「涼宮ハルヒの消失」Blu-ray/DVDが発売されましたので、ネタバレレベルを改定します
「魔法少女まどか☆マギカ」8話。 超絶ダウナーなので、先に考察的な事を書いておきます。 インキュベーターとは孵卵器なのですが、何を孵化するのでしょうか。 単に魔法少女をインキュベートして魔女として孵し、それを魔法少女に殺させて上がりを頂戴するのがインキュベーターの仕事なのでしょうか。 それでは魔法少女は、魔女になって人間を絶望させ他の魔法少女に間引かれ刈り取られるだけの存在になってしまいます。 果たして「魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を撒き散らす」(2話)の意味は?ただのキュゥべえの営業トークなのでしょうか。 まだ考えがまとまっていないのですが、インキュベートされるものとは「作品」なのではないでしょうか。 メタレベルをひとつ上げてみます。 作家の脳内世界には作家自身の恨みつらみが溜まっている。そのストレスやトラウマが大きければ大きいだけ素晴らしい作品になる可能性が増す。これがおぼろげな形になった(グリーフシード)ら、ただ暖める(インキュベート)だけでなく、多大な努力(魔法)を傾注して作品として実世界に生み出す。 そう考えると魔女も魔法少女も同じ作り手の中の存在になります。 (11/03/04)
赤い太陽の下で、狂ったように魔女を打ち据えるさやか。私はもう人間ではない。滅んだのは魔女ではなく、さやかの心。*) さやか「あげるよ、そいつが目当てなんでしょ」 グリーフシードを投げる。助けに来てくれた杏子の手を振り払うかのように。 都市は雨に濡れる。街灯の光のなか。バス停で休んでいるさやかとまどか。 まどか「痛くないなんて嘘だよ」「感じないから傷ついてもいいなんて、そんなのだめだよ」 雨粒が波紋を作り、光に覆われる。雨だけではない。まどかも涙を流している。 さやか「キュゥべえから聞いたわよ、あんた誰よりも才能あるんでしょう」 またも、さやかを苦しめる「才能」。自らを「こんな体」「石ころ」「生きてるふり」「人間やめる」とまで。何のために魔法少女になったのか、その理由をなくしてしまったから。 もしもスーパーヒロインでいられるなら、そんな弱点があろうとそこまで自己卑下することはないでしょう。 もしも、自分の仕事が意味のあるものだと信じられるなら、誰に罵られても誇りは消えないでしょう。でもそうではなかった。「あんたの代わりにあたしがこんな目にあってる」自分で選んだはずの道。罵られているのはさやか自身。 さやか「ついてこないで」 街灯が雨に濡れる。泣いているのはさやかの心。 さやか「バカだよあたし。なんて事いってんのよ。もう救いようが無いよ」 雨の中坂道を駆けてゆくさやか。その先、分かれ道に家 標識「ほむら」同じ町のはずなのに雨も無い。 濁るソウルジェムのカットを挿入する事で、さやかの走る先にあるように見せる事を避けています。左側を隠した「ほむら」のインサートカットも、ほむらの苗字に秘密があるのか?と思わせています。左側を隠すのはマミのマンションの標識と同じ。 ほむらの部屋。巨大な時計。ローソクと刃物がついた振り子。(いわゆるギロチン振り子。回転する丸ノコや寸前で止まる時限爆弾の秒針と同じく昭和アクション映画名物)光と影が逆転している。振り子は逆単振動している。なにもかも逆。 ひとりでカップラーメンを食べる杏子に向きあうほむら。微妙な間。杏子にとってほむらは「食うかい?」と誘う相手ではない。 ほむら「ワルプルギスの夜の出現予測は、この範囲」 台詞がかさなることで、ほむらの目的の総てがワルプルギスの夜に向けてのものであること。凶暴な振り子の影で、それは「死」であることが示される。 早乙女先生「mustという助動詞には、これこれしなくてはならないといった義務の意味があるのですが…」 エヴァンゲリオン演出。環境音風な台詞に意味がある。さやかに声をかけなければならなかったと思うまどか 夕景の光の中。上條君に声をかける仁美。/ 影の中。夕日が反射して輝く風景。off台詞でまどかの声が重ねられる。 仁美と上條君は光の中の住人。まどかの心は影の中の光。そしてさやかは影 カットバック。水辺のベンチで談笑する上條君と仁美。水面に反射した夕日の光の中。それを物陰から見ているさやか。覗いているのではない、見守りたかっただけ、上條君が幸せでさえあれば、-----などと思うだけで自分が惨めになる。 怒りに任せて使い魔を叩き切るさやか。折れる剣。*2)結界が消滅すると深夜の集合住宅廊下(廃墟?)27日月。 ほむらのくれたグリーフシードを後ろに蹴る。受け入れられない。2話ラストでほむらがマミにグリーフシードを投げ返した事より、強い否定の意志。 さやか「あんたたちとは違う魔法少女になる、あたしはそう決めたんだ。誰かを見捨てるのも、利用するのも、そんな事をする奴らとつるむのも嫌だ。見返りなんていらない。あたしだけは絶対に自分の為に魔法を使ったりしない」 光。さやかの強い意志。でもそれは危険すぎる。よろめく。 さやか「あたしが死ぬとしたら、それは魔女を殺せなくなった時だけだよ。それってつまり用済みって事じゃん。ならいいんだよ。魔女に勝てないあたしなんて、この世界にはいらないよ」 この言葉はかなり強いメッセージ性を持っているのですが、何を暗喩しているのか今ひとつ……う〜ん。私みたいに個人制作しているインディペンデントな人たちを視野に入れているわけでもないように思います。たしかに認められなきゃ死ぬだけだ!どうせ認められないのなら…と、さやかみたいに思っている人も多いでしょう。その気持ちは凄くわかりますが。 スタッフの「暴走」という言葉は80〜90年代アニメファンダムでは頻出単語でした。良い作品にする為に自分の職務範囲を超えて過度に頑張ってしまう事、とでも言ったら良いのでしょうか。そんな通常よりかけ離れた仕事を作品に見出すと、ファンは目をみはり感謝すると同時に、そういうスタッフが認められ報われて欲しいと願い、そして暴走したひとがクリエーター生命を縮めてしまわないようにと、ひりつくような思いで祈っていました。 前回紹介した「アニメがお仕事!」でも、「暴走」した主人公イチ乃が、君はこの場(打ち合わせ)にいる資格があるのかと問われて茫然自失、まったく何も手につかなくなるといった描写がありました。恐らくはさやかの悲惨とは、そういった人たちが体を壊したり「それってつまり用済みって事じゃん」と引退してしまったりすることなんじゃないのかと思います。「暴走」なんて言葉をしらない人も増えている事かと思います。ファンの皆さん、さやかのように絶望と孤独の中でアニメ界を去っていったひとの為に、せめて泣いてください。 自分を助けたいからなどとは嘘だと言うさやかに、ほむらは「いいえ、なにもかもあの子のためよ」というと武装。あまりの事に言葉も無いさやか。自分の決意など所詮やけくそになっていただけ。それがまどかを傷つけていた事にやっと気付きます。 ほむら「これ以上まどかを悲しませるなら、いっそ私が…」 ほむらの左手のソウルジェムが輝く。 光の中を駆けて来る影。杏子。その七節棍がほむらを捕らえる。ほむらのup。いつもの無表情。 杏子「おい、さっさと逃げろ」 ほむらもスタングレネードで杏子を振り切って逃げる。破裂音に続く耳鳴りの音。 電車。やはり闇と光が反転している。もたれかかるさやか。聞こえる話し声、電車に染み付いているよう。 ヒモ男二人の不愉快な会話は異様で、エヴァあたりならともかく、あきらかに演出上浮いている。さやかを絶望させるなら仁美と上條君に「美樹さんの事は?」「よしてくれよ、さやかとはなんでもないんだ。ちょっとしつこくってさ」で充分なはずです。 この会話が何を意味しているのかは明確なので置き換えましょう。おそらくTVアニメ関係者は誰にも書くに書けないだろうから、部外者の私がキーボードに怒りを込めて書かせていただきます。*3) ヒモA「言い訳とかさせちゃだめっしょ。稼いだ分はきっちり持ち出しで作品作らせないと。アニメーターって馬鹿だからさあ、ちょっと金持たせとくと、すぐくっだらねえ事に使っちまうからねぇ」 ヒモB「やあホント、アニメーターは人間扱いしちゃ駄目っすねえ。犬かなんかだと思って叩いてやらないとねぇ。あいつもそれで(おかげさまでいい作品ができましたなんて)喜んでるわけだし、フフ。俺はお客様だぞって脅せばぁ、まず大抵は黙りますもんね」 ヒモA「けっ、ちょっと油断すると、すぐつけあがってクリエーターだとか言い出すからさあ、甘やかすの禁物よぉ。ったく、テメエみたいなアニメ乞食が、十年後も同じ額稼げるかってーの。身の程わきまえろってんだ。なあ」 ヒモB「オワコン扱いするとさあ、ホントウザイっすよねぇ。その辺ショウさん上手いからうらやましいっすよ。俺も見習わないと」 こんなゲスは「かんなぎ騒動」のときに掲示板を荒らしていた奴にもいねーだろと思っていませんか?ほんの些細な一言に作り手がどれだけ傷つく事か。 続くさやかの言葉は、物づくりのみでなく誰もが思っている事。なんで自分にされた事を他人にも味あわせなければ気がすまないのだろうか。世の中こんなものだと言ってしまえば心が荒むだけなのに。一応アニメに置き換えておきますが、自分の仕事に当てはめてみてください。 さやか「その人、観客の心に届くことが何より大事で、あんたに感動して欲しくて頑張ってたんでしょう。あんたにもそれが分かってたんでしょう?なのに犬と同じなの?ありがとうって言わないの?役に立たなきゃ捨てちゃうの?」 さやか「ねえ、アニメーションって守る価値あるの?あたし何の為に作ってたの?教えてよ。今すぐあんたがおしえてよ。でないとあたし」 分岐点を超え、猛烈な速度で走り去る列車。もう、すべてが遅い。 続く深夜の噴水前でのまどかとキュゥべえの会話は不自然です。さやかの事だけが気がかりだったはずですし、キュゥべえにはさやかを元に戻せない事を確認した後なのに まどか「ねえ、いつか言ってた、私がすごい魔法少女になれるって話、あれは、本当なの?」 自分が契約しなかった事がさやかの悲劇をもたらしたわけでない事、「宇宙の法則を捻じ曲げる」ほどの才能を持っている、と聞いた後に まどか「私は、自分なんてなんのとりえも無い人間だと思ってた。ずっとこのまま、誰のためになることも、何の役に立つ事もできずに、最期までただなんとなく生きてゆくだけなのかなって、それは悔しいし、寂しい事だけど、でもしかたないよねって思ってたの」 3話の魔女結界でのマミとの会話をなぞっています。ファンの間で「QB営業のテーマ」といわれるBGMも、後でまどかの話を聞いた側が死ぬのも同じ。なんのとりえも無いひとがある日突然使命を告げられるという、スーパーヒーローものの定石のように思えます。しかし、これは発端ではなく2回目です。何もできない、何者でもない、いなくなっても誰も気付いてもらえないような深い挫折と劣等感。現実との戦いに疲れたあなたの心にも、まどかの声が染み入ってきませんか?ここでのまどかの「力」は、メタレベルがずれているようにも思えます。本気で作れば、君には君にしかできない(作品)世界が造れるよ。その世界にとって君は万能だよ。 自分が魔法少女になればさやかをもとに戻せるか、と問うたまどかにキュゥべえは キュゥべえ「その願いは君にとって、魂を差し出すに足るものかい」 どれほど深い決意を必要とするのでしょう。しかし親友はその願いの為に今も血を吐いているのです。さやかを助けられるなら魔法少女になっても、といいかけたところでほむらに止められます。キュゥべえが現れた方向から現れるほむら。 ほむら「あなたは、なんであなたは、いつだって、そうやって自分を犠牲にして、役に立たないとか、意味が無いとか、勝手に自分を粗末にしないで。あなたを大切に思う人のことも考えて。いいかげんにしてよ。あなたを失えば、それを悲しむ人がいるって、どうしてそれに気付かないの。あなたを守ろうとしていた人はどうなるの」 まだ早い。主題歌の「もう何があってもくじけない」と思えるまでは。そんな理由で進んではならない。あなたはそんなに無意味でも無力でもないのだから。 ほむらの正体とか、右手の甲には何があるのとか、キュゥべえの目的は、とか考察はこの次に。すでにweb上ではほむらはまどかの母詢子さんじゃあとか、娘でしょとか、未来ならこのサイト的には被造物だろとかいろいろ言われてますが、まあそれはそれ。 さやか魔女化シーンについては、やはりこれ。(→Syu's quiz blog:『魔法少女まどか☆マギカ』#9を見た、ある勤務医の感想)さまざまなところに転載されているようですが、こちらが後までのこりそうなので。リンク先が消滅していたら下記の一部をコピペしてぐぐってください。9話の感想ですが、ここで紹介したほうがいいでしょう。 >「誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない」って台詞聞いた時、本当に心が抉られるようだった。 >俺もそうだから。 >夜中にくだらないことで救急車呼ぶ患者に心の中で舌打ちしてた。 >開業していく連中が羨ましくて、憎くて憎くて仕方なかった。 >笑顔が見られればそれでいいって自分に言い聞かせながら、自分の境遇を恨んでた。 >自分の器の小ささ、厭らしさ、浅ましさ、全部見せつけられたような見透かされてたような気がして >ここしばらくずっと俯いて仕事してた。 ひとに「見返りを求めない」といわせておいて、そいつを限界まで試みる。そういう醜い世界に私たちは生きている。 「プロだから」「好きでやってるんだから」と言って歯を食いしばる人を、そう言えなくなるまで追い込むのが私たち。 素晴らしいものを作ってくれた人が苦しむのは、良いものを求める苦悩だけであってほしい。でも、現実は違う。 今回紹介したいのはこちら(→もとふみ:魔法少女と魔女の小部屋)ほかの魔女はともかく、あこがれの強い箱の魔女は泣いちゃうよね。 *)^ 7-8話の魔女が何を暗喩しているのかは、考察しません。魔女の名前がどうやら"エルザマリア"であり自由の女神もまた"マリアンヌ"である事、(→wikipedia:マリアンヌ)自由の女神のたいまつがなぜか赤い太陽になっているが、太陽を赤いと認識するのは日本人特有の感覚であるだろう事。魔女が死ぬと赤い丸を描いた旗が落ちてくる事。さやかの血を隠すために総てを影に沈める(墨塗りしてしまう)結界などから、作り手はなにか考えて欲しがっているだろうと推測します。まあ物語上はこう(→のん:【8話ちょっとネタバレ】ワルプルギスの夜だよ、全員集合!!)なんでしょうが。 うん、さやかがやっているのは八つ当たりだよね。で、規制推進派のみなさんがされている事が八つ当たりではないって言えるの?アニメを愛する人たちに悪罵を投げつけ、憎まれることで、何かしている気になってない? 竹宮惠子(発表当時は竹宮恵子)先生の「風と木の詩」のテーマが児童の性的虐待だってわかっているよね。なんで一番賛意を得られそうな相手にケンカを売るの? *2)^ 今回、濁ってゆくさやかのソウルジェムのヴィジュアルに、一番近いと思うのはスタン・ブラッケージのハンドペイント作品(→MISTRAL JAPAN:LOVE SONG) この中にはありませんが、「BLACK ICE」などは色彩が近いでしょう。「Stan Brakhage BLACK ICE」とかでぐぐると良いかもしれません。サイレント作品です。そういえば、ブラッケージも保守的な人から自作をポルノ扱いされて本人がショットガンで撃たれたり(!)、日本に作品を輸入しようとしたら税関で止められたりしたんだっけ。60年代でもアメリカ大使館に作品が所蔵されていた人なんだが。 *3)^ 物語上はこの考察が正解でしょう。(→Syu's quiz blog:魔法少女まどか☆マギカ』#8で、2人組のホストの会話と、美樹さやかの主張について) (11/03/11)
ネタバレレベル2 ハルヒ2期を視聴した人向け。見てない人はなんだか解らないだろうけど
すでに10話の配信も終了してしまいました。大変に遅れてしまいました。 青黒く濁ったソウルジェム。たじろぐ杏子 さやか「誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない。あたしたち魔法少女って、そういう仕組みだったんだね」 涙がソウルジェムに落ちるとき、魔女と化したさやかが泣き叫ぶ。だがその声は杏子には届かない。 うごめく髑髏の影-街灯の蝿。不吉な死の予兆。輝く街灯の光、少女たちの魂。 ほむら「彼女のソウルジェムは、グリーフシードに変化した後、魔女を産んで消滅したわ」 分岐点。風に揺れる架線がカラカラと鳴る ほむら「この宝石が濁りきって黒く染まるとき、私たちはグリーフシードになり、魔女として生まれ変わる。それが魔法少女になった者の、逃れられない運命」 通り過ぎる列車 まどか「そんな、どうして?さやかちゃん、魔女から人を守りたいって、正義の味方になりたいって、そう思って魔法少女になったんだよ。なのに」 ほむら「その祈りに見合うだけの呪いを背負い込んだまでの事。あの子は誰かを救った分だけ、これからは誰かを祟りながら生きてゆく」 「てめえそれでも人間か」と怒る杏子に ほむら「勿論違うわ、あなたもね」 というと元来た道(さやかの結界があった方向)へと帰ってゆく まどかの寝室。眠れない。窓が光に覆われ、キュゥべえの影絵が現れる。 キュゥべえの説明は突拍子が無い上に、はっきり言って胡散臭過ぎる。*1)この胡散臭さを狙ってやっているのならば、キュゥべえが寓意するなにかに対する悪意や不信感の表現だろう。 でも、映像は違うようにも思える。キュゥべえの言う「僕たち」は言葉の上では無数の巨大な星間文明圏だが、映像上はぬいぐるみに過ぎない、さやか「なにそれ、ぬいぐるみじゃないよね(1話)」、キュゥべえもそのぬいぐるみのひとつ。そのぬいぐるみに運命を弄ばれるという皮肉。いつも抱いて眠っていたぬいぐるみが、触れる事のできないなにものかになる。だがやはりそれはぬいぐるみであり、得体の知れないモンスターではない。しかし、そう気付いても運命は動かない。 窓の外にいるキュゥべえの影/棚の上にいるキュゥべえ/椅子の上にいるキュゥべえ 空の椅子/ぬいぐるみが座っている椅子 うなだれているまどか/顔を上げ、振り向くまどか 要素が交錯する。 特に顔を上げ、振り向くまどかは異様。彼女の生が、キュゥべえの犠牲になる事で意味のある物になる……のだが、それはやはり過酷に過ぎる。 明け方。ホテルの角部屋。ベッドの上のさやかの遺体。テーブルの上の大量の食物。ピザ、コンビニ袋。ハンバーガー。 手に持ったソウルジェムをかざす。これは次のシーンのマエフリ。 部屋の隅に座り込む杏子。これで状況を示しているのでしょう。普段はホテルに泊まっているわけではないだろう事。そして、恐らくはさやかを背負って夜中にチェックインできるわけもない。父を皆に認めさせるのに使ったと同じ魔法を使ったという事です。 杏子、キュゥべえを問いただす。 キュゥべえ「生憎だが、助言のしようが無いよ」 ラストシーンとの絡みで生きてくる台詞。杏子はキュゥべえは嘘をつかないと思っているので、問うた分だけ情報を引き出せるだろうと信じているが、キュゥべえは目的に反する情報は話さない。それだけではなく、ここではっきりと嘘をついている。だから杏子は騙される。 翌朝。登校するまどかと仁美。奇妙な靴音が強調され、アバンの杏子とほむらの会話と対称になるシーンである事が示される。 仁美「いまちょっと、さやかさんとはお話しずらいんですが」 遠まわしに確認してくれないかという問い。日常はまどかには残酷。 まどかが仁美に言いかけると、杏子のテレパシー。 杏子「昨日の今日で、学校なんて行ってる場合かよ」 不穏な木の影。屋上の枯れ木。水辺の光と影。輝くビルの屋上の影。杏子。日常生活を守っていても、影の世界はついてくる。ここから、今回のハイライトシーンになります。 街灯から落ちる昨日の雨粒。不穏な影。影の中から現れる杏子。 杏子「美樹さやか、助けたいと思わない?」 まどかを見つめる杏子の目のクローズアップ。まどかに自分のソウルジェムをかざす。次のカットも、同じポジションのはずなのに影の形が違っている。 4回見返してやっと気付きました。杏子の「中からさやかのソウルジェムがぽろっと落ちてくるとかさ、そういうもんじゃん、最後に愛と勇気が勝つストーリーっての」という台詞があるので、杏子がまどかに見せているソウルジェムが自然なものに思えてしまい、ただ杏子が説得しているだけに見えてしまいます。しかし、奇妙な影が「ここには何かあるぞ」と告げてきます。 このシーンでは杏子がまどかに魔法をかけようとしているのではないでしょうか。今回は、最初に駅ホームでさやかが杏子に濁ったソウルジェムを見せ、次に線路上でほむらがまどかにソウルジェムを示し、次に杏子がソウルジェムをかざしてさやかの遺体に治癒魔法を使い、このシーンで杏子がまどかにソウルジェムを示しています。杏子は父の話を聞いて欲しいと願い、強制力を使う魔法少女になりました。食物や寝床を得るのも杏子自身の強制力魔法によってです。杏子の立場で考えてみれば、いくらさやかのためだからといっても、さやかを殺そうとした自分にまどかがついてきてくれる道理はありません。魔法を使おうと考えるほうが自然でしょう。*2) このシーンが今までの回の魔法少女同士の会話と違って光の演出にならない理由は、このシーンの特殊性にあります。今までの回では、日常はフラットな明るい世界。魔女の棲むのは夕暮れから夜。そして魔法少女たちの心が交錯し、その命が激しく燃え上がるときには、闇の中に輝く光が現れました。今回はそのどれでもありません。魔法は、魔女と同じ闇の世界にあるものなのでしょうか。 杏子「付き合いきれねえってんなら、無理強いはしない〜」のカットでは、人物の影が逆方向についています。その次の まどか「ううん、手伝う。手伝わせて欲しい」も影が逆です。恐らくは狙ってやっています。 落ちる水滴。これはさやかの涙 杏子が「たくもう、調子狂うよなホント」というのは、魔法で従わせるつもりだったのに、と思っているだろうと考えると理解しやすく思います。 「食うかい」ではなく「佐倉杏子だ。よろしくね」というと、握手の代わりにうまい棒をわたす杏子。杏子の耐えられない飢え、魔法ではそれを満たせない。欲しいのは食物ではなく自分を理解してくれる仲間だったから。おそらくはただ一人、杏子の食べ物を受け取ってくれたのがまどか。 既に夕景。重苦しい高架下。まどかが「友達じゃないの?」と言うと杏子が「違うね」と答える。結局まどかが唯一の理解者。アップになる杏子の目。その相手に強制力を使ってしまったという負い目なのか。 魔女結界は、夕刻の光のなか。杏子、変身。手に持っていた串を投げると壁のハートの落書き「LOVE ME DO」(結界の封印?)に突き刺す。杏子の想いはさやかに。 変な奴だと言うと笑う杏子。それはずっと求め続けた<仲間>の感触。魔法少女たちの心に触れ、そして杏子の強制力にすら全力で答える。これがまどかの「素質」なのでしょうか。 まどか「誰かにばっかり戦わせて、自分でなにもしない私って、やっぱり卑怯なのかな」 と問うまどかに杏子は 杏子「舐めんなよ。この仕事はね、誰にだって勤まるもんじゃない。毎日うまいもん食って、幸せ家族に囲まれて、そんな何不自由ない暮らしをしてる奴がさ、ただの気まぐれで魔法少女になろうとするんなら、そんなのあたしが許さない。いの一番にぶっ潰してやるさ」 まどか「(息を呑む)」 杏子「命を危険に晒すってのはな、そうするしか他にしかたない奴がやる事さ。そうじゃない奴が首を突っ込むのはただのお遊びだ、おふざけだ」 杏子のポリシーは変わらない。どうしても、という強い決意がなければ一緒に戦うなどと言って欲しくない。でも 杏子「アンタだっていつかは、否が応でも命がけで戦わなきゃならない時がくるかもしれない。その時になって考えればいいんだよ」 まどかとの間には、確かに心が繋がった。二人で扉を開く。 まどか「杏子ちゃんは、どうして…」 言いかけるまどか。恐らく、「魔法少女になったの?」と続くのでしょう。だがその問いは永遠に失われました。その答えを7話の教会で聞いて、そしてそれを受け入れられなかったさやかによって。 魔女の結界。不穏な交響楽を奏でるコンサートホール。奥に座る魔女。説得を試みるまどかと杏子。音楽を乱された事に怒り、魔女が剣を振り上げるたびに巨大な影が現れ、涙を流す。自分が魔女になってしまったことも、まどかが説得に来てくれた事も、まどかを杏子が守っている事も、すべてが魔女さやかを苦しめる。*3) 杏子「怒ってんだろ。何もかも許せないんだろ。解るよ。それで気が済んだら目を覚ましなよ、なぁ」 二つの思いが渦巻く血液になって、床に注がれる。ついにまどかを握りしめ、その首を親指でもぎ取ろうとする魔女。激しい怒りに叫ぶ杏子。獅子の咆哮のように。魔女の腕を切り落とす。 杏子「あんた、信じてるって言ってたじゃないか!この力で人を幸せにできるって」 魔女が剣を振り下ろすと床が崩れる。 杏子「頼むよ、神様。こんな人生だったんだ。せめて一度ぐらい、幸せな夢を見させてよ」 さやかの代わりに涙を流す杏子。すでに致命傷。そして、 杏子「心配すんなよさやか。ひとりぼっちは、寂しいもんな。いいよ、いっしょにいてやるよ。さやか」 髪留めに移したソウルジェムに口づけすると投げ、槍で砕く。壮烈な自爆。 このシーンの意味を考えてみます。杏子の変身時の衣装は、父親のスータン(→wikipedia;キャソック)のアレンジです。胸のソウルジェムも、父や信徒たちがしている赤い石と同じデザインです。胸のソウルジェムを外してそのまま投げたのでは、杏子は死に臨んで信仰と父への愛を捨てた事になります。が、おそらくはそうではないでしょう。では髪留めはどうでしょうか。7話の回想シーンでは平常時には髪を束ねておらず、魔法少女の時だけです。髪を束ねるのは、魔法少女として戦うという意思をあらわしているのでしょう。おそらくは「あたしとおやじで、表と裏からこの世界を救うんだって(7話)」と決意したその時の心。それを、思い出させてくれたさやかの為に、最後に外したのではないでしょうか。 ほむらの家。「(暁)美ほむら」の表示。左側を隠したのはひっかけだった?振れる運命の振り子。 ほむら「佐倉杏子には、本当に美樹さやかを救える望みがあったの」*4) キュゥべえ「まさか。そんなの不可能に決まってるじゃないか」 邪悪。感情が無いのではなく、感情が無いふりをしている。右往左往している人間を見て楽しんでいるのかどうかは解らない。だが、他者の心を斟酌することを拒否しながら、他者の感情を理解して目的のままに誘導している事は事実。ならば「わけがわからないよ」は演技にすぎない。感情を持たぬ機械よりも、「仕事だから」を言い訳に相手を思いやる感情を麻痺させたふりをする冷酷な人間の態度に良く似ている。 *1)^ 説明がとてつもなくわかりにくいので理解できません。恐らくはキュゥべえのいう「エネルギー」は、理科で言うそれではなくニュース番組でキャスターが言うそれ、つまり”エネルギー資源”の事のように思えます。じゃQB語の「エントロピー」は?日本語でおkなので考察できません。 *2)^ なぜ杏子のまわりにだけ、このような「涼宮ハルヒ」シリーズのような間接的な表現をしているのでしょうか? それは恐らく自主規制だと考えます。詳しくは次回の予定。 *3)^ 参考動画は、というと、今では水彩でにじみを生かしてアニメーションというのは特に珍しくはありません。例えばこちらのPV(→Breakbot - Baby I'm Yours)とか。でも、私はどうしても田辺幸夫さんの作品を思い浮かべてしまいます。とは言え、web上には参考画像もありません。 *4)^ 微妙ですが、あえて「佐倉杏子には」と言っているのは、ほむらにならさやかを救う望みがあるからとも解釈できます。 今回紹介したい二次創作絵は、うーん。pixivをあさると凄い数の杏子×さやか絵があります。どれも素晴らしい。これ(→ここチン!:ACのあれ)とか。ストレートですが、これもいい(→ガチャ!:diary 32) 上の方に、杏子の「食うかい」は孤独感の表現だと書きましたが、実はこの方の絵を見て気付いたのでした。 変化球を。「ろくでなしの詩」様(→こちら R-18ページもあるのでご注意)はキョン子もので名高いサイトなのですが、こちらにも(→魔法少女杏子☆さやか 1 2 3)さや杏ものあり。 入れ替わりや性別反転というのは古い漫画の定番です。私にとっては高橋留美子より弓月光かなあ。「ろくでなしの詩」のサイトオーナー「俊」さんの作品が面白いのは、そういう古い漫画のパターンとはおもしろさのポイントがずれている事です。普通入れ替わったらお互いドキドキしなきゃいかんだろうに、なんでこうなる(笑)。上記作品はtop→左フレームmenuの「漫画」→まどか☆マギカにあります。しかし「グレンラガン」好きですね。 (11/03/29) |
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