ミニ手打ちうどん
これから手打ちうどんを始めようとする人にとって最も大切なことは、小麦粉の選択と正確な計量です。どのように頑張っても、小麦粉選びを間違えると美味しいうどんはできません。
初心者の場合、勘では作業できないので、勘に代わる正確な計量が必要です。
この二点をしっかり踏まえて手打ちうどん作りに取り組めば、うどん作りは難しくないし、日本一美味しいうどんが出来る日も近いでしょう。
手打ちうどん作りは、そばなどに較べて時間がかかるのが難点ですが、より簡単に作りたい場合は、捏ねや熟成(寝かし)を一部省略することも出来ます。
材料
小麦粉、食塩、水と打ち粉(片栗粉)です。
ミニ手打ちでは、取りあえず作ることに重点があるので、小麦粉は身近で入手できるもので構いません。しかし、手打ちうどん作りの材料のページで説明したように、使う材料にこだわりを持つことは大切です。可能な人は手打ちうどんの専用小麦粉を入手して下さい。美味しいうどんが出来ます。ここでは「めん匠」を使います。「めん匠」は、製菓製パン材料店、東急ハンズ等にあります。
食塩は調理に使っているもので結構です。他に打ち粉として片栗粉(馬鈴薯澱粉)を使います(コーンスターチは微粉が飛び散るので周囲を汚します)。
計量
秤で出来るだけ正確に計ってください。(正確な計量器具については、ミニ手打ち麺作りの道具を参照)
秤は重量(目方)計が必要です。小麦粉は、匙やカップで計ってはいけません。
家庭向き調理用の重量秤があることが前提ですが、食塩10gを計るのが難しい場合は、大さじですり切り一杯です(精製塩の場合3/4)。
1ポイント めん作りの秘訣の第一は正確な計量です。初心者には、生地の丁度よい硬さの判断が難しいので、計量が不正確だと失敗しやすいのです。
正確な計量が出来ない場合、適正な加水量は生地の硬さで判断することになりますが、硬さの判断は初心者には難しいので、恐らく最初の一二回は失敗するでしょう。しかし、次の捏ねや延ばしの作業を通じて次第に会得出来ます。生地の硬さは、少し作業し辛いくらいの、硬めの方がよいうどんができます。
作り方
生地量は少ないですが、基本は大きな生地の場合と同じです。手打ちうどんの作り方その1、作り方その2も参考にして下さい。
手打ちうどん作りには、生地の寝かし(熟成)時間があるので、トータルで2時間程度かかります。ミニ手打ちでは、手軽にと云う方には簡便(短時間)法をお勧めします。茹でてすぐ食べるなら両者の差は殆ど分かりません。
英文解説
私が協力して、学生が作った英文の解説ですが動画付なので参考にしてください(動画を見るにはquick timeが必要です)。
配合
小麦粉「めん匠」300g(100%)、食塩15g(5%)、水は夏120g(40%)〜冬135g(45%)。
300gでは量が少ないときは、小麦粉600g、水240〜270g、食塩30gとそれぞれ2倍にして下さい。そして、本捏ねが終わったところで生地を半分にわけて寝かし、延ばしは小麦粉300gの生地量で行えばよいでしょう。
1ポイント 配合比率は一つの目安です。常にこの配合が適正とは限りません。この比率で硬すぎ、軟らかすぎのときは、次回から水を1〜2%増減して下さい。
混合、水廻し
先ず、水に食塩をいれてよく溶かします。
生地の硬さは、温度でも変わります。生地温度が25℃以上になるように、冬期は水を温めて使って下さい。夏期は何もしなくても生地温度は30℃程度になります。
小麦粉をボールにとり、小麦粉を箸で掻き混ぜながら食塩水全部を全体に万遍なく注ぎ込みます(写真下左、写真はすべて500g生地のものです)。
次に、生地を両手の間に挟んでよく揉みほぐし(写真中左)、全体を出来るだけ均等にします(写真中右)。
大凡均等になったところで、両手で生地を握って一つの塊に合わせまとめます(写真右)。
1ポイント 生地の硬さの判断の方法ですが、水回しの後、片手で生地をしっかり握りしめて出来た生地の塊を二つに折ります(割れ具合テスト)。このとき簡単に割れるようなら、まだ不足です。二つ折りしても全く割れないようなら、すでに過剰です。
二つ折りしたときに、ゆっくり部分的に割れるくらいが丁度よい加水です。
めん生地の場合の加水は40%程度ですが、パン生地では60%程度なので、パンに較べてめんの生地はかなり硬いものです。
粗捏ねと寝かし(熟成1)
次に、一回目の捏ね(粗捏ね)に入りますが、捏ねには手捏ねと足踏みがあります。めん生地は硬めの上に特有の弾力があり、頑張っても手捏ねでは1kg以上は無理です。そういう場合には足踏み(写真右)が古くから行われています。足踏みは時間がかかり効率が悪いのですが、生地にとっては優しい捏ねと云えます。
ミニ手打ちでは生地が小さいので足踏みの必要はありませんが、足踏みをする場合は、纏めた生地をビニールシート等の間に挟んで、上から体重を乗せて両足で足踏みします。
手で粗捏ねを始めます。ボールにゆとりがあればボールの中で、窮屈であればテーブルの上で生地を捏ねます。
右利きの場合ですが、左手を生地にあてがって親指で生地の中央部を押さえ、右手で生地の1/2
から1/3を起こして(写真下左)折り返し、手首を捻るように押し延します(写真下中)。生地を回して場所をずらして捏ねを繰り返します。これを50回以上行って下さい。この時点では、生地の表面はまだボコボコしていますが、これで構いません。生地を適当に丸くまとめて(写真下右)、乾かないようにビニールの袋に入れて寝かせます(熟成1)。寝かせる時間は、30分です。冬期は生地が冷え込まないように工夫して下さい。
生地はしばらく寝かせて休ませると、緊張状態のグルテンが緩んで軟らかくなり、次の本捏ねできれいに仕上がる下地ができるのです。
間単に作りたい場合は、次が延しになります。
本捏ねと寝かし(熟成2)
熟成1が終わったら、二回目の捏ね(本捏ね)に入ります。
本捏ねは、生地玉が大きい場合(小麦粉500g以上)は足で踏む(足踏み)方が楽であり、また生地のためにもよいのですが、この場合は少量ですから手で捏ねます。足で踏みたい人は、手打ちうどんの作り方ー1の本捏ねの項を見て下さい。

捏ねの要領は、粗捏ねと同じです。捏ね始めると次第に表面のきれいな生地になります。右手での折り返し50回を見当に捏ねて下さい。捏ね続けると、きれいな表面の幕が切れる場合がありますが、これは生地に性急に過剰な力(変形)を加えたためです。生地が小さいため力が入りやすい(変形量が大きくなりやすい)ので、手の動きを小さくして、ゆっくり捏ねて下さい。生地に切れれ目が少しでも出たら、捏ねを止めて下さい。(割れがひどくてどうにもならないときは、もう一度20分ほど寝かして本捏ねをやり直して下さい)。
最後に表面がきれいな丸い餅状に生地をまとめます。折り返しを小さめにして軽く捏ると、中央に折り皺が集まり花模様が出来ます(写真右)。折り皺を下にして上から抑えて扁平な餅状にし(写真左)、ビニール袋にいれて、今度は1時間以上寝かせます(熟成2)。この間に、生地が冷えないようにして下さい。
延ばし
1時間以上寝かせたら、いよいよ麺棒での延ばしに入ります。
うどん生地の特徴は、弾力があって延ばし難いことです。しかし、ここでは生地が小さいので、さほど難しくはありません。生地が麺棒や台板に張り付かないように適宜に打ち粉しますが、打ち粉は使い過ぎないようにして下さい。
延しは、目標の厚み(サイズ)にまでのばしますが、均一な厚みで、最終的に四角形に仕上げることも目標とします。
熟成した生地を、軽く打ち粉した延し板に皺を上にして置き、手で押さえて更に平らたい丸生地(写真下左)にします。
次に軽く角作りをします。@麺棒を生地中央に乗せ、上から押さえて前方に転がし(写真下中左)、生地の上半分を延ばします(少ししか延びない)。A生地を180度廻して上下を入れ換えて、同様に麺棒を転がして延ばします(写真下中右)。B今度は生地を90度廻して上下と左右を入れ換えて同様に上半分を延ばします(写真下右)。C180度廻して上下を入れ換えて延ばします。この間、生地のベタツキ防止に適宜に(少量でよい)打ちこします。これで一応四方に延ばしたことになり、丸い角が四つ出来ました。

次に角出しをします。@少し角張った角から麺棒に巻きつけ(写真下左)、生地中央部を両手で上からしっかり押さえながら生地ごと麺棒を前方に転がします(写真下中左)。右図のように後ろから押す感じで前に転がします。前方に移動した生地を麺棒ごと引き戻して、さらに転がして延ばします。これを数回繰り返したら、麺棒ごと180度廻して上下を入れ換え、生地を下から上に広げます。A下から麺棒に巻きつけ、@と同じ要領で押し転がします。B90度廻して麺棒を縦にして、生地を横に広げ、下から巻いて押し転がします。C180度廻して生地を下から上へ広げ下から巻いて押し転がします(写真中右、巻いている)。最後に広げるときは、麺棒(生地)を左上から斜め右下へ広げます(写真下右)。目標の大きさよりはまだ小さいでしょうが、概ね四角の生地が出来ています(当面は四角形でなくても気にしないで下さい)。
次に本延しをします。@生地を下辺から麺棒に巻きつけ(写真下左)、押し転がして生地を延ばします。両手は生地の両端を抑えて転がすと四角が保てます(写真下中左)。角だしと同様の作業でA、B、Cと生地を延し広げます(写真中右、AからBへ横に広げる)。目標の厚みになるまで@ABCの作業を繰り返します。
そば作りのように、広げた生地上での麺棒の転がすのは、整形効果が少ない上に、うどんを硬くするので、出来るだけ避けます。
生地の厚みの目標は、2.5mm(細め)〜3.0mm(太め)ですが、測定が難しいので生地のサイズ(広がり)で判断します(写真下右)。300gの生地の場合は、一辺を35〜39cmに延します
1ポイント 厚みをミリ数で指定されても通常は測定出来ないので、広げる生地の大きさで見当をつけます。下表を参考にして下さい。
目標の厚みと生地の大きさ(一辺の長さ)の表
| 原料粉量 |
厚み1.5mm(そば) |
厚み2.0mm(うどん・そば) |
厚み2.5mm(うどん) |
厚み3.0mm(うどん) |
| 100g |
28.4cm(32cm) |
25.0cm(28cm) |
22.4cm(25cm) |
20.4cm(23cm) |
| 150g |
35cm(39cm) |
30cm(35cm) |
27cm(31cm) |
25cm(28cm) |
| 200g |
40cm(45cm) |
35cm(40cm) |
32cm(36cm) |
29cm(33cm) |
| 250g |
45cm(50cm) |
39cm(45cm) |
35cm(40cm) |
32cm(36cm) |
| 300g |
49cm(55cm) |
43cm(49cm) |
39cm(44cm) |
35cm(40cm) |
(サイズは四角の一辺の長さ、括弧内は円形の場合の直径を示している)
包丁切り
延ばした生地にしっかり打ち粉して、屏風畳に前後方向(左右ではなく)に折り畳みます。通常、下から上、上から下、再度下から上へと4枚重ねに折畳みます。折り重ねの回数は生地の大きさと包丁の刃幅の関係で、切りやすいところで決めます。
これを、まな板上で右端から包丁で切り進めます。厚手のビニールシートが敷いてあれば、直接この上で切っても構いません。

切る際、包丁は前後に引かず、上から殆ど真下(わずか前方)に押し切ります(写真左)。
切り幅は、厚みが3mmの場合は4mm、2.5mmの場合は3mm程度が普通です。
家庭用の調理包丁でも切れますが小間板、麺切り包丁を使えばきれいに切れます。10〜20cmほど切り進んだら、途中で一旦止めて、一番上の折り返し部分を広げて、纏めて手で持ち上げて振るい(写真右)、真っ直ぐに延ばして、切ったうどんがくっ付いていないか調べて、うどんがくっ付いている場合は1本ずつ捌いて(ばらばらにして)、打ち粉しておきます。
すぐ茹でるのが原則ですが、容器に入れて3〜4日は冷蔵庫で保存が効くので、後日に茹でても構いません。この場合は、しっかり打ち粉しておきましょう。
うどんが互いにくっつきやすく、引き離すと長く伸びるようでは生地が柔らか過ぎます。次回はもう少し硬めにして下さい。
茹で
茹でで大切なのは、湯量(茹でるうどんの10倍以上)と火力(うどん投入後、1分以内で再沸騰する)です。全量(粉300g生地)を一度に茹でる場合は大きめの鍋(5リットル以上)でゆでてください。
めんを投入して再沸騰したら、火力を絞って、軽い沸騰状態を保ち、時折掻き混ぜます。
茹で行程でもう一つ重要なポイントが水質です。生地(グルテン)はもともと微酸性であり、酸性側で結合力を発揮しますが、中性では結合力が弱まるのです。一般論では、中性が普通なので余り気にされませんが、アルカリ性の水で茹でると、うどんの表面は酸性から中性近辺になり、グルテンの結合力が低下して茹で溶けが多くなります(茹で湯が激しく濁る)。硬水系の水は、一般にアルカリ度が高く、潜在的アルカリ性水なので、予め酸で調整した方が無難です。
1ポイント 茹で上がりのきれいなうどんを作るには、茹で水の水質調整が有効です。これには、酢や梅干をつかいます。上記5リットルの場合は、うどんを入れる前に酢を大匙1杯、梅干なら1個を解して入れてください。詳しくは作り方2の茹での項を見て下さい。
茹で時間は、うどんの太さや好みによりますが、8〜12分です。よく水で洗い、めんつゆにつけて食べて下さい。
水洗
茹でたうどんは、「釜揚げ」を除いて水洗します。水洗いで表面のぬめりを取ると共に冷却します。水を替えてよく洗い、夏季水温が高くてうどんが冷えない場合は、さらに氷水で冷やして下さい。
冬期は水が冷たいので、うどんを冷やしすぎないよう注意して下さい。冷やしすぎると、うどんが急激に硬くなります。冷やしうどん(ざるうどん)の場合は、好みもありますが、水洗い後の温度が20〜22℃位がうどんは一番おいしいと思います。
冬季は、水洗いせず「釜揚げ」で食べるのもおいしい食べ方です。この場合は、茹で時間を1〜2分短かくして下さい。
手打ちの麺作りでは、麺の出来を左右する最重要ポイントは、くどいようですが適正な硬さの生地をつくることです(おいしいかどうかは粉で決ります)。
麺作り成功の半分はこれで決まります。延ばし(包丁きりを含む)と茹でが後の半分を分けると云ったところでしょうか。