手打ちうどんの作り方

その2 延ばして切って、茹でて保存まで

延ばし・ 包丁切り 茹で水の調質 茹で・・ 水洗い・ 保存・・

工程別VIDEO
加水混合 水廻し・ くくり・ 粗捏ね 本捏ね・ 丸め・・ 丸出し・ 角出し・ 本延し・ 包丁切り

 全行程通しの解説付きビデオもこちらからご覧頂けます(所要時間19分)。

延ばし
 1丸出し
 いよいよ麺棒を使って延ばしに入ります。
 麺板(伸し板)に打ち粉(片栗粉=馬鈴薯澱粉を軽く散布)して、袋から取り出した生地を、折り目を上にして置き、麺棒で抑えて平らにして、さらにめん棒を抑えながら転がして生地を平らに延ばします。生地を回して上下を入れ替えて、生地を平均に丸く延ばします。
 
 1ポイント うどん生地は、グルテンの網目構造がしっかり形成されているので、生地に弾力があり熟成したあとでも、塑性的なそば生地に較べると、延ばし難いものです。
 
 2角出し
 延ばした生地の形は、丸とか四角とか初めは気にしなくてよいのですが、目標としては四角に延ばします。このため、まず四角の原型を作ります。 

 
手順1 麺棒に巻ける大きさに生地が広がったところで軽く打ち粉をして、生地を手前から麺棒に巻き取ります。ここからは、麺棒を前に押し転がし、引き戻し、また前に押し転がす、この操作を数回繰り返すことで生地を延ばし広げて行きます。
 
 前に転がす時は、右図のように掌の付け根の方で生地を抑えて、下方向に引き延ばすように力を加えながら前方に転がします。角だしの際は、両手で生地の中央部を押さえて転がします。転がしと引き戻しを数回繰り返したところで、麺棒を巻き替えます。巻き替えは3回行います。

 
手順2 最初の巻き替えは、麺棒を180°廻して左右を入れ替えて、生地を下から上に広げます。そして改めて生地の下側から麺棒に巻きます。これで生地の上下を入れ替えて巻いたことになります。そして押し転がしと引き戻しを数回繰り返します。
 
 手順3 2回目の巻き替えは、麺棒を90°廻して縦にして横に生地を広げます。そしてやはり生地の下側から麺棒に巻きつけます。これで生地の縦と横を入れ替えたことになります。押し転がし引き戻しを数回繰り返します。
 
 手順4  3回目の巻き替えは、手順2と同様に麺棒を180°廻し左右を入れ替えて生地を下から上に広げ、あらためて下から巻きます。押し転がし引き戻しを数回繰り返します。これで生地を上下左右に一通りのばしたことになります。
 ここで、生地を斜めに上から下に広げると四角の原型が出来ています。

 当初は生地が円形のため、麺棒に巻くと両端に較べ中央部が太くなっています。このため、押し転がすと中央部に圧が強くかかり、中央部が延びやすい(薄くなりやすい)ので角がつくのです。角出しで生地を広げすぎると、中央部のうどんが細くなります。生地が軟らかい時は広げすぎにならないよう注意して下さい。
 麺棒の引き戻しは、位置をもとの位置に戻す操作であると共に、延びて緩んだ生地を麺棒に巻き締める操作でもあるので、押えたまましっかり引き戻すようにしてください。

丸出し1 video 丸出し2 角出し1(下から巻く) video 角出し2 中央部を押す
角出し3 左右を変え上に広げる 角出し4 下から巻く 角出し5 横に広げる 角出し6 下から巻く
角出し7 中央部を押す 角出し8 180°廻して上に広げる 角出し9 最後は斜めに広げる 本延ばし1(下辺から巻く) video

 3本延ばし
 角だしが終わったら続いて本延ばしをします。ここで予定の厚みにまで生地を延ば(薄く)します。
 角出しで出来た丸みのある四角の生地の一辺から麺棒に捲き、角出しと同じように押し転がし引き戻しを数回繰り返します。麺棒を巻き替える手順も角出しと同様に行います。
 
 角出しでは中央部を抑えて転がしましたが、本延ばしでは、手の位置は生地の両端を抑えて転がすようにします。これにより、延ばし足りない両端が延びて、形がより四角形になります。一通りの巻き替えを終えた時点で、まだ生地の厚みが目標に達していない場合はさらに手順を繰り返して下さい。
 
本延ばし2  両端を押す 手順3 左右入変え上に広げる 本延ばし4 横に広げる 本延ばし5 終了

 1ポイント 生地にはグルテンの網目構造が形成されていますが、生地を圧延することで網目も引き延ばされます。手打ちでは、四方に延ばすので、この構造に方向性は出ませんが、機械製麺では、圧延ロールを一列に配置した製麺機で生地を圧延する関係で、延ばす方向が一定になるため、グルテンの網目構造に方向性が見られます。機械麺と手打ち麺の品質(食感)が違う理由の一つとされています

 4生地の厚み
 最終の生地の厚みは、2.0mm(細うどん)〜4.0mm(太うどん)程度にしますが、厚みは厚み計がないと測れないので、慣れるまでは広げた大きさを目安にして下さい。広げる大きさは、小麦粉を500g使った場合は、厚み2.5mmで一辺が50cm、厚み3.0mmのときは46cmの四角程度にして下さい。

 300gでは2.5mmのとき39cm四角、3.0mmでは35cmが目安です。長さはメジャーで計ります。
 私が作ったものですが、小麦粉量と生地の厚みの表を参考に掲示します。
  
小麦粉使用量と生地の大きさの表
原料粉 厚み1.5mm(そば) 厚み2.0mm(そば・うどん) 厚み2.5mm(うどん) 厚み3.0mm(うどん) 厚み4.0mm(うどん)
100g 28.4cm(32cm) 25.0cm(28cm) 22.4cm(25cm) 20.4cm(23cm) 17.4cm(19.6cm)
300g 49cm(55cm) 43cm(49cm) 39cm(44cm) 35cm(40cm) 30cm(33cm)
400g 57cm(64cm) 50cm(56cm) 45cm(50cm) 41cm(46cm) 35cm(39cm)
500g 63cm(72cm) 56cm(63cm) 50cm(56cm) 46cm(51cm) 39cm(44cm)
1.0kg 90cm 79cm 71cm 65cm 55cm
(数値は四角形の一辺の長さ、カッコ内は円形の場合の直径を示している)
 
 1ポイント
 生地量と延ばした生地の厚み及び面積の関係式は下記のようになります。
 [生地量=生地面積*厚み*生地見かけ比重] 上の四角例で厚み2.5mmにしたい場合、原料粉500g生地の計算は
 [水と塩が加わった生地量735g=面積cm2*厚み0.25cm*比重1.2] から、四角の一辺は49.5cmとなります(円形の場合は直径55.8cmになります)。 なお、比重1.2は経験値で状況によって多少変わりますが、一定として使ってください。
 

包丁切り
 生地に十分に打ち粉して、100〜120mm幅程度に前後に屏風折りして畳みます。これで4枚重ねになります。
 右端から(左利きは左端から)小間板を生地に乗せて、めん切り包丁をあてがって、生地に対し包丁を垂直に僅か前へ押し出すようにして押し切ります。

 包丁を上に抜く前に少し左に傾けて小間板を押して、小間板の位置をうどんの切り幅分だけずらします。包丁を、ずらした小間板にあてがい生地を切ります。経験をつめば、切るリズムがつかめます。
 
 めん切り包丁がない場合は、一般の家庭の包丁で切って下さい。この場合は小間板も不要ですが、一本ずつ丁寧に切って下さい。
 包丁切りは、太めのうどんは5mm幅、細目で3mm幅が目安です。夏期は、冷たいざるうどんが美味しいので細目に、冬期は、釜揚げうどんや煮込みうどんのように熱々で食べるので太めにします。
 
 
 切り終わったら、麺の生地は麺の線に変身、つまり生うどんが出来上がっています。しかし、このままでは、切り口がくっついてしまうので、次の茹でに回す前に、一旦、折り畳み状態の麺線を広げて、適当に打ち粉して、麺線と麺線がくっつかないようにして束ねておきます。この動作を、麺線を捌くといいます。

 初めの内は、包丁切りに時間がかかるので、切り終わった頃には、最初の方は麺線がくっついてしまいます。従って、捌きは早めに行って下さい。この場合では3〜4回に分けて切った分だけ先に捌くとよいでしょう。

VIDEO(たたみと包丁切)
 1 真直ぐ下に押し切る 2 包丁を傾け小間板をずらす 3 捌く1 4 捌く2

  1ポイント ここで出来たうどんは、今は生うどんですが、これを乾かすと乾麺になり、茹でると茹で麺になります。統計上では、乾麺類に対して、生麺とゆで麺は生麺類(蒸し麺もはいる)として扱われます。
 生うどんでは太さに決まりはありませんが、干しうどんには決まり(JAS)があります。

茹で水の調質
 茹でに入る前に、茹で水の水質調整について説明しておきます。 
 材料としての水の項でも説明しましたが、茹で水のアルカリ度が高いと茹で溶け(煮崩れ)が多くなります。この結果、食感も劣化します。
 
 茹で溶けがひどいかどうかの判断基準は、茹で汁の濁り具合、うどんの角立ち(角が崩れて丸くなっていないか)、表面の艶等です。気になるようでしたら、試しに茹で水に食酢か梅干を水の段階から入れて茹でてみて下さい。大抵の場合、茹で上がりの麺の表面の状態が改善されます。適量は、茹で水のアルカリ度によって違いますので、最初は水1リットル当たり食酢小さじ1杯程度(4、5g)から、梅干なら大粒(14g程度)果肉1/3から始めて様子を見て下さい。
 
 因みに、アルカリ度50ppmの水(厚木の水道水)を使う場合は、酢ならば1リットル当たり小匙1杯が適量であり、梅干なら大粒1個(ほぐして種ごと入れる)で4リットルを調質できます(飲料水のアルカリ度としては、50ppmは決して高い方ではありません)。

 
 pH試験紙が使える場合は、沸騰水の湯冷ましのpHを計って下さい。恐らくpHは8以上あるでしょう。これに食酢または梅干を加えてpHを6〜5までさげます(中性はpH7.0ですが、うどんには不適です)。これで必要な量がわかるので、同じ水であれば次回からは、水量に応じた量を予め加えておけばよいのです。

 
 1ポイント pH7.0の中性がよくないのはおかしく思うかもしれませんが、本来の小麦粉生地のpHは5.5〜5.8であり、このpHで生地(グルテン)の結合力は最も強いのです。pHがこれより高くても低くてもグルテンの結合力が弱まります。小麦粉生地のpH緩衝能は高いのですが、大量のアルカリ度の高い茹で湯に曝されることで、うどん表面のpHが上昇し茹で溶けにつながるのです。左図はpHとグルテンの結合力(溶出量)の関係を示すものです。
 
 それでは、アルカリ性のらーめんの場合はどうなるの?と言うことになりますが、この図のように、うんとアルカリになるとまた結合力が強まるのです。うまく出来ていますね。 
 

茹で
 手打ちうどんづくりの最終段階です。茹でにはいります。
 
 1ポイント 包丁切りした生うどんは、必ずしもしすぐ茹でる必要はありません。茹でるまでに時間が空くときはしっかり打ち粉して冷蔵庫に、乾かないように容器にいれて保存してください。しかし長時間保存すると、色が変わって黒ずんで来るので、1日(24時間)以内には茹でるようにして下さい。
 
 そばの場合は、挽きたて、打ちたて、茹でたての三たてが大切と云われます。うどんの場合は、そばほどではありませんが、茹でたてが最も大切で、挽きたては全く意味をもちません。打ち立てについては、熟成で説明したように、寝かしている間にグルテン構造が弛むため、茹でた結果にもこの影響がでます。打ちたてを茹でた場合の食感が、最も締まって硬いものになります。

 
 生麺の量は、全くロスが無ければ、小麦粉300gの場合441g(夏期42%加水)になります。最初にどれだけ茹でるかを決めます。三、四人分ならこれで十分です。

 鍋に湯を沸かしますが、湯の量は、生うどん100グラムに1リットルを目安にします。従って、441g全量を茹でる場合は4リットル以上の湯を使って下さい。大きめの鍋を十分の火力で使う事は、うどんを美味しく茹でるための必要条件の一つです。
  
 湯が沸騰したら、麺をほぐしていれます。しばらくしてから(30秒ていど)箸でゆっくりかきまぜます。再沸騰したら、軽く沸騰が続く程度に火力を弱めます。鍋の蓋は、開けておくか、吹きこぼれない程度で半分かけます。ときどき箸で軽く混ぜます。

 茹で時間は、麺の太さと、好みによりますが、10分を目安にして下さい。
 
 1ポイント 茹で時間とうどんの太さの関係ですが、茹で時間は太さの2乗に比例します。太さが2倍だと茹で時間は4倍かかります。
 澱粉のアルファ化(澱粉が熱で変化して消化酵素アミラーゼの作用を受ける状態)と茹で上がりは違います。アルファ(α)化は、35%以上の含水量があれば80℃以上の温度で起こります。手打ち麺の場合は、加水量が多いので含水量は35%以上あります。沸騰中の熱水にうどんを入れると、太いうどんでも30秒以内で中心まで80℃以上になります。この時点でうどんは硬直状態になります。30秒でα化しているので、栄養的には可食状態ですが、うどんとしては硬くて食べられません。

 大きな鍋が無い場合は、どうしても湯の量に対して麺の量が多くなり勝ちです。湯が少ないと、湯が粘って茹だりが悪くなる上に、うどんに残る食塩の量が多くなり、しょっぱいうどんになります。やむを得ずこうなる場合は、湯をつぎ足して少しでも湯が多くなるようにして下さい。湯量が十分あれば、加えた食塩の80%近くは茹で湯に溶けだします茹でうどん表面と中心部のグルテンネット。 
 
 1ポイント 生うどんを茹でたときに湯の中に溶け出す成分は、澱粉(糖質)が主体で次が塩分です。一方、グルテンは湯に溶けず、硬い弾力のあるものになります。従って、茹でたうどんの表面は、澱粉だけが溶け出し、グルテンの繊維で覆われた状態になります。このようにグルテン繊維が、澱粉のさらなる溶出を抑えている訳です。

左上の写真は、茹でうどんの横断面染色顕微鏡写真ですが、上が表面部分で下が中心部を示しています。青色に染まっているのがグルテンの繊維で、赤色は糖質(澱粉)です。澱粉は、膨潤しているので輪郭がはっきりしません。
 
しかし、このグルテンも結合力が弱いと、茹で湯中の摩擦で表面から切れて、茹で湯の中に出ていきます。この結合力は、茹で湯のpHに大きく左右されます(上図)。
 
 原材料の水の項で説明したように、水のpHが高いとグルテンの結合力が弱まり、グルテン繊維は切れやすくなるので、茹で液中への溶出量が多くなります。茹液のpHは、6.0〜5.5であれば茹で溶けも少ないのですが、7.0では中性ですが意外なことに茹で溶けが多い最悪の状態になります。
 

水洗い
 茹で上がったうどんは、そのまま釜揚げで食べる以外は、ざるに空けて湯を切り、水を張った容器に入れて、冷やすと共にもみ洗いして、ぬめりを取ります。さらに、水を替えて同様の洗いを繰り返します。
 
 ざるうどんの場合は、このうどんの適量をざるに盛り、めんつゆを添えて食べますが、この時の仕上がりの温度が食感に大きく影響します。好みもありますが、適温は20℃位です。冬は、水温が低いので冷やし過ぎになり勝ちです。温度が低いと、うどんは硬くなります。うどんは、冷や麦など細ものに較べ太いので、15℃以下では、うどん本来の美味しさは味わえません。
 
 水切りしたうどんは、そばと同じようにのびるので、時間をおかずに食べてください。やむを得ず時間をおく場合は、冷水で出来るだけ冷やして(10℃以下が望ましい)冷蔵庫で保存してください。

 
 1ポイント 茹でたうどんは、温度が低いほど伸びも遅くなります。冷凍保存する手もありますが、食品スーパー等で売られている冷凍うどんは、茹で上げ直後に5℃以下に水冷して、急速冷凍したもので、茹で上げ直後の食感が残っていますが、家庭の冷蔵庫では緩慢冷凍の心配がありお奨めできません。緩慢冷凍では、グルテン繊維が切れて、ボソボソと切れやすいうどんになります。
 
 水洗いせずにそのまま食べるのを、釜揚げうどんといいます。さらに鍋で煮込む場合は、いったん水洗いしたうどんを使います。
寒くなってきたら、釜揚げうどんがよいでしょう。その場合は、茹で過ぎにならないように注意して下さい。 

保存
 うどんを美味しく食べるには、茹でたらすぐ食べるのが原則ですが、たくさん茹でて余った場合や事情で食べるのが後日になる場合など、やむを得ず冷蔵庫に保存する場合もあります。
 そういう場合は、冷たい水で繰り返しよく洗った後、水をさっと切って(時間をかける必要はない)清潔な容器(ビニール袋など)にいれ封をして冷蔵保存して下さい。4,5日は保存可能です。この場合の冷凍は、品質を損ない、うどんが切れて短くなり易くなるので避けてください。
 
 後日、このうどんを食べる時は必ず十分に再加熱して下さい。冷蔵中にうどんが老化(澱粉がβ化)しており、そのままではボソボソで不味くて食べられません。勿論、再加熱しても伸びたうどんの再加熱なので茹で立てのうどんにはなりません。
 再加熱の場合の一般的な食べ方は煮込みうどんですが(柔ら目のうどんになるが、うどんの素性がよければこれも結構おいしい)、私は焼きうどんを好んで作ります。

 1ポイント 焼きうどん作りの注意点。
 難しくありません。油を引いたフライパンに、保存しておいた茹でうどんを塊のまま乗せ、中火で焦げるまでしっかり焼きます。焦げたら裏返して焦げるまでしっかり焼きます。こうして火(熱)が通ると、うどんが解れてバラバラになるので、別に用意した具類とあわせ味付け(めんつゆがよい)します。


 生めん(茹でる前のうどん)で保存する場合も考えられますが、加熱していないので冷蔵しても変化が起こり、うどんが黒ずんできます。生めんの冷蔵保存は、せいぜい1日程度にして下さい。生めんは、茹でめんと違って、水分が少ないので家庭用の冷凍庫でも冷凍保存が可能です。包装して冷凍保存すればかなり長期の保存が可能です。



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