オークション方式へ切り替え相次ぐ
 ジャスダック上場企業がマーケットメーク(値付け)方式を取りやめ、相対で取引するオークション(競売)方式に切り替える傾向を強めている。マーケットメークは流動性向上の切り札として一九九八年に導入された売買制度だが、最近の過熱気味の相場では存在意義が薄れがち。今秋をメドに取引所化を目指すジャスダックにとって、市場の中核と位置づける制度の定着は容易ではなさそうだ。
 「株を購入したいが、マーケットメーク方式だと買いにくいのでオークション方式に切り替えて欲しい」――。カラオケルーム運営のヴァリック(2387)では、個人投資家からのこんな電話が増えている。マーケットメーク銘柄は、売買の注文が値段ごとに何株あるかといった「板」の表示がなく、出来高など需給がつかみにくいため注文しづらいというのだ。一部の機関投資家からも同様の不満の声が聞かれる。
 マーケットメーク制度は証券会社が常時、売りと買いの気配値を提示し、投資家の注文に応じる仕組み。知名度が低く商いの対象になりにくい銘柄の流動性向上につながると期待されるが、ここへきて日経ジャスダック平均が四年ぶりに二〇〇〇円を突破するなど相場が上昇すると状況は一変。投資家の希望価格をつき合わせるオークション方式の方が値付き率の高い月も目に付く。
 そのため、「相場が活況なので流動性が低くてもオークション方式で値が付くと考えた」(新光証券エクイティ部の高崎雄三マネジャー)投資家が、目先の使いやすさから企業側に方式変更を促している。
 ジャスダック側も制度の改良を重ねているが、上昇相場の陰に隠れてしまった格好だ。複数の証券会社が提示している気配値のうち、投資家に最も条件のよい最良気配値で約定できる「セントラル方式」の導入もそうした改善策の一つ。売りと買いの気配値の平均乖離率(スプレッド)は、導入前の五%程度から二%弱にまで縮小した。
 「取引環境の改善に役立った」(ジャスダックの細合義仁経営企画室長)はずだが、昨年五月の導入後に新規上場企業で採用したのはヴァリックなど三社のみ。マーケットメーク制度の採用社数の合計も、減少の一途をたどっている。
 セントラル方式については、大手の証券会社は「囲い込んできた顧客からの注文でも、他社の最良気配で約定され、収益機会の逸失につながる」とこぼす。新規上場予定の企業にマーケットメークを勧める「インセンティブが弱まった」と本音をあかす。
 こうした不満の声に対し、野村資本市場研究所の大崎貞和研究部長は「九八年の導入から日が浅く、オークションになじみのある投資家などの認識がまだ不足している」と指摘する。
 現在の活況ぶりが今後も続く保証はないだけに「流動性の向上に役立つマーケットメークを根付かせるべき」と細合氏は主張する。
 ただ、ジャスダック側も「制度のPRや改善など課題が山積している」(大崎部長)のは確かだ。需給を把握しづらいといった批判に少しでも応えるため、ジャスダックは気配値の有無だけの表示から、取引単位を五単位まで数量表示するように今週から改めた。昨秋からは全国でセミナーを開催し投資家や企業の理解促進に力を入れている。
 それでも人気薄の銘柄はスプレッドに大幅な開きが生じやすいなどの課題は残る。この制度が主流の米ナスダックでは約五百社の証券会社が値付けにしのぎを削るが、日本では二十社程度にとどまることが背景にある。
 取引所化を今秋に控え、同制度を市場の特色として生かすには、ジャスダックとしても投資家と企業にとっての利益を念頭におき、制度の意義や使いやすさを問い直す必要があるだろう。(榎本行浩)