コラム・作品解析

ネロス帝国創設秘話


  ネロス帝国はどのように出来上がっていったのか?  今回はこれについて考察します。

■ネロス帝国はいつできたのか?  高久氏の想定

  「宇宙船 Vol38」(1987.10月号、発売は8月末?)の高久インタビューで次のようなやり取りがあります(インタビュー日時は8/7)。

  ──ネロス帝国はいつ頃から存在しているんですか
  高久  ここ十年ぐらいじゃないかと考えていますね。

  私は、ネロス帝国の怪人軍団の設立は太平洋戦争終戦直後にまでさかのぼり、ロボットやモンスターが何代も世代を重ねて、劇中でのああいう社会を形作っているというイメージを持っていました。
  でも、高久氏の想定では、どうも、伊集院財閥の乗っ取りとかで資金集めをしていた 裏社会で暗躍するヤクザかマフィアでしかなかった期間が長くて、怪人の帝国ができたのは、TVシリーズが始まる10年ほど前でしかなかったようです。
  で、そのイメージを念頭に置いて、第35話(12/13放送)での仰木信吾にゴッドネロスが語るネロス帝国の沿革を聞くと、確かに高久氏がそれに基づいて書かれているというのが分かります。

 「余は刑務所の中で密かに関係者を買収し、生き残った。それからアメリカに渡り、世界最大の犯罪シンジケートの一員となった。そして完全な整形手術をして桐原剛造となったのだ。村木國夫の顔はこの世から消えた。
  それからの余は、世界の犯罪組織を次々と飲み込み、莫大な富を手に入れたのだ。その莫大な富を背景に余は現代科学の粋を集め、世界最大の秘密組織・ネロス帝国を創り上げたのだ」

  ちなみに、ゴッドネロスに関して、村木國夫は戦時中、実験の事故で一度死んだが、サイボーグ手術により蘇ったため、戦後、絞首刑にされても生きのびることができたという想定を高久さんは上のインタビューの時点ではされており、彼を蘇らせたのはどのような存在にしたものかと考え中だと、話されていました。ゴッドネロスの上に謎の黒幕がいるという この想定は、宇宙船別冊「メタルダー」(発売は9月末?)の寄稿にも見られます。
  しかし、シナリオでは次のようにゴッドネロスは仰木信吾に語ります(TV本編ではカット)。

  「その時、絞首刑になったのは、余ではなく、人形だったのだ」

  8月まであった想定とうって変わり TV本編では、生身のままの村木は 関係者の買収により絞首刑を免れ 後に自力でゴッドネロス化を果たす、という流れになるようです。
  ……なんか、打ち切りの悲哀を感じます。

  ということで、TVシリーズ開始時点でネロス帝国は創設10年目という感じみたいです。
  まぁ、モンスターの成長は速いそうですし、電化製品並みにロボットもモデルチェンジしていたら、10年でも、けっこう世代交代してそうです。また、10年であれば、ロボットやモンスターの凱聖が2,3年で代変わりするのに対して、ヨロイ軍団だけずっとクールギンただひとりが帝国創設以来、凱聖に君臨しつづけていてもおかしくないわけで、設定としては悪くないような気がします。あと、ロボットやモンスターが、メタルダーと違って、当時10年間の科学技術で成り立っているというのも、ある意味、納得しやすいところです。

  また、怪人軍団としてのネロス帝国の成立が10年ほど前だとすると、もうひとつ辻褄の合うことがあります。
  桐原剛造は30代だということですが、昨今のITベンチャー企業のように20代後半から会社を立ち上げてその10年で急成長を遂げたとすると、その陰に怪人軍団の暗躍が想像できます。

  あと、TV第1話が、あのような形で軍団が一同に会した初めての日という読みもあります(樹蘭さん)。
  古賀博士を追撃していたストローブとチューボが名乗り合うのも、これまで軍団同士連携して活動したことがなくて、これが初顔合わせだというふうにも見ることができます(もちろん、作劇上は視聴者への自己紹介なんでしょうが)。
  ネロス帝国創立10年目にして ようやくゴーストバンクも完成した、とか。
 

妄想コーナー

■千の顔を持つ帝王ネロス

  ところで、1987年で30代という設定なので、桐原剛造は1950年代、昭和30年前後の生まれということになります。たとえゴッドネロスが不老不死であるとしても、表の顔である人物は年を取らなければ周囲から怪しまれるので、戦後直後から1970年代までは、村木國夫はTVでの桐原剛造とは異なる人物になりすましていたと考えられます。
  その名を桐原剛一とします(以下、ネタ元:きりはらさん)。
  村木國夫こと桐原剛一は、バイオ技術やロボット技術を発展させるため、戦後日本で製造業を興す。例えば、第35話で仰木信吾がまとめた資料中に見られる桐原グループの企業、桐原モータースとか桐原工業。それと同時に、身寄りのない子を集めて育てたりしている。その子どもたちの中に、剛一を父と慕う、優秀な男の子がいた。後にクールギンとなる桐原剛造である(後にタグ兄弟となる子もここの出身)。
  この時点で、剛一は整形手術をしただけの生身の人間であったが、次第に不老不死の技術を確立していく。
  70年代、剛一は60代で急死し、桐原剛造が2代目社長となる。技術屋気質の剛一と違い、経営学を学んだ2代目は、様々な分野に手を広げ、企業買収を進め、桐原を巨大にしていった。
  しかし、桐原剛一こと村木國夫は死んではいない。剛一の姿を捨て、桐原剛造として、コンツェルンビルの最上階から世界を見下ろしているのだ。
  ゴッドネロスである村木國夫の桐原剛造は、基本的にコンツェルンビルとゴーストバンクの往復しかしない。対外的に表の顔の桐原剛造は、影武者であるクールギンが担当する。しかし、彼こそが本当の桐原剛造なのだ。
 

■落ち穂ネタ

  同人誌などで見かけた、その他関連ネタ。

○ゴッドネロスの玉座は生命維持装置で、ゴッドネロスはそこからあまり長い間離れる
  ことができない。

○村木國夫がネロス帝国の創造を決意したのは、天皇の人間宣言がきっかけ
  1946年元日、天皇は「人間宣言」を発した。天皇を神と崇め、その下に世界を治めるという信仰に生きてきた男は、世界の崩壊を感じる。
  「神が人間になったというのか……」
  だが、絶望は怒りに転化する。
  「ならば、今度は俺が神になってやる。お前たちはお前たちで、新日本を建設するがいい。俺は、俺自身の帝国を築く。そして、世界を我が手に」

  「余は神、ネロスなり」
 
 

(06/10/14初版)