手打ちそば作りの材料
玄蕎麦のこと
蕎麦も小麦と同様に輸入が多く、国内産は使用量のおおよそ20%です。主な輸入先は、中国、アメリカ、カナダ等ですが、輸入品は品質が不安定で評判は芳しくありません。蕎麦は、穫れたてがよいのですが、輸入は時間が掛かること、この間の品質管理が十分でないなど問題があるようです。
国内産は、地域差などによるバラツキはありますが、収穫後の管理が行き届くので、よい品質が保たれているのです。
同じ国内産でも、寒い地方の蕎麦が旨みやフレーバーが強く、評価が高いようです。特に北海道は、高品質で生産量も多く、国内産蕎麦の主力です。高級玄蕎麦は、品質保持のため定温倉庫に保管されます。
写真は、北海道産の蕎麦です。粒揃いがよく、黒光りの外観が特徴です。
そば粉のこと
そば粉は、その品質の幅が大変にひろく、従って選択の幅も広いのですが、納得のいくそば粉の入手は小麦粉以上に難しいのが現実です。そのために、生そば屋さんが自家製粉する例は多く、自家栽培する例も少なくありません。
そば粉には、色の白い胚乳部主体の粉(御前そば、更級そば)、種皮(甘皮で緑色)や胚芽を挽き混んだ緑色の粉(藪そば)、果皮(蕎麦殻)まで挽き混んだ黒っぽい粉(出雲そば)があり、それぞれに使用され親しまれています。
そば粉には、粘質物(水溶性タンパク質や多糖類)が含まれ、小麦粉のグルテンには及びませんが、生地形成に役立っています。この粘質物は、そば粒の周辺部に多いので、中心部だけのグレードの高いそば粉ほど生地形成が難しくなります。
右の写真は、玄蕎麦の横断面の顕微鏡写真です。染色しているので色がついていますが、茶色に見える部分が胚乳部(本当は白い)で、中央の逆S字形が胚芽部、周囲の黒い縁はいわゆる蕎麦殻です。
そば粉の入手
趣味としてのそばづくりも上達してくれば、小麦粉との配合割合とともに、そば粉の品質内容について、さまざまな要望や疑問が出てくる筈です。
しかし、今の段階では取りあえず、蕎麦製粉会社から通信販売等で売られている、手打ちそば用粉を入手しましょう。
そばは、俗に三たてといって、挽きたて、打ちたて、茹でたてが肝心ですが、これに加えて穫れたて(いわゆる新そば)も大切です。
穫れたては、時期もあるのでなかなか望めませんが、少なくとも挽きたては確保したいものです。挽きたての目安として、冬期は2週間以内、夏期は4日以内のものを入手しましょう。入手後、夏期は必ず冷蔵庫で、庫内の臭いが移らないようにして、保管して下さい。
取りあえず、通信販売をしているそば粉のメーカーを一社ご紹介しておきます。
松屋製粉(株)〒320-0811宇都宮市大通3-2-7 TEL028(634)6186 FAX028(635)3887

「更科」の特徴は、色白で粘りが少なく、香りは弱いが歯切れ感がよいことです(都会風)。「挽きぐるみ」はこの逆で(田舎風)、両者一長一短といったところです。好みや目的に応じて選択してください。
そば粉の品質
蕎麦は嗜好性の強い食品で、特有の味わいと香りで価値が決まります。これらの元になるのは玄蕎麦の品質です。玄蕎麦も輸入が8割を占めますが、品質の評価は国内産の方が高く、それも産地が北ほど高い評価を得ています。
玄蕎麦は、製粉されてそば粉になりますが、その製粉の内容によってもグレードがいろいろに変わります。グレードの目安は、色、香り、旨み等ですが、評価基準が小麦粉ほどに明確でないので、素人には見分けが難しいものです。
1ポイント 蕎麦の香りは、製粉されてそば粉になると急速に消失します。これは香り成分が空気に触れて酸化するためです。消失を抑える方策として、貯蔵温度を下げる、包装に酸素バリア性の樹脂袋を使い脱酸素剤を封入する等がありますが、冷蔵でも5℃以下あれば長期の香味保存が可能です。
こむぎ粉(あわせ粉)
そば粉100%でそばを打つ(つくる)のが、そばづくりの究極の目標とも云えますが、これはテクニックの問題で、必ずしも100%が美味しいということではありません。
通常は、そば粉に小麦粉を混ぜてつくります。市販の機械製そば製品の場合、配合率はいちいち明記していませんが、生そばでは「そば粉が30%以上使われいるものをそばと云う」(生麺類の表示に関する公正競争規約)ことになっています。手打ちの場合は、60%以上は使いたいですね。
そばに使う小麦粉ですが、一般には生地のつなぎのためですから、タンパク質(グルテン)含量の多い強力小麦粉を使います。しかし、小麦粉の配合率が多くなってくると、そばの食感に小麦粉の質が強く出てくるので、選択も必要になってきます。そば作りに慣れてきたら、うどん専用粉も試してみて下さい。私のお勧めは「めん匠」(うどん専用普通粉)です。
二八そば(小麦粉配合20%)のように、小麦粉配合率が低いそば造りでは、小麦粉はタンパク質含量の高いものが欲しいのです。しかし、タンパク量のみ求めると(うどん編の小麦参照)小麦粉のグレードが下がることになります。二八のようにそば粉の配合を多くする場合は、小麦粉もそれに見合ったグレード(白いそば粉には白い小麦粉)のものがよいでしょう。合わせ粉としては、強力二等粉が一般的です。(上記松屋製粉の通販小麦粉の強力粉は、これに当たります)
打ち粉
うどん作りでは、打ち粉に片栗粉(馬鈴薯澱粉)を使いますが、そばづくりでは、そば粉を使うのが普通です。その理由としては、そば粉はベタツキが少なく粒が粗いのでサラサラしており打ち粉に適している、そばの香りや味を重じ、そば湯を楽しむ等が考えられますが、伝統的にそうしているという面もあるでしょう。馬澱でも構いません。
そば打ちには、打ち粉専用のそば粉(微粉が少なく使いやすい)もあるので、できればこれを使ってください。
そば粉のなかで、もっとも打ち粉に適しているものは、澱粉質主体の花粉(はなこ)といわれるタンパク質の少ない粉です。
水のこと
水がいいから美味しいそばが出来る、という話をよく聞きますが、よい水の内容が不明で疑問に思うことがあります。うどんでも同じですが、飲んでおいしい飲料に適した水であれば、そばづくりでも問題はないでしょう。そば作りでは、グルテン形成にたいする依存度が低く、茹で時間も短いので、茹で水としてもうどんの場合のようにアルカリ度をあまり気にしなくてよいと思われます。
生そばの場合、そのフレーバーが重んじられるので、これを損なわない水であれば、水質としては十分でしょう。
それよりも、問題なのは水洗水としての水温です。茹でたそばは、盛り、ざる等で食べることが多く、どの程度に冷やすかは重大です。うどんでも云いましたが、温度次第で締まり具合(硬さ)がが変わり、食感に大きく影響します。食べる環境や、そば自体の品質と温度をうまくマッチさせることが大切です。
食べるうどんの温度は、20℃以上がよく、15℃以下ではうどんらしさが失われます。そばの場合は、20℃以下が普通のようでが、15℃以下では冷たさが先に立って味が分かり難くなります。
そば生地は化学変化しやすいので、生地温度は出来るだけ低いほうが望ましいのです。このためには、捏ね水の温度が低い必要がありますが、しかし、生地のつながりをよくするためには湯捏ねも必要です。この観点からは矛盾する面もあります。要は水廻しから茹でまでを手早く行うことが大切です。