がん放置療法のすすめ
~楽しく長生きするために
公開市民講座についてご報告します!
(亜紀書房・土肥氏提供、ビデオ撮影より)
1.第43回公開市民講座(メコン生涯学習講座)のタイトル:同上
2.講師:近藤誠医師(慶應大学医学部放射線科講師)
3.日時/場所:2012年11月17日/於中央大学駿河台記念館
4.講演の流れ
冒頭、「がん放置療法のすすめ」には次の2つの意味がある、と近藤ドクターは切り出した。
①発見されたがんを何もしないでそのままにしておく
②潜んでいるがんをむやみと検査して見つけ出さない
そして、この日の主な論点として、次の項目を挙げた。
①がんはいつ転移するのか?転移時期の問題
②がん治療における手術の問題点
③抗がん剤の問題点
④末期がんの対処法
⑤がん検診の逃避
前置きとして、近藤ドクターは次のように問題を提起した。
社会には、「がんは放っておいたらどんどん進行してしまう、どんどん転移してしまう」という考え方があるから、「がんは発見したら治療をうけるべきだ」という通念がある。そう考えると、がん診断が下ったのに放っておくのはとんでもないという考えにもなる。
しかし、がんと診断されても治療をうけずにそのままにしておく人が、実は、少なくない。私の外来には、ここ20年以上にわたって、そういう方々が大勢集まり、150人以上を定期的に観察してきた。がんの初発部位としては、胃袋、肺、子宮、乳房、腎臓、肝臓などがあるし、進行度も0期からⅠ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期までいろいろある。
この上で、モデルケースとして、胃がんの患者さん(70代前半)のがん放置のありようについて具体的に語り始めた。胃がんにはがん治療の問題点が集約的に現われているし、がんの性質や治療法は一般にどんながんでもかなり共通しているので他のがんにも応用が効くためだという。患者さんは医師のようだ。
医師本人ががんになると、どういう選択をするのか?これは市民側としても関心があるが、このケースでは、元外科医の選択は、意外にも、「がん放置療法」だった。近藤ドクターのベストセラー『がんと闘うな』の考え方に共感したらしい。
もっとも、これは驚くには当たらないのかもしれない。近藤誠医師と中村仁一医師の『どうせ死ぬなら「がん」がいい』という対談本のなかでは、食道がんなどを手術してきた外科医が自分が食道がんになったら、手術ではなくて放射線治療を選んだという例なども、紹介されている(196頁)。
ここを出発点にして1時間にわたりがん放置療法の要諦が語られ、その後、質問票による質疑応答が30分ほど行なわれ、200人余の参加者が熱心に耳を傾けた。
ここで、質疑応答部分の質問を一つご紹介する。
Q:がんが発見されて治療を受けた人が5年以上生存している場合、その人のがんは「がんもどき」であったというふうに理解してよろしいのでしょうか?
A:一般に、がんでは5年生存率ということをよく聞きますよね。ほとんどのがんは転移があった場合、5年以内で亡くなるんです。
ただし、最近はがんの早期発見が盛んだから、小さいときに発見される、そうすると転移も小さいときに発見されていることになる。すると、その転移が育って患者さんが亡くなるまでが5年では済まない場合があって、がんによっては10年生存率をみないとなかなか正確には言えない。
基本的に、5年とか10年生きてられて、その時点で転移がなければ、それは「がんもどき」であったと考えてほぼ間違いない。絶対間違いないということはなくて、その後転移が出てくる人もいますけど、それは例外的です。
※本講演は亜紀書房によって、デジタルコンテンツとして商品化され販売されました。タイトルは、『近藤誠の「問題解決の科学」第2号 がん放置療法』です。詳しくは亜紀書房のホームページか、http://fanplus.jp/_scienceelements_/feature/makotokondoをご覧ください。(なお、本会は講演の録画を許可しただけで、この商品化とは一切かかわりはありません。)
5.当日の資料の一部
近藤誠氏の主な著作リスト(一般市民向け)
2012.11.17./医療消費者ネットワークMECON
以下、○印のついた本は、現時点で(書店で)入手可能です。
1988年 がん最前線に異状あり~偽りのときに終りを(廣済堂出版)
1990年 ○ 乳がん治療 あなたの選択~乳房温存療法のすべて(三省堂)
1994年 患者と語るガンの再発・転移(三省堂)
がん治療「常識」のウソ(朝日新聞社)
○ 抗がん剤の副作用がわかる本(三省堂)
それでもがん検診うけますか(ネスコ/文芸春秋)
1995年 ぼくがうけたいがん治療(さいろ社)
「がん」ほどつき合いやすい病気はない(講談社+α文庫)
がんは切ればなおるのか(新潮社-新潮文庫)
1996年 ○ 患者よ、がんと闘うな(文芸春秋-文春文庫)
1997年 がん専門医よ、真実を語れ(文芸春秋)
「がんと闘うな」論争集(日本・アクセル・シュプリンガー出版)
1998年 なぜ、ぼくはがん治療医になったのか(新潮社)
「治るがん」と「治らないがん」(講談社+α文庫)
1999年 「治らないがん」はどうしたらいいのか
(日本アクセル・シュプリンガー出版)
2000年 よくない治療 ダメな医者(三天書房)
医原病-「医療信仰」が病気をつくりだしている(講談社+α文庫)
2001年 ぼくがすすめるがん治療(文春文庫)
2002年 ○ 成人病の真実(文芸春秋-文春文庫)
2003年 医療ミス(清水とよ子=MECON代表との共著・講談社)
○ 再発・転移の話をしよう(イデアフォーとの共著・三省堂)
2004年 ○ がん治療総決算(文春文庫)
○ 新・抗がん剤の副作用がわかる本(三省堂)
○ 抗がん剤のやめ方始め方(三省堂)
2010年 ○ あなたの癌は、がんもどき(梧桐書院)
2011年 ○ 抗がん剤は効かない(文芸春秋)
○ 放射線被ばく CT検査でがんになる(亜紀書房)
2012年 ○ がん放置療法のすすめ(文春新書)
○ どうせ死ぬなら「がん」がいい
(中村仁一医師との対談・宝島社新書)
6.参加者の意見・感想
32名の方が意見・感想を寄せた。講演に関するものがほとんどで、それを大まかに分類すると、次のようになる。(各項いずれも、数人が記述)
①(がん放置療法が)精神的な安定をもたらす
②検査・検診の無用さに気づかされた
③(近藤ドクターの)読者の応援メッセージ
④また講演を聴きたい
⑤わかりやすい、勇気に感謝、など
⑥その他
①は特に、がん放置療法の特徴と言えそうだ。今回の講演に対して、参加者から、「気分的に大変安堵した」とか、「心強く、気持ちがラクになる人が多いと思う」という声が出された。
これまでのがんの早期発見・早期治療の社会的通念の下では、過酷な治療と死を連想させる「がん」を怖れて精神的に不安定になる人が多かったのとは対照的だ。
また、2010年の著作『あなたの癌は、がんもどき』については、「読んで感銘を受けて本日出席しました」とか、「(新たな著作を読んで)また心落ち着きました」と書き込まれていた。本書は、『がん放置療法のすすめ』の理論的な基盤となる「がんもどき理論」の書であり、それがよく理解されているということだろう。
がん放置療法が患者の身体だけでなく心にも優しいという特徴は、私たち(本会の世話人)としても同感である。この講座を準備しながら、読書会形式で近藤ドクターの近著3冊(対談本を除く)について話し合ったりしたから、参加者のこうした好反応をよく理解できる。
今回、あらかじめ近藤ドクターの本を読んでいる人が少なくない。次のお二方も、「本を読む+講演を聴く」の両側面から、がん放置療法の理解を深めたようだ。
「先日、『がん放置療法のすすめ』を読み、今日のお話を聞き、現代医療のこわさを痛感しました。今までにガンで亡くなった身近な人、そして今、ガンと闘っている友人(もちろん、抗ガン剤治療と手術)を見て、その苦しさとQOLの低下をみて、心痛めています。私は本日、やっと確信をもって、放置療法を選ぶ決心をしました!まだガンになっていない○○(67才)」
「近藤先生の著書を、最近偶然拝読し、‘やっぱり!!’と納得しました。原子力村、医療村、農業村、なかなか大切なことがわかりにくい世の中で、近藤先生の医療従事者としての良心、情熱に感謝しております。マスコミや教育で教えてもらえない情報、学びはここにも!今後、まわりの人達に、今日の教えを伝えていきたいと思います。(私自身もいかに生き終えるのかを考えながら。)…… 先生、ありがとうございました。(○○)」
身近な人間のがん治療による苦しみや生活の質の低下、あるいは過酷な治療の末に迫り来る死を何度となく目の当たりにすると、今のがん治療に漠たる疑問を感じざるを得まい。そういう人にとって、がん放置療法は一つの興味深い選択肢となるかもしれない。
「義父母、実父母ともにがん発見後2年以内で亡くなったので、がんはがん放置が一番良いのでは、と思っていました。良いお話を聞かせてもらい、とてもうれしく思います。(○○)」
(追記:なお、感想の中には、「このような良い講座」、「MECON主催の講演会」という言葉で、感謝や期待の言葉が随所に散見されました。恐縮しつつも、ボランティア一同、とても勇気づけられました。
当日は雨が降って市民講座日和ではなかったにもかかわらず、開始の1時間半前から人が続々と到来し、用意した5種類の本90冊も完売するという関心度の高さは、予想をはるかに超えるものでした。そういう状況で、運営批判の感想もお一方から寄せられましたが、それはごもっとも、反省するほかありません。
混雑して蒸し暑い会場で、多くの方々が集中して傾聴し、最後に貴重な感想を残す方もいて、本会世話人一同、心より感謝しています。)
7.事前の広報チラシ:
祝、近藤誠氏、菊池寛賞受賞!
公開市民講座(メコン生涯学習講座No.43)
がん放置療法のすすめ
~楽しく長生きするために
日 時 : 2012年11月17日(土) 午後2時~4時
場 所 : 中央大学駿河台記念館
(JRお茶ノ水駅・聖橋口を出て、右手の狭い道路=線路と直角に走る=を
まっすぐ3分歩くと、左側に建っている)
講 師 : 近藤 誠 医師(慶應義塾大学医学部放射線科講師)
●私たちは市民の立場で20年間、いろいろな方法で医療の実態を知るように努めてきました。がん治療も例外ではありません。お任せでは、どんな危険が待っているかわからないからです。
その結果、がんになっても過剰な治療は受けまい、と考えるようになりました。そのほうが、普段どおりの生活をほぼ最期まで送ることができ、人生を全うできる、と確信するようになったからです。治るがんなのに治療され過ぎて早死にしたり、治らないのに、医師に勧められるままに、苦しい検査や過酷な治療を受け続けて悲惨な治療死を迎えるのを避けたいからです。
●そうは思っても、実行できるかどうか不安です。しかし実は、がん放置を希望して無治療を選び、そんな生き方・死に方を実践した先人は高齢者に限らず、案外たくさんいるのです。
今回の講座では、そういう患者を診てこられた医師から、直に、お話を聞くことができます。国民の2人に1人ががんになるという時代、いざというときには、自立した患者として、自分のがん治療法をじっくりと選びたいと考える私たちに、その具体的な論拠と勇気を与えてくれるに違いありません。
●自分や家族にがんという診断が下ると、人々は様々な行動をとります。たとえば、簡単な説明だけで慌てて手術を受けてしまう人もいれば、なんとか治す方法はないかと、本やインターネットで調べたりセカンドオピニオンをとって十分に考え、自分で治療法を選ぶ人もいます。
そんな時、知っておくと便利なのが近藤医師の「がんもどき理論」です。「がんとは何か]をよく理解でき、いたずらにがんを怖れずに、どんな治療を受けたらいいのか、あるいは治療を受けないほうがいいのかを考えることができるからです。
●「がんもどき理論」によれば、「本物のがん」なら臓器転移が必ずあり、早期発見・早期治療をしても治りません。一方、「がんもどき」なら臓器転移はなく、原発病巣さえ治療すれば健康人と同じで、放置しても転移は生じないのです。臓器転移の有無はすぐにはわからないことも多いですが、いずれにせよ不要で過酷な検査・治療漬けを避け、QOL(生活の質)を大事にする医療を探したいものです。
●この講座にはどなたでも参加できます。受付は会場で先着順に行ないますので、参加ご希望の方は、少し早めに直接会場へお出でください。会場は1時半に開いています。
なお、あらかじめ勉強しておきたい方は、『あなたの癌は、がんもどき』(2010年 悟桐書院)と、『がん放置療法のすすめ 患者150人の証言』(2012年 文春新書)が役立ちます。(当日、限定数を販売予定です。)
主催:医療消費者ネットワークMECON
(電話・ファクス: 03-3332-8119)
○10月15日、近藤誠氏が菊池寛賞を受賞することが日本文学振興会から発表されました。受賞理由は次の通りです。
「乳房温存療法のパイオニアとして、抗がん剤の毒性、拡大手術の危険
性など、がん治療における先駆的な意見を、一般人にもわかりやすく
発表し、啓蒙を続けてきた功績」
(文芸春秋のホームページより
http://www.bunshun.co.jp/award/kikuchi/index.htm)