|
日本経済新聞 平成7年11月2日夕刊
こちら外国人OK住宅
コトバの壁 低〜く
自治体が賃貸マニュアル
敷金・礼金 詳しく対訳
賃貸住宅を巡る外国人と日本人家主との間のトラブルを
未然に防ぐため、契約までの流れや商慣習などを、日本語と
外国語の対訳で説明した「外国人との不動産取引マニュアル」
を作る自治体が相次いでいる。
首都圏に続いて最近では中部、関西地方にも広がっている。
アジア、南米からの人たちを中心に日本に住む外国人は増え続けており 家の確保は大きな関心事だが、日本独特の商習慣などが理解しにくくトラブルも多い。
深刻な賃貸不況の影響もあって外国人への賃貸に前向きな家主も増えており、マニュアルを作成した自治体には不動産業者などから問い合わせが殺到している。
JR池袋駅周辺などに外国人が多数住んでいる東京・豊島区では、本格的な外国人向け賃貸マニュアルを5月に作った。
英語と中国語の2種類で、敷金や礼金などの商慣行から、ごみの出し方、トイレや浴室の使い方など日常生活上の注意まで、日本語の対訳付きで詳しく説明している。
例えば、礼金(Key Money)は日本独特の商慣習で、理解に苦しむ外国人が多いため、「契約金の一部金として貸し主に支払う借家使用の謝礼金で、返却されません」との説明を訳して添えている。
中国語マニュアルを取り寄せた東京・中野区の不動産仲介業小林武夫さん(65)は、「中国人の客は、漢字で書くと大体分かってくれるが、敷金や礼金の仕組みなど、細かいことまでは無理なので便利」と話す。
東京・板橋区も9月、中国語版のマニュアルを作成。用語説明のほか、勝手に部屋を改装したり、夜中に騒ぐ、同居人を増やすなど、トラブルの例をイラスト入りで分かりやすくまとめた。
都内以外でも、神奈川県が昨年、英語、中国語、ハングル、スペイン語、ポルトガル語の五カ国語に対応するマニュアルを配布。
埼玉県も昨年8月、本格的な外国人向け賃貸マニュアルを作ったが、地元の不動産業者らから「中国語版やポルトガル語版がほしい」との要望が寄せられているという。
兵庫県がこの5月に作成したものも五カ国語版。県の施設の窓口で外国人に配っているほか、外国人の受け入れに積極的な県内約60の不動産業者にも配布済み。
愛知県でも、来春をめどに、英語、中国語、スペイン語、ポルトガル語の対訳付きのパンフレットを作成中だ。
自治体がこうしたパンフレットを相次いで作っているのは、94年末の外国人登録が135万人を超えて過去最高になるなど、日本に住む外国人が年々増え続けているためだ。
外国人に不動産を貸そうという家主や不動産業者も増えており、留学生の住宅探しを支援する内外学生センター住宅相談所(東京・新宿)は「外国人OKの大家さんは、2年前で約半分強だったが、今は約75%。
この賃貸不況で『部屋を空けておくよりは身元のしっかりした外国人を』という大家さんが増えてきた」という。
イラン語やフィリピン(タガログ)語など六カ国語の対訳を収めた「外国人との不動産取引」の著者、国際不動産(東京・六本木)の三谷雅行さんは「外国人への偏見はまだ根強いが、トラブルの多くは、日本の生活習慣に対する無知が原因。
よく説明すればトラブルも防げる」と話す。
|