| くも膜下出血になったら |
| どんなに注意していても、不幸にして、発作に襲われることはある。 くも膜下出血を発症したときに一番大切なことは、 火事の時に初期消火が大切であるのと同じように、その初期の処置だと思う。 私がこうして後遺症もなく生還できたのは、そこにあったと思うのだ。 では細かく一つ一つどこが良かったのかを見ていきたい。 まず一番最初、時刻は午後3時10分頃。私は叔父とテーブルを挟んでいすに腰掛けて談笑していた。 大声で笑った瞬間、突然頭に異変を感じた。 と同時に、飛行機やエレベーターに乗ったときのような圧迫感を耳に感じ、 耳が遠くなり、目の前の景色が縮んで見えた。その時痛みをほんの少し感じた。 しかし、意識ははっきりしていた。「くも膜下出血」というと必ずと言っていいほど 「バットで殴られたような激しい痛みに突然襲われる」といわれている。 しかし私にはそんな痛みはなかった。 父が脳卒中(多分くも膜下出血だったのだと思うのだが)の発作を起こしたときも 一番最初は「痛い!」という言葉ではなく、銀行の書類を書いていたとき、 冷静に意識もはっきりと 「ちょっと、代わりにここ書いてくれない?」 と母に向かって言ったそうだ。テレビで見た後遺症が残ったものの命が助かった人がやはり、 何かの会場に行く途中、一瞬頭におかしいものを感じたが、そのまま階段を上って、 会場について話をしている途中に突然倒れたといっていた。 インターネットで調べた何件かも、激しい痛みの前に何かを感じている。 つまり、脳動脈瘤が破裂した瞬間は例え、 かなり大きな出血でも最初から強い痛みは感じないこともあるのではないだろうか? 又、最初から強い痛みを感じた場合でも、いきなり、卒倒してしまう (私は頭の血管が切れたらバタッと倒れてしまうのだと思っていた)のではないことも多い。 痛みを感じつつ、いろいろなことをしてその結果倒れてしまう例がたくさんあった。 頭の中で何かが起こった感じがあると非常にあわてる。 「耳が遠くなって、おかしい!」 と叔父に訴えたとき、その対応が良かった!「そのまま動かない方がいいよ」 と落ち着いて言ったこの言葉で私はあわてて立ち上がったりしなかった。 普通なら、ただならぬ様子を見るとまわりも 「大丈夫?しっかりして!」 などと言って身体を揺すったり、母が父にしたようにすぐに歩かせて きちんとした寝床に寝かせようとしたりするだろう。 第一は患者を落ち着かせ、決して動かしてはいけない。 (例えしっかりしているように見えても…)どうしても自ら動かなければならない場合も最小限にゆっくりと動く。 (もちろん吐いたものが喉に詰まったりして呼吸が出来ないなどということなら気道確保も必要だ)である。 少ししても全く変わらないので、医者を呼ぼうということになった。 そこで近所の医院に電話する。この対応は良くなかった。 この時幸い、休診日だったのか医者が電話にでなかったが、もし電話にでていて 「歩けるようなら来てください」 などと言われたら、歩いていこうとしたかもしれない。 それほど意識もしっかりしていたし、動けないなどという自覚はなかった。 近所の医者などに連絡するより、救急車を呼ぶことである。 第二は、良くならないようなら救急車を呼ぶ。である。 午後3時29分に救急車を要請した。 次に、叔父が 「寝かせた方がいいかな?」と言って隣の部屋に布団を敷こうとしたが、 「動かしちゃダメ!」と母が言ってその場に布団を敷いてそっと寝かせた。 ほんの少し体位を動かしただけなのに、私はもどした。 (この場合、無理に寝かせる必要はなく、一番楽な姿勢で待つのがよい。 もどしたりする時にはかえって座っていた方がよいこともあるそうだ。 寝かせる場合にはもどしたもので窒息しないよう横向きに寝かせた方がよい) 救急車が到着すると、症状も自ら答えられた。 呼吸数は18、脈拍は60、全く正常であった。救急隊はすぐに、酸素吸入をして保温のため、毛布を掛けた。 「希望する病院があるか?」 と尋ねられたので、以前卵巣膿腫の手術をした病院を言った。この対応も良くなかった。 私はこの病院に通院していたわけでもなく、動脈瘤手術の実績を知っていたわけでもない。 以前、手術したときの対応も結果も非常に良かったので言ったのだ。 担架で救急車に乗せられるときも、玄関の段差にも少しでも身体が傾いたりしないように、 注意して運んでくれ、本当に動きは最小限であった。 その病院には午後4時5分についた。着いたとき、医師が外まで出てきて私を診て 「くも膜下出血の疑いがあるが、今CTがふさがっている。すぐに検査ができないので、他にまわった方がいい」 と言った。これは私にとっては幸いだった。 救急隊の人が脳神経外科の実績のある病院を探してくれ、連絡を取ってくれたのだ。 第三に、救急車で行く病院は、通院している病院があるとか、 近くで手術実績のある病院を知っている場合以外は、救急隊の人に 「この症状で一番良いと思われる病院にお願いします」 と言って探してもらうことだ。 大きな病院でもそれぞれ特別、力を入れて専門的な医師がそろっている科がある。 新聞で知ったことだが、脳動脈瘤の手術は意外に少なく年間30例に達していない病院が8割だそうだ。 大学病院など高度医療を提供する「特定機能病院」でも6割がこの数に至っていないという。 脳神経外科医でも一度も脳動脈瘤手術を経験したことがない人も多いということになる。 病院については救急隊員の方がよく知っている。 午後4時28分、K大学病院に到着した。 頭に異変を感じてから病院に到着するまで、約1時間20分。 私はその間、一歩も歩くことなく絶対安静の状態でいたのである。 K大学病院はくも膜下出血については、手術数も豊富で、研究者の揃った病院である。 私を診て手術してくれたF医師も経験豊富で優秀な医師であった。 病院の入口までの記憶ははっきりとある。 くも膜下出血の回復状態は病院に着いたときの状態がよいほどよいといわれる。 発症した際に「昔は動かしてはいけないといわれたが、今ではすぐに病院に運ぶこと」とよく言われるが、 病院に運ぶまでどんなに意識がはっきりしていてもなるべく体を動かさず、 安静状態を保つことが何より大切であると思うのだ。 その間のことは医師は関わることはできないのだから、 一人一人が、急な場合の処置の仕方をしっかり覚えておく必要がある。 確かにまだ最初のひどい痛みが起こる前に救急車を要請するべきかは難しいと思うが、 突然頭の中で何かあったと感じた時には、 身内に脳卒中になった人がいたり、血圧が高めだとか、脳動脈瘤を持っていることがわかっている人は、 何ともなければ喜べばいいだけなのだから、用心しすぎることはないと思う。 躊躇せずに救急車で運んでもらえばよい。 以上が私の経験から発症したとき、どうしたらいいかである。 |
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