なごみ組曲

2005年3月24日 (木) なごみ組曲 in my Hakodate.01
 3月20日、私は夜行バスで函館へ行きました。
 朝5時に函館駅前に着きました。バスから一歩外に出ると、かすかに海の香りがしました。
 その瞬間、心が軽くなったような気がしました。今までの重苦しい荷物から解放されたような感じです。そして、とてもゆったりとした優しい気持ちになりました。「ここにあのひとがいれば、どんなに…」と思いましたが、実際には一人でありますので、私は、その「あのひと」が隣で一緒に歩いていることを想像(妄想)しながらベイエリアの方へ歩き、坂を上りました。いわゆる「函館らしい」観光コースです。
 ところが、私のように函館に3年間住んでいた人間としましては、それだけでは物足りないと思いまして、通常は坂の下側の市電通りに沿って歩く所を、私は坂の上側の細い道を歩きました。実際、これは結構絵になるのです。そこにいるものすべてが全く芸術であるのです。つまり、その景色が絵画的であり、その音が音楽的であり、その動きが映画的であり、それらを包括している雰囲気が文学的であるのです。
 そんな事を思いながら船見坂を上っていくと、墓地がありました。外人墓地です。といっても半分以上は日本人の墓です。ただ、外国の人の墓は普段見かける四角い墓とは違っていて、ある意味面白いです。さまざまな文化や風習を持った人々が同じ場所で海を見下ろしながら眠っている、これって一種の国際交流なのではないでしょうか。
 ※船見坂(ふなみざか)…函館西部地区(函館山周辺)にある約20の坂の内、最も西側に位置する。
2005年3月28日 (月) なごみ組曲 in my Hakodate.02
 で、普通の観光コースでは外人墓地で引き返して「異国情緒あふれる函館」の観光を続けるのですが、私はただの観光客では無いので、その奥の方へ行ってみました。3年間では分からなかったある謎を確かめたかったのです。
 ある謎というのは「実は函館山って一周できるんじゃないの?」ということです。地図上では、道が途中で切れているので不可能、ということになっているのですが、道の切れた先に海水浴のできる場所があるらしいのです。それなら何とか行けるはずだと思ったのです。
 家の屋根より高い所から急な坂道を降り、密集した民家の間を道なりに歩きました。海好きの私は、少しでも海の近くを通る道を選びました。
 ここにもしあのひとがいたら
「寒くないか?」
「寒くないよ。あなたがそばにいるから。」
「そうか…愛してるよ。」
みたいな言葉を交わしながら、防波堤かなんかに一緒に座って、出来れば何か同じものを飲食しつつ、函館湾を往来する船とあのひとの横顔を同時に眺めることが出来るのだろうな…
 などと考えたのですが、一人で歩くと意外と長いのです。そして、しばらく歩いていくと柵がありました。「この先は危険ですので立ち入りを禁止します。」といった意味の看板も一緒にありました。辺りを見回してみると鳥獣保護区を示す看板が立っていました。私は観光スポットとして知名度の高い函館山が実はそういう所なんだと知り、思わず驚いてしまいました。
 そこでその柵なのですが、人ひとり分通り抜けられるだけの隙間が開いていました…。
 ※函館山…標高334メートル。函館のランドマーク的存在。函館近辺(半径約20キロメートル以内)ならばどこからでも見える…はず。ちなみに東京タワーは高さ333メートル。ですが、「東京タワーとほぼ同じ高さからの眺め」ではありません、念のため。
2005年4月9日 (土) なごみ組曲 in my Hakodate.03
 柵には人ひとり分通り抜けられるだけの隙間が開いていました。従って、そこから柵の向こう側に行くことができるのですが、私は一応これ以上は進まないでおこうと思いました。科学の目ですべてをさらすことが、なんだかいけないことのような気がしたのです。謎は謎のままであった方が「自然な」気がしたのです。
(実際、函館山を一周する事は不可能なのです。あの道の先、山の反対側に崖がありますから。これはこの後自分の目で確かめることになりました。すぐに分かる場所です。)
 そういうわけで、元来た道から少し外れ、海岸に沿って歩いていくと、腹が空いてきました。そこで朝食をとろうと考え、駅前の朝市へ行くことにしました。
 函館といえばイカが有名なのですが、朝市にはカニを売っている店の方が明らかに多かったです。で、ふらふら歩いていると声を掛けられます。
「兄さん、カニはどうだい?」
と。場所によっては試食させてもらえます。店の人はよくしゃべります。それも当然でしょう、少しでも色々な人に商品を売りたいのですから。こんなことも聞かれました。
「出身はどこだい?」
「旭川の方から来ました。」
…あぁ、旅という非日常空間においては嘘もつけてしまうのですね。しかし、ややためらいがあったのでしょう、かなり微妙な嘘になってしまいました。せめて「東京から来ました」くらいの嘘がつければもっと良かったのですが…。
 しかし、店の人にとって、それはほとんどどうでもいいことなのです。
「地方発送もできるから。どうだい、お土産に買ってくれないかい?」
要するにそういうことなのです。彼らはいかにして売り上げ、つまり利潤を上げるかということを第一に考えているのですから。
 そんな朝市で朝食としてイカ刺し定食を十分に食べてから函館駅に行きました。
 ※朝市…あの有名な函館朝市のこと。函館駅西口のほんとに目の前にある、やや雑然とした感じの場所。AM6:00からPM1:00あたりまでなら大丈夫。地元の人よりも観光客の方が多いと思われる。ちなみに、この辺りが「ベイエリア」と呼ばれている。お土産に困ったらベイエリア、間違いない。ただし、何か食べようとしたら最低でも硬貨以外に札を1枚は持ってないといけない、気をつけろ。