7月14日、今日はフランス革命記念日です。パリ祭ともいわれ、花火を打ち上げて盛大に祝うそうです。
フランス革命時に実在した詩人を主人公としたオペラがあります。その名は「アンドレア・シェニエ」。ウンベルト・ジョルダーノの作品です。
215年前の今日バスティーユ牢獄襲撃事件を発端にフランス革命が起こりました。このオペラはその直前から5年後(1794年7月25日の深夜)に渡る革命時を描いた物語です(バスティーユに関しての描写は特にありません)。
名アリア&重唱も多く素晴らしいオペラだと思うのですが、何故か滅多に上演されません。
私の手元にこのオペラの映像が2種類あります。ひとつは最近手に入れたプラシド・ドミンゴがシェニエ役のもので、1985年コヴェント・ガーデンでのライヴ盤です。そしてもうひとつもライヴ盤なのですが、こちらはマリオ・デル・モナコがシェニエを演じています。1961年10月1日に東京で上演された時の映像なのですが、1956年から20年に渡り8回行われたイタリア歌劇団公演のうちの1演目がこの公演だったのだそうです。
それから33年後、私は1994年7月に藤原歌劇団が上演したこのオペラを観たのですが、何とその公演は1961年のこの映像に収録されている時以来の『日本での』公演だったのだそうです(奇しくも1961年も1994年も会場は東京文化会館です)。数曲あるアリアは割と頻繁に取り上げられると思うのですが、全幕を観る機会が非常に稀なオペラのようです。とても不思議。
1994年の公演では、ジュゼッぺ・ジャコミーニがシェニエ役を演じ素晴らしいものだったと記憶しています。他の主役・マッダレーナ役のジョヴァンナ・カゾッラ、ジェラール役のパオロ・ガヴァネッリも素晴らしく、とても印象に残る公演でした。
それ以降、小規模な上演(関係者の方ごめんなさい)はされたようなのですが、1961年・1994年(&1995年にほぼ同じメンバーで横浜で1公演)位の規模ではどうやら上演されていないようです。それから約10年が経ちました。
アンドレア・シェニエという人物についてはあまりよくわからないのですが、1794年7月25日にオペラと同様処刑されているのは事実のようです。そしてマッダレーナ・ディ・コアニーのモデルと思しき女性(フランチェスカ・エメー・ド・コアニー)も実在したのですが、オペラのように劇的に革命直前に出会い共に処刑される運命を辿ったわけではなく、シェニエとは獄中で知り合いその美しさに魅せられシェニエが一篇の詩を書いたという関係だということです。オペラのように恋に落ちたのではなく、その女性はのちに釈放されたのだそうです。
多少(!?)の違いはあっても事実に基づいて書かれたこの台本はルイージ・イリッカの作です。イリッカはプッチーニの「トスカ」の台本を書いた人物でもあり(トスカはジュゼッぺ・ジャコーザとの共作)、この「アンドレア・シェニエ」はトスカと構造や物語が似ていると言われています。具体的には
・主要な人物は3人
・アリア、重唱の配置
・物語の内容(犯罪がらみで、バスまたはバリトンがソプラノと取り引きをしようとし、最後は処刑)
などです。
勿論作曲者が違いますし、状況も随分違う部分が沢山ありますので一概に「姉妹作」のように扱うことには疑問がありますが、このオペラの台本がトスカの台本からの影響が色濃いのは否めません。
今日は久々に1961年の映像を観てみました、白黒の映像にモノラルの音声なのですが熱気のようなものが伝わってくるような映像だと観る度に感じます。
現在とは比べものにならない映像の技術ではありますが、あっという間の2時間でした。
逆にこの映像の中で長いものがあります。アリア、重唱の後の拍手です。一番長かったレナータ・テバルディ(マッダレーナ)のアリアの後の拍手(&ブラヴォー数人)は2分半に及ぶものでした。拍手を受けた歌手は普段はフリーズしているのでしょうけれど、あまりに長いのでお辞儀をしているところが観ていて微笑ましい感じがしました。
デル・モナコは第4幕でのアリアの後の拍手に対して演技の為引っ込んだ(その場から去る演出)にも関わらず、また出て来て拍手に応えてお辞儀を何度もしていました。
きっとその頃の日本でオペラを観るということは貴重な機会だったのでしょう。世界の名だたる歌手を日本で聴く(観る)ことができる喜びが感じられる気がした瞬間でもありました。
幕が終わった時&最後のカーテンコールが映像ではカットされているのですが、こちらはもっと長かったと想像します(一体私は何を観ていたのでしょう??)。
フランス革命を題材にしていますので多少雰囲気が重いところはあると思います。しかしそれだけに観応えもあるようにも思われ、何故あまり上演されないのか謎です。
特にテノールとソプラノに要求されるドラマティックな声&表現に適した歌手が少ないのも上演が少ない大きな原因だとは思うのですが、何だか勿体無い気がします。映像も勿論素晴らしいのですが、またいつか生で観てみたいオペラのひとつです。
…もしやあと23年必要?かも??