第60回 三重県高等学校演劇大会・県大会


日時:8月7日(金)〜9日(日)
場所:三重県総合文化センター 中ホール
審査員:油田 晃・山中 秀一・山本 直子

審査結果
最優秀賞(三重県知事賞):暁高校 「オトコーラス」
最優秀賞(中日賞)   :高田高校 「M」
優秀賞         :桑名西高校 「りばんなさい!」
             神戸高校 「教室裁判」
優良賞         :川越高校 「ターザンはもういないけど・・・」
             飯野高校 「”ほん”の小さな物語」
             亀山高校 「DOORS」
             伊賀白鳳高校 「部活の時間」 
             いなべ総合学園高校 「CRANES」
             青山高校 「シックス センス シンドローム」
舞台美術賞       :神戸高校
創作脚本賞       :暁高校 暁高校演劇部 作 「オトコーラス」
             高田高校 西尾 優 作 「M」

※最優秀賞の暁高校、高田高校は、12月24日(木)〜27日(日)に開催される
 第68回中部日本高等学校演劇大会(石川県大会)に出場します。
※優秀賞の桑名西高校は、11月20日(金)〜22日(日)に開催される
 第35回近畿総合文化祭(鳥取県大会)に出場します。
※優秀賞の神戸高校は、10月25日(日)に開催される
 第36回みえ高文祭に出場します。



上演順    
※ ▲は創作作品

8月7日(金)
 開場 13:30 開会式 13:40
(1)14:00〜 川越高校 
「ターザンはもういないけど・・・」
作・影山 吉則
審査員講評
油田先生
 舞台装置を一切置かず、役者の演技だけにまず驚いた。その勇気を称えたい。ただ無対象を中心とする演技で構成される場合には、その演技やシーン転換の約束 事を観客にも理解してもらいながら、その了解の中で想像力をふくらませてもらうというのが定石。いくつかの点で成立させるための甘さが見る側に混乱を招い たと思われた。また、舞台装置がない分、役者達の身体に観る側は集中するので、姿勢の悪さや重心の定まらなさ、発声の弱さなども気になってしまった。作品 への取り組みが真摯なだけに、「足りないもの」が浮かび上がった感じがした。

山中先生
 教室、秘密基地、夕方、海辺、星空など、様々な場面を描かなければならない脚本の要求を思い切って、何も無い舞台装置で表現、音響照明の工夫と、どこに リアルを設定するか、自分たちで設定したルールを舞台の都合でないがしろにしていくのではなく、必死で守りきっていくことに繊細になりたい。

山本先生
 装置を全く置かない、思い切りのいい素舞台。小道具もほとんど使わずパントマイムで表現し、また、机を運ぶ「ガラガラ」や花火の「ボッ」「ボトッ」など という音も、役者による生音で表現する。星球や月も美しく、倉庫を四角いエリアで表現するなど、照明に工夫が見られた。しかし、生音とスピーカーからの音 を混在させる、パントマイムと同時に小道具を使った動きがある、パントマイムで机を並べ、机があると思われる場所に役者が立つ、など「約束ごと」があいま いであったため、観客の想像力を膨らませきれなかったことが残念。この作品での「約束ごと」をきっちりと意識し、さらにすべての音を生音で表現したり、舞 台からハケずに照明と生音と動きだけで空間の変化を表現したりするほうが、効果的だったかもしれない。また、舞台に寝転び星空を見上げて話をするシーンが あったが、声が前に届かなかった。ホールの特性に応じた演出が必要だと思われる。

生徒講評委員会講評
 この演劇を見て、素舞台の中で場所が変わ り、場面を想像するのが楽しめたということ、そしてそこから見えてくるものがあった。照明効果では帰り道の星空や、海辺で花火をした時の月などが自然に描 かれており、劇をさらにひきたてていた。音響効果では日常的なものもあったがシゲが旅行に行くというのを表現するために飛行機の音などを活かしていたの で、また一味違った劇になっていたと思う。                     
 役者の演技についてはカズヤ、シゲの台詞などをもっとはきはき言う、きれをよくすればよかったとの意見がでていた。    劇中に「二つの秘密基地」が 出てきて、ひとつは体育館倉庫の中で、これはカズヤのサッチへの恋の応援をする時に主に使われており、幼馴染である三人の話をするための秘密基地だと思っ た。もうひとつは二人の思い出の場所だから、お互いが本音をぶつけあえる秘密基地になったんだと思った。 
 題名にも出てくる、「ターザン」というのはこれからのカズヤを表しており、シゲからの「もう一人でもやっていけるだろ」というメッセージが込められていると解釈をした。                


(2)15:25〜 飯野高校
「“ほん”の小さな物語」
作・飯野高校演劇部▲
審査員講評
油田先生
 図書館という空間をしっかりと作ってあり、本棚の配置により奥行きを認識させ、その空間を上手く使う演技など好感が持てた。それぞれの役者達も伸びやかに 演技をしており、この伸びやかさはこの学校の大きな特質に感じた。今後も活かしていけばかなり高い演技レベルの作品が創作できるのではと期待する。ただ、 脚本における葛藤の描き方、特に七海の心の葛藤、凛と七海の関係性の変遷など、複雑な心の表現をやや単純に描いていること、本と出会うことと、個人が変わ ること成長することへの言及などもやや浅かったように思われる。

山中先生
 正面のパネルと、メインのアクティングエリアの間に本棚があって奥行きのある舞台が会話を支える美術となった。司書室の奥、椅子の移動に雑音を出さない 工夫など、繊細な場面描写へのこだわりが見て取れた。夏休み前のシーンや「本」を巡る場面の挿入など、時空の入れ替わりが単調な手法が多かったので研究し たい。

山本先生
 舞台装置が美しく丁寧に作られていた。特に、本棚を壁際と真ん中の二ヶ所に配置したり、司書のカウンターとその奥を作ることにより、いくつもの演技空間を 作れていた点が素晴らしかった。作品は、自分たちのなかから生まれた題材らしく、展開にムリやウソがないところに好感がもてた。登場人物の気持ちの変化、 例えば、凛と出会ったことにより七海がなぜ変わったのか(七海は変わりたいと思っていたのか)や、周りの友人が七海を取られた気になってしまうという気持 ちなどを、もう少し丁寧に描くとさらに良作となるだろう。特に、気持ちのぶつかり合いや和解(「メガネっ子がひとりおってもいい」)は、本人不在の場では なく、直接伝えてほしかった。場面転換に明転(ブルー場)を用い、凛が袖から出てくるのを見せたが、図書室の壁の中から出るように見えてしまった。敢えて 見せたいという意図はわかるが、出る場所の検討が必要だと思った。

生徒講評委員会講評
 七海は図書室に落し物の手帳をみつける。そ の手帳は、七海が読書感想文を書くときに本を探してくれた凛の手帳だった。その手帳に書かれていたマララさんの本の言葉「一人の子ども、一人の教師、一冊 の本、そして一本のペン、それで世界を変えられます。」これを見て興味をもった七海は、この本を読むことに。そして七海はこの本をきっかけに凛と仲良く なっていく。 
 劇中劇でマララさんが撃たれる場面があります、登場人物はこの時全員制服を着ています。これは、自分たち今の日本の高校生に重ねてみると同時に、学校が あって勉強ができる環境があることがいかに幸せであるかということを表現していると思います。また、勉強をすることで選択肢が広がることや自分の思ってい ることを世界に伝えることが大切だということを表現していると思います。                           
 自分の気持ちを表現し、目の前の壁に立ち向かう勇気など、簡単に気付くことはできないと思いますが、小さなきっかけで得ることもあると思います。それに気付くことで人は変わることができるのではないでしょうか。   
 また、この作品ではひとつの本を通じて、すれ違う思いがひとつにまとまりました。ずっと一緒にいてもわからないことはあります。口に出さなければわから ないことは、仲のいい友達の間でも言わなければ伝わらないと思います。これは難しいですが、とても大切なことだと思います。      
 この作品では、ほんの小さなきっかけで人は変わることができるということが描かれていると思います。

8月8日(土) 開場 9:15

(1) 9:30〜 亀山高校
「DOORS」
作・makina*▲
審査員講評
油田先生
「非日常のここからは出ることができない世界」に各登場人物達がどのように対応してゆくか。脚本の成立は面白いと思った。ただ、その世界に対する危機感や 恐怖感・疑問よりも、諦念の方にウエイトが強く、構造としては葛藤が強く描かれず平面的に展開したのは否めない。演技や舞台空間の構築に関しても、様々な 角度から検討して欲しい。演出的要素があれば評価が大きく変わったのではないかと思う舞台。どうすれば「面白い」舞台が成立するか、丁寧に向き合うことが 一番の近道ではないのかと感じた。

山中先生

 主場面を現実から離れた虚構の世界に設定し挑戦したことには好感が持てた。ただ、タイトルの扉とそれを構成する異世界を構築する、言葉選びや場の設定に は説得力や整合性に欠ける部分があり、描かれている葛藤が真実に感じられないのは残念であった。男女入替えの登場人物設定に意味がないことも然り。

山本先生

 不思議な空間に集められた4人の人間たち。彼らそれぞれが抱える迷いや悩みが語られ、最後は心を決めて一人ずつドアから出て行く。彼らはどうしてそこに集 められたのか、共通点は何なのか、メルは異空間から出ない人なのか、出られない人なのか、番人なのか、彼らがその場を出て行く(出られるようになる)にい たった気持ちの変化、その変化に至る彼らの気持ちのぶつかりあいなどをもっと見たかった。テクニカルとしては、セリフにかぶせる音レベルが大きかったり、 最後にドアが開いたときに見える目つぶしが、ドアが細くしか開かないため一瞬しか見えなかったり、ドアの後ろに陰パネルがないため、ドアが開いたら袖幕が 見えてしまうなど、惜しいところが多かった。作りたいものは理解できるので、今後はどうすればそれをよりよく伝えることができるのか、客観的な視点を持っ て演出をしていただきたい。

生徒講評委員会講評
 この作品は、ヒロ、真澄、茜の三人がドアを 開けたらドアがたくさんある空間にたどり着いてしまいそこにもともといた、メルという人と出会い、抜け出す方法を探していく話です。私は、この作品は前を 向くことの大切さ、時には立ち止まり振り返ることの大切さを伝えたかったのではないかと思いました。
 メルが制限時間があると嘘をついた理由は、初めて受け入れてくれた三人だから帰したくなかったのではないかと解釈しました。またメルが出て行った理由 は、現実で生きることを諦めていたけどヒロの言葉に気付かされ現実に戻る決心がついたからだと解釈しました。しかし後半は動きがあまりなくて話が入ってこ なかったところもあったのでそこが改善されたらもう少し良くなったのではないかと思います。                                   
 真ん中のドアが開いたときのスポットライトが美しく、スタッフワークも整えられた上演でした。 

(2)10:55〜 四日市西高校
「……。そして、俺らはここにいる。」
作・四日市西高校演劇部▲
審査員講評
油田先生
 作品の製作にあたって在住外国人の生活や状況を調査したりフィールドワークも行ったこともあり、一面的な図式で描かず、多面的な視点から描いたことに好感 を持った。ケンの悩み、ルカスとの別れ、日本人と在住外国人のあり方など、やや盛り込み過ぎで、全体としては印象が薄くなってしまったと感じた。衣装など には工夫があるのだが、身体性を意識してもっと演じていけば伝わる情報量が増えたのではないかと思った。最後のダンスをきちんと踊って欲しかった。

山中先生
 地域の課題をフィールドワークや実体験に基づいて構成している所に好感が持てた。で公園というパブリックスペースをハケ口を一カ所にする事によって登場 人物の動きや会話の方向をうまく整理できていた。ストーリーの中でそれぞれが抱えている葛藤や不安はよく伝わったが、舞台上での生の反応や感情の動きをも う少し観たかった。

山本先生
 異文化共生にまつわる諸問題を、高校生の視点でよく描いている。文化の違い、対立、自分のアイデンティティなどに加え、努力、偏差値などの問題が、さまざ まな登場人物のエピソードを介して語られるが、ひとつの演劇作品としてみたときには、テーマが多く焦点がぼやけてしまうので、テーマの選択と集中が必要だ と思われる。オープニングにスライドショーを使って状況説明がされるが、この情報は人物のセリフの中に入れ込んでいくほうが、その人物設定にも深さが出た のではないだろうか。また、登場人物の多くが対立し、和解するが、どの言葉で怒るのか、どの言葉でその気持ちが溶けるのかがあやふやであるため、唐突に怒 り唐突に仲直りする感が否めない。それぞれの登場人物の関係や気持ちの流れをもっと丁寧に描けば、さらに良作となると思われる。

生徒講評委員会講評
 これは日系ブラジル人の方々と日本人が文化の違いについてぶつかりあい、それぞれが抱えている悩みをみんなで解決する話です。                                   
 印象に残ったのは、舞台を広く使い、動きが沢山入っていたところです。ブラジル式のあいさつだったり、ポルトガル語を使っていることだったり国の違いが わかりやすく見やすかったです。普段から日本人は国が違うだけで簡単に差別したり傷つけたりしていることがあります。この作品でそういったことが考えさせ られました。 
 一番意見が多かったのは題名の「……。そして俺らはここにいる。」の「ここ」の意味と「俺ら」の意味でした。「ここ」の意見は日本とブラジルという具体 的な場所や、空の下、俺らは心の中にいる、具体的には決まっていないが「その人」がいる場所などでした。「俺ら」はブラジル人や日本人とブラジル人の両方 などの意見が出ました。                   
 どれだけ場所が遠くても同じ空の下にいればつながっているんだということが伝わりました。

(3)12:20〜 神戸高校
「教室裁判」
作/潤色・山崎 公博
審査員講評
油田先生
 配置を斜めに設置することで、きっちりと作り込まれた教室という舞台美術にさらに立体感がうまれた。登場人物達の位置関係もよく練られていたように思う。 内容が議論を前提としているだけに、どのように会話が組み立てられエネルギーの流れを作るかと言ったことにもっと研究をして欲しい。久保をどのように扱う かの対応の違い、進行と共に変容していく姿がやや単調になってしまったのが惜しい。

山中先生
 教室を斜めに配しは舞台装置で、観せる場所も機能的に配置されており説得力があった。スムーズでよく稽古されたと思われる台詞運びが続くが、しかしその 分、相手の発話を受けての次に返す言葉の新鮮さや、裁判という緊張感のなかのエネルギーのやりとりがが感じられず、セット同様奥行きのある、人物造形が観 たいと思った。

山本先生
  教室のセットがスピーカーなど細部に至るまで、丁寧に美しく作られている。またそれを真横に配置せず斜めに置いたことによって奥行を表現するなど、配慮が なされている。ただ、せっかくの美しい舞台を、演技のなかで使いきれていなかったことが残念。窓から出て行く動き、窓の奥(廊下)でのシーンを作るなど、 その空間を活かした演出が望まれる。
人物のキャスティングもうまくできており、ムリがない。また張り紙に応じた演技場所など、見せ方についても演出がされていた。役者の演技のテンポが同じ だったので、例えば被告人ネタで盛り上がるところはテンポアップ、久保の審議のシーンなどはしっかりと聞かせるなど、メリハリをつけること、演技の際の手 の使い方、立ち姿勢など、身体表現を意識すれば、よりよく伝わるのではないだろうか。

生徒講評委員会講評
 勇気がなくて言えなかったり、罪滅ぼしでかばったり、あまり深く考えず面白半分で話していたり、聞いたことや想像に左右されたりする、高校生の曖昧な気持ちや無知なところ周りに合わせてしまう臆病さ、などについて深く考えさせられた作品でした。
 また、三重の方言が自然に出ており親しみやすくなっていたのでよかったです。教室のセットがリアルで、裁判の机の配置がみやすく誰がどの役割をしている かがわかりやすかったです。グランド側の窓を開けたとき、野球部が練習をしている声が聞こえたことにより状況がよく理解できました。加えて、前から夕日が 射すことによって新たな日にむかっていくことを考えさせられました。
 裁判というものを教室でやることによって裁判が自分たちの身近にあるように感じることができました。また、社会で起きた事件と学校で起きた事件の二つを出すことによってより裁判が近いものに感じることができました。  

(4)14:20〜 桑名西高校
「りばんなさい!」
作・kuwanisi劇場脚本部▲
審査員講評
油田先生
 舞台空間を横に広く使わず、高さを意識した配置にすることで限定して見せるやり方は少ない登場人物をより集中してみせるために効果的に機能したと思われ る。登場人物達の演技力も他者の台詞への反応、関係性の構築、アンサンブル性、照明・音響など、様々な角度から検討したことがうかがえる。ただ、脚本の構 造として、様々な手掛かり・伏線は提示されていても核心への言及や収束してゆく処理が弱く、伝わりにくい終わり方になったのは残念。

山中先生
 俳優が舞台上の表現を肯定して、共演者と作るそこで起こることのおもしろさとしては、抜群に面白かった。しかし物語の展開と構成が時間を経るごとに、深 まっていくのではなく、答えの提示に終始し、舞台を咀嚼することのおもしろさの可能性を狭めているように感じた。縦に運動する舞台美術、橋がかりから登退 場するベッドの待合室などオリジナリティーに富んでいるだけに惜しい。

山本先生
 亡くなった人たちが自分の記憶の入った箱を持って集まってくる白い部屋。ここでは何歳で亡くなっても若い姿であるという発想も面白い。途中で後ろの白い布 パネルが倒れ、彼らが亡くなった理由を明かす。記憶の箱は、白い柱のオブジェの上に置くと、それぞれの人物のイメージカラーに変わるなど、装置の配置や使 い方は素晴らしい。役者の身体表現力もとても高く、間の取り方もうまい。音楽は色々なバージョンの「リバーサイド」、選曲もお洒落である。脚本としては、 特に後半、亡くなった理由が明かされたのちの登場人物たちの気持ちが伝わりにくく、前半が秀逸だっただけにトーンダウンしてしまったことが残念。ラストで は、黒服・ホテルマンとなったお母さんが、ゆうからしい少女を白い部屋に導く。黒服のホテルマンはすべて、現世に思いを残していた人々なのか、疑問が残っ た。

生徒講評委員会講評
 赤い箱、青い箱、黄色い箱、緑色の箱。記憶の入った箱。その箱の中には、悲しみ、喜び、さまざまな感情が入っています。ともなり、ひかり、さゆみ、だいほう、この四人の共通点とは何か?ホテルマンの存在とは?講評委員もたくさんの案がでました。
 不思議な世界観や、前半と後半のメリハリがとてもバランスがよく見やすかったです。また大切なものとは何かや、自殺を考えてしまっている学生に対するメッセージだという意見も出ました。役者一人一人の行動、台詞、些細なことでも見逃せない作品でした。
 ほかにも、音響のリバーサイドホテルが題名の『りばんなさい!』に似ているという意見やこれから後悔しないようにがんばれというメッセージもこめられて いるという意見もありました。結末につながる伏線もたくさんあり見ていても飽きなかったです。役者も生き生きしていて、とても個性が出ていて、自然な動き だったので見ていてたのしかったです。「りばんなさい。」その一言にたくさんの思いを感じました。  

(5)15:45〜 伊賀白鳳高校
「部活の時間」
作・伊賀白鳳高校演劇部▲
審査員講評
油田先生
 演劇部の活動風景を、時間軸を追って行ってゆく、定点観測のような進行は面白く感じたが、定点観測とはいえ、場ごとの処理に同じ形が多くどのようにメリハ リをつけた展開をしてゆくか一考が求められる。またそれぞれの登場人物達の気持の移り変わりを見せてゆく構造があればと思う。

山中先生
 大胆に自分たちの置かれた演劇部の状況を奇をてらうことなく、素直に劇にした作品で好感が持てた。先生と部員達の距離感、部員同士の距離感が意図せぬ所 で微妙なおかしさ(良い意味で)を醸し出しているが、もっと意図して声や体を使用した演技を研究していけば、さらに可能性が広がると感じた。

山本先生
 この作品では、毎日の「部活の時間」を描くために、同じようなシーンを何度も繰り返していたが、時間経過を忠実に追うのではなく、いくつかのシーンを捨 て、逆に大きな変化のきっかけや変化がみられるシーンを集中して描くほうが、より伝わりやすかったと思う。たとえば山原が部活をしばらく休み、久しぶりに 来てほかの部員に怒る場面があったが、怒る理由、きっかけが見えないので、感情移入がしにくい。山原がそう いう態度を取ることが観客に理解できるように、登場人物の人間関係も含め、伏線をしっかりと張る必要がある。そのためにも、劇中劇の部分を捨て、リアルな 部活の時間のみを描くほうが良かったかもしれない。また、観客の集中力を欠けさせる暗転はできるだけ避け、椅子を並べるなどは明転にして見せるというよう な演出も検討してみてほしい。

生徒講評委員会講評
 劇の中で自分たちの上演している劇をすると いうアイデアはとても面白いと思いました。演劇部の話だったので共感できることも非常に多かったです。なぜ劇中で夏大会に「部活の時間」を上演しようとし たのかということについては、3年生は最後の夏大会で創作脚本を上演したかったからだと考えました。仁志は今回のことを経験して仲間を信じることの大切さ を知って、そのことを伝えるには自分の経験したことを書いたほうが伝えやすいと思いこの脚本を書いた、という解釈をしました。山原については仁志と部長の 会話の輪にうまく入ることができず、元々、はぶかれているような状態だったから5月末までの間に勉強以外の日の部活に来づらくなったと解釈しました。       
 劇中では伊賀白鳳高校を舞台にしているので方言を使っていたのですが、ところどころ不自然な方言や標準語か混ざり中途半端になっていました。いっそ全部標準語がいいという意見もでました。

(6)17:10〜 暁高校
「オトコーラス」
作・暁高校演劇部▲
審査員講評
油田先生
 男性のみになってしまった合唱部の奮闘を荒唐無稽ながらもそれを笑いに変えてしまうスピード感のある展開、場面の切り替え、キャラクター設定と配役の巧 さ、多人数が舞台上にいるにも関わらずその立ち位置や台詞からうまれる関係性の距離の取り方など、相当の練習量と演出の技が大きく光った好演。男性のみに なってしまった転落への軌跡や、終盤の展開に向けての説得力が増していけばさらに面白くなったのではないかと思われる。

山中先生
 人数の多い俳優それぞれに見せ場を持たせキャラクターをはっきり提示して、勢いを間や呼吸で制御し、立ち位置なども検証されており、意欲的に丁寧に稽古 を積み重ねてきた作品だと言うことがよく伝わってきた。ドタバタの連続と問題に当たりながら解決へと方向付けさせていくテンポがよかった。

山本先生
 男子に勢いがある。彼らをグループごとに分け、衣装も演技もそれに合わせているが、キャスティングも含めそこにムリがなく、好感が持てる。ただ、後半やや トーンダウンしたことが残念。脚本に関して。校内公演のシーンで、生徒会のダンスのあとコーラス部員たちがどうして急に「やる意味があると思えない」「あ ほらしくなってきた」とテンションが落ちるのか、その理由・きっかけがあやふやであり、また、そこにOGが来て昔話をきっかけにみんなのわだかまりが解け るが、そのあたりの展開が少し安易に感じた。登場人物一人ひとり(グループ)に温度差もあるはず、それがしっかりと描かれると、よりレベルの高い作品にな るのではないだろうか。

生徒講評委員会講評
 バラバラで男性しかいない合唱部。あまりに 不揃いなため、コンクールに出る許可をもらえなかった。しかし、どうしてもコンクールに出場したい部員たちは、顧問の先生に認めてもらうために校内公演を することに。部員たちは少しずつ団結力を高めていく。                                   
 この脚本では、目標を定め、それに向かって一直線に突き進む部員全員の一体感が描かれていると思います。その目標は劇中で変化していますが、私たちはこれを部員全員が自分たちに足りていなかった根本的な問題に気づいたからではないかと思いました。
 顧問の先生が、始めにコンクールの出場を却下したのは、部員にまとまりがなく、合唱本来の楽しさを忘れてしまっていることに気づいていたからだと思いました。
 個性的な部員が、部員のことをよく見ている部長によって少しずつひとつの目標に向かい始めるところから、みんなでひとつになる事の大切さを感じました。

8月9日(日) 開場 9:15

(1) 9:30〜 いなべ総合学園高校
「CRANES」
作・黒瀬 貴之
審査員講評
油田先生
 千羽鶴を生徒会室で折るという行為から始まる社会や、それぞれの登場人物達の現在にも展開が拡がってゆく内容は、演じる者達がどちらに対して力点を置くか で見え方がかなり変わるのではと思うが、どちらともつかない「こわごわ」と扱っている印象が最後まで拭えなかった。脚本から読み取れる情報をどのように表 現してゆくか、丁寧に創り手達が追いかけて議論を重ね、試行錯誤するべきだったのではないかと思われる。

山中先生
 戦後70年という節目で、日本人全てが当事者として作品に関わることになるという意味で、折り鶴の手触りや自分の居場所の問題などもう少し丁寧に、どこ かこだわりを定めて作品づくりをすべきだったのではないかと感じた。舞台の外の風景もこだわりのある部分と、省略がうまく処理できていない部分を気をつけ たい。

山本先生
 自治会室の装置。部屋に置かれたマネキンの足元に小さな冷蔵庫がある設定にしてマネキンにもぐりこむなど、置かれているものをうまく演技に取り入れてい る。音響も、窓の開閉とともに音量レベルを変えたり、グラウンドがある設定の下手スピーカーのみから音を出す、役者の動きと照明のレベルを合わせるなど、 細かいスタッフワークが際立っていた。
これは、原作の問題であるが「鶴を折る」と言うことの意味、千羽という数を揃えることに意味があるのか、少なくても心を込めて折ることに意味があるのか、 千羽鶴の意味・扱いに疑問が残った。演技面では、例えば怒るときには机を両手でたたく、糸を捜すシーンでは全員が必死に探すなど、演技やキャラクターが似 通って見えたので、キャラクターをしっかりと設定し、それに応じた演技を心がけるとより伝わる作品になると思った。

生徒講評委員会講評
 この話は、生徒会執行部が「戦後70年三重 から広島へ平和を祈って 8・6」をスローガンにし折り鶴を折る話です。   この作品を見て前半は戦争について、平和とは何かについて考えさせられまし た。後半は、ひとりひとりの、さまざまな想いが伝わってきました。最後は、その想いを込めて折り鶴を折っていたんだと感じました。そして、絶対諦めないこ との大切さを学ぶことができました。講評委員会は何を諦めないかについて考えました。そして、全校みんなで平和について考えること、鶴を1000羽完成さ せること、それぞれの想いをつらぬくことなどの意見がでました。                    舞台装置が細かくセットされていて、照明の夕方 を表すようなオレンジ色や、音響で窓の外の活動のようすがわかるよう工夫されていたと思いました。                         
 私はこれから、何事もあきらめずやり通したいと思ったし本気で自分の気持ちを伝えたいと思いました。

(2)10:55〜 高田高校
「M」
作・西尾 優▲
審査員講評
油田先生
 文化祭の実行委員長を誰にするか。そこを巡る人間関係を見せながら、善意と悪意、意識的・無意識的な行為の表裏一体さを何気ない放課後からあぶり出し見せ てゆく、ミナミがホールケーキを食べるシーンは演劇でないと表現できない、複雑な感情を提出するなど興味深かった。ただ、各登場人物の身体性や、演技への アプローチがおしなべて単調なことが気に掛かる。過剰な演技や声量で挑むことよりも、むしろ細かな演技や動き・反応を丁寧に積み上げてゆけばさらに深みを 見せられる構造になっているのではないかと思う。

山中先生
 高校生同世代のリーダーや友人との関係が、逆説的に描かれており、演劇ならではの表現であると感じた。それぞれの立場や役柄を際だたせようと、発話の一 つ一つが強く、舞台上で聞き合う事ができずに過剰になっているところがあると感じた。声の響きの調整、舞台上での距離感の調整をどのように行うかに課題を 感じた。

山本先生
 丁寧に作られた教室の装置。廊下にも窓の付いたパネルを配置し、その窓からホリゾントの色が見える。放課後の設定ではあるがあえて夜のような青を用いたの は、心理描写だろうか。廊下部分の演技等もあり、装置を効果的に使った演出となっている。教室での各グループの配置もうまくできている。最後のクライマッ クスでは、委員長に決定したみなみが「おめでとう私」と狂気じみた様子でホールケーキにむしゃぶりつき、崩壊した心情をことばで説明せずに表現した印象的 なシーンとなっている。そこに至るまでの過程、あかねとダブルMの関係、みなみはどうしてそこまで委員長になりたくないのか、めぐみのみなみへの執着、そ れらの微妙な人間関係を表す伏線がより明確にあると、ラストがもっと迫ったものになったのではないかと少し残念に思った。

生徒講評委員会講評
 一人一人の個性がとても分かりやすく、動き がたくさんある中でも、声が聞き取りやすいお芝居でした。また机の配置が横向きだったけれど、役者一人一人の表情が見やすくて、とても工夫されていると感 じました。廊下での日常的な会話がわかるような演技が上手にできていると思いました。
 そして、最後のケーキを勢いよく食べるシーンには多様な意味が考えられました。たとえば、ケーキを一人で食べることによって、ミナミの孤独を表している ということ。たとえば、ケーキを食べることによってメグミの過剰な気持ちを飲み込んでいるということ。見る人によって、さまざまな解釈が可能でした。
 題名のMについては、ミナミの孤独を表しているのではないかという意見が出ました。本当の気持ちを伝えても、上手くいかないこともあるというあやうげな、不安定さを表しているのではないかと考えました。 

(3)12:20〜 青山高校
「シックス センス シンドローム」
作・堀 敦貴
審査員講評
油田先生
 主人公が幽霊と繰り広げるコメディ。脚本の細かな笑いや動きの想定を研究して、また、実に演じる事を楽しんでやっており、好感を持てた。基礎的な演技レベ ルが高いとは決して言えず、身体の訓練、発声など(面白ければいいと言われれば、そこまでなのだが)レベルアップすれば伝えられる幅はさらに拡がったので はないかと思う。期待したい。

山中先生
 会話や立ち位置、舞台装置の設定など極めて荒削りで、もう少し細かく決めごとを作って忠実に再現していく作業が必要度と言うことと同時に、役者、スタッ フが一体となり楽しんで作品を作り演じている雰囲気が伝わってきた。これはとても重要なことであると感じた。作品の展開とキャストのキャラクターに引き込 まれた。

山本先生
 みんなで楽しげに作品を作っている様子が、よく伝わってきた。ただ、特にコメディはセリフのテンポの緩急や役者の身体性が求められるので、キャラクター やシーンに応じてそれらに変化をもたせる演出的視点が必要となる。また、スタッフワークに関しても、装置のドアパネルを開けたら人形とシズが見えるので、 黒いパネルは上手ではなく下手に置くほうが良かった、セリフにかぶせる音量が大きくてセリフを消す、ホリゾントの色が濃すぎて地明かりとのバランスが悪 い、などの荒さも目立ったので、今後全般的に細かい配慮をもって作品作りをすることを心がけると、よりよく自分たちの世界観を伝えることができるのではな いかと思った。

生徒講評委員会講評
 この作品は、主人公和之が突如真太郎と名乗 る幽霊と出会い、和之の悩みを解決する作品です。劇の中では多くのギャグが練りこまれており、大人から子供まで幅広く楽しむことができた劇だと思いまし た。特に幽霊という不思議な存在の表現がしっかりしており、幽霊だからこその面白さがありました。ただギャグが多かったことにより、シリアスな場面が少な くなり、全体のバランスを崩していたのではないかとも、思いました。
 演出の面では会話のテンポがよく、まるでコントをしているように笑えましたが、時々何を言っているのか聞き取れないこともあり、その点が良くなるともっといい劇になるのではと思いました。     
 音響では、怖い雰囲気を出すために流していた曲がしっかり合っていたので良かったです。またこの作品は、こんな風に幽霊が見える世界もあるかもしれないという提案なのではないかと解釈しました。