11月30日、12月1日、2日の3日間、五反田・ゆうぽうと簡易保険ホールにてシルヴィ・ギエムの公演が行われました。ギエムを含め出演は3人。あとの2人は男性で、マイケル・ナン、ウィリアム・トレヴィット。
私は初日(11月30日)と3日目(本日12月2日)に行きました。初日は2階席の後ろの方、3日目は1階席の前から2列目という対照的な席で観ることができました。
初日はプログラムにある解説や寄せられた文を参考にしながら観ていたのですが、3日目は初日の印象をもとに多少余裕をもって観ることができたと思います。
上演された3つの作品は全てラッセル・マリファントという振付師による作品でした。元々英国ロイヤル・バレエ学校を経てダンサーになった方のようなのですが、その後クラシック・バレエ、即興、ヨーガ(インド)、カボエラ(ブラジル)、太極拳(中国)などの研究をしつつ、解剖学、生理学、生物力学、構造総合のロルフィング・メソッド(重力に対し、楽な身体を取り戻す為の手伝いをするボディワークらしい)の習得にも力を注ぎ、独自の振付方法をする方のようです。
プログラムは3日通して同じ演目で、「Torsion」「Two」「Broken Fall」という3作品でした。
「Torsion」はナン&トレヴィットによって踊られました。
打楽器(コンピューター音源かも)によるミニマルな音楽から開始され、始めは舞台上の離れたふたつのスポットライトの中で2人は別々に踊っています。物語性は感じませんが、スポットライトの中という限られたスペースで様々な動きによって演じられます。そして音楽や照明が変わり、2人はお互いに身体を組み合わせたり、持ち上げたり、リフトまでします。強さと均衡作用による「重力のゲーム」である作品とのことで、観た感想としては2人の関係は対等であり同志のようにも感じました。お互いの身体を支えたり持ち上げたり等、身体の接触は多いのですが、お互いの信頼関係によって身体を委ねているようにも思えはしたものの、何か感情的な表現というよりは2人の男性による身体のパズルのように感じました(あくまで私感)。
この作品は「ねじれ」がテーマになっています。私が個人的に象徴的に感じたのは、回転時の軸です。クラシックの場合、回転の軸がブレると見た目もバランスも悪くなりますが、この作品ではわざと軸を(例えば斜めに)ずらしているようでした。あくまで「ねじれて」いるものの、動きは自然に観えます。それが予定調和のように感じられなかったところは流石です。
2002年秋にナンとトレヴィットにより初演されたこの作品は、この2人にとっての代表的作品となったのだそうです。
この初演の観衆のひとりにシルヴィ・ギエムがいました。マリファントとギエムとの出会いはこの時だったのだそうです。
「Two」はギエムのソロで、元々マリファントの妻タナ・フォーラスの為に2001年に作られました。2004年秋、ギエムがこの作品を踊ることとなり手が加えられたのだそうです。
cの長い単音が終始流れる音楽(途中から音が増えていくもののcの音は最後まで続く)の中、2m四方のスポットライトに照らされ美しい手の動きが印象的な始まりから次第にダンスは激しさを増していきます。その間一度も2m四方からは出ません。
ポーズのように始まったダンスは途中激しい動きも交え、身体中で表現されます。しかしただ激しいだけではありません。
約15分間、2m四方の空間で繰り広げられた表現。よく考えると凄いことです。お得意(!?)の脚技をほとんど使うことなくその狭い空間で様々な表現を観ることができました。
初日に観損なってしまったラストの照明の演出を3日目に観ることができました。15分間狭い空間の中でセット・道具も無く、たったひとりで音楽と照明を手がかりに演じてきた最後に美しい光が射し演技も音楽も終わりました。
ナン&トレヴィットの演じるこのマリファントの作品を観て彼らと仕事をしたいと考えたギエムは2003年に「Broken Fall」でそれを実現させます。
「Broken Fall」では、まず男性がひとりずつスポットライトの中ダンスを始めます。そしてギエムが中央から現れ3人の身体が様々に且つ流暢に組み合わせられます。スピードを感じる場面は多くありませんが(勿論ところどころにはあります)、アクロバティックなシーンが随所に出てきます。
流石にギエムが男性を持ち上げるような場面はありませんが、男性2人の身体の上を転がる(うごめく?)ように移動したり、時には1人の男性からもう1人へ投げられたり…しかし暴力的な、或るいは乱暴な場面は無かったように思ったのは恐らく気のせいではないでしょう。
また男女の組み合わせであるにも関わらず性的描写も恐らく皆無だったように感じました。マリファントの目指すものは(現在のところ)もっと別の方向を向いているようです。
この演目のラストは男性2人は舞台から去り、ギエムのソロとなりました。数分間、これまで見せなかった脚技も取り入れ情熱的に踊っていました。勿論それまでの流れの上の延長であったと思いますが。そしてダンスが終わらないうちに緞帳が落ち始め全て終わりました。
演者3人の舞台。休憩20分を含め1時間半という短い公演でしたが、とても充実した気持ちになりました。できれば少し時間を置いて全く同じキャストで同じ公演を観てみたいものです。可能ならば。
<おしまい>