| (4)17:30〜 神戸高校 |
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「避難」
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作・村端賢志(川瀬太郎原案)/出典・季刊高校演劇No.219
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| 講 評 |
工藤 千夏 先生
2013年春フェスで、徳島県の富岡東高校羽ノ浦高校『避難』(原案:川瀬太郎、作:村端賢志)を拝見しています。その静かさとは対照的に、戯曲も演出
もとてつもなく強く、印象的な作品なので、オリジナルと比較せずに観劇することは不可能でした。その上で、神戸高校演劇部の『避難』として、とても強く
迫ってきました。どちらがいいとか、ディテールがどうこうという話ではなく、しっかりと今演じている俳優たちが、彼ら自身の『避難』を創っていました。
既成作品、特に、この『避難』のように舞台美術が特殊で限定されている作品は、オリジナリティを出すのが難しく、創作脚本に比べて低い評価に甘んじるこ
とが多いです。今回も、幕があいた瞬間には、ああ、同じセットだなぁと思いました。音楽室の外の廊下で話す生徒がガラス越しに透けて見えている、それに
よって時間の描き分けているのですから当然です。しかし、ナカムラも、アベも、ノグチも、そして、ハセガワも、イトウも、登場する5人の生徒は、模倣では
なく、戯曲を読んで理解した役柄を、一人の俳優としてしっかり捉え、演じ、その人物を浮かび上がらせていました。魅力的と称するには実にいびつな5人の
キャラクターは、とてつもなくしっかりと舞台上に存在し、まさに生きていました。息苦しい、思い出したくない、いやな思い出のようなあの時間をとことんリ
アルに紡ぐ演技力と、5人で作り上げた不協和音のようなハーモニーは特筆すべき。
これから上演を重ねる中で考えて欲しいのは、効果音の入れ方です。ここまでデリケートな演技をしているのですから、音に対してももっともっとデリケート
に取り組みたいです。どうしても鳴ってしまうという、音楽室の扉の音は大き過ぎないか。防音の音楽室の扉を開けたときにだけ聞こえる「悲愴」第二楽章は、
どんな音でどんな風に聞こえるべきなのか。ハセガワが最初に聞いたときに下手だと感じた(曲になっていなかった)イトウの弾くピアノはどれだけ狂気じみて
いればいいのか。空気の振動と心の震えがシンクロするような世界です。極めてください。
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山中 秀一 先生
音楽室の中とも、外とも感じられる壁。廊下側、或いは音楽室側の壁面。上下に引き戸、窓、換気窓。窓は紗になっていて、職員と生徒とのやりとりがみえる。上手にはグランドピアノ。
生演奏、カメラが登場すると、そこに何が映っているのか、また映されてきたのか気になる。音楽室、外ではピアノの音が聞こえてきてとの描写があるが、音楽
室の中では避難を促す音楽は聞こえない、と言う事をもっと細かく検証。4階からみえるグランドの風景を如何に観客に感じさせるか。
音の処理が難しい、誰かの中で流れる音、心の中で響いている音を舞台上にあらわしてみてはどうか。血の流れる鼓動、遠くで聞こえるグランドの雑踏。近くにあるかも知れない踏切。
抱えている物はそれだけでは伝わらない。効果的に見せていく手法を探りたい。
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小熊 ヒデジ 先生
台本の力に負けない迫力ある演技に引き込まれました。観ていてドキドキしました。生楽器と俳優との共演は、個人的には難しいと感じているのですが、この
作品ではとても良い相乗効果があったと思います。ある意味完成されているようにも思うのですが、さらに一歩前に進むには、一度完成した作品を壊す試みをし
てみてはどうでしょうか。それぞれの人物造形を少しブレさせてみる、思い切った間を試してみる、無意味な動きを入れてみる、大胆に舞台美術を再考してみ
る、等々。今のままでも十分に良くできていると思いますが、何か余白を見つけられたらしめたものだと思います。あと、ここが四階であり、窓から見下ろすと
グランドに避難する生徒たちが見えるという設定が、もっとリアルに伝わると良いと思います。
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生徒講評委員会
タイトルの「避難」とは何を示しているのでしょうか。いじめを受けているイトウがハセガワの映画に使ってもらっているという事実に逃げているという「避
難」と、ハセガワがイトウを利用している自分からの「避難」など、多様な解釈が可能でした。また、この劇のテーマについては、イトウのハセガワへの「依
存」、また自分がいる意味を考えさせられたということで「存在価値」などが挙げられるかと思います。さらに、劇中でよく使われていた「ひとつらなり」と
「一貫性」という二つの言葉はこの劇のキーワードであり、イトウがピアノを弾くとき毎回曲の始めから弾き始めることにも何か関係があるのではないかと、観
客の想像力に訴えかけるお芝居だったとも思います。また、ピアノを生演奏することの音響効果は印象的かつ効果的で、すばらしいと思いました。照明と教室の
パネルを使って舞台の奥と手前を使い分けるのも、場面の転換を分かりやすくするのに効果的でした。
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