小杉町子どもの権利に関する条例
 前文
 すべての子どもは、生まれながらかけがえのない存在として、固有の尊厳と価値を持っている。このことは、子どもが大人と同様に権利の主体であることを示している。子どもが自己を実現し、自分らしく生きていくために、差別の禁止、生存と発達の保証、意見の尊重及び子どもの最善の利益の確保が国際的な原則として定められている。
 子どもは、大人と共に現在及び未来の社会をつくる構成員である。また、国際社会の一員として、共生と平和のよりよい実現を目指すとともに、地球の自然環境を守る指名を担っている。
子どもは、家庭や社会の愛情に包まれ、権利が保障されることにより、豊かな人格を形成することができる。また、子どもは権利の講師を通して、自己実現を図るとともに、誰もが等しく権利を持っていることを理解し、そのことを尊重する責任があることを自覚する。そして、自立心と協調性を培い、未来の社会を創造する人間へと成長していく。
 小杉町の子どもたちは、いじめや差別のない人間関係や、自由に自分の意見を表現でき、自分を最大限に伸ばすことができる環境を願っている。大人は、これらの願いを真摯に受け止め、その実現を図る責務がある。そのためには、町民一人一人が子どもの権利についての理解を深め、共通の認識を持ち、子どもの最善の利益の確保を第一義に考慮して、子どもの権利保障に総合的かつ計画的に努めなければならない。
 このことによって子どもは、一人一人が主体的な損じとして、誇りを藻っていきいきと生活し、活気に溢れる小杉町を大人と共につくっていく。
 以上の考えに立って、小杉町は1989年11月20日に国際連合総会で採択された「児童の権利に関する条約」の理念に基づき、子どもの権利を保障することを宣言し、「小杉町子どもの権利に関する条例」を制定する。
 第1章 総則
  (目的)
 第1条  この条例は、人間として生きるために大切な子どもの権利、子どもの権利の保証、子どもの権利の侵害からの救済、子どもの権利に関する町の施策の推進及び子どもの権利の保障状況の検証について定めることにより、子どもの権利の保障を図るとともに、子どもの最善の利益を確保することを目的とする。

 (定義)
 第2条  この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
     (1) 子ども 町民をはじめとする町に関係のある18歳未満の者、その他これらの者と等しく権利を認めることが適当と認められる者
    (2)親等 親及び児童福祉法(昭和22年法律大64号)に規定する里親又は保護受託者、その他親に代わり子どもを養育する者
    (3) 育ち・学びの施設 児童福祉法に規定する児童福祉施設、学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校、専修学校及び各種学校並びにその他の施設
    (4) 施設関係者  前号における設置者、管理者及び職員
    (5) 地域社会 地域に属する住民及び諸団体

  (責務)
 第3条 町は、子どもの権利が保障されるよう、あらゆる施策を通じてその保障に努めなければならない。
  2 親等は、家庭に置いて、子どもの権利が保障されるよう努めなければならない。
 3 町における施設関係者は、その施設において、子どもの権利が保障されるよう努めなければならない。
  4 地域社会は、その地域において、子どもの権利が保障されるよう努めなければならない。
  5 前各項に掲げた者は、相互に連携し協力するものとする。

 (広報)
  第4条 町は、子どもの権利に関する町民の理解を深めるために、その広報に努めるものとする。

 第2章 人間として生きるために大切な子どもの権利
   (この章に規定する子どもの権利)
 第5条 この章に規定する権利は、すべての子どものがかけがえのない一人の人間として生きていくために、とりわけ大切な権利として保障されなければならない。

  (安心して生きる権利)
 第6条 子どもは、家庭や社会の中で個人として理解され、愛情に包まれて、安全にそして安心して生きるために、主として次に掲げる権利が保障されなければならない。
    (1) いのちが尊重され、守られること。
    (2) 健康に配慮され、適切な医療の提供が受けられること。
    (3) あらゆる形の差別を受けないこと。
    (4) 虐待、体罰、いじめ等を受けないこと。
    (5) 大人の欲望のために、不当な扱いを受けないこと。

  (自分らしく生きる権利)
 第7条 子どもは人格が尊重され、ありのままの自分が受け入れられ、自分らしく生きるために、主として次に掲げる権利が保障されなければならない。
   (1) 個性や他の人との違いが認められること。
   (2)プライバシーが不当に干渉されないこと。
   (3)安心できる場所で自分を休ませ、また、余暇を持つことができること。

  (よりよく育つ権利)
  第8条 子どもは、社会の中で一人の人間としてよりよく育つために、主として次に掲げる権利が保障されなければならない。
  (1)適切な生活習慣を身につけること。
  (2) 学ぶこと。
  (3) 遊ぶこと。
  (4) 文化芸術、スポーツに親しむこと。

 (意見を表明する権利)
  第9条 子どもは、自分に影響を及ぼすことがらについて、意見を述べる権利を有する。子どもの意見は、年齢や成長に応じて、それにふさわしい配慮がなされなければならない。

 (表現の自由の権利)
 第10条 子どもは、表現の自由の権利を有する。ただし、この権利の行使にあたっては、他の人の権利を侵害せず、公の秩序に反しないものとする。

 (仲間と集う自由の権利)
 第11条 子どもは、仲間と集う自由の権利を有する。ただし、この権利の行使にあたっては、他の人の権利を侵害せず、公の秩序に反しないものとする。

 (支援を受ける権利)
 第12条 子どもは、自分を守り、守られることができる。そのためには、その置かれた状況に応じて、必要な保護や支援を受けることができる。

 第3章 家庭、育ち。学びの施設、地域における子どもの権利の保障

 (家庭における子どもの権利の保障)
 第13条 親等には、子どもの権利の保障に努めるべき第一義的義務がある。
  2 親等は、子どもの権利を行使する際に、その子どもに応じた適当な私事と指導を含む必要な支援に努めなければならない。
 3 親等は、子どもに対して、虐待や体罰、その他不適切な養育を行ってはならない。
 4 親等は、子どもを養育するにあたって、町から必要な支援をうけることができる。

 (育ち・学びの施設における子どもの権利の保障)
 第14条 施設関係者は、子どもが境域を受ける権利や、保育を受ける権利を保障するために、物的及び人的環境等の整備に努めなければならない。
 2 施設関係者は、子どもが安全な環境で、安心して活動できるように、災害発生の防止に努めなければならない。
 3 施設関係者は、いじめの防止に努め、虐待や体罰を行ってはならない。
 4 施設関係者は、子ども本人に関する文書等を適切に管理しなければならない。
 5 施設関係者は、親等、町、関係機関及び関係団体と連携を図り、子どもの権利が保障されるように努めなければならない。

 (地域における子どもの権利の保障)
 第15条 地域社会は子どもの権利を保障するために、地域が子どもにとって、安全で安心して心豊かに過ごせる場となるように努めるものとする。
 2 地域社会は、子どもが地域の一員として、社会参加できる機会の確保に努めるものとする。
 3 地域社会は、親等、町、施設関係者、関係機関及び関係団体と連携を図り、子どもの権利の保障に努めるものとする。
 4 事業者は、雇用する子どもに対し、権利の保障に努めるものとする。
 5 事業者は、雇用する町民が、安心して子どもを養育できるよう拝領し名けれがならない。また、養育する子どもの権利の保障のために、必要な活動をする事を妨げないように努めるものとする。

 第4章 子どもの権利の侵害に関する相談及び救済

 (相談及び救済)
 第16条 子ども又は親等は、町及び関係機関、関係団体に対し、子どもの権利の侵害について相談し、又は権利の侵害からの救済を求めることができる。
 2 町は、子ども、親等及び町民からの、子どもの権利の侵害に関する相談窓口を置くものとする。
 3 町は、前項の相談を受けた場合には、関係機関及び関係団体と連携ををとり、子どもの権利の侵害からの救済を図るよう務めなければならない。

 第5章 子どもの権利に関する施策の推進
 
 (推進計画)
 第17条 町は、子どもの権利に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、小杉町子どものp権利に関する推進計画(以下、「推進計画」という)を策定するものとする。
 2 推進計画の策定にあたっては、第19条第1項に規定する小杉町子どもの権利委員会の意見を聴くものとする。
 3 推進計画は、次に掲げる施策について定めるものとする。
  (1) 子どもの権利に関する情報の提供や告発
  (2) 親等への子どもの養育に関する支援
  (3) 育ち・学びの施設等での子どもの権利に関する学習の推進
  (4) 施設等での子どもの自治的な活動の奨励
  (5) まちづくりや、子どもが利用する町の施設の設置及び運営に冠して、子どもの意見を表明する機会の設定
  (6) 子どもの権利の保障にかかわる施設設備の整備
  (7) 子どもの権利の侵害に対する相談、救済体制の整備及び支援
  (8) その他、前各号に定める以外の子どもの権利にかかわる施策

  (施策の推進にあたって配慮事項)
  第18条 町は、子どもの権利に関する施策の推進にあたって、次に掲げる事項に配慮しなければならない。
  (1) 子どもの最善の利益に基づくものであること。
  (2)親等、施設関係者及び地域社会との連携を通して、一人一人の子どもを支援するものであること。
  (3) 教育、復し、医療等との連携及び町政が図られたものであること。
  (4) 第19条に規定する権利委員会の検証結果に配慮したものであること。

第6章 子どもの権利に関する保障状況の検証

 (権利委員会)
 第19条 子どもの権利に関する施策の充実を図り、子どもの権利の保障を推進するため、第三者機関として、小杉町子どもの権利委員会(以下、「権利委員会」という)を置くものとする。
  2 権利委員会は、第17条第2項に定めるもののほか、町長その他の執行機関の諮問、又は権利委員会の判断に基づき、子どもの権利の保障状況について調査審議する。
  3 権利委員会は、前項の調査審議により得た検証結果を、町長その他の執行機関に答申又は提言するものとする。

 (組織等)
 第20条 権利委員会は、委員10人いないで組織する。
  2 委員は、人権、教育、復し、医療等の子どもの権利にかかわる分野の学識経験者および町民のうちから、町長が委嘱する。
 3 委員の任期は2年とする。ただし、再任を妨げない。委員が欠けた場合における補欠の任期は、前任者の残任期間とする。
  4 委員は、非常勤とする。
  5 委員は、職務上知り得た情報を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
  6 第19条及び前各校に定めるもののほか、権利委員会の組織及び運営等に冠して必要な事項は別に定める。

 (答申又は提言に対する措置等)
  第21条 町長その他の執行機関は、権利員会の答申又は提言を尊重し、必要な措置を講ずるものとする。
   2 町長その他の執行機関は、答申又は提言に対して講じた措置について公表するものとする。

 第7章 雑則
  第22条 この条例の施行に関し必要な事項は、町長その他の執行機関が定める。


   附則
    この条例は、平成   年     月    日から施行する。
 

小杉町子どもの権利条例策定 これまでとこれから
                      富山短期大学幼児教育科  小芝 隆

 1.子どもに対する見方・考え方を条例として定めることの意味
   ○すべての子どもは、生まれながらにかけがえのない存在として、固有の尊厳と価値を持っている。このことは、子どもが大人と同様に権利の主体であることを示している。・・・子どもは、大人と共に現在及び未来の社会をつくる構成員である。・・・(前文)

 ○ 第2章 「人間として生きるために大切な子どもの権利」

 2.子どもの権利条約とは
   1989年11月の第44回国連総会で採択された子どもの権利に関する国際基準、日本は1994年に批准した。しかし日本では、この条約を実施するための具体的な国の指針は作られていない。

  (1)子どもとという人間をどのように考えるか
     子どもを一人の人間として尊重する。子どもは保護されるだけでなく権利の主体である。それゆえ大人と子どもはこの社会を共に作るパートナーである。
                   「意見を表明する権利」(条例第2章 第9条)

   ※子どもには大人にない優れた人格の側面がある。優れた完成とやさしさ。(小芝)
    「子ども達の世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激にみちあふれています。残念なことに、わたしたちの多くは大人になるまえに澄み切った洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます」(レイチェル・カーソン「センス・オブ・ワンダー」より)

  (2)成立の背景
   ・人権思想の普及。このことによって子どもの望ましい成長が図られる。
   ・子どもを中心に考えることによってこそ、望ましい社会を作り上げる事ができる。

3.これまで ーーー 小杉町の条例と条例策定過程の特徴
  「第1条 この条例は、人間として生きるために大切な子どもの権利、子どもの権利の保障、子どもの権利の侵害からの救済、子どもの権利に関する町の施策の推進及び子どもの権利の保障状況の検証について定めることにより、子どもの権利の保障を図るとともに、子どもの最善の利益を確保する事を目的とする。」(第1章 総則 目的)

 ・条例作成の過程に3年の年月をかけ、子どもを始め多くの町民がかかわった。町民意識調査、子ども意識調査、子どもワーク会、策定連絡会議、町民ワーク会、策定世話人会議。
 ・実効性の高い条例にした。権利委員会、権利侵害に関する相談と救済の体制等。

 4.これから

  ・たいせつな啓発活動
  ・施策の推進と権利の保障状況の検証 (第5章・6章  第17条第3項第5号「子どもが意見を表明する機会の設定」)
  ・権利侵害に関する相談と救済の体制 (第4章)