| 日本画技法 |
・膠(にかわ)の作り方 ・ドーサの作り方 ・絵の具の溶き方
・麻紙について ・裏打ちについて ・筆と刷毛 |
| トラブルシューティング |
・絵の具が取れる!動く! ・絵の具が割れた! ・発色が悪い!
・色が分からない ・粗い絵の具がうまく描けない! |
| 素朴な疑問 |
| ・日本画ってなあに? ・どうして日本画は高いの? ・佐藤芽実の日本画について |
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・膠(にかわ)の作り方
膠の種類には、三千本膠(棒状)、鹿膠(角状)、パール膠(粒状)、瓶膠(液状)などがあります。最もポピュラーな三千本膠は精製度が少なく、油分や不純物を含むため、溶かすとやや濁っていますが、粘りがあって絵の具に絡まりやすいです。鹿膠やパール膠は、工業用に生成されたもので、溶かすと透明で品質も安定しており扱いやすいです。液状の瓶入り膠は防腐剤が多量に含まれており、溶かす手間は省けますが、和紙を傷めるおそれがあるのでお薦めしません。
〈基本の作り方・佐藤芽実流〉
三千本膠はタオルにくるんでなるべく細かく折ります。破片は刺さると痛いので気をつけましょう!ペンチを使うと簡単です。スケールで計って使うなら、最初にまとめて細かくしておいてもいいでしょう。大作を描く場合を除いて、小さい作品をたまに描くのであれば、溶かす量は少しでいいでしょう。水100ccに、三千本膠1本、鹿膠2個が基本です。スケールで計るなら三千本膠1本分は約12gです。膠鍋がなければ、ジャムなどの小さいガラス瓶でいいでしょう。分量の膠と水を入れて一晩冷蔵庫に置きます。一晩置けないときは5時間ぐらいつけておくとふやけて溶けやすくなっています。湯煎にかけて、さじなどでかき回しながら溶かして下さい。ガーゼなどで不純物を漉したら出来上がりです。
使う分だけ皿に取り、残りはふたをして冷蔵庫に保管しましょう。膠は痛みやすいので、冷蔵庫に入れても1週間以内に使い切りましょう!痛んだ膠は定着力がなくなります。
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・ドーサの作り方
ドーサは和紙のにじみ止めに使ったり、金属箔を貼るのに使います。生(なま)の和紙にはにじみ止めがしてありませんので、ドーサを引く必要があります。面倒な方はドーサ引きの紙を買いましょう。
〈基本の作り方・佐藤芽実流〉
上で作った膠を10倍に水で薄め、生ミョウバンをすったものをごく少量混ぜ合わせます。ドーサ200ccに1gのミョウバン(つまりほんの少し)加えて下さい。ミョウバンは入れすぎると紙を傷めますので注意して下さい。
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・絵の具の溶き方
岩絵の具
岩絵の具には、天然、新岩、合成などの種類がありますが、どれも粒子の細かさが番号で表されています。最も細かい白(びゃく)から、数字が若くなるほど荒くなっていきます。最初は使いやすい白から13・11・9番あたりがお薦めです。
必要量の絵の具を絵皿に入れたら、さじで膠を1滴ずつ加えます。指でよーく練ります。膠は多すぎても少なすぎてもいけません。細かい絵の具は割れやすいので入れすぎに注意、荒い絵の具は取れやすいので気持ち多めで念入りに練ります。膠で絵の具がテラテラに光るほどだと入れすぎ、練りにくく乾いた感じだと足りないと思って下さい。よーく練ったら、使いやすい量の水を加えて混ぜれば出来上がりです。
水干絵の具
水干絵の具は文字通り水にさらして干してあるので、パリパリに固まっています。まず乳鉢に入れてよくすってから、上記の要領で溶いて下さい。
胡粉
胡粉は貝殻の粉などから出来た、昔から使われている日本画の白です。胡粉も水干なので、まずよーく乳鉢ですります。膠を少しずつ加え、団子状にまとめます。耳たぶくらいの柔らかさになったら、その固まりを絵皿に何度も打ちつけて馴染ませていきます。これを「百たたき」といいます。量が少ないときは手のひらで細くのばしてはまとめ、を繰り返してなめらかにして下さい。きれいな絵皿の中央に平たく貼り付け、お湯を注ぎ入れてあく抜きをします。3分ほどしたらお湯を捨てて、水を少しずつ加えながら溶きおろします。
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・麻紙について
麻紙は文字通り、麻の繊維を含む丈夫な和紙で、岩絵の具が食いつきやすく最も日本画に向いている和紙と言われています。中でも、雲肌麻紙は表面が凸凹しており、絵の具の厚塗りにも向いています。
なまの麻紙はにじみ止めしてありませんので、ドーサを引いて使います。なるべく天気の良い日に風通しの良い部屋でドーサを引きましょう。いらない毛布などの上の麻紙をおき、ドーサ用のなるべく大きな刷毛でゆっくり横に1回ずつ塗っていきます。ピンチなどで吊して良く干したら、再度紙を90度回転して縦目に引いていきます。鶴下げて乾かしたら出来上がりです。
ドーサ引きという紙が売っています。面倒な方はこれを購入されるといいでしょう。ドーサ引きという紙は、紙を漉く段階でドーサが含まれています。昔のドーサ引きはドーサが強くて、時間が経つと紙が傷んでいました。今はドーサを弱くしてあるので、逆に絵の具の定着が悪いときがあります。自分の好みに、薄いドーサを引いて使うと良いでしょう。
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・裏打ちについて
絵を保護するために、本紙の裏に薄い和紙を貼ることを裏打ちと言います。裏打ちには主に薄美濃紙という紙が使われますが、もう少し厚めの細川紙は扱いやすいので初心者には向いているでしょう。裏打ちには道具と多少の技術がいりますので、専門書をご覧になるか専門家に習われるといいでしょう。便利な裏打ち紙も売っています。
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・筆と刷毛
「弘法筆を選ばず」と言いますが、私は初心者の方こそ良い筆を使ってもらいたいと思います。あまり安い筆は避け、なるべく日本画専用に作られたものがよいでしょう。筆は線引き用、彩色用、平塗り用など用途に合わせて形も毛も種類がありますが、少しずつ自分にあったものを選んでいきましょう。使っていてふくらむものや割れるもの、毛が抜けるものなどはやめましょう。
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・絵の具が取れる!動く!
原因1.絵の具が乾いていない 下に塗った絵の具が乾かないうちに次をのせると、下の絵の具が動きます。又、筆で何度もこすると、やはり下の絵の具が溶けて動きます。次の色をおくときは下が完全に乾いてから、又、何度もこするような塗り方はやめましょう。
原因2.膠が薄い・古い 膠が薄すぎたり、古かったりすると、定着力が弱まり絵の具がつきません。上記の膠の作り方をよく読んで、定着力のある膠を使いましょう。
原因3.膠が絵の具にちゃんと絡んでいない 膠を絵の具に絡ませるとき、よく練らないと絵の具の粒子に膠がきちんとつきません。又、膠を加える前に、絵皿が濡れていたり、絵の具が濡れていると、やはり膠のつきは悪くなります。必ず乾いた状態で膠を加えましょう。
原因4.麻紙にドーサが効いていない ドーサがちゃんと引いてなかったり、弱いと絵の具が取れることがあります。絵の上から薄いドーサをもう一度引きましょう。
原因5.絵の具の粒子が粗い あまり粗い粒子の絵の具は定着が難しいです。下地に細かい絵の具をおいてから、載せましょう。その際膠はしっかり絡ませてください。
〈絵の具が取れてしまったら〉
取れる絵の具は全部取ってしまいましょう。どうしても残したい場合は、絵が乾いた状態で上からそっとドーサを引きましょう。動くのが気になる場合は、霧吹きにドーサを入れて吹きかけると、あまり動かずにドーサが引けるでしょう。
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・絵の具が割れた!
原因1.膠が強すぎる・多すぎる 乾くにつれて絵の具がパリパリと割れていくことがあります。主に細かい絵の具を使ったときになるのですが、たいていは膠の入れすぎか強すぎるのが原因です。又下地に粗めの絵の具を使っていたり、厚塗りした上に細かい絵の具を厚く塗ると割れやすくなります。絵の具は塗り重ねる毎に少しずつ膠を薄めて使いましょう。細かい絵の具には正しい量の膠を加えて使いましょう。
原因2.ドライヤーの多用 ドライヤーは急いでいる時はとても便利ですが、あまり高い温度で急激に乾かすと絵の具が割れます。ドライヤーを使う時は必ず遠くから、温度は低めに、一点に集中させないように使いましょう。
〈絵の具が割れてしまったら〉
割れたところはどうしようもありません。丁寧に取りましょう。取りにくい場合はお湯を使って筆で優しく洗いましょう。洗ったあとは乾いてから薄いドーサを引いておきましょう。
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・発色が悪い!
・高温多湿 暑い真夏に日本画を描いていると、絵の具の色が悪くなったり、定着も悪くなったりします。膠は温度や湿度に左右されやすいので、出来ればエアコンを効かせるなどして、高温多湿は避けましょう。
・膠が多い。 膠の量が多すぎると絵の具はきれいに発色しません。膠の膜が絵の具を厚く覆ってしまうからです。 |
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・色が分からない
日本画の難点の一つに、絵の具を塗った時と乾いた時の色の差が激しいことがあります。それは、絵の具の濡れ色と元の色が違うせいです。描く時は、必ず乾いた状態の絵の具本来の色を思い描いて描きましょう。又は、小さい紙に使う絵の具の色をおいて乾かし、その色見本を見ながら描くとよいでしょう。重ねた色味も、最初はわかりづらいです。色見本はこんな時にも役立ちます。
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・粗い絵の具がうまく描けない!
荒い絵の具はより、もとの岩の色に近いですし、彩度も高く発色もよくてとてもきれいです。どんどん使いたいところですが、実際は筆に馴染みにくく、濡ればムラになり、使うのをためらう人も多いでしょう。でもうまく使って良い色を出したいものです。
・べた塗りしたい時 荒い絵の具を筆にたっぷりと含ませ、描きたいところに静かにためおきしていきます。水の表面張力を利用するつもりで、のせていくときれいに仕上がります。水の量が足りないときれいにいきません。
・薄くかけたい時 刷毛や平筆を使うといいでしょう。その時、刷毛や平筆に均一に絵の具を含ませ、余分な水分はしごいて取ってからさっとかけるといいでしょう。
・線描したい時 荒い絵の具でも線描は可能です。ただし、筆は穂のなるべく長くて細い、先の効くものを使いましょう。絵の具をたっぷり含ませたら、余分な水分を取り、ゆっくり絵の具をおいていきましょう。
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・日本画ってなあに?
日本画とは、という定義は実はなかなか難しいのです。あまり美術に興味のない方は、水墨画や浮世絵を思い浮かべるかもしれません。それも間違いではないのですが、ごく一般的にいわれている日本画とは、麻紙という丈夫な紙に膠(にかわ)という動物性の接着剤で溶いた岩絵の具を使って描いた絵をいいます。それではこの素材を使っていればみんな日本画なのか・・というと、そうでない人もいるし、それ以外の素材を使っていると日本画じゃないのかというと、他の素材を使った日本画家も沢山います。一番確実なのは描いてる本人が「これは日本画です」といっていればいいわけです。・・随分いい加減な解答ですが。日本画家の数だけ、日本画がある、と言っても過言ではありません。本当です!はい。
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・どうして日本画は高いの?
デパートや画廊で、日本画の値段を見てびっくりしたことはありませんか?どうしてこんなに高いのかしら・・と思う人も少なくないでしょう。日本画が高いのにはいくつか理由があります。
1.材料が高い
日本画に使われる和紙、絵の具、金箔などの金属材料、すべて値のはるものばかりです。美術大学で日本画科に通う学生は、ここで一度「日本画やめようかな」と思う事になります。しかし一度日本画材料の「天然」の魅力にとりつかれると、日本画家は食費を削っても、高い材料を買ってしまうのです。これはもう、悲しいサガとしかいいようがありません・・・・
2.取引ルート
さて、晴れて日本画家となると描いた作品を売っていくこととなります。日本画を売るには日本画専門の画商が、画廊やデパートで販売するわけですが、みなさんは画商が持っていく手数料ってどれくらいだと思いますか?販売価格のなんと、66%から75%が一般的です。日本画家の手元には約3割しか入らないわけです。額縁代や材料費で消えてしまうこともしばしばです。ここで日本画家は再度「日本画やめようかな」と、思うわけです。しかし、悲しいサガはおいそれと日本画をやめさせてくれないのです。(ちなみに、日本画画商が悪徳なわけでなく、展覧会の開催や人件費、営業など色々大変なんです。きっと)
3.日本画の相場
上記のような理由により、日本画は美術品としての価値が高いという認識があり、他の油絵や工芸品より元々の値段が高くなります。値段をつける基準はというと、作家の経歴や賞歴、所属団体内での評価などをもとに画商がつけることが多いようです。案外作家は値段を知らなかったりもします。(私もよく分かりません・・・)以前、芸大の版画の先生と日本画の先生が、版画のグループ展をしたことがありました。
日本画の先生の版画は、版画の先生の作品の10分の1くらいの大きさなのに、値段は1けた多かったです。これも、日本画の相場マジックなのです・・ふんっ(何故怒る?)
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・佐藤芽実の日本画について
+++絶滅動物(Lost Animals)って?
絶滅動物(Lost Animals)とは、その名の通り、根絶してしまった動物のことで恐竜やマンモスなども含まれます。ただ、私が題材にしている絶滅動物は、だいたいこの百年の間に人間の介入によって絶滅してしまったものを扱っています。現在でもその勢いは止まらず、4日に1つの種が絶滅しているといわれています。恐竜にロマンを感じる人は多いですが、人が絶滅させた動物には何を感じるでしょうか・・・
+++絶滅危機動物(Red Data Animals)って?
IUCN(国際自然保護連合)が絶滅の危機にある動植物を選定して作ったレッドデータブックを元に、ワシントン条約などの保護政策が行われています。レッドデータアニマルズという言葉も少しずつ知られてきましたが、日本版レッドデータブックが発行されたのは1991年と、ごく最近のことです。そして最も危惧されるのは、生息数や生態研究の遅れている発展途上国の動物なのです。
+++きっかけは?
私は動物を描くのが好きで、随分長いことモチーフにしてきましたが、動物園でスケッチしていていつも気になることがありました。それは、アフリカゾウ・ゴリラ・トラ・パンダといったおなじみの動物が、自然界では個体数を極端に減らして絶滅の危機にあるという事実でした。動物園ではズーストック計画として、そのような動物の繁殖を行っていますが、帰る自然が破壊されていては何の意味もないのです。それまで、動物を自分の作品のモチーフとしてしか見ていなかったことが、人間の身勝手さそのもののように思えてきたのです。一度そう感じてしまったら、もう後には引けない性分です。それから、私のテーマは絶滅種と絶滅危惧種を描くことになったのです。
+++何かできる?
保護活動に参加しなくても、保護団体に寄付しなくても、普段の生活でできる事って結構あるんですよ。これ以上、大切な命を失わないためには、生息域である森を守ること、水を汚さないこと、CO2を増やさないことです。トイレットペーパーやティッシュは再生紙のものを使う。分解しにくい水を汚す洗剤は使わない。リサイクルできるものは面倒くさがらずにリサイクルするなど。超ずぼらな私がやってるくらいですから、この程度ならどうでしょうか?
+++矛盾・・かな?
絶滅危惧種を描いていて、いつもふと、矛盾を感じます。何故なら環境破壊によって失われてる命は、絶滅危惧種だけではないということ・・・例えば家一軒建てるだけでも、そこに住んでいた小さい虫たち、目に見えない生き物を無数に殺してるということ。絶滅危惧種を案じながら、自分自身が何かを犠牲にしながら生きているということ・・結局人間が心配する対象となる生物は、人間にとってわかりやすく、稀少であると判断されたもの達・・な〜んだ、偉そうなこと言って、絶滅危惧種なんてリストを作るのも人間のエゴじゃないの!と・・・大きな矛盾に悩まされるのです・・・
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