ゴジラの目玉

初代ゴジラの眼

嘲笑いながらこちらを見下ろす眼。闇に燐光を放つ赤眼。深い悲しみをたたえた暗い瞳。シーンによって様々な表情を見せる初代ゴジラの眼。それは初代ゴジラ独特のものだ。
 ややとびだし気味の楕円形の眼球に丸い黒眼。その周囲にはよく見るとまぶたのような縁取りがある。


黒目 
一般に、焦点が合ってないだとか、どこを見ているかわからないといったイメージが強い初代ゴジラであるが、けっしてそんなことはない。初代ゴジラの眼球は可動式だったからだ。可動式とはいえ後のスーツのように電動のラジコン操作ではなく、撮影するシーンによって手で動かして固定していたと考えられる。撮影に際してもっとも効果的な瞳の位置にされていたのだろう。
 それでも黒眼の基本位置はある程度決まっていたようだ。左眼は左下を向き、右眼は前を向く。左半身から見ると左に視線を合わせているように見える。スチールでいうと勝鬨橋を倒したシーンのビハインドスナップがわかりやすい。この状態が基本と考えて良いのだろう、黒眼がこの状態で撮られたスチールが多い。しかし、その大部分が左半身を写しているため(これは有名なスチール、特車隊に包囲されるゴジラ、和光ビルとゴジラがともに左半身を写していることも大きい)「初代ゴジラは下を見下ろしている」というイメージが植え付けられ、右眼は左眼とちょうど逆に右下を向いていると思ってしまうのだろう。だから模型をつくるときでも左右対称に黒眼を塗るのは間違いだ(なんてえらそうなことを書いているが私がそれに気付いたのは京商のヘッドラインシリーズの初代ゴジラの完成見本を見てからだった。ビリケンの初代ゴジラはそのように塗ってみたもののなかなかうまくいかなかった。それに第一模型に間違いなんてないのだ。好きなように塗れば良いのだ)。

 国会を破壊する一連のシーンのスチールは右半身を写すが、右眼は前方を向いているのがわかる。

 テレビ塔に迫るシーン、銀座松坂屋に迫るシーンでは前方やや上を向き意思を感じさせる。また、鉄道の運転席から見える初代ゴジラはギョロリと眼をむいて後ろを見ている。このように、多彩な感情を感じさせる初代ゴジラ、焦点が合わないどころかどこを見ているかがはっきりわかる稀有なゴジラなのではないだろうか。
隻眼のゴジラ 1号スーツ
さて、以上は映画に登場した2号スーツであるが、1号スーツはどうだろうか。完成直後の1号スーツでは、写真では右眼しか見えないものの、しっかり前を向いている。
 ところが残されている
3面写真では、左眼は一般的な初代ゴジラのイメージのままなのに対し、右眼は白眼のみで黒眼が入れられていない。2号製作中の頭のみの1号も写っている右眼は白眼だ。いったん完成させた後黒眼が消されたと考えられる。
 何故、右眼の黒眼が消されているのか。「芹沢博士のイメージをダブらせたのか?」「総攻撃ゴジラの原点発見!!」とかいろいろ勘ぐりたくなるが、ストレートに考えれば完成した際の黒眼の位置が気に入らなかったためだろう。左眼が残されているのは、それが理想的なものだったのだろうか。ただ、消された後長い間そのまま放置されていたようだ。先述したように後に頭部が切り離されたときも白眼のままだ。試行錯誤のあげく、あきらめてしまったかのようだ。(まさかホントに芹沢さんのイメージだったりして・・・・・・)。

 1号スーツでの試行錯誤の結果、位置を決めて描き込むかわりに考え出されたのが2号スーツから採用された可動式の眼だった。これならば、撮影の意図に合わせて黒眼の位置を変えられるし、視線も定まる。本邦初の怪獣、その生命力を表す「眼」の表現にこそ、製作者のこだわりがあったに違いない。だからこそ、初代ゴジラの焦点は合っていたと考えたいのだ。もちろん撮影のための可動であるから、映らない側の眼がどこ向いててもオッケー!ということはあったかもしれない。

 ちなみに1号スーツの左眼を見ると虹彩が表現されているようにも見える。模型でも再現するとおもしろそうだ。
電飾は?
 初代ゴジラはスチールでは電飾が仕組まれているように見える。またビハインドスナップでは電飾の消えた状態に見えるものもある。実際は開米栄三氏の証言からは電飾は施されておらず、旋盤を使った木工細工を白く塗ったものだったらしい(ヤマダ1995)。
 実際、映画では白目はさほど目立っていない。電飾はやはりされてなかったのであろう。電飾されているように見える理由は、スチール写真の撮影時に顔面中心にスポットライトを当てていたからと考えられる。光っているように見える写真ではたいてい顔面(特に眉)も明度が高い。
 このことから、眼の塗装はライトが当たれば白く、当たらなければ濁った色合いになるものだったようだ。「白く塗った」とはいえかなり黄ばんだ色合いだったのだろう。ちなみに、製作中
の2号スーツの写真では、無塗装の2号と完成済み(後、頭部切断)の1号の眼の色合いは同じである(質感も同じようだ)。すでに白眼は塗装してあるのだろうか?表皮はこの後、熱処理をしなきゃならないはずなのだが・・・・・・。
ここで一つ気になる点を。テレビ塔のミニチュアの前でギニョールゴジラを持つ本多監督と円谷監督のスナップ。ギニョールから何本かのコードが出ている。これって電飾用の配線じゃ・・・・・・ないよね。白熱光噴射用のホースだよね。多分。

逆襲ゴジラの眼

 前方の敵を見つめる肉食獣の目、それが逆襲ゴジラの眼だ。初代ゴジラからデザインを引き継いだ逆襲ゴジラであるが、眼の感じはぜんぜん違う。足もとを逃げ惑う人々を見下ろしていた初代ゴジラとは違い、目の前の対戦相手を見るためにこうされたのであろう。初代同様黒目の位置は動かせるようだ。そうして逆襲ゴジラの凶暴性をあらわす目つきなのに、前から見ると人間的な表情も見えてしまう。そういうギャップがこのゴジラの魅力であることは間違いない。

ジャイガンティスの眼

 ゴジラが三白眼になった。モスゴジで頂点を極める三白眼はこのゴジラが始祖といって良いだろう。実は同時に製作されたアンギラス2号と同じ目つきをしている。アンギラス2号はアンギラス1号の目つきを踏襲。三白眼の元祖は初代アンギラスだったということか。

キンゴジの眼

 別項のキンゴジ考察ではジャイガンテイスミッシングリンク説に疑問を呈したのだが、眼に関しては明らかにジャイガンテイスを引き継いで上目づかいの三白眼になっている。そして、キンゴジの怖さ、コミカルさ、何考えてるかわからなさを端的に表すのがその眼だ。表情があるのに無表情、コワイ。カワイイ。カッコイイ。
 眼球は、ヒートプレスしたアクリル板の表面にベットリ黒目を塗り、裏側から白い板(反射板)を当てているようだ(バンプレストのミレゴジ雛型モデルの構造が近い)。だから前から見ると向こうが透けてまた違う表情になるはずだ。実際の着ぐるみは今イメージするほどヘンな前顔じゃなかったかもしれない。ちなみに黒目の陰が白目に映っている。映像では黄ばんだ白目だが、アクリル板が黄色がっているのか、反射板が黄色がかっているのか。DVDのブックレットで公開されたカラー写真では人間の涙腺と目じりに当たる部分がほんのり赤味がかっている。色っぽい。

モスゴジの眼

 凶悪だ。その性格を地で行くその目つき。キンゴジではかわいくすらあった三白眼が、モスゴジではいやはや、人知を超えた凶悪さだ。
 半球のレンズ状のクリヤーパーツの裏側に黒目が入れられている。キンゴジではクリヤーパーツの表にあった黒目が裏になったわけだ。モスゴジもキンゴジ同様、実際の着ぐるみと写真とではだいぶイメージが異なる可能性がある。模型で再現したいところだが、同じ構造にしてもサジ加減で表情が違ってしまう。イメージどおりにするのは難しいだろう。

 この構造のおかげで、目線がどこから見てもきまるようになり、しっかりと相手をにらみつけることができるようになった。作品で描かれるのは絶対悪のゴジラ。そのゴジラを的確に表現する眼であった。しかし残念なことにこの構造の目玉は以後つくられることがなかった。一つの表情が強調されるということは、他の表情は見えにくくなるということだ。様々な表情を演出するには不適当だったのだろう。まして時代はゴジラにヒーロー性を求めていたのだから。

以下続