怨嗟から生まれ。



長い時をその中で過ごして。



やっと外に出られたら。



『私』の全てを否定されて。



誰からも疎まれて。



生まれた理由を失って。





それでも。






貴方は。


















氷の心  ―+彼女との買い物+―         
















「………ん……」



初めて感じる朝日はとても眩しく、でも暖かかった。

今までとは違って気だるいけど、とても気持ちがいいとゴーストは思う。






「はふ…………」






もぞ、と布団の中で身じろぎをした。

二人で使っているせいで狭いと感じていたそれはやけに広かった。

目を開けると、彼がいないことに気がつき、跳ね起きた。









「と、…………透矢?」

「おぅ、起きたか」









透矢はゴーストの視覚外にいただけだった。


ちゃぶ台の上には簡単な朝食があった。


昨日と同じく、見たことはあったけど、食べたことのないものだった。


呆然とするゴースト。






「おい?」






面白かったので頬をひっぱってみる透矢。






「はふぃ? ひょ、ひょっと! ふぁにするの!?」






ゴーストは透矢の手を振り払い、講義した。






「お前、今変なこと考えてただろ」

「………………」

「はぁ、しかたねぇなぁ」





ぽんぽんと、透矢がゴーストの頭を撫でた。






「ちょっと朝飯作ってただけだ。だからそんな顔するな。おら、さっさと顔洗ってこーい♪」

「わ、わかったわ! 大丈夫! 抱っこしなくても大丈夫!」

「ぬははははははは♪」






顔を真っ赤にしたゴーストはそのまま洗面所へ行った。

見送った後、透矢は少しため息をついた。






姫の心は、いまだ檻の中

まだまだ時間が必要……か。






























「んじゃ、いまから買い物に行こう」

「何を買いに?」

「お前を縛るための縄」

「………馬鹿」

「冗談だ。服だよお前の! だからカップを投げようとするな!!」






指差して言う。


今のゴーストは昨日と同じ、かなり大き目のシャツとジーパン。


何かのプレイ中だと勘違いされることこの上ない容姿。






「で、でも。私なんか」

「おら、行くぞったらいくんだーーーー!!」

「きゃっ!」

「れ〜っつごーーーー!!!!」

「はぁ、わかったわよ…………」






透矢の懸命な説得?によって、ゴーストも快く?承知した。

家から一番近い『コユクロ』へ自転車で、もちろん二人乗り。






「初めてだけど………なんだか飛ぶより怖そう……」

「ほら、じゃぁ行くぞ」

「きゃっ! ちょ、ちょっとっ! きゃ〜〜〜〜〜!!??」






特にスピードを出しているわけでなかったが、やけにゴーストは怖がった。

それが面白くて、ちょっと速度をだしていたのは内緒だったりする。

しかし、おかげで店には早く着いた。








「うむ、ここが有名な『ウニクロ』だ」

「あら? さっきはコニクロって言ってなかったかしら?」

「いや、どっちでもいいんださぁ行くぞ」






ゴーストの手を引いて、ずかずかと店に上がりこんでいく透矢。


なかには思ったとおり山ほどの衣服。


それを見た瞬間、透矢は凍りついた。






しまった


俺って女の子の服なんて買ったことねぇ


いや、それ以前に下着とかいったいどうすりゃいいんだ?







うーん、と一瞬悩む透矢。

それを物珍しそうに服を見ていたゴーストが怪訝そうな顔で見る。






「どうしたの? 透矢、何かあったの?」

「いや……ん? あ、そーだ。 おーい、すみませーーーん!」

「あ、はい。如何しましたか?」






見かけた女性店員を呼び寄せて一言。






「こいつに合う服を見繕ってくれませんか?」


















「よし、問題なく全ての問題が解決されたな」

「つ、疲れたわ。 あの店員、私を人形か何か勘違いしてない?」






確かに、と透矢も思った。

女性店員は嬉々として様々な服を持ってきてくれた。それはいい。

おかげで労力のかわりに、かなりの額が消え去った。






「で、どうだ。 服のほうは調子よさそうか?」

「ええ、サイズもちょうどいいし。完璧ね」



ゴーストの服、今はサイズのあったタートルネックのクロTシャツ。

ストライプのスカートだった。

他にも買い込んだ服が紙袋に満載してある。






「あの………」


「ん?」







突然、ゴーストが下を向いて立ち止まった。

心のなしか、顔が赤い気がする。






「と、透矢はどう? 似合ってると思うかしら?」

「おお、もちろんだ。 ばっちりぴったり、すげーかわいいぞ」






返事を聞いたゴーストはとても嬉そうな顔をした。





そこには、『疑い』も『迷い』もなく、





褒められたことを素直に喜ぶ、ただの繊細な少女だった。








「透矢」


「なんだ?」


「その、ありがとう」


「どういたしましてっ」






























































































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