胸腺におけるT細胞の分化・成熟 ーT細胞の中枢性自己免疫寛容ー

1.胸腺の構造
胸腺は皮質と髄質の二つの領域に分けられます。
2.胸腺におけるT細胞の分化経路
骨髄から胸腺に移住してきたばかりのT前駆細胞は最も未熟な胸腺細胞で、このときはCD4もCD8も発現していません(ダブルネガティブ細胞; DN細胞)。その後DN細胞は、遺伝子再構成(→参考)により細胞表面の抗原受容体(T cell receptor; TCR)の特異性を様々に変化させます。しかし遺伝子再構成はランダムにおこるので、自己抗原に特異的なTCRを持つ細胞も生まれてきてしまいます
自己抗原特異的なT細胞が活性化してしまうと、自分の組織を敵と判断して攻撃してしまうため、自己免疫疾患になる可能性がでてきます。そこで、胸腺内では、こうした自己反応性細胞を除去する仕組みがあります。
ダブルポジティブ細胞 (DP細胞)へ分化すると、遺伝子再構成によって様々な抗原に対応するTCRが発現するようになります。このTCRを介してDP細胞は、ストロマ細胞上に提示されたMHC/自己抗原複合体と結合します。MHC上の自己抗原と弱くしか結合できない胸腺細胞は生存・分化することができるが(ポジティブセレクション)、自己抗原と強く結合する細胞はアポトーシスにより死滅する(ネガティブセレクション)。
ただし、自己抗原と強く結合する細胞の中にはネガティブセレクションを受けずに、CD4+CD25+Tregへと分化するものもあるという報告もあるようです(→参考)。
髄質上皮細胞のMHCは、本来末梢組織で機能するタンパク質(組織特異的抗原; tissue specific antigens; TPA)を多く提示していることが報告されています(異所性発現)。また、髄質上皮細胞に多く発現していて、自己免疫疾患APECED (autoimmuno polyendocrinopathy-candidiasis-ectodermal dygulator)の原因遺伝子産物であるAireが、この異所性発現を制御し、ネガティブセレクションに必須の作割りを果たしているのではないかと考えられています。(なぜなら、Aireの不活化は、髄質上皮細胞での組織特異的抗原の異所性発現を抑制するからです。