繊維状酸化物超伝導について


超伝導体の線材応用

超伝導体の応用には、線材応用、バルク体応用、薄膜応用の3種類が考えられる。これらのうち最も重要なものは、超伝導マグネットや送電ケーブルとしての線材応用である。 超伝導体を超伝導マグネットとして使用するためには超伝導体をコイルに巻き、大きな電流を流して高磁場を発生させる必要がある。しかし、単金属超伝導体では臨界磁場が低いため、高磁場を発生させることができなかった。
1961年にKunzlerらは、粉末法で作ったNb3Sn線材が8Tを越える高磁場で104A/cm2のJC値を示し、4.2Kで約25Tの上部臨界磁場を示す画期的な材料であることを報告したが、粉末法では工業的規模の長尺化は困難であった。その後Nb3Snは化学蒸着法によってテープ線材として長尺化されたが、磁場中では非常に不安定で、クエンチによって超伝導状態が破れてしまうということがしばしば起こった。


タチカワ・メソッド(極細多芯線)

結局Nb3Snは、Cu-Sn合金中にNbの棒を多数埋め込み、それを引き伸ばして細い線材にした後、熱処理を加えてNbとSnを反応させるタチカワ・メソッド法によって、極細多芯線という形で実用化されている。またNb3Snと並んで実用化されているNbTi線材も、冷間加工によってCuマトリックス中に埋め込まれた極細多芯線として利用されている。 この極細多芯線というのは、非常に細い線状にした超伝導体を、Cuなどの金属の中に何本も埋め込んだものである。何本か束ねて金属中に埋め込むことで、一度にたくさんの電流を流すことができ、機械特性も向上し、さらに、一本が超伝導特性を失っても他の線に電流を流すことができるなどの利点がある。ここでまわりをコーティングする金属は、電気と熱、両方の良導体でなければならない。なぜなら、万が一、超伝導体が常伝導体に変わってしまった場合、抵抗値が大きくなるため急激な発熱を生ずる。これにより、線材が焼けたり、冷媒が急激に沸騰して爆発したりする恐れがある。そのため熱を素早く逃がすとともに、電気の通り道を確保してやる必要があるからである。電気の良導体であれば発熱は少なく、その発熱がTCを超えない程度であれば、その多芯線は申し分なく安定であると言える。

酸化物高温超伝導体の線材化

酸化物高温超伝導体は、線材化応用という点から言えば、非常に不利な材料であると言える。なぜなら、酸化物超伝導体は一般にセラミックスの一種であるために、非常に脆く、機械的な加工法では線材化が非常に困難である上に、JC値もそれほど高くないからである。これまでに数多くの酸化物高温超伝導体が発見されているが、線材応用に利用されているのは、Bi系超伝導体とY系超伝導体くらいで、Bi系超伝導体は、銀シース法によってテープ線材に加工されて利用されている。ただし、4.2Kで使用する場合には非常に高い磁場を発生させることができるが、77Kで磁場を印加した場合は極端にJC値が低くなってしまい、安価な液体窒素中での高磁場応用では期待できない。またY系超伝導体は77Kでも比較的磁場特性に優れ、線材応用への期待も強いが、weak-linkなどの影響を非常に強く受け、線材全体に大電流を流すことが難しい。現在Y系では薄膜法、溶融法、蒸着法などの加工技術を用いて、weak-linkの改善されたテープ線材への応用が試みられている。 酸化物高温超伝導体を77Kで高磁場応用するには、weak-linkが少なく、77KでJCの磁場特性に優れた超伝導線材を作製することが必要である。LRE123超伝導体はY123超伝導体よりも優れた磁場特性をもち、線材応用への期待が大きい。


繊維状酸化物超伝導について

本研究室では、名古屋工業大学の後藤共子研究室と提携し、Y系やEu系などの酸化物高温超伝導体を対象に、炭素繊維などの作製に用いられる前駆体法で超伝導繊維を作製し評価してきた。この方法は、PVAとRE、Ba、Cuなどの酢酸塩を含む均一な水溶液から超伝導前駆体繊維を作製し、これに熱処理を加えることによって超伝導特性を発現させるものである。この方法では均一な溶液から前駆体を作製するため、酸化物高温超伝導体のコヒーレンス長に匹敵する欠陥を原子レベルで繊維内に導入することができ、かつ、バルク体や薄膜などに比べて短時間で作製できるという利点もある。 これまで超伝導体繊維としては、周期律表の上でGd以前の元素を対象として研究が行なわれてきた。そこで本研究室ではEu系およびDy系を対象にして、RE系123の超伝導前駆体繊維を溶液紡糸法によって作製し、熱処理条件を最適化し、高いJC値を得ることを目的として、繊維状酸化物高温超伝導体の線材化応用を目指すものである。またそれら繊維状酸化物高温超伝導体への添加物効果の研究も行っている。


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