臨床研修病院の選び方〜大学病院・市中病院での研修の経験から〜

小生、出身大学の医局に所属し、1年間の大学病院での研修期間をへて、医局派遣の形で、総合病院にて研修しております。04年からマッチング制度が開始され、それに合わせて勤務先の病院にて新研修医の先生方と共に働かせていただいております。大学病院、市中病院の研修を比較し、後輩・見学に来た学生さんから質問されますので、研修医先を選ぶ一つの参考になれば、幸いです。

 正直言って大学病院の大多数のco-medicalに対していい印象は持っていません。中には本当にいい人・優秀な人もいるのも事実です。

 自分の専門を決めて研修先を決めることもいいのですが、BSL(ポリクリ)・教科書で学ぶことと仕事で働くことは大きく異なります。医者2-3年目が自分の専攻科を変えたりする人が多い学年であり、実際自分がその環境におかれ、僕自身が来年のことを迷っています。将来の選択枝としていろいろ残しておいた方がいいと思います。


1.同期の研修医が5名以上いること
 正直言って絶対条件だと思います。自分がしっかりしていれば、何とでもなると思える様な強い人はいいのですが、大多数の人は周囲に流されたり、他者への依存があると思います。複数同期の研修医がいれば、困った時の相談役になったり、気晴らしに行く時の友達になったり、どうしても休みたい時に代行をお願いしたり、いろいろいい面があります。それに、1年目で困ること・失敗することはあまり変わらないし、失敗を共有することによってお互いに成長できるはずです。それに、学年100人いて全員と合わせられる、全ての人が好きという人はいいのですが、それ以外の極普通の人は合わない人がいて当然だと思います。あまりにも自己中・無礼な同期がいたとしても、多数の同期がいれば、相手にしなければいいのですが、少数であるとそれが困難となります。幸い、自分が所属している医局の同期は仲が良くて、県内の関連病院へ転勤後も年に3-4回集まって飲みに行ったりします。このように仲がいいと、非常に仕事がしやすいです。また、現在の病院でも同期も含めて、1・2年生の先生とも仲が良く、テニス部出身の先生方と共に、週末テニスをしたりして過ごしています。仕事以外においても、年齢が近い人達が多いとQOMLの向上ができます。 

2.勉強会の体制
 これは、はっきり言ってどうでもいいと思います。与えられなければ、何もできないというのはあまりにも寂しいですよね。2人いれば、勉強会は可能です。上級医の先生にも頼めば時間的に余裕があれば、のってきてくれるのではないでしょうか。国試対策のところにも記載しましたが、知識をシェアすることにより、お互いを成長しあう環境作りが重要です。そういう意味でも、上記の通り、複数研修医がいれば、のってきてくれる同期・ちょっと上の先生もいるでしょう。

3.症例数
 ある程度は欲しいと思います。数持つとそれなりの経験できるし、終末期を迎える人を何人かみると後どのくらいの生命予後があるかも予測でき、家族に対しても落ち着いて対応できます。教科書で勉強するよりも、一度経験すると記憶が鮮明になります。数が多すぎもある程度問題あると思います。最初のうちは5人程度が理想かなぁと思います。要領がいい人はいいですけど、右も左も分からない状態(1年目の最初)の時は5人でいっぱいいっぱいでした。(大学病院で雑用・カンファが山ほどあったこともあります。市中病院でも1年目7人程度くらいまでが丁度よさそうです。)3年目の現在は大体10人程度を持って7時ごろ仕事が終わると言った状況です。

4.大学病院と市中病院
 大学病院のみでの研修は無くなったようですけど、大学病院と市中病院では、診る症例や夜間外来の種類・数・質も結構異なります。大学病院では夜間救急外来は寝当直とほぼ同等でしたが、市中病院の夜間当直は、コンビニ外来なので、数日前から風邪ひいたという人が夜間救急外来にやってきて、その上待たされたとか文句を言う外来です。救急外来なのだから、緊急的に診ないといけない患者が優先なのですが・・・・・。ただ、一般的な疾患を数多くみれる為、内科に行かない人が内科症例を多く経験できると言う意味で有意義だと思います。かたや、大学病院は上級医への報告が主になるため、自分で判断、決定を行うこと不足しがちだと思います。
 大きく違うのがco-medicalです。正直言って大学病院のco-medicalは働きません。医者の免許がないとできないことをすることが我々の責務ですが、大学病院では、点滴・採血等々はっきり言って、医者が本当にすべきかどうか疑問な事を、安価な労働力というだけで、働かされています。CT・MRIも放射線技師が定時の5時帰宅したいためだけに、検査の進みが遅く、非常に横柄な印象があります。医療消費者である患者のことを真剣に考えるようになり、ちゃんと労働基準法が適応され、時間外勤務が正当に評価されれば、看護婦・看護助手・放射線技師・検査技師の仕事になるはずですが、現状では当分の間は無理でしょう。今後、研修医と患者共に多数永眠しないと変わらないかもしれません。
 大学病院のいいことは、何といっても上級医が多数いることです。内科に進もうとする人が内科としての考え方を学ぶにはいい所だと思います。麻生飯塚病院の様に、presentationの練習も充分にしてくれる市中病院もありますが、多くの病院ではそれまでのバックアップがあるかどうかは少し疑問があります。

5.立地条件
 地元を離れていた人が地元に帰ってくるということは良くあると思います。ただ、小生が研修医になった時と異なり、市中病院で研修を始めることが当たり前になってきたため、短期間だけ住んでみたい所で研修するのも一つの手だと思います。気晴らしに行く所が近くにあるのも重要だと思います。ただ、田舎モノの小生、生まれ育った県から一度も出ていないのですが、都市部の病院を見学しに行って、居住環境の違いに戸惑いを感じました。都市部は金持ちが貧乏人から搾取しているのだなと・・・・。レジデントレジデントハウスみたいな寮があれば、また話は変わってくるかもしれませんが、現状の生活に慣れてしまって、今更ユニットバスには戻れません・・・・。

6.上級医の年齢・数
 3-4年目の先生がある程度いた方が話しやすくていいのかもと思います。3年目の今も1年目の先生と遊びに行ったり、飲みにいったり、仲良くさせていただいていると思います。直接のオーベンに聞きたいんだけど、基本的だしなぁと遠慮したくなることでも、我々くらいの学年だと、1年目の時に困ったことなどをまだ覚えていて、知らないことを当然だと捕らえられるため、接しやすいと思いますが、僕が勝手に勘違いしてるかもしれません。
 上級医が少なければ、自分でしないといけないことが多くなるので、独立心が鍛えられ、手技的なことも多く出来るようになると思います。ただ、上級医がたくさんいれば、使えない上級医がいたとしても、他の上級医に相談できます。残念ながら、使えない上級医は一日の長があったとしても、使えないことに変わりありません。ある程度見切ることも、患者・自分を守るためにも重要です。

7.どの程度まかされるのか
 ボクが夜間外来の上級医となる時は、非常に混んでいる時は除いて、重症者を除いた一部の外来患者の検査・治療方針まで考えてもらう様にしてもらっています。上級医の立場とすると、自分で診て、帰すのが一番楽ですけど、自分で考える癖をつけるために、一つ一つの症例を丁寧に診てもらうように心がけています。田舎の病院であればあるほど、任されることが多くなります。現在勤務させていただいている病院はルート留置を看護婦さんがしてくれないため、とある科では、点滴当番が週に3回もあって、それ以外の手技的なことをする機会はあまりなく、正直言って3年目にもなって何をしてるのかなぁと他の病院に行った同期と比較してblueになった時期もありました。大規模な病院は3年目以降に赴任するといいのかもしれません。

8.雑用の多さ
 ハッキリ言って採血・ルート留置は看護婦の仕事です。経験豊富な看護婦さんが取れないルート・採血は本当に不可能なはずです(そうなった際に中心静脈lineの留置・動脈採血で対応すべきでしょう)。ただ、病院によっては、それが研修医を含めた医者に押し付けられることがあります。採血・ルート留置に対して異様に執着してしたがる学生さんがたまにいますけど、正直言って無用だと思います。学生時代に1回しかルート確保したことありませんけど、研修医になってそれで他の研修医と比較して困ったことはありませんでした。手先が相当不器用な人は、何回か駆血帯とか人工血管みたいなもので練習すればいいと思います。緊急の場合であれば、場所にこだわる必要無いので、肘静脈(正中)にルート確保すればいいので、とれないことはほとんど無いでしょうし、本当の緊急事態であれば、とりあえず大腿静脈に18Gで ルート確保することもありだとおもいます。

9.病院同士の連携 VHJ等
 まずは、初期研修病院を選ぶことになるのですが、その後の後期研修病院のことも考慮する必要性があります。connectionが大切なため、研修病院にいる先生方のconnectionが次の病院を受験する時に、推薦状としての重さが変わってきます。
 学生のみなさんは、まずご存じないでしょうが、Voluntary Hospital of Japanという集まりがあり、全国にある私立の病院の病院長や事務職をはじめとする交流組織があります。実際、NICUや小児科・救急科の研修が一施設では困難であった場合に、そのnetworkを生かして、交流をしていることもあります。後期研修病院の選択にあたって、その様なものが好都合な場合もあります。
 
10.医局制度
 上記の様に自分で後期研修病院を探すのが一つの手段ですが、初期研修終了後各大学の医局に入局と言う手段があります。医局の利点はVHJのnetworkよりも大きなnetworkにより、より専門化された研修や研究を行うことが可能です。嫌な上司がいたとしても2年程度で異動となるため、その期間のみ我慢すればいいわけです。田舎出身の小生としては、地方病院は実際医局派遣の医師により成り立っているため、医局制度が崩壊し、地方病院の深刻な医師不足が発生しないか危惧しています。医局制度があれば、都市部出身の医師であっても、1−2年の我慢として赴任してくださっていることも現状ですし。

11.研修病院ガイドブック
聞き書き 卒後臨床研修ニューヴィジョン―必修化時代の病院の選び方
 :マッチング施行以前よりスーパーローテーションの老舗の存在の沖縄県立中部病院、聖路加国際病院、亀田総合病院の3病院を例に、それぞれの病院の研修の特徴や、卒後臨床研修の問題点を、指導医や研修医の声を基にまとめている本。
臨床研修の現在―全国25病院医師研修の実際
 :学生時代から医学生・医師用のMLを作り上げたり、活動的な東海大学卒の市村氏の著書。市村氏自身が研修医を1年もしないうちに、臨床医から転身されているようなので、視点自体がこれから研修医として苦労・苦悩していくみなさんと相容れるかが疑問に残ります。