高性能乾電池は本当に長持ちか?

フラッシュライト&乾電池フェチの私としては、近頃の単三形乾電池の高性能化競争は非常に興味深い。しかしメーカーの宣伝文句はどれも同じように「従来の2〜3倍長持ち(当社比)」であるから、いったいどれが一番高性能で、どれがコストパフォーマンスが良いのかさっぱり判らん。そこで代表的な電池を集めて放電実験をおこなってみた。

乾電池の放電テストなんて負荷を接続して時間ごとの電圧と電流を記録してゆくだけの、とんでもなくダリィ〜地味な行為である。であるからして興味はあっても今までやる気がしなかった。なんとか自動記録ができるシステムを構築しなければ・・・仕事でデータロガーを使ったこともあるが、そんな高価なものは買えない。秋月電子で安いキットを探してみたが、在庫切れ。電動ラジコン用の高性能充放電器なら電気量を計測できるモノがあるが、単セル放電で使用できるか怪しい。いろいろ考えているうちにふと思いついたのがカメラのインターバル撮影機能を使用する方法だった。



電池BOXに3Ωのセメント抵抗と電圧計をつないだだけの回路をビデオカメラでインターバル撮影するという、家にある物だけで作ったビンボー測定装置である(笑) 当然、パソコンへのデータ転送はされないので実験終了後にビデオを見ながらエクセルに数値を打ち込むという地味〜な作業が待ち受けている(爆) しかし実験の間中張り付いていなくても良いので少しは救われるな。

単純に抵抗で放電させるというのは、メーカーがよくやる定電力放電と違って電球を使った懐中電灯で使用するのに近い実験である。メーカーが公表している放電特性グラフなどを見ると、実際の使用時とは違う条件であったりするから注意が必要だ。その意味では、抵抗ではなく電球のほうが良かったのかも知れない。バルブのフィラメントは電圧の違いで輝度が変わると抵抗値が変わって消費電力も変化するからね。まあ電圧さえ計っておけば電流は計算で出せる定抵抗放電がお手軽なんで電球は使いませんでした。

 

測定した電池

 23.1g  @=64円(1280円/20本) 
パナソニックアルカリ:何度もモデルチェンジして大電流放電特性を向上させ続け、業界をリードしてきた。デザインがそっくりの他社、他国籍電池もよく見かけた。使いっぱなしで何年も放っとくと、よくお漏らしして機器を痛めた。最近、売り場ではオキシライドに押され気味。
 23.2g  @=79円(1580円/20本)
パナソニックオキシライド:2004年4月に市場に現れた新興勢力。40年ぶりの新型電池という宣伝であったが、実はその2年ほど前から販売されていた「デジカメ専用」という電池と同じニッケル系。初期電圧が1.7Vと高く、電球のライトに使用するとフィラメントが切れやすいから使うなとの注意書き。2005年には単4も発売。
 27.0g  @=?
パナソニックNi-MH2000:今回唯一の二次電池。昔は充電式といえばニッケル-カドミウムであったが、水素吸蔵合金を使用してカドミウムフリーに。二次電池の高容量化競争も激しいものがあり、最新のモデルは2600mAhもの高容量だ。ニッカドの初期は450mAhだったのにな。
 13.8g  @=245円(980円/4本)
FUJIFILMが販売しているEnergizerの単三リチウム。低温に強く、軽量かつ高容量であるから登山用品店でもよく見かける。もともとはデジカメの消費電力が大きくてアルカリでは10枚程度しか撮影できなかった頃に登場した。CR系のリチウム-二酸化マンガンは単セルが3Vであるが、こいつはリチウム-硫化鉄なので単3形と互換性を持つ1.5Vだ。ちなみにこの電池、Made in U.S.A.であり2005年の4月から単4形も発売になった。現在のパッケージはこれ。





ライトに使用される豆球は1セルあたり1.2Vで0.5A流れるものが多いから1.2/0.5=2.4Ωの抵抗を使うべきだったが、1.5Vという思い込みがあって3Ωにしてしまった。よって1.2Vでは1.2/3=0.4Aの電流が流れる。ちょっと負荷が少なめだがしかたない。測定時の室温は18〜20℃に管理。測定結果をエクセルでグラフにしてみた。

グラフが出来上がってちょっと驚いた。なんだオキシライドが一番ヘタレじゃないか?

 

 

 

 

 

 

オキシライド:100分

アルカリ:135分

ニッケル水素:230分

単3リチウム:295分

 

放電終止電圧を1.0Vに設定したグラフでは、オキシライドが一番早くギブアップ。
長持ちするというのはウソだったのか? 実はこれ、測定条件のマジックなのだ。

 

たとえばオキシライドのパッケージにあるグラフは、定ワット連続放電だ。電圧が低下しするにしたがって電流を多く流して、時間あたりに同じ電力量を取り出してゆく方法。こんな電池の使い方をする機器はほとんど無い。強いて挙げればLEDヘッドランプでNational・BF-198Bとブラックダイヤモンド・ジーニクスIQくらいか。コンバータもしくはチャージポンプという昇圧回路でLEDが必要とする電圧まで上げているため電池の寿命まで明るさ、消費電力ともに一定になる。普通のライトを点灯してデータを採ったら私がやった実験のグラフと同様になってしまい、高性能電池の優位性をアピールできないから電池メーカーはみんな定ワット連続放電という手法をとるのだ。

そしてメーカーが公示しているこのグラフからとても重要なことが読み取れる。100mW以下の消費電力ではアルカリの性能指数が上なのだ。エネルギーをとことん絞り取るような使い方をするならアルカリのほうが高性能。つまり電池が持っているエネルギー量はオキシライドよりもアルカリのほうが大きいということ。中味の少ないオキシライドが高い放電特性でもって大きな電力を放出してゆけば・・・そりゃアルカリよりも先にカラになるわな!

であるから、オキシライドの特性を生かした使い方は、まず大電流を必要とする機器であること。そしてストロボなど、時間ではなくて回数で勝負とか1セルあたり1.2Vで動作しなくなる機械などだ。また、パワフルなライト類で1.2Vまでのオイシイとこだけしか使わないといったところか。デジカメはもうほとんどがリチウムイオンだから出番は無いかな。

1.2Vまでの条件では

 

 

 

アルカリ:40分

オキシライド:80分

ニッケル水素:135分

単3リチウム:235分

 

このとおり0.5〜0.4Aの消費電流において1.2Vでおしまいにすると、オキシライドはアルカリの2倍長持ちだ。
アルカリでこんな使い方をすると、乾電池の持つエネルギーの半分も使っていない。もったいないなー。

もったいないと言えば乾電池の電気エネルギーって、電池を作るのに必要なエネルギーの1/100以下と聞いたことがある。また、家庭用電灯電気料金の100倍以上の価格とも・・・

そこでエクセルでインターバルごとの電力を計算してそれを集計したところ、アルカリ電池の電気エネルギーは1.220wh。単価は、64円/1.220wh=52.46円/wh となった。家庭用電灯電気料金の何倍になるのだろう? 電気料金の代表値を23.38円/kwh(関電の夜間電力料金に対する通常単価)とすると 23380/52.46=446倍  う〜ん電池の電気代?ってすっごい割高!

 

各電池の持つエネルギー量は・・・

  総電気エネルギー量(wh) 初期電圧〜1.2Vまでの電気エネルギー量(wh)
アルカリ 1.220 0.430
オキシライド 1.024 0.881
Ni-MH2000 1.550 1.169
単3リチウム 2.925 2.290


グラフにすると・・・

・アルカリはすぐに電圧が低下するため、総エネルギー量に対して1.2Vまでのエネルギー量が低い。
・オキシライドは総エネルギー量が小さいものの、1.2Vまでにほとんどの力を出し切っている。
・ニッケル水素の総容量がアルカリを抜いているのには驚いた。ニッカドの時代にはアルカリが上だったのに。
・単3リチウムは高価格だけど性能もぶっちぎりでダントツだ。おまけに軽量ときている。

単3リチウムのランニングコストが安ければな〜   ちょっと計算してみよう、1時間当たりの電気代は?
電池2本使用の0.4Aバルブのライトで1セル1.2Vまで連続使用ということで計算すると・・・

アルカリ:(64円*2/40分)60=192円

オキシライド:(79円*2/80分)60=119円

ニッケル水素:(?円*2/135分)60=充電式はよくわからん

単3リチウム:(245円*2/235分)60=125円

 

なんとオキシライドと大差ないじゃないか!

 

山行き装備の軽量化にも有利だ!どれくらい軽いのか?
同様に電池2本使用のライトということで1時間当たりの重量を計算してみた。

アルカリ:(23.1g*2/40分)60=69.3g

オキシライド:(23.2g*2/80分)60=34.8g

ニッケル水素:(27.0g*2/135分)60=24.0g

単3リチウム:(13.8g*2/235分)60=7.0g

 

比較にならん!

 

時間当たりの重量はオキシライドの1/5だ。

体積比は80分/235分=1/2.94  ほぼ1/3

さらに単3リチウムは放電電圧が安定しているからフィラメントにダメージを与えることなく最後まで明るい。

低温でも電圧及び容量の低下が少ない。

自己放電がほとんど無くて長期保存できる。
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もう単3と単4はこれで決まりだね。パッケージ裏面はここ

これからライト類にはリチウム電池を使用することに決定!

リモコンその他には百円均一で節約だ!(爆

次回は「安売り電池のコストパフォーマンスを探る」かな?