胸腺・髄質でのAireによる組織特異的T細胞のネガティブセレクション

胸腺は皮質と髄質という部分から構成されていて、ここで末梢に出る前に自己反応性T細胞が除去されたり、外来抗原に対して反応性を持つと思われるT細胞へ生存シグナルが送られたりします。
しかし、末梢組織に特異的に発現する抗原(例えばインスリンなど)に特異的なTCRを持つT細胞がどのようにトレランスを獲得するのかについては不明でした。最近まではこのような組織特異的T細胞は、末梢に出てしまった後にアネルギーの誘導やTregによって反応性が抑制されていると考えられていました。しかしAireという遺伝子の発見により、組織特異的T細胞が胸腺で除去される仕組みが分かってきました。


Liston A, Lesage S, Wilson J, Peltonen L, Goodnow CC.
Aire regulates negative selection of organ-specific T cells.
Nat Immunol. 2003 Apr;4(4):350-4. Epub 2003 Mar 3.

要約
胸腺での組織特異的T細胞へのAireの関与

使用マウス
3A9TCR transgenic mice;
HELに高い親和性と特異性を持つTCRを発現するマウス
insHEL transgenic mice;
高濃度の膜型HELをpancreatic isletのβ細胞に発現するようなインスリンプロモーターを発現しているマウス

この2種類のマウスをかけあわせると、組織特異的抗原とそれに特異的なTCRをもつT細胞が共存するので、β細胞で自己反応性疾患が生じてしまうはずです。
自己反応性疾患が起こらない場合は、今までの概念では末梢性トレランスが成立するためであると考えられます。しかし、この論文では、胸腺で組織特異的自己反応性T細胞が除去され(中枢性トレランス)、それにはAireという遺伝子が重要であることを証明しています。

結果

1) 自己反応性胸腺細胞の除去におけるAireの影響
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
Aire genotype
B10.Br
B10.Br
Aire+/+
Aire+/-
Aire-/-
mice
3A9TCR Tg
3A9TCR Tg
x
insHEL Tg
3A9TCR Tg
x
insHEL Tg
3A9TCR Tg
x
insHEL Tg
3A9TCR Tg
x
insHEL Tg
(1)
double positive
680
270
270
500
680
(2)
CD4+
360
50
44
98
230
(3)
CD4+IG12hi
220
9
4.8
39
120
(4)
CD4+IG12hiCD69-
110
2.8
1.3
15
61
(5)
CD4+IG12hiCCL19Rhi
110
1.9
0.9
11
59
(6)
CD4+IG12hi splenocyte (%)
6.1
0.4
0.4
0.6
2.2

*IG12; 3A9 specific Ab
**CD69, CCL19R; T cell活性化マーカー

・Aireは、DP cellsになる以前にセレクションに関与しているかもしれない (1)。
・Aire+/+では自己反応性SP細胞は高度に除去されているが、Aire-/-では自己反応性SP細胞が生成されており(3)、さらに末梢(脾臓)においても自己反応性T細胞が認められる(6)。
・T細胞活性化マーカーであるCD69の発現が抑制していること、CCL19Rが高発現していることから、Aire-/-で検出された自己反応性SP細胞は活性化していることがわかる (3, 4)

2) Treg産生におけるAireの影響
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
Aire genotype
B10.Br
B10.Br
Aire+/+
Aire+/-
Aire-/-
mice
3A9TCR Tg
3A9TCR Tg
x
insHEL Tg
3A9TCR Tg
x
insHEL Tg
3A9TCR Tg
x
insHEL Tg
3A9TCR Tg
x
insHEL Tg
(7)
CD4+IG12hiCD25hi
7.7
8.2
4.1
7.3
3.8
(8)
CD25hiwithin CD4+IG12hi cells (%)
2.3
24.5
16
9.7
2.2

・Aire+/+ではCD25陽性細胞が発生している。


Aireについてのまとめ
・Aireは、自己免疫疾患APECED (autoimmunne polyendocrinopathy candidiasis ectodermal dystrophy; 自己免疫性多腺分泌不全症)の原因遺伝子。
・本来胸腺以外の臓器や組織のみで機能する多くのタンパク質を胸腺髄質上皮細胞で発現させるために必須である。胸腺以外の組織に発現される体内の自己分子に対する中枢性トレランス誘導に重要な役割を果たしている。


みんなのギモン
自己反応性T細胞は胸腺で除去されるのに、Tregを発生させる意義は?

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