「反日教育」の成果を実証した中国「寸劇騒動」 週刊新潮 2003/11/6 (11月13日号) 10月29日、中国西安市の西北大学文化祭で邦人留学生3人が演じた寸劇に端を発した反日デモ。学生による数百人規模で始まったものが、瞬く間に市民も巻き込み数千人規模に拡大した。この過剰反応、江沢民前体制化での「反日教育」の成果に他ならない。 西安留学生事件が突きつけた「真実の時」 中国の西安で起きた反日の騒ぎは日中関係の「真実の時」の到来を早めるという点で貴重である。 こんなことを書くと、なにを血迷ったことを、と思われるかも知れない。だが中国でこと日本や日本人が対象となると、無法で理不尽なことがごく当然のようにまかりとおるという現実を日本側が認知するためには、この事件は絶好の機会を提供したのである。 この10月29日、西安市の西北大学での文化祭で日本人留学生3人と教師一人が演じたという寸劇の下品さ、愚かさは言うをまたない。大学の文化祭で留学生が胸に赤いブラジャーをつけ、下半身に紙コップをあてて、踊り回り、ブラジャーから紙クズを取り出して、観客席にまく、という行為は、もし中国側の報道どおりならば、想像しただけでも恥ずかしくなる。 日本の大学内で、日本人同士という状況だとしても、一定の許容範囲を超えたパフォーマンスだろう。まして異文化の異民族に向かってはとってはならない言動だったといえよう。この点での中国側の報道を信用しての日本側学生らの非は強調しておきたい。 しかしそれでもなお中国側の反応は常軌を逸していた。 西北大学の中国人学生たちは寸劇を演じた日本人学生らを「中国を侮辱した」として糾弾し、留学生寮に押しかけ、他の日本人留学生たちをつるしあげにし、うち二人を殴りつけ、負傷させた。日本人学生たちは謝罪文を書いて、中国側に手渡した。だが中国人学生たちはさらに西安の市民までを巻きこんで、数千人規模の反日デモを三日連続して実行した。北京では中国外務省の領事局長が日本大使館の公使を呼びつけ、日本人が中国の風習、習慣を守るよう要求したという。 以上のような中国側の対応が正常といえようか。いかに下品でも野卑でも、たかが大学内の学生の寸劇である。しかも日本人学生の側に中国側を侮辱したり、非難する意図がないことも明白だった。禁煙席でタバコを吸った若者を当局がフクロだたきにして、懲役に処す、しかもその学生の家庭や郷里までを「悪」として糾弾する、という極端な過剰反応なのである。 日本側ではみな一様に過剰反応を認めながらも、そうした反応が起きてもやむをえないとするような「解説」がいくつか語られた。 「西安は沿岸部より経済格差がずっと大きい内陸、山間部の不満を象徴する地域で、中央政府への不満を『反日』に代償させて、ぶちまけた」 「日本側では珠海での大規模売春事件のように中国への無神経な言動が多くなっていたため、中国側の対日感情が悪化していたのだ」 「日本側では小泉首相の靖国神社参拝や日本在住の中国人による犯罪増加への非難など中国の国民感情を害する現象が起きていたため、今回のような反日デモが起きたのだ」 だが私はこの種の「解説」には同意しない。この種の背景説明にはそれなりにいくらかの真実はあるだろう。しかし、そうした「解説」だけで愚かな日本人留学生数人の稚戯が大学全体をあげて、さらには大都市をあげての抗議デモにつながることは説明できない。ましてその種の「解説」は留学生のばかげたパフォーマンスと中国の政府の公式抗議という事態とを結びつける因果関係を説明できはしない。 ではなぜ日本人留学生数人のおそらく善意の愚かな言動が日本や日本国民の全体に対する糾弾にまでいっきょにエスカレートしてしまうのか。日本側の私たちはその真の理由を考えねばならない。今回の反日デモがたとえ中国国民の中国政府に対する不満ばらしだったとしても、なぜそこで日本がスケープゴートになるのか。この問いへの答えはいくつかの要因があげられる。 まず第一には、中国国民の間に日本や日本人は嫌いな対象、嫌うべき存在だとする感情が浸透しきっていることである。その原因は日本の戦時中の軍事行動そのものにもあるだろうが、それより大きいファクターは現在までの一貫して徹底した反日教育なのだ。反日政治宣伝でもある。その結果として現代の中国においてもっとも忌避される外国というのは疑いもなく日本であり、もっとも嫌悪される外国人というのはまちがいなく日本人なのである。 第二には、中国国民の間には日ごろの不満をぶつける相手、たたく相手が日本であれば、共産党も政府もその不満の表明には決してひどい懲罰など加えない、むしろ黙認し、場合によっては奨励する、という意識が浸透しきっていることである。政府要人の汚職への抗議デモを実行すれば、懲罰を受ける。アメリカをたたく抗議集会を開いても、弾圧されるだろう。だが、日本をたたき、ののしるデモならば当局は許してくれる。だから気に入らない対象があってそれに不満をぶつけるときには「日本」をそこに持ち出してくればよい、ということになる。 こうした「反日」の土壌がいまの中国にはすっかり広がりきっているという現実が今度の西安での事件で裏づけられたのだといえる。日本は嫌われている。軽蔑されている。軽視されている。中国では他のどの国よりも、どの民族よりも、日本と日本人は不人気な存在なのだ。 これまでの日本の対中アプローチは官でも民でもこの現実を正面から認めようとせず、「日中友好」の空疎な標語を優先させ、いやな現実から顔をそむけてきた。だが今度の西安事件は日本側にこの現実を認めることを正面から迫ったといえよう。この現実をしっかりと認める時こそが「真実の時」なのだ。真に健全な日中関係はその時点から新たに始まるべきなのである。 殊海集団売春騒動で露呈した「中国の恥部」 新潮45 2003/12/1 (2003/12号) 渡辺也寸志(ジャーナリスト) [前略] 反日キャンペーンの裏側 今回[殊海集団売春騒動]の騒動は「中国青年報」が主導した。7000万人弱の団員数を誇る中国共産主義青年団(以下、共青団)の機関紙である。共青団は党中央への登竜門で、エリート要請機関という側面も持つ。広州の民間紙「南方周報」の元記者が語る。 「『中国青年報』は地元紙『南方周報』の協力で、殊海国際会議センターホテルの宿泊客を素早く割り出すことができた。この『南方周報』と、そ週末版が始まりである『南方周末』は、数々のスクープで売り上げを伸ばした新聞です。花嫁販売から北京市党委員会書記・陳希同の汚職問題、湖南省のエイズ問題など取材力は抜群。ただ、共産党指導者を直接狙い打ちするようなことは避け、権力上層部ともうまくやってきた。また、もともと共青団閥のトップこそ、現在の共産党総書記・胡錦濤です」 それにしても、記事は絶妙のタイミングだった。 事件が、満州事変のはじまりの日の直前であったのをうまく利用しただけでなく、「中国青年報」が第二報を打った9月28日は、あの福岡の一家四人殺害事件で捜査官が北京入りした日に当たっていた。この中国人留学生による残虐非道な殺人事件は中国ではまったくと言っていいほど報じられていない。 「中国の官営メディアは、すべて権力の意向に添っているのはおわかりでしょう? 今回も実に巧妙な仕掛けです。捜査協力で日本側に貸しを作り、国内は淫行日本人を叩いて慣例の反日キャンペーン、労せずして外交的勝利をものにしています。赤子の手をひねるようなものです」(同前) 一方、それは反日教育を受けてき若い世代を確実にとらえ、煽り立てた。例えばネットの中に、如実に現れている。中国のインターネット事業の代理人を務めている日本人貿易会社社長・鵜沼武彦氏はこう言う。 「集団売春事件では大手ネットの一つ、捜狐の書き込みが、三日間で6万5000件に達したといいます。『小日本人(蔑称)の財産を没収でよ』『カネを稼いで、我々も日本にオンナを買いに行こう』といった調子です。 中国のインターネット人口は6000万人を超えた。ネットの掲示板機能を使って討論ができる『論壇』が、次々と開設されました。ポータル(玄関)サイトの御三家は、新浪網、網易、捜狐ですね。なにかことあるごとに書き込みが殺到する。法輪功でも有人宇宙飛行船・神舟5号でも活発な議論が展開されています。もちろんあからさまな反共産党、反社会主義には規制が入りますが」 しかし、日本がテーマになると議論どころではなくなる。 「反日一色ですよ。例えば、いま検討されている北京―上海間の高速鉄道問題で、『新幹線導入反対の中国人、集まれ』との呼び掛けがあがると、わずか10日間で8万人の反対の声が集まりました。ものネット民族主義ですね。その声は、『新幹線は昔の南満州鉄道(満鉄)を連想させる』といったものから『歴史問題が残っていて、この問題でも回避できなない』とか、果ては『日本人はみんな殺したい』となる。猛烈なバッシングです。 今年は、黒竜江省チチハルで旧日本軍の遺棄した毒ガス兵器による事故が発生、ひとりが死亡し、約40人が負傷する、ということもありました。高まっていた反日感情に今回の騒動は火に油を注ぐ形となった。今年の反日キャンペーンの総仕上げでした」 否、総仕上げではなかった。集団売春から一ヵ月後、今度は西安市の西北大学で日本人が槍玉にあがったのだ。文化祭で邦人男子留学生3人らが演じた寸劇が「下品」で中国を「侮辱」するとして、その場で学生が抗議。その結果、留学生が退学処分に、日本人教師一人が解雇処分となるのである。 さらにこれが反日デモを引き起こし、暴徒と化した学生らが留学清寮を襲って日本人の留学生男女二人が殴られるという事態に至った。そして彼らは無関係の日本料理店をも襲撃した。 中国人の犯罪天国「日本」 この事件に関しては中国外務省の羅田広・領事局長が「日本人留学生の行ったパフォーマンスは日本の公の場所でも許されておらず、中国ではなおさら許されるものではない」と語っている。一方、留学生が殴られた日本の外務省は、何の抗議もしていない。 この発端となった寸劇が「許されて」いないパフォーマンスかどうかは疑義があるところだが、それを措いても、中国側の発言、笑止千万ではないか。 それでは、日本にいる中国人留学生はどうなのか。とても日本の法律を守っているとはいえまい。こんなことを言われる筋合いはないのだ。 先の福岡県の一家殺人にしても、大分県で留学生がその里親というべき恩人を殺した一件にしても、中国人留学生が関わっている事件は枚挙に遑がない。こうした凶悪事件もさることながら、一方で、女子留学生の相当数が風俗嬢となってバイトしているという面もまた確かなことなのだ。留学とは名ばかりで、日本に害をなしにきている留学生がいかに多いことか。 留学生だけではない。蛇頭など密航で不法入国し、犯罪を繰り返して帰国していくものもあとを絶たない。 日本人にとって中国が売春天国であったように、中国人にとって日本は犯罪天国なのだ。しかもそれはもう長らく続いている。冗談ではない。 売春は中国では「強い怒りを感じる」とか、「道徳心を強化するように指導してほしい」とのたまった。天に唾するとはこのことだろう。 むろん、中国が反日感情を必要以上に煽るにはわけがある。 「今の中国には海外からの脅威はない。問題は内部。歴史問題を引っ張り出して、常時、日本を仮想敵国にしておかないと体制が持たない。経済発展の陰で、腐敗、失業など内部の矛盾が次々と露呈してきた。そこから民意の目をそらさねばならない。だから昔も今も、悪逆非道の日本というわけです。軍国主義・日本を打倒したのは、中国共産党。彼らが統治の正当性を主張するためには、日本の過去、現在の非道を糾弾し続けなければならないわけです」(前出、鵜沼武彦氏) こんなことに利用されて言われっぱなしになっていることはない。国内問題は国内で解決して欲しいものだ。こんな中国に対して友好を掲げるのはいかがなものか。彼らに正面から向き合って言うべきものはきちんと言うこと、日中友好があるとしたら、それからの話である。 ナメられ放題!怒髪天を衝く 日中ビジネス最前線 新潮45 2003/12/1 (2003/12号) 中国の陝西省にある、かつて唐の都であった西安。市内にある名門校の西北大学で開かれた学園祭がきっかけとなって、学生たちの大規模な反日デモが勃発したのはつい先日のことだ。 この事件の概要やその背景については、前の特集に譲ることにしよう。しかし、ここで私が気になったのは、日本人留学生が殴られ、日本料理店(経営者は中国人)のガラスが破壊させれてもなお、「日本人留学生の無知」を叱責してみせる日本のテレビなどのマスコミの報道だった。ワイドショーのコメンテーターたちのわけ知り顔の発言に違和感をもった視聴者も少なくないはずだ。 日本のお茶の間のテレビが報じるのは、中国発の中国の論理だけだった。異様な話である。これから紹介するが、これまでの日本人は中国発の情報や中国人の言葉をそのまま受け取ってきた。疑うことがなかったのである。日本のそれと同じ感覚で、ニュースを受け入れててきたのだった。だが、その結果どれほどの日本人が甘言に釣られ、騙されてきたのか、多くの日本人は知らない。 たとえば、躍進を遂げる中国経済についても報道をストレートに信じるのは危険だ。中国は市場経済を進め、この20年で、GNPで世界第7位(2000年)の「経済大国」に成長を遂げた。だが、経済の自由化だけは進んでいるが、報道までも自由だというわけではない。中国の公表する「事実」を鵜呑みにするのは危険なのだ。まず、共産党や最高指導者の批判は依然タブーである。中国は共産党が支配する一党独裁体制の国である。とはいっても、ここまではそれでも比較的よく知られている。しかし、実はこれ以外にも、もうひとつタブーがある。それは経済情報なのだ。 [中略] 女性なら誰でも知っている商品を扱っている日本企業の駐在員は、中国の工場をもう増やす計画はないと言い切る。「中国ブームはとっくに終わっています」「これ以上市場を広げても、競争激化で、これまでのようにはいかない。現状維持が精一杯だ」と。ブームに浮かれず、冷静に市場リサーチをしている会社もちゃんとあるのである。 確かにビジネスチャンスは広がっているように舞えるが、誰もが成功する市場というわけではない。必ずしも中国は金を産む市場とはいえないのだ。 だが、相変わらず情報収集に熱意のない会社も多い。西安の留学生事件の際も、現地の日本企業などの参加する西安日本人会が、詳細が不明な段階で、直ちに謝罪した。過ちが明確になれば、お詫びもいいだろう。だが、事件の検証もないままに、とにかく謝罪が第一だというのなら、あまりにも情けない。 どうして日本はそれほどまで中国に対して弱腰にならなければいけないのか。79年から日本政府は中国に対して3兆円ものODAを供与している。さらにこれとは別に、森ビルの「上海環球金融センター」などに国際協力銀行から3兆円の協力ローンも与えている。これだけではない。アジア開発銀行や世界銀行など日本が最大限の資本協力している第三者の国際期間からの中国向け融資もある。日本は一貫して中国経済の最大の支援国なのである。 だが、ほとんどの中国人は日本こそが中国市場経済の最大の支援者であるという事実すら知らない。あの日本が中国に対してそんな援助をすることはありえないとまで思っている。中国に外国企業が殺到したのはほんの10年前のこと。それまでは西側先進国では日本が最大の投資国だったにもかかわらずだ。 中国人の自慢する超近代的な北京首都空港も上海国際空港もいずれも日本から400億円という膨大な資金援助がなされている。これは総建設額のほど半分に相当する金額だ。 冒頭に書いた西安の学生たちは「日本人よ、出て行け」「日本製品排斥」を叫んだ。だが、この西安にも日本は援助を実行している。西安の空港「威陽国際空港」拡張に31億円、同市の上水道整備に72億円、安康までの鉄道建設に350億円、さらに市内の環境整備に98億円だ。西安を含む陝西省全体で、円借款は3198億円、無償援助(返済義務はない)が127億円に上る。だが、中国政府は日本の善意を決して広報しようとはしないのだ。 「日本人が出て行け」って困るのはどちらなのだか。中国は今後「南京大虐殺」のキャンペーンを大々的に海外でも行うことを発表した。いくら援助を続けてもこれではドブ金である。一方で、中国国内では失業問題など社会不安も表面化してきた。官民挙げて、対中政策の見直しが必要だろう。 |