納骨堂かガンガーか。



                              NORIKO 高木  NAYAK

「死んだらどの方法で弔ってもらいますか?」
 そう聞かれたことがある。父の仕事の関係で、あるお寺を訪ねたときの住職さんからの質問だ。私は上手く答えられなかった。なぜなら、私の両親や祖父母は仏教徒で私も子供の頃から仏壇に手を合わせる事を習っていた。親戚の法事となれば当然お寺にでかける。ところが結婚して変化が起こった。私の夫はヒンズー教徒なのだ。
挙式はヒンズー寺院で行った。二人で建てたマイホームはインドにある。お寺の住職さんに質問されたのはインドへ越して6年目。日本へ一時帰国していた時のことだった。
 人々が神頼みしすぎるという点を除けば、私はヒンズーの宗教観が好きだ。ヒンズー教徒が捧げる神様への愛は素敵だ。
ある時はTVのヒーロー、ある時は昔話の偉い人、ポストカード屋に行けばアイドルのカードとともに神様カードも並んでいる。
インドには少数派ながら回教徒やクリスチャンもいる。なのにアイドル扱いが許されているのはヒンズーの神様だけ。
アラーやキリストの年賀状はまだ見たことがない。

 ところで私は民族音楽や民族舞踊が好きだ。それと同じ感覚でエキゾチックなヒンズー教が好みにあっているようである。
 では私はしっかりとヒンズーを信仰しているだろうか?ヒンズー教徒になったのだろうか?やはり、好きであることと信仰を実践することは別である。
以前は私も、他の家の奥さん達と同じように、毎日陽が沈む頃になると手足を洗ってタクロ(祭壇)に線香を上げていた。でも、やめた。
ヒンズー教にはひとつ大きな不満がある。月のものが訪れた女性は7日間、線香を上げてはいけない、寺院に行ってはいけない、プジャ(儀式や供養)に参加してえはいけない、のだ。
つまり「お前は今汚れているから神様に触れるな」というわけだ。


女の生理を不浄扱いするとはなんてことだ。女に生理がなければ男は生まれて来なかった。どんなに徳の高い高僧だって、女から生まてきたくせに。生理は敬われこそすれ軽蔑される筋合いのないものなのだ。この古代の男達が作り出したであろう戒律のおかげで私は線香を上げるのがイヤになった。
だって月に7日線香を上げない日があれば、それが私の不浄の日だと皆に宣伝しているようなものなのだ。

 昨年は大きなプジャを計画した時には、7人ものポンディ・ジー(ヒンズー僧)や貸しテントの手配を済ませ、供養に必要な用具や供物も用意もできていたのに、寸前に私が不浄になったため、プジャは延期となった。
皆に「なぜ、延期になったのだ」と問われて私は答えに困った。殆どの供物は使いものにならなくなった。「こんな事ならヒンズー教は信仰しない!」、と私が思ってしまってもバチはあたらないだろう。中途半端に首を突っ込むからいけない。
傍観者でいれば、ヒンズーの人々に失礼もなくて良いと思う。


 そういうことで私はヒンズー教徒に成りきってはいない。でも、いつかの住職さんの質問には、今ならはっきりと答えられる。
 私が死んだら、ヒンズー式に弔ってもらいたい。信仰はしていないのに死んだときには...なんてご都合主義であろうか。
私の中には、すでに自分の葬儀のプランが立てられている。

 きっかけは昨年の大きなプジャ。この時私は若き頃ロックバンドのライブで汗まみれになって飛び跳ねていたのと同じ感動と満足感を得ることができた。
ポンディ・ジー(ヒンズー僧)のカイラースさんがソウルフルだったのだ。これまで幾つかのプジャを行ってきたが、日本の仏教の法事が足がしびれて辛いだけであるのと同様、プジャもただ退屈なだけだった。

 でも、カイラースさんのプジャは違う。彼の唱えるマントラ(お経、真言)には魂がある。スティービー・ワンダーをソウルシンガーと呼ぶなら、カイラースさんはソウルマントリストだ。
カイラースさんは年の頃なら30代後半。顔は真田広之を丸顔にして顎髭で飾った感じ。声は高音の時細川たかし系となる。カイラースさんはマントラの達人で、一般のポンディ・ジーが知らないマントラも唱える事ができる。
カイラースさんのマントラは聴く人の心を揺さぶり感動を与える。


そう、私の生涯はカイラースさんのマントラライブで締めくくってもらいたいのだ。カイラースさんは私よりも少し年上だから、私の最後の時は彼はこの世にいないことも考えられる。
だから私はカイラースさんのようなアーティスティックなヒンズー僧が次々に育つことを願うしできれば間に合う程度に自分の人生を早めに切り上げたいとも思う。
また、火葬の後の私の遺骨。これもヒンズー式に処理して欲しい。
仏教式なら骨のアパートとも言える納骨堂行きは免れない。それよりも青空の下、ガンガー(ガンジス河)に流される方が魂がいつまでもハツラツとしていられるような気がする。
長男(5歳)には、今のうち私の葬儀方法を遺言しておかねばなるまい。




◎コナラクにホームステイしてみませんか?!

旅行とはひと味違うインド体験をインド家庭の中で味わってみませんか?
 目的をもってインドに滞在される方(インド古典舞踊、ヨガ、メディテーション、ヒンズー語、等を習う)、 インド文化を本場インドで習得したい方にもお薦めです。
 また、特に目的は無いけれどホテル暮らし以外な体験がしてみたい方など、目的は人様々です。
そんな方は1週間とか、短いお試しホームスティでもかまいません。

奥さんが日本人だから安心。旅のことなどいろいろ相談にのってくれます。
英語の通じるダンナさまとちびチャン2人も待っています!

◎オリッサ州コナラクについて

世界遺産「スーリヤ(太陽)寺院」が見所の静かな観光地。
スーリヤ寺院から東へ3Km行くと「チャンドラバーガー」といわれるビーチが広がって います。
チャンドラバーガーはガンジス河の支流「クショバッドラ河」
がベンガル湾に合流するところ。ヒンズー教の聖地。
時期により海水で沐浴し日の出に拝む信者の姿がみられます。
12月と2月のダンスフェスティバルもみものです。


詳しくは次のページへどうぞ。
次のコラム「ハビットの物語」を読む


Copyright 2000-2001 HTML KORAMU
All Rights Reserved.

NORIKOさんのコラムは

●☆リアルインド☆ インド安宿建築日記

メールマガジン・アジアの旅 ・インドからのメール

●アイラブインド インド的テキスト にもあります。



matatabi@jcom.home.ne.jp