知ってるのに拓哉達を。冷奈は”それは偏見よ。昌未の良い所も分かれば好きになる”と。だけど、昌未にはその気は無かった。ずっと一緒に居る拓哉達は昌未への見方が変わる。特に拓哉とPENICILLINのハクエイ。この二人は昌未に惹かれ始めていた。 あれから一週間。昌未は屋敷の外へ出れない。相手にしてくれるのは拓哉かハクエイ。 レナンの事を忘れさせようとする。冷奈から話を聞いて知っている。違う話になっているが。昌未が振られた事になっているのだ。それで忘れさせようとする。勿論、彼の正体は知られていない。 レナンは今までやっていた仕事を辞めその日暮らし。昌未への気持ちは募る一方。我慢の限界を超えていた。やはり昌未が居なければ側にいなければ生きてく自信が無い。 昌未を取り戻す為に屋敷内に侵入したレナン。今、現在。昌未の側には拓哉が居る。 仕事を終えて食事して、それから昌未に会いに冷奈の屋敷へ。 長い長い夜になった―――。
厳重な警備の中、簡単に屋敷内に侵入したレナンは昌未の居所を探す。
広い屋敷内。地下へ通づる階段を発見したが、冷奈が昌未を地下に監禁するわけなく何処かの部屋に居ると分かる。人と擦れ違う度に身を隠し、昌未が居る部屋に着実に近づいていった。 昌未の弱い気を辿りながらその方向へ歩いて行くとある部屋の前に。 そして、その部屋に昌未が居るのを確信する。 鍵は三つ。全てぶち壊し扉を開けた。そこには昌未と何処かで見た事のある男が隣に居た。
昌未を見た途端、一気に気持ちは高まる。 ”ずっと逢いたかった”拓哉のことは気にせずレナンは”逢いたかった”と言い昌未の所へ駆け寄って抱き締めた。昌未も同じ気持ちなのだ。 「レナン!!」 お互い抱き締めあう。 拓哉はレナンの言葉に耳を疑う。抱き締めあっている二人を気に入らない拓哉は、二人を引き離し 「ちょっと待てよ。何が逢いたかっただ!!あんたが昌未を振ったんじゃないのか?!」 と、怒鳴りつける。 「振った覚えは無い。退いてくれ。」 そう言い拓哉を振り払い、昌未と一緒に逃げようとした。 「此処から逃げるんだ。」 昌未の手を取り逃げようと扉を開けたが、目の前には冷奈達が居た。 「この男始末して。」 冷奈の一声で腕っ節のいい男達が、レナンに飛び掛り銀の短剣で心臓を一突き。グサッと鈍い音とレナンはその場に倒れる。一瞬の内に片付いた。昌未と拓哉の目の前でレナンは殺された。抵抗さえ出来ず能力も使わないまま、あっさりと殺られたのだ。そして、レナンが殺されたと感じたカイル。 当然の如く、昌未は泣き崩れる。レナンの側に駆け寄り離れないでいた。拓哉は泣き崩れる昌未を見て不思議に思う。振られたんじゃないのか?それになんで殺す必要がある?次々と疑問が浮かび上がる。冷奈に聞きたい事ばかりだ。いったいどうなってるのか見当も付かない。 「レナン・・・・瞳あけて・・・・・。死んじゃいや。」 揺り起こしても何の反応もない。涙が零れる。顔は涙でグチャグチャ。レナンから引き離そうとするが、なかなか離れない。 「いやっ!!触らないで!!ずっと側にいるのぉ・・・・・・・・・。」 レナンを抱き寄せる。もう二度と離れたくないのだ。 そう言う昌未に構わず冷奈は、鎮静剤を打ち大人しくなってから別の部屋へ移した。 そして、冷奈は拓哉に何も無かった様にして”昌未の側にいてあげて”と言う。だが、拓哉は断る。それに・・・・・。 「昌未は振られたんじゃないのか?もう終わった恋だと冷奈、お前が言ったんだろう。それにあの男逢いたかったって言っていた。どう云う事なんだ?!お前の話と真実は違うんじゃないのか?本当の事言えよ!!」 問い詰めるが冷奈の返事は冷たかった。 「何も話すつもりは無いわ。木村君は昌未の相手をしてればいいのよ。」と言い返されたのだ。 納得のいかない拓哉。 カイルは弟を殺された恨みを晴らす為に冷奈の所へ向かう。 何も知らない冷奈は昌未の所へ行った。Bedに横たわっている昌未に話し掛けたけど無視される。 「昌未・・・・、いい加減諦めたらどうなの。元々付き合える相手じゃないと思うけど。」 冷奈の言葉にカチンときた昌未。 「なんでそんな事言えるの?!何も知らないくせに知ったような口聞かないで。なんで・・・・・なんで、殺したりなんかしたのよ・・・。」 言いたい事をぶつける。しばらく黙っていた冷奈。 「・・・・・吸血鬼だからよ。昌未の血を狙っていただけなのよ。」 レナンの正体をばらすが昌未は知っている。 「そんな事で殺したの?・・・・酷い!吸血鬼だって出逢った頃から知ってるわ・・・。それでもレナンの事本気で好きなの。レナンも同じ気持ちでいたのに。一緒になろうって言ってくれたの。それを冷奈が殺したのよ!」 そう昌未は冷奈を責める。 その事聞いた冷奈は呆然。正体を知っていたとは知らなかった。何も分かっていなかった冷奈。昌未の気持ちさえも。そうとは知らず酷い仕打ちをしてしまった事を後悔する。昌未の為だとやっていた事は全て仇になっていた。そして、話してる最中にカイルが屋敷内に侵入していた。 「出てって。顔も見たくない。」 昌未は冷たい言葉を浴びせた。冷奈は何も反論出来ずそのまま部屋から出て行った。 カイルは、屋敷内に入り込み人と擦れ違うと身を隠さず殺してしまう。そして、部屋へ戻る冷奈と擦れ違った。 「?!」振り返った冷奈は相手の男を見て 「貴方、此処で何してるの?!不法侵入で警察呼ぶわよ。」 そう怒鳴りつける。 「呼びたきゃ呼べよ。困るのはそっちじゃないのか。お前がした事を俺は知っている。」 「はっ・・・・何の事・・・・・・。」 「とぼけるな。ヴァンパイアを一人殺しただろう。」 その言葉に足が止まる。 「なんでその事知ってるの?」 「悪いな、ヴァンパイアは一人だけじゃないんだぜ。それもお前が殺したのは俺の弟だ。」 「!?」まさかその復讐・・・・・。脳裏に浮ぶ。 逃げようとしたがあっという間に捕まる。一瞬の出来事だった。まるでチュウに浮び風を切るような速さで冷奈の側に。そして、物凄い力で押さえられる。 「その通りさ。復讐しに来たのさ。お前もお前の家族も皆殺しだ。」 「家族には手を出さないで。私をやれば気が済むんでしょ。」 そういう風に言われカイルは冷奈を殺すのをやめた。 殺すのは簡単過ぎる。生きる苦しみを味わえばいいと―――。 「殺すのはやめてやる。その代り永遠に苦しむがいい。」 と、カイルは冷奈を闇の世界へ引き込んだ。 嫌がる冷奈に自分の血液を。手首を噛み切り、そのまま冷奈の口の中に数滴落とした。つまりはヴァンプの仲間にしたわけだ。 「!!!??? ・・・・・何を。」 冷奈は身体の中の異変を感じる。苦しくて堪らない。 「レナンを殺した償いをして貰おう。永遠に生きて苦しめ。レナンを殺した罪とそのせいで死んだ家族の分もな。それと喉の渇きを潤したかったら人間(ひと)を襲え。これから生きてくのに生き血は必要だ。」 カイルは何時かのように屋敷内にいる者全てを殺した。一人を除いては―――。 何故か命拾いした拓哉は帰る事に決め正面玄関へ行く途中、冷奈と会う。そして、何処からか火の手が上がり燃え始めていた。 「冷奈・・・・?!」 側に寄ると腕を掴まれた。 「何すんだよっ!」 「喉渇いた。血を頂戴。」と妙な事を言ってくる。 「何言ってるんだ?気が変にでもなったか?」 「そんなんじゃないわよ。」 「じゃ、なんなんだ?いったいどうなってるんだ?」 「全て話したらくれるわけ?」 「あぁ、いいよ。」 と、拓哉は軽軽しくOKしてしまう。 冷奈は昌未の事、レナンの事も此処であった事も全て話す。ヴァンパイアが居る事も。そして、自分も襲われ仲間になった事も話した。だが、拓哉は鼻で笑った。 「そんな馬鹿な事あるか?今の現代にヴァンパイアが居るとはな?!そんな作り話信じると思ってるのか、馬鹿にするのも大概にしろよ。」 その場から離れようとしたが、腕を掴んだまま離そうとしない。冷奈は我慢出来ず拓哉に襲い掛かった。 「悪いわね、ほんとに居るのよ。」 押さえつけて首筋に噛み付いた。 「くそっ、離せ!!やめろっ!!!!!」 拓哉は精一杯の力で冷奈を払いのけた。
―――きな臭い。やっと火事に気づいた拓哉らは逃げ出す。 「此処にいると燃え死ぬぞ。」 「分かってるわよ。」 だが、その前に昌未の事に気づいた。 「昌未は何処だ?!何処にいる?」 「あの男が連れて行ったわよ。」 「男・・・?」 「レナンの兄。」 とにかく二人は屋敷から出て行った。 屋敷は火に包まれ全焼する。冷奈は何もかも失い一人になる。ただ救いがあるとすれば昌未だけだ。たとえ嫌われていてもあの男・カイルから取り返そうと決める。
お金には困らなかった。両親が残した財産。そして、保険金などのお金は全て冷奈一人のもの。 今や財団のトップ。父が泣くなり後継ぎである冷奈が社長に就任。 誰も怪しむ者もいなくやりたい放題でもないが、好きな事は出来た。 内密に昌未の捜索を行っている。 拓哉は面倒な事はごめんだと身を引くが昌未への気持ちはまだ残っていた。 だが、どうしようも出来ない。相手は人間ではないから。それに冷奈から手を引くよう電話があった。 ハクエイは昌未の失踪で困惑する。冷奈に聞いても何も言わないからだ。今も気持ちは変わらず。
一方、昌未はカイルの側にいる。 一層の事昌未を殺そうとしたが出来なかった。昌未を見ていて昔の自分を思い出し何も出来なくなっていた。 辛い気持ちは同じだ。弟を失った悲しみ、愛する人を失った悲しみ。両方共同じだ――――。
あれから時は流れ三年の月日が経っていた。 昌未の消息は結局、つかめないまま。 それぞれ忘れている。何も無かった様に昌未の存在すら彼等の心には何も無かった。ただ一人、昌未の親友であった冷奈は決して忘れてはいない。昌未の事もそうだが、自分の人生を台無しにしたカイルの事も忘れていない。 ―――― 今まで何人犠牲にしただろうか ――――― 今の若さが永遠に保たれるのは嬉しい事だが、その為には生き血が必要なのだから。決して後ろめたさは無い。ただ罪の意識はあった。 昌未は何処で何をしてるのだろうか。あの男と一緒なのか?生きてる事すら分からない。何一つ情報は入ってこない。 死んでなきゃいい――― 生きてて欲しい事を祈るのみだった。 ただ一つ言える事は日本に居ないだ。隅から隅まで探したが見つからない。それとも見過ごしているのか、探し方が悪いのか、どちらとも言えるが日本に昌未は居ないと気づいた冷奈。多分あの男と何処かの国で一緒にいる、と考えていた。 それで国外の捜索も始めていた。つい半年の前の事だ。まだ朗報は届かない。 ――― 何処に居る? ―――
カイルは故郷へ戻っていた。 戻りたくなかったが仕方なく。故郷はエンジバラ。ロンドンから北方面の汽車に乗って行けばエンジバラに着く。 都会とは違い遠い静かな所。のんびりした街。人も少なく華やかさはあまり無い。 エンジバラの海沿いのある一軒家。カイルと昌未、二人だけで暮らしていた。 両親はカイルが16の時に事故で亡くなっている。
結局、昌未の捜索は断念せざる終えなかった。この広い海外を何処をどう探せば昌未を見つけ出す事が出来る? それもお金も馬鹿にならない。何処に居るのかも分からない。アメリカなのかそれともヨーロッパ、ソ連、アジア?何の手かがりも無いのだから。広い国々を探すのは時間もかかるしお金も必要になるから・・・・。捜索は打ち切り冷奈は、残りの人生を生きる事にした。永遠に死なないこの人生を。 そして、昌未は恋人を失ったショックが大きく、まるで人形のようになってしまう。 そういうふうになってしまった昌未の世話をしながら、カイルは生き血を求め生活している。ひっそりと・・・・・。
エンジバラで一生を終える。カイルの側で。カイルの腕の中で―――――。
THE・END
戻る
|