自然観察のススメ


since 1999.08.21
2004.06.18 自然を守る活動団体として知事認証


自然観察法のノウハウを教えます。
この話は2000年、6月22日の事実(実際上での出来事)をもとにして記述しております。
記述の内容や挿入してある画像などはすべてが事実であることを約束いたします。
それでは皆さんも「不思議な生き物たちの世界」で、不思議な体験をしてみてください。
2000年6月22日。私が伊勢市方面に出張用務があって、その帰途につく「とある現場での出来事」なのです。
宮川河口部にさしかかったとき、ふと「お菊虫」のことを思い出しました。
皆さんも嬉野自然観察会行動記録の第7回の内容を思い起こしてみてください。
そこには次のように「お菊虫」のことを紹介しました。
以下引用文
それは冒頭の「三重のメモ蝶」の著者、鳥平さんからの報告ですが、「・・・本日(1月17日)、早速、お教えいただいた現場に飛んでいきました。ずらりと並んだ ※1 蛹の大集団を見て、ただただ唖然となりました。このような光景は、今まで見たことがありませんし、本で読んだこともありません。丁寧にカウントして、 ※2 総数1,281個体の生蛹と数個の羽化殻、数十個の ※3 死蛹を確認しました。驚くべきは、これだけのジャコウアゲハの幼虫が育つに足る充分なウマノスズクサが存在し得たことです。・・・後略。」

あれから半年ほど経った現在、お菊虫はどうなっているのでしょう。
蛹の大集団があった小屋に近づいて「お菊虫」、つまりジャコウアゲハのサナギを観察しました。

     

   図ー1 蛹(お菊虫)の大集団



図ー2 ジャコウアゲハの蜜吸行動   図ー3 黒っぽい形質を持つジャコウアゲハ

どうやら蛹は、そのほとんどが羽化をしているようです。
ほっと安心しながら辺りを観察します。すると小屋の周辺には、ジャコウアゲハの飛行している姿があちらこちらに見られました。
このチョウは、薄赤っぽい羽色をしているものや、全体に黒っぽいものなどと個体によって、その色合いも違っていました。
堤防の土手に生えている ※4 ヒメジョオンの花に飛来していました。
蜜を一生懸命に吸っている様子を撮ろうとして近づくと、警戒して飛び去ってしまいます。
もう一度、今度は丁寧に小屋の蛹たちをよ〜く見てみることにしました。
やはり羽化は最盛期のようです。ほとんどの蛹の背中に割れ目があって、脱皮を完了しているので殻が透けて見えます。
そして小屋のフェンスや周囲の草につかまって、元気を取り戻そうとしているかのようなチョウも結構見られます。
中には羽が縮んだままの状態の姿も見られたのです。このチョウには近づかないように、そっとしておいてやりましょう。
そうした観察のあとで、もう一度辺りを見てみると、飛行の様子も心なしかヒラリヒラヒラ・・と、元気がなさそうな気がしてきました。
蜜を十分に吸うことが出来ているのでしょうか?
私が、この場所に興味を持った理由はジャコウアゲハの食性です。どんな生き物でもそうですが、「まず、食足りて・・・。」というではありませんか。乏しい私の知識によるとジャコウアゲハの食草は「うまのすずくさ」で、このチョウはツル性の、葉に特有の芳香がある植物だけで育つそうです。私は、この「ウマノスズクサ」なるものを未だ見たことがなかったのです。
そして、しばらく観察を続けているうちに不思議なことに気づきました。
小屋のすぐ傍らに「うまのすずくさ」と思われる植物を見つけることは出来たのですが、わずかに2本だけなのです。
周辺をくまなく探し回りましたが、それ以上はどうしても見つけることが出来ないのです。
「これは一体、どういうことなのだろう。」
周辺の環境は河川の堤防で、いわゆる土手です。土手にはヒメジョオン、チガヤ、イタドリといった雑草が混在して生えています。
その環境の中に、ごくわずかのウマノスズクサがイタドリの茎に覆い被さるようにしてツルを伸ばしていました。
ウマノスズクサのツルをそっと持ち上げてみると、そこには更に不思議な発見があったのです。


図4− ウマノスズクサを食べる幼虫

ハート型をしている葉をつまみながら臭いを嗅いでみると、やはり特有の臭いがあります。
そして花を見つけました。花の形は筒状で、トックリ型です。下側の袋は緑色ですが、上側の外縁に広がっている袋は紫色といったほうが分かりよいでしょう。ツルの先から3番目の花の下に何かを見つけました。葉の下に見つけた黒いものはなんと幼虫だったのです。
正確には紫色と白色とのまだら模様をしています。この幼虫をジャコウアゲハの幼虫だと断定してもよいのでしょうか。
刺激を与えると、頭部から赤い威嚇角を出してきます。まるでアゲハチョウの幼虫と同じようなしぐさをしています。しかしアゲハのそれとは少しだけ、角が短いようです。
この幼虫を「ジャコウアゲハの幼虫」と考えて良いのでしょうか。
しかし、その可能性は大いにあるはずです。


図ー5 幼虫の姿とウマノスズクサとジャコウアゲハの卵と見られるものを発見!

この幼虫は2匹が見つかりました。他にもいるかもしれませんが、とにかくもスズクサの絶対量が少ないのです。
この観察過程の途中で特異は現象が見られましたので報告をしておきます。
それは「小さなアマガエル」です。この小さなアマガエルは、限られたスズクサの生えている空間に10匹ほどがいました。そしてその全部がスズクサの方向を向いているのでした。何か意味があるのでしょうか?このアマガエルはジャコウアゲハの幼虫をあるいは食べてしまったのかも知れません。宿根草のウマノスズクサの株はわずかに2本だけしか見当たりません。
なのになぜ、大量の蛹の存在が可能なのか、2株であってもドンドンとツルを伸ばせば或いは「大量のサナギまでの成長」は可能となるのか。
このように私の頭の中は、いろいろな仮説でいっぱいになったのでした。
小屋の周囲だけではなく、土手のイタドリの茎軸の所にも「お菊虫」と「羽化したジャコウアゲハ」が見られました。このジャコウアゲハはまだ羽が縮んだ状態のままです。
次にもう少し丁寧に辺りを観察することにしましょう。

    

   図ー6 幼虫と卵とウマノスズクサの花が渾然一体に!

そしてさらにさらに驚くべき発見があったのです! それは卵の発見でした。

 
ジャコウアゲハの幼虫と思われる紫、白のまだら模様の幼虫。そのすぐ近くのスズクサの葉裏に生みつけられたジャコウアゲハの卵と思われるもの・・・。
このようなことがあり得るのでしょうか。私の乏しい知識の枠ではとても考えられない出来事です。しかしこれはまさに事実なのです。
私の頭の中は、またまた錯乱状態に陥りました。考えられる常識では

ジャコウアゲハの産卵(特有の植物) ⇒ 弱齢幼虫の誕生 ⇒ 

終齢幼虫へ脱皮(自然減) ⇒ 蛹への変態 ⇒ 羽化 ⇒ 

交尾 ⇒ 元に戻る


これが私の考えられ得る図式です。言い換えれば、この自然の法則以外には考えられません。この図式以外には理解できないのです。
今、私が見つめている現象はどのように説明されるのでしょうか。
これは現実なのでしょうか。
ウマノスズクサの群生を夢見ていたこと、そのジャコウアゲハの楽園にはおびただしい数の
弱齢幼虫の存在が、・・・・。この図式が当地を訪れる以前の想像だったのですが・・・。
まったく頭の中は錯乱状態です。
卵の存在(少ない)、終齢に近くまで成長した幼虫の存在(少ない)、それに加えて大集団の成蝶の存在(大量)、脱皮サナギの存在(大量)、さらに限定された食草(少ない)・・・。
このような渾然一体となった成長図式がいったい、あり得るのでしょうか。
しかし、これは紛れもなく事実なのでした。
この不思議な世界の現象から想像されるもの、それは種の絶滅です。
このようなことが現実とならないように、ただ祈るのみです。

どうか、これは幻想であってほしいものです。
今見ている事実は幻想であってほしいのです。
しかしジャコウアゲハの大群。ジャコウアゲハの乱舞。これは現実です。

通常の一般的な常識では、この乱舞の延長線上に見えてくるもの、それは「種の安定」、「環境の良好保全」が通常の図式であるわけです。
しかし今見ている図式に、将来へと永続する図式は考えられないのです。
これは非常に残念な結果です。
どうか、この私の危惧は針小棒大に帰してもらいたいものです。
この答えは再度、この地を訪れたそのときに、事実となって答えが出ていることでしょう。
その事実の中に、人間の営みという行為が加わっていないことだけを、ただただ願うだけなのです。

※1 蛹: 昆虫類は変態することで、成長を早め、結果的に子孫を残すことになると考えられます。幼虫からサナギに変身することは、進化を促した生き残り・拡大・繁殖の戦略なのです。

※2 総数:先の鳥平さんは小屋の周囲にビッシリと張り付いた蛹の数を丁寧に1個ずつ数えられました。屋根の上、鉄柱、柵の上下などに存在した多くの数に圧倒されたそうです。

※3 死蛹:身近に見られるアゲハチョウの一生を追跡観察してみましょう。
2匹の成虫が63個の卵をミカンの葉裏に産み付けました。 ⇒ 卵からかえった幼虫の数は63でした。幼虫時代には4回の脱皮をしながら大きくなります。小さな幼虫の時代では色が黒っぽく、黒と白色とのまだら模様になっています。これは鳥から逃れるようにとの保護色と考えられます。鳥のフンの状態に酷似しています。 ⇒ 次の脱皮では38でした。死んでしまったり、食べられてしまったのでしょう。 ⇒ 27に減ってしまいました。 ⇒ 15になり、11匹になってしまいました。まだ黒っぽい色をしています。 ⇒ ついに青緑色に成長しました。でも、数は7匹だけになってしまいました。この青緑色も保護色と考えられるでしょう。ミカンの葉の色と区別がつきにくい色です。触ってみると分かりますが、威嚇角を2本〜4本出してきて、何ともイヤな臭いを出してきます。これなら鳥さんも退散するしかありません。 ⇒ 蛹は3個だけになってしまいました。 ⇒ 成虫になれたのはナント、2匹だけ!

※4 ヒメジョオン:もっともよく一般的に知られている帰化植物の一つです。花期は5〜7月です。高さは50〜120センチの北アメリカ原産の2年草です。ロゼットの期間が長く、いつも見られる雑草で、茎は数本が直立し、よく混同されるハルジオンと違って茎軸が中空ではありません。頭花の姿もハルジオンと違って、つぼみの時に柄は垂れていません。

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