金融機関用窓口装置(以降営業店端末とする)の開発を通して、WindowsNTが大規模基幹システム構築のプラットホームになり得ること、いくつかの課題に対して弊社が実施した対策、WindowsNTに今後望まれる課題を述べる。
銀行窓口業務は、銀行の営業店に来られるお客様の待ち時間を極力短くするために、入金、出金、振り込み依頼等に対し、依頼情報の入力、センタのデータ検索、通帳印字、ジャーナル印字、現金の入出金といった複数の処理を如何に早く処理できるかが重要なポイントとなる。
加えて、金融業務は経済活動の重要な位置にあるため、如何に信頼性を上げるか、如何に早く故障を回復させるかが問題となる。このような装置に要求される条件とは以下の通りである。
以降、WindowsNTを用いて開発した営業店端末において、このような要求条件をどうクリアしているかを具体的な例を交えて述べる。
WindowsNTを採用するに至った経緯を示すために、金融システムの歴史および営業店システムの変遷を図1、2に示し、それに合わせて弊社がどの様に対応し、営業店端末がどの様に変化してきたかに述べる。
第1次オンラインの営業店端末には汎用のプラットホームが無く、専用ハードならびにワイヤードロジックで機能を実現していた。このため装置価格は非常に高価なものとなった。
第2次オンラインシステムでは端末のインテリジェント化が進み、ある程度の機能を端末のソフトウェアで実現できるようになった。しかし、要求性能を実現するために独自OSを用いており、オープン化とはほど遠い状況であった。
第3次オンラインシステムでは、2次オンラインまでの資産継承も重視されたが、オープン化に対処するため、UNIXを採用。ただし基幹業務に耐えうる信頼性を確保するためにOS自体に手を加えたため、市販流通ソフトをそのままの形では使用できず、パッケージソフト活用の面で課題が残った(各装置の概観は図3参照)。
今後の基幹システムに求められるOSとは、以上の経緯から
であることは必然であり、パソコンの高性能化と合間ってWindowsNT導入を検討する運びとなった。
2章において第3次オンラインシステムまでの営業店端末の変遷をみてきたが、ここで今後の営業店端末におけるWindowsNTの強みを見てみよう。そして、それは今後の営業店システムの形態を決める重要なファクターになるであろう。
(1)マルチタスク
第1章で触れたが、営業店業務では高性能な同時並行動作が要求される。このためマルチタスク機能を有した専用OSが必要とされてきたことは前述した。
一方、パソコンはハードが高性能化および低価格化し、グラフィック機能も目覚ましい進歩を遂げ、流通ソフトが豊富になり、基幹システムへの適応性が急速に増した。
そこで「専用OSの機能・性能を包含し」かつ「安価なパソコンが活用でき」さらに「特定のハードウェアベンダに依存しないオープンな」OSとして、マルチタスクを完全にサポートしているWindowsNTの活躍の場は広い。
(2)信頼性
営業店端末は、いわゆる“勘定系システム”と呼ばれる銀行の基幹システムの、重要な構成要素である。このような端末ではオペレーションの誤操作や、アプリケーションの予期しない誤動作によるデータ破壊やシステムダウンを避けなければならない。これまでパソコンOSの主流であったWindows3.1ではメモリ管理において“カーネルモード”と“ユーザモード”の区別はあったものの、ユーザモードでは複数のアプリケーションが単一のメモリ空間にマッピングされていたため、あるアプリケーションの不具合が他のアプリケーションに影響を与える可能性が大きかった。WindowsNTでは「仮想メモリ機構」を用いているため影響の局所化が達成され、営業店端末に要求される信頼性のレベルを実現している。
(3)豊富な流通ソフトの活用
WindowsNTにはデータベース、スプレッドシート、ワープロ、グループウェアなどの流通ソフトが多数存在する。またWindows95上で動作するソフトの多くはWindowsNT3.51での動作を想定して作られるため、今後もWindowsNTはソフト市場において重要な位置にあることは間違い無い。アプリケーションを一から作成するよりも全世界においてデファクトスタンダード化しているソフトを活用することで、価格のスケールメリットが活かされ、低コスト化が図れる。WindowsNTを導入すること自体、OSレベルでこのスケールメリットを活用していることに他ならない。
ただし、(特に海外の)流通ソフトを活用するにあたっては言語のローカリゼーションの問題や商習慣の違いによる影響を見極め、当該ソフトの適応性を慎重に判断する必要がある。
(4) オープンアーキテクチャ
ハードウェアアーキテクチャとして、デファクトスタンダードであるPC/ATアーキテクチャが土台となっており、市販パソコンを流用することによる大幅なコスト低減が可能になった。またWOSA/XFSなど個別業界特有な機能における標準化を進めているのも大きな強味である。
3章ではWindowsNTの有用性を記述した。 しかし、基幹システム構築に必要な機能と、WindowsNTが持つ機能との間に一部ギャップがあることも事実である。
弊社ではWindowsNTを基幹業務に導入するに当たって、従来から培ってきたノウハウをもとに、WindowsNTを補完する機能として
をミドルウェア(『Winsmp』)として実現した。
(1)システム開始・終了の制御機能 − プロセスリカバリ機能を含めシステム破壊を防止
システム開始終了の制御機能では、オペレータが手順を無視して、いきなり電源を切ろうとしても、処理を確実に終了させてからでなければ電源は切れない。ソフトウェアが適正に処理して安全に電源を切る。
(2)故障情報収集/解析機能 − 故障情報を確実にキャッチ
原因不明のシステム停止が発生しても、メモリフリーザ機能により故障発生時点の情報を確実に保存する。さらに、解析ツールによって故障内容を遠隔地から解析できる。
このツールにより、技術者が現地に赴く必要がなく、迅速に故障解析が行える。
(3)リモートメンテ機能 − ソフトウェアのバージョンアップをシステム停止せずに自動的に実行
業務プログラムだけでなく、ミドルウェアを含めた任意のファイルを自動的に入れ替える機能を有している。また、入れ替えの為の転送情報量を極力小さくするために、ファイル差分抽出/反映・圧縮/伸張機能も備えている。
(4)業務AP開発の効率化のためのユーティリティ − 弊社のAP開発ノウハウを集約化・共有化
Winsmpを使用する事により、金融端末特有のハードウェア(通帳・伝票プリンタなど)メーカ間でのインタフェースの相違を意識することなく業務アプリケーションが開発可能になっている。
さらにWinsmpは、WindowsNT上のアプリケーション開発効率の向上をも目的とする。
例えば、「ミッション管理サービス」を利用する事で、メインフレームでいうところの“ジョブ”の様な感覚で、アプリケーションを開発できる。もちろん、プログラムのバージョンアップ等で必要となる、期日指定のジョブ制御も可能である。“プロセス”や“スレッド”といったWindowsNTの細かいプロセス制御規則を知る必要はなくなる。同様にWinsmpの「画面制御サービス」は、データエントリフォーマット(画面定義)とデータ処理ロジック(業務仕様)を独立させることにより、数百〜数千におよぶ営業店システムの入力画面の設計・カスタマイズを容易にしている。
96年4月にはWOSA/XFS対応も完了し、業界標準を積極的に導入している(図4参照)。
図4.ミドルウェア『Winsmp』
弊社では、PC/ATアーキテクチャ・WindowsNTプラットホームの営業店端末として『WinBm』を提供している(図5参照)。
前述したWinodws-NTの補完機能以外のWinBmの特徴は以下のとおりである。
(1)従来インタフェース通信機能
現行のシステムから新しいシステムに移行しやすいように、従来弊社が提供している通信インタフェース(HDLCループ等)を用意している
(2)外部接続機能
電話網、ISDN網、専用線それぞれの接続インタフェースをサポートしており、各社のメインフレームとの通信機能を持たせることができる。
(3)金融業務に必要な専用I/O装置制御機能
金融業務に必須である、通帳・伝票プリンタやキャッシャ、暗証番号入力機等の専用I/O装置を接続することが可能である。
WinBmは、平成7年7月に金融機関大規模システムに導入を開始し、平成8年3月末時点で営業店端末として約700台が稼働中である。万一の不具合に備え、マイクロソフト株式会社とは最高レベルのプロバイダ契約を結んでいるが、導入開始以来、WindowsNTに起因するトラブルは発生していない。
また、OSと弊社のミドルウェア・業務APとの親和性も高く、実運用での安定性を実証している。弊社では今後3〜4年の間に約20000台の営業店端末を導入していく予定である。
図5. 弊社の営業店端末『WinBm』(カウンター設置イメージ)
大規模システムをWindowsNTで構築するにあたり留意すべき点は以下のように考えている。
また、勘定系システムの営業店端末としてWindowsNTを採用することにより、一足先にオープン化指向を実現してきた情報系システムとの垣根はいっそう低くなった。これにより、基幹システムにおいて新たなニーズが生まれてきた。
それは
というキーワードで言いあらわせる。
この夏に出荷が予定されているWindowsNT4.0ではインターネット関連の機能強化もアナウンスされている。これはニーズに対する的確な対応であると考える。分散トランザクションに関しても、WindowsNTを対象としたTPモニタ機能を有する市販製品が出揃いつつある。WindowsNTにおいてこのような機能は本格的導入には至っていないが、UNIX等の他のプラットホームとの比較評価をにらみつつ、活用の場を広げていきたい。
本格的なマルチタスクOSであり、デファクトスタンダードとなりつつあるWindowsNTは、ハードの高性能化と相まって大規模システムのプラットホームになり得るに充分な機能・性能を備えつつある。
今回開発した営業店端末はそれを実証するものである。ただし、WindowsNTの機能だけでは不充分な部分があるのも事実であり、弊社が開発した補完的な機能を用いて、より大規模システムの構築に足りうる信頼性を確保できた。
弊社は今後とも、マイクロソフト株式会社と連携し、前述した課題を的確に見据え、WindowsNTを基幹システムのプラットホームとすることに寄与していきたい。