私設図書館 ”三上神社”へようこそ。ここにはHirokoの小説 「 風のSketch 」を奉納してあります。 境内入口へ戻る




「うー、九月ともなると夜はやっぱし冷え込むなー」
「うん、言えてる。グスッ、わー、まだ二時二分だ」
「‥‥夜明けまでにはまだまだ大分あるなぁ。‥‥生きてっかな、その頃までオレら」
「鬼ゴッコでもやれば、あったまるんだろうけど‥‥」
「ばっか、そんな事してたら見逃しちまったりするだろぉ」
「そう。だから賢い会長さんは、たき火をしているのさ」
「おしるこ食いてー」
「あ、オレあんまん食べたい」
「んとねっ、んと、くみこは、らあみんたびたいのだなっ」
「誰がくみこかっ。んでもラーメン食いてぇなぁ。会長ぉ、カップしましょー」
「だぁめ、あれは三時のおやつと決めているんだからなっ」
「ちぇー、つまんねーの。それにしても、夜通しキャンプ三回目だぜぇ、そろそろUFOさん、姿を見せてくれてもいいんでない?」
「聡ぃ、いっつも言ってるだろぉ。コンタクトはとにかく根気しかないって。オレ達が頑張ってるのを見つけて感激して降りてくるUFOもあるかもしれないだろぉ。そいでさぁ、話したりなんかして‥‥もちろん言葉なんかいらないんだ。テレパシーだよ、あー、なんというロマン!」
「‥‥そーですか‥‥光ぅ、あっち向いてホイやろーぜっ」
「何か―――?」
「ずわわわわわ―――――――――――っ!! なんだてめーはっ!!??」
「あっはっはー、ひっかかってやんのー、だらしねー、腰抜かしやがって。このマスクとっても怖いで‥いてーっ!ぶたなくてもいいじゃないかぁ、いじめっ子ぉ」
「‥‥いじめっ子はどっちだっつーの‥‥おい、星ぉ、あっち向いてホイ‥どわ―――――っ!」
「‥‥どーしたのかな?」
「お前は素顔がコワイ‥あっ、ウソ、じょ、冗談、冗談、ほんのちゃめっけだよ。あ、やめよーね、暴力反対、住みよい社会、明るい政治だぜぇ、星くん、星ちゃん、許して、ゆる‥‥あれっ?何だぁ‥‥?」
「ポキポキッ、ごまかそーたってそーはいかないっつーの。顔がどーしたってぇ?」
「か、顔がオモシロイ‥うわー、ち、違うんだ、そーじゃなくて!あれ、あれ、あの光点はなんだろーか」
「このやろ、二度も‥‥」
「まて翔翼っ!ありゃUFOだっ」
「へ?またぁ、悠一までオレをだまそーとして‥‥どこさ」
「うわーっ、ありゃホンモノだぁ、会長ぉ、カメラ持ってる!?」
「もー撮ってる!すげーっ、降りてこんかなぁ。おっと、聡ぃ、遊んでないで光とビデオ!」
「うははっものすごい興奮。オレはじめて見る!」
「ちょ、ちょっとどーしたのさみんなっ、ど、どこにUFOなんて‥‥」
「くっそー、こんなんならモータードライブ持ってくれば良かっ‥あの、会長ぉ、フラッシュたく必要ないんじゃない?」
「えっ?あ、そ、そーだったな(知らなかった‥)いやー、気が動転してるもんで‥そーだよな、いちいち充電待ってたらUFO逃げちゃうもんな」
「‥‥そーじゃなくて‥‥あ、消えたぁ」
「くそー、話しはできなかったか。まぁいいか。バッチリ写真撮ったし。光ぅ、ビデオの方は?」
「‥‥ははは‥‥マイクセットしてる間にいなくなっちゃって‥‥」
「あほぉ!んなもん使わんとゆーに!!」
「‥‥会長ぉ、レンズにキャップ付いてますよ‥‥」
「あの、‥UFOって、‥あの‥‥」

出演:
南晴久(みなみはるひさ・UFO研究会会長):セリフno.6
福島悠一(ふくしまゆういち・副会長):セリフno.5
山口聡(やまぐちさとし・ビデオ係):セリフno.3
早川光(はやかわひかる・ビデオ係):セリフno.2.4
翔翼星(つばさしょう・荷物運び):セリフno.1‥last




  


 睛銀色(スペースシルバー)の球形小型宙航艇(ボール)は、音こそしなかったが、すさまじくも激しい衝撃を乗員に与えて、午前二時の砂浜に墜落した。
「おわったったっ!!」
「きゃ――っ!!!」
「あで――――――っ!!」
 しっかりロックしておいた筈の、資材を入れてあるケースが、まともに一個、しかし形状のわりに重量のありそうなやつが後頭部を直撃して、シートからつんのめった彼の上にどすんっ!と乗っかってしまったものだから、銀河陽史は痛い処が多すぎて、果たしてどこをさすっていいものやら見当がつかずに、ただ手足をジタバタさせながら、横のシートでこれまたベルトが外れないまま衝撃で逆さになって足をバタバタさせている中沢敬之に助けを求めた。
「たっ敬ぁ!! なんとかしちくりよーっ重てーっ」
「お、俺だってなんとか‥あー頭に血が上るーっ‥あ、下がってんのか‥‥どーでもいーけど」
「ばほーっ! ベルト外しゃいーんじゃねーかっ!」
「おー、ナイス! よいしょ‥‥あ―――――っ!!」
 はっきり言って多少間の抜けている彼の、フリーになったカラダは、そのまんま頭を軸に倒れ、陽史に乗っかってるケースの上に伏した。
「ば―――っきゃろ―――――っ!! 早くおりろーっ!! 死ぬ―――っ!!」
「おー、わり、わりぃ。よっと。ん―――――しょ」
 敬之がケースをどかした後も陽史はしばらくつぶれたままで、ぜーぜー苦しそーにあえいでいた。
「あ――――っ死ぬかと思った――、ぶぇ――――何なんだよ、一体ぃー。す―――――っは―――――っ、うーよかったぁ、まだ肺は元気だぁ。‥‥にしてもおかしーな、なんなんだこの着陸の下手クソさわぁ? 計器どっかイカレてんじゃねぇかぁ?」
 艇体のカモフラージュの為のシールド発生装置をいじってる敬之は、ちらっとあせりの表情を見せ、横顔にひとしずくの冷や汗が流れるのを感じながらも何食わぬそぶりで作業を続けた。
 コントロールパネルに向かった陽史は、インプットしたデータ達を起こし、チェックし始めた。
「っかしーなぁ、どれも間違っちゃいな‥‥ん? 荷重総量が発進時と比べて増えてる? ‥‥何だこりゃ、途中で拾ったモノなんてないし‥変だな、敬も太った風はないし‥‥おい、敬!」
 陽史の呼びかけに敬之はびくぅっと犯罪者に見られる驚きとあせりの入り混じった表情で振り返り、か細い声で返事をした。ごくんとつばを飲み込んだあとで。
「な、何かな?」
「お前、間違って打ち込んだろぉ、だから計算狂ってこんなヒドイ事になったんだぞぉ、生きてるからいいものの、反省しろ、反省」
「え?あ、あ―――、そーかぁ、わり、わりぃ。海より深ーく反省っ。ま。どこも故障はないみたいだからよかったじゃない、ねぇ」
「甘ぁい!オレの頭、故障したぜぇ、見ろぉこのタンコブ。まったく、なんでこんな、こんな‥‥あれ? 敬、資材でこんな重いの入れたケースあったっけ‥よっ‥‥うーん、四十キロはあるなー‥‥何だろ、これ」
 陽史が、先程自分の上に落ちてきたケースの中身を確かめようと、ロックを外そうとしたのを、敬之が身をかぶせて止めた。
「あっ、ダメ! それ、ダメ」
「何だよ敬、何がダメなのさ。ヘンなもんでも入ってんのかぁ?見られたらまずいよぉな」
「え?ん、まぁ、その、なんだこぉりゃよぉってがぁ」
「何わけのわかんねー事言ってんのさ。見せろよぉ、何さぁ」
「あー、ダァメ。秘密のアッコちゃんよ」
「このやろ、やらしーやつだなぁ、一体何持ってきてんだよこの。いーだろ見せても」
「ダメダメダメの二乗! そんな事より陽史ぃ、腹へらねー? 俺もうペコペコ」
「あやしーなぁ‥なんで話題を変えようとするんだ? んー? ‥‥四十キロねぇ‥‥あれ? 敬ぁ、お前さっき、きゃあ、なんて叫んだっけ?」
「えー? 空耳じゃないのぉ?」
「‥‥あ――――――――っカエルだぁっっ!!」
「きゃ――――――――――――――っ!! いや――っ!!」
 ケースの中からカエル嫌いの女の声が響いた。
「‥‥まじ‥‥」
「‥敬ぁ、開けてやれよぉ、酸欠なるぜぇ」
「バレちまったか‥‥んしょ」
 両手を頭の上に乗せたままの姿勢でケースから抜け出した星まゆみは、上目遣いで陽史の顔を覗き込むと、わざと明るい素振りで、両手をぱっと広げて。
「やっ、お元気かな?」
 肩で大きなため息をついて陽史は敬之を横目に見て。
「‥‥敬、何の冗談かな、これは」
「いや、その、彼女がどーしても、と、‥‥あ、いや、俺が、その‥‥」
「‥えへへ‥」
 まゆみは小さく舌を出して頭をかいた。
「ば―――――きゃろ――っ!! 遊びじゃねーんだぞっ!なんでこんなの、女なんて連れてくんのさっ!!」
 頭ごなしにどなりつけた陽史の頬をまゆみがひっぱたいた。
「怒んないでよっ! あたしだって遊びじゃないもん、家出してきたんだもん」
「このやろ、思いっきりひっぱたきやがって‥‥家出ぇ!?」
「まぁさ、陽史ぃ、いーじゃなか、な。今回は危険な仕事するワケじゃないし」
「そーよ、探しモノがあるんでしょ、ね、きっとあたし役に立つって」
「‥‥宝探しじゃねーんだぞぉ‥‥ったくぅ ボリボリ‥‥メシ作ってよ、腹減ったよ、どなってばっかりで」
「えっ!? じゃあ、許してくれるの?」
「叩いておいて許すもねーぞ、こら。しょーがねーだろぉ、一人で帰れるワケもねーし。そのかわり、何かやったら即、連れてくかんな! おら、メシ、メシ!」
「やったーっ。それじゃ、ゴーカにドライミートのステーキにチューブサラダの山盛りねっ
「‥‥なんか急に食欲がなくなってきた‥‥」

出演:
銀河陽史(ぎんがひろし・極秘任務の為地球に):セリフno.3
中沢敬之(なかざわたかゆき・銀河の親友、そして‥):セリフno.1
星まゆみ(ほしまゆみ・銀河の妹、中沢の恋人):セリフno.2

  

 銀杏高校の『UFO研究会』の部員である、南、早川、山口、翔翼、星、福島の五人は、恒例の『UFOを探せっ!! 夜通しキャンプ』三回目にして、早くもホンモノのUFOを目撃するという快挙を遂げた。もちろん彼らが目にしたのは、陽史達が乗り込んでいたやつである。
 結局、冷静にシャッターを押していたのは、副会長の悠一一人だったのだが、とにかく、目撃はしたのだ、星を除いては。五人はもう、カップヌードルを食べる事なんて忘れて、UFO談義に花を咲かせ、興奮冷め遣らぬまま、疲れで眠り込んでしまった。
 すぐ近くにそのUFOが落ちた事など、知る筈もなく。

 その陽史達は、会のノボリを立てたテントの外にいた。食事を済ました彼らは、とりあえず辺りの様子でも見ようと、外に出たのだった。
「ふーん、UFO研究会ねぇ‥楽しそうな会だねぇ」
「みんな高校生みたいだな」
 テントの中を覗き込んで敬之が言った。
「さしあたっては、この人達とお友達になろーか。ガッコも行きたいし」
「そーだね。じゃ、さっそく情報を‥」
「え? わ、ちょ、ちょっとー、敬、だめ、それだめ」
 敬之がベルトにつけてある意識解像装置(コンプ)に手をかけたのを見て、陽史は思わず敬之にタックルををかけた。コンプは相手の脳から直接記憶などの情報を取り込む装置だ。探偵稼業の中では情報収集のための必須アイテムだ。敬之は小声で叫んだ。
「な、なにすんのさーっ! コンプ壊れたらどーすんだぁ、高かったんだからぁ。商売道具なんだからも少し大事にしてくれよなー」
「でもさぁ、それって、やっぱりフェアじゃないよぉ。んなんでホントの友達なれるもんかぁ。第一、お前コンプ持ってきてるなんて言ってなかったぞぉ」
「そぉかぁ‥‥? でも。ちょっとだけ入っちゃったよ。”真澄”って」
「お前はぁ‥‥どれだ?」
「なんなんだ‥‥あの、カメラ下げてんの」
「カメラで真澄? あれかな、菅江真澄。江戸時代の紀行家さん」
「ほー、さすが歴史がお得意まゆみちゃん」
「ふーん、ま、そりゃどーでもいーとして、敬、あすこ、カップラーメンらしきものが転がってるぜぇ」
「ほぉ、陽史くん、君はあのようなモノを食したい、と」
「そう言いつつ、どれを取ろうか選んでるのはどこのどいつだぁ?」
「はぁい、惑星アトラスから来た敬之くんでぇす」
「お、素直でよろしい。君にはこの”焼きソバ”とゆーのをあげよー」
「あっ、ずりー、その赤いの俺狙ってたのに」
「甘ぁい。この星の言葉にもあるだろ、弱者少食ってね」
「‥‥弱肉強食じゃなかった?」
「あ、あんまり細かいことにこだわんのはよそーね。とにかく、これ食って朝を待とーぜ」
「ごまかしやがって」
「ゴホン。先にごまかしたのどっちだ?」
「はっはっ、陽史くん、細かいことにこだわんのは‥‥」


 UFO研究会がテントをはっているところは、小海(おうみ)の波戸岬(はどのみさき)という場所で、「あそこでUFO見るやつ多いんだって」というあくまでウワサに頼っての決定だった。
 「岬、とつくくせに灯台もなく明る過ぎずに波も穏やか。砂浜もロマンチックで、もし宇宙人の恋人達が長い旅の疲れを癒すために散歩しようとするならここが絶対穴場! 右手にはぼんやりとかすむ喜連崎(きつれざき)、ちらちらとまたたく満点の星を見上げて逃避行中の二人はしっかと抱き合い、永遠の愛を確かめ合うのだ、ああ、なんというロマン! なんという壮大なドラマ! オレはそんな、時間や空間を越えた愛の姿をしっかとカメラに収めて、全世界に感動の嵐を巻き起こしたいっ! 諸君、頑張ろうじゃないか!!」
 と、こぶしを振り上げたのはもちろん会長の南晴久。
「クラゲとかタコみたいのが抱き合ってたりしたら‥‥やっぱロマンかなぁ?」
 と、お茶を濁したのは、トーゼン翔翼星。

 晴久が言ったように、波戸岬と並んで右側には、もうひとつのでっぱり、喜連崎がある。彼らの家や、学校がある方向からだと、まず海水浴場のある大嵐(おおぞれ)を抜けるとその喜連崎だ。大体、観光客や海水浴の客達が足を伸ばすのはそこら辺までで、その先は岩場や崖が多くて遊泳には不向きな海が続く‥‥と、フツーの人達は思っているのだが、実はそうではなくて、波戸岬の下には遠浅の砂浜がひっそり隠されているのだ。あまりパッとしない岬でカモフラージュされているため、気付きにくいせいもあるのだが、プライベートビーチというカンジでかなりのお勧めなスポットだ。


 九月の一番最初の日曜、午前七時。ここから五十キロ程離れたところにあるオンボロアパート『愉日微恵荘(ゆかぬけそう)』から、同じアパートのお姉さんの車で、風見遙、佐々木真奈の二人は、バスケットに簡単な朝食をつめてテントに向かっていた。
 彼女らは、部員とマスコットガールの二役をしていて、時々は食事係もしてくれるという、貴重な存在だ。キャンプには、@夜は寒いので風邪をひくとかわいそうだ、Aもし凶悪な異星人が現れた場合守り通せる自信がない、Bロマンティックな夜に誰かが抜け駆けをしたらヤバイ、C夜に紛れてヤバイ事をしそうになったらアブナイ、等の理由で参加はしていないのだが、「男の子ばかりじゃきっとロクなモノ食べてない」と、健気にもこうして差し入れなんかしてくれるのだった。
 すでに暖かくなり始めた風を受けて、二人は高台の道路でお姉さんの車を降りると、浜辺に向かって細い道を降りた。ちょっとした水飲み場があって、その近くに『おいでませUFO研究会』などと書かれたノボリの立っている黄色い七人用テントがあった。
 ふと、波音に視線を左に移すと、だいぶ離れた浜辺に、カマドをおこしてる人影が二つ、海でバチャバチャやっている人影が一つ。
 朝食の準備をしている陽史達だ。
「うわー、こんな早くから泳いでる人いるよー」
「ほんとだぁ、寒くないのかな」
 遙達はテントに向かう足は止めず、顔だけをそっちに向けていた。
 その浜辺の方から叫ぶ声が聞こえる。
「陽史ぃ―――――――っメシ炊けたぞ―――――っ」
「オッケ―――――、あと一匹で戻るよっ」
「お魚捕ってんのかなぁ、あのひと」
「朝ゴハンのおかず‥‥でしょうね」
「‥‥なんか、スゴイね」
「うん」
 呆気にとられて、足を止めてそっちの方を見ていると、そのうち陽史が海から上がってきた。濡れた頭を二、三度振ると、両手でその少し長めの髪を前から後ろにすいた。少しの間、そのままの姿勢で遙達を見つめて、そして背中のバックを降ろすと、歩きながら敬に放った。
「ふーん、なかなかイイ男」
「真奈ったら。それより早く行こ、朝ゴハン冷めちゃう」
 背中を押す遙に肩をすくめて、真奈。
「はいはい。今のあんたにはカレしか見えないんだもんねー」
「カ、カレって何よー」
「いいっていいって」
「このーっ、待てってばー」
 軽く小走りになった真奈を遙も追った。

 小枝に刺した魚を火にあぶりながら陽史。
「‥‥敬ぁ、今通った娘、可愛いかったなぁ」
 カマドの石の上にアルミをかけて、その上で焼いたトーストのこげを指先で削りながら敬之。
「ん? どっち?」
「髪の長い、淡いブルーのスカートはいてた方」
 トーストにチューブサラダを乗っけながらまゆみ。
「陽史くんは女の娘には目がないんだもんねー」
「‥‥可愛い娘に限るんだっつーの」
「例のテント行ったんだろ」
「うん。誰かの彼女かなぁ」
「ちょ、ちょっと陽史ぃ、お前の魚、真っ黒。カワイソー。どれどれオレはこっちのをっと。地球のお魚の味はどーかなぁ?」
 陽史はその真っ黒の魚をバリバリかじって。
「なー、メシ食ったらさー」
「わーかってるってー。ほら、このコゲパンも食え」
「へっへー、食後のお楽しみ、フリスビータイムさ。‥‥敬ぁ、ドサクサに紛れて何食わせんのさっ!」
「恋にクロウ(黒)はつきものでぇす」
「‥‥ニガイ恋はいらないぜっ」
「きゃーシブイ

追加出演:
風見遙(かざみはるか・UFO研究会に想い人が?)
佐々木真奈(ささきまな・聡くんと結構いい感じ)
お姉さん(風美子さん特別出演)


  
 数時間前、陽史達がしたのと同じようなカンジで、遙と真奈の二人は、テントの入口を開けて中を覗き込んでいた。五人の男が、よくもまぁこんなに乱れて、というカンジで転がっている。
「‥‥まだ寝てるぅ。みてぇ南くんったらカメラ握りしめたまんまぁ」
「うん‥‥」
「よ――しっ‥‥きゃ――――――――――――っ!!」
「うわわっ! なんだ――――っ!?」
「‥‥へ? ど、どうしたのかな‥‥」
 反応は様々だったが、とにかく五人全員起き上がってくれた。
「おはよーみんなぁ、朝ゴハン持ってきたよぉ」
「あー、遙ちゃんと真奈ちゃんだぁ」
「やったー、やっとまともなモンが食えるぅ」
「そ、そーゆー言い方は、メシ係りのオレに対して、そう、会長さんに対して失礼じゃないかぁ!?」
「うははははっ ‥‥ふわ―――――――っ、ツラ洗ってこよーっとぉ」

「それにしてもさぁ、昨夜のUFO、すごかったなー」
「はーんとっ、うん、こりはうまい」
 女の子達特製の朝食をがつがつ食べながら、聡が昨夜の興奮をひきずったままの顔で続けた。
「まっさか本当にお目にかかれるとはねー」
「えーっ、遂に発見したの? またぁ、からかってるんでしょ?」
「ふっふっ真奈ぁ、これが冗談言ってる顔かぁ?」
「あんたの場合、顔が冗談なのよねー」
「な! ‥‥あーあ、オレって落ち込んじゃう」
「わははははっ」
「きたねーっ、星ぉ、メシとばすなよぉ」
「おー、悪ぃ悪ぃ」
「‥(ボソッ)自分だけ見れなかったんで嫌がらせしてんだぜ。ひがんでやんの」
「なんだとこのーっもとはといえばてめーがっ!」
「まぁ、よせってば。せっかくうまいモン食ってる時にさぁ。でも二人とも、本当だよ。ちゃんとオレ、カメラに収めたし」
 悠一がみんなに視線を移すと、星以外は肩をすくめて小さくなってバーガーをかじり始めた。
「あれ? どーしたの、みんな」
「え? いや、はっはーっ、とにかく、キャンプ三回目にしてこの快挙! 今度の銀杏祭はうちの会がもらっちゃうね」
「当然! なんたって、あの、‥‥遙ちゃん、どしたの?」
「あ、うん。ねぇ、UFOって銀色だった?」
「ああ、確か、なっ」
「うん、そう思うけど?」
「そいで、あっち行ったり、こっち来たり‥‥」
「うんうん、そりゃーすごいスピードでさぁ」
「そーだっけぇ? なんかまっすぐだったよぉな‥‥ねぇ、何見てんの?」
「あれ? ありゃ何だぁ?」
「どれどれ、あはーん、ありゃフリスビーだ」
「きれい‥‥」
 フリスビーをしているのは、当然、陽史達だ。
 地球にはない、超軽量の合金でできているディスクは銀色で、朝陽の反射がとても美しい。
 早くも地球の風に馴染んだのか、彼らはとても軽やかにディスクをさばき、さながらショーのようでもある。時々、張り切り過ぎてとんでもない方向に飛んだりもするが、それも、愛嬌。
「あー、朝ゴハン捕ってた男だぁ」
「何じゃそりゃ」
 こちらの視線に気付いた陽史が軽く手を振って、呼びかけた。
「まざらん? だって」
「いーねー、メシも食ったし、腹ごなしに」
「おっし、行こーぜっ」
 光たちが早々に切り上げて、フリスビーをしてる方に駆けて行くのを、お茶を飲みながら見つめて、真奈。少し大人びた笑顔で。
「まったく、元気なんだから。ごちそうさま、がないぞ!」
「うん。あ、あたしも早く食べちゃおっと」
「おっとー、じゃあこれは誰が片付けるのかなー」
「‥おっとー」

 よほど高く外れたディスクを、見事なジャンプでキャッチしたり、背中から投げたり、後ろ向きで頭の上でパシッとか取ったり。いろんなフォームを器用にこなしながら陽史は、会話を続けた。
「名前、教えてよ。オレは陽史、銀河陽史。彼女は、星まゆみ。こいつは」
「こいつは中沢敬之、といいます」
「へー、本名? 芸名みたいだねー、あ、オレはぁ山口聡ね。かしこくするどい”聡”だよん」
「全然名前に似合ってないトコロがするどかったりしてねー。オレ、光、早川光」
「南です、晴久です、かぁい長、です、よろしく」
「副会長の福島、えと、悠一」
「うで、オレ、翔翼星ね。まゆみちゃんって、なんか他人のような気がしない。人はこれを運命の出逢い、とゆーのだけど‥」
「言うか、そんなもん! 恥知らずなやっちゃなー。オレ達、銀杏(いちょう)高校のUFO研究会なんだ。おタクらは? 高校生みたいだけど。ここらへんだったら、生雲中(いくもなか)高かな?」
「いや、少し前、こっち来たばかりだから、学校はまだ。何年?」
「二年。君らは?」
「あっ、同じ、なっ、敬」
「え? あ、そう。すごい偶然。で? こちらのカワイイ女の娘達は?」
「あ、あたし風見遙。さっき、見てた‥‥」
「佐々木真奈でぇす、よろしくね
「こいつはオレの恋人だから手出さないよーに、って、ってってーっ! 愛が痛いぞぉ、真奈」
「ふーん、遙ちゃんの方は?」
「残念でしたっ。この娘にはちゃんと想い人いるんだもんね」
「ちょ、ちょっとー、よしてよ真奈ったら」
「へー、それは残念」
「エラい素直ね、キミ」
「それだけが取り柄でして。それよか、UFO研究会って?」
「よくぞ聞いてくれました! そもそも」
「こらこら星ぉ、会長のオレを押しのけてそーゆー事はするなっつーの。怒るよ。あのさ、ウチは‥‥」
 晴久の長い話が始まり、そして、この長い彼等のお話しも始まるのであった。
 海はあくまでおだやかで、朝陽を水面に受けて、キラキラ輝いていた。





この「風のSketch」の続きは少し先で。まずは「Eveには微笑って」を。

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