デザインコンセプト
製作するナイフはフィッシング、ハンティング、キャンプ、タクティカル、フォルダー、コレクション等様々なジャンルを作りますが、使えるモノであることを基本としています
よく実用性とは言いますが、それがどのようなものなのか、何を基準としているかが判然としないことが多いです
もちろんそれぞれのメーカーさんが独自の考えや経験をもとに製作しているのでしょうが、なかなか伝わってこないのは非常に残念なことです
カスタムナイフは高額なものであるにもかかわらず、これまで開発コンセプトが不明瞭なまま販売されてきたことは他の製品と比べて珍しいといえます
私の作るナイフも自分の経験をもとに制作しますがこの経験とは、幼小期より刃物を使っての工作から、少年時からのキャンプ、釣った魚をさばくなどがそれに当たります
そして、もっとも大きな経験値は30年を超す、居合および試し切りにあります
ナイフに関係あるの? と疑問を感じる方もいると思いますが、大きく関係するのです
自分の経験上、刃物というモノは小はポケットナイフから大は刀にいたるまで基本的使い方は同じであると思います
持ち方、握り方、各指の役割、手首、肘、肩といった各関節の動かし方等、すべて共通です
ただ、居合の場合扱うモノが大きくて、切るときの衝撃も大きい
基本がしっかりできていないと、自在に扱えないばかりでなく自分の体を痛める、あるいは刀を曲げる、折るといったことになります
従って刀はいくつもの流派で扱い方が伝承されているわけです
また、多くの刃物の中で扱う技術という点で日本刀は最も難しい部類に入るでしょう
つまり居合の道場ではすべての刃物の使い方を教えているとも言えるわけです
これが刀の扱い方がそのまま他の刃物に当てはまるという根拠です
では、具体的にどうなのかを解説しましょう
・ブレード
ブレードは基本的にシンプルで直線的なものが多いです
エッジラインほとんどのモデルで、直線を長くとってあります
これは一般的な作業のやりやすさと均一な研ぎを考えてのことです
そして長さが一番有効に使えて、さらに一番力がかけられる部分(日本刀での物打ち)からアールを描いてポイントにいたります
ただしこれは汎用性を考えた上でのことで特殊な用途や環境で使用するものには当てはまらない場合もあります
グラインドはホロー、フラット、コンベックスすべてやりますが、これは用途に応じて選択します
鋼材は基本的にはATS34を多様します
それはこの鋼材がプルーフされていてどんな用途にも信頼して使えるからです
もちろんオーダー次第で他の鋼材も使います
・ハンドル
ハンドルもブレードと同じく直線的でシンプルにします
コントロールしやすいことが第一にありますが、重要なのは長時間使い続けられることです
湾曲していたりとっかかりがあるものは、ちょっと握るとグリップがよさそうで安心感がありますが、道具としては好ましくありません
ハンドルは手のひらに固定されているわけではなく、手の中で常に動いています
特定部分に力が集中するものは疲労やマメの原因になります
シンプルな棒状のものが力が均一に分散され長時間の使用、力をかける作業に適しています
そのためプロの道具はみな棒のようなハンドルをしています
また、バット、ゴルフクラブ、テニスラケットなどもいい例です
これらが湾曲していたり何かデザインがほどこされてあったりしたら、プロの選手は試合中に叩き折って何本あっても足りないでしょう
もっとも寒冷地や何かに濡れながら作業するナイフはこの限りではありません
ハンドルとブレードも直線的に結びます
よくへの字になっているナイフがありますが、これは欧米では押し切りで使うためでしょう
我々日本人は引き切りで使いますからへの字では使いにくくなります
さらにへの字だとブレやすく力がかけにくくなります
ざっとではありますが、以上の考えをもとにデザインしていきます
ハードユースするナイフではこれらの要素ははずせません
そしてさらに各モデルごとに要求される機能を盛り込んでいきます
たとえばフィッシングナイフなら以下の機能
・ 3枚におろす、切り身をつくる まで考えるとブレードは包丁型が使いやすい
・ ブレードバックはウロコ落としに使える
・ ハンドルバットはワタカキ用のスプーン
・ ブレードとハンドル前部は極力段差を小さくする
基本的な要素にこれら専門的要素をうまくパッケージしてさらにカッコよさを加えてまとめなくてはならないわけです
このように各ディテールには大抵何かの意味合いがあるわけですが、ライトユースの小型ナイフやポケットナイフではここまでシビアに考える必要は無いと思います
ライトユースのナイフ たとえば紙、紐、テープをカットする程度のナイフでは上記の要素はほとんどこだわる必要は無いでしょう
自分の好きなカタチでいいのではないでしょうか
それで十分だと思います
逆にライトユースのナイフに実用性うんぬんと言う方が 実はナイフ使ってないんじゃないの? って勘繰りたくなってきます(笑)
でないとデザインの面白味がなくなってしまいますからね
従って基本コンセプトに該当しない小型ナイフも存在しますが、ハードユースを想定したナイフは上記の考えに基づいてデザインします
簡単ではありますが、このような考えをもとに製作しています
これをどう考えるかは皆様次第ですが、メーカーとしてポリシーやコンセプトを持つのは当然のことであり、それを公表するのも義務であると考えます