特撮映画と富山県

 ゴジラは富山県に上陸していない。

 この事実は、富山県内に在住する特撮ファンにとっては由々しき問題である。
だが、特撮映画と富山県がまったく接点がないかというと、そうではない。ここでは、私がおこがましくも(勝手に)富山県の代表を務めて、富山県と特撮映画のかかわりについて語ってみたい。
 愛県心バリバリのご当地ネタ、県民以外に興味を引こうとも思えない企画ですが、ゴジラ上陸県の人も、そうでない県の人もしばしお付き合い下さいまし。


ゴジラ映画と富山県―『三大怪獣地球最大の決戦』

 日本海側をかつては「裏日本」と呼んだものだが、こと特撮映画の世界では今も昔も変わってない気がする。そもそものゴジラが太平洋からやってくるのだから仕方ないのかもしれない。

 さて、ゴジラシリーズ、いや東宝特撮映画で唯一富山県が登場したのが1964年の『三大怪獣 地球最大の決戦』である。ゴジラシリーズ最大の悪役、キングギドラは富山県出身だった―といったら皆怒ります?そう、かのキングギドラが最初に降り立ったのは黒部谷=黒部峡谷。あの黒部ダムのある黒部峡谷、その所在地である富山県こそがキングギドラの地球での出身地なのである(※)。
 残念ながら、キングギドラは太平洋側に飛んでいってしまったため、映画では富山の市街地が登場することは無かった。おそらく封切り当時、多くの県民が涙したに違いない。だが、我々には伊福部昭による「黒部谷のテーマ」がある。南海の孤島でもあるまいし、伊福部テーマを与えられた土地というのもあまり無いんじゃないか。富山県民は誇りに思おう。

(※)立山連峰の裏側ということもあり、キングギドラが落下したのは長野県側の可能性もありますが、却下します。なんといっても姿をあらわしたキングギドラは長野県側に飛んでったんだから、それくらいで文句は言わせません。なんで日本海側に出て来なかったんだ、ギドラよ……。


ニアミス―『ゴジラVSビオランテ』

 富山県だけでなく北陸3県を見ても特撮映画的には非常にサビシイ。お隣石川県などもゴジラ松井を輩出したわりに特撮映画で登場したことは一度も無いんじゃないか。
 そんな中健闘しているのが『ゴジラVSビオランテ』のクライマックスの舞台として選ばれた福井県若狭である。本州日本海側の、それも北陸が作品の舞台となったことは賞賛に値する。映画のラスト、ビオランテとの戦いを終えたゴジラは抗核バクテリアの影響もあり日本海へその身を投じる。それを観た日本海側在住の観客はこう思ったに違いない。


「次のゴジラは日本海側に上陸する」
(意訳:ウチの県に来るんじゃないかなワクワク)


 ところが続く『ゴジラVSキングギドラ』でその願望はもろくも崩れ去ることになる。
 あろうことか、未来人の大バカものどもが日本海沖で眠るゴジラをベーリング海にワープさせてしまったのだ。このストーリーを知ったときには本気でガッカリしたものだ。脚本・監督の大森一樹は自らの蒔いた「日本海側のゴジラ」というタネをかくも意外な方法で刈り取ってしまった。今でも大森監督のことはちょっと恨みに思っとるですよ。ホント。
 ベーリング海にて復活したゴジラは北海道上陸を果たすことになる。


富山県出身の特撮関係者
 
 70年代に東宝の特殊美術の中心を担い、数々の怪獣を生み出した安丸信行は富山県出身である。富山県の井波町(現南砺市)、欄間などの彫刻で有名な土地で生まれ育った安丸は彫刻を学びに武蔵野美大彫刻科へ。東宝特美では石膏班を経て、ゴロザウルス以降怪獣造型に携わった。彫刻的、鋭角的な怪獣造型は利光貞三退職後の東宝特美を支えた。その感性は、故郷である井波の彫刻とその職人に囲まれた幼少期に育まれた……のかもしれない。

 もうひとり、富山県出身のスーパーヒーローがいる。初代ウルトラマン、ハヤタ隊員役の黒部進である。黒部市出身だから黒部進。東宝の大部屋俳優としても数多くの作品に出演している。おそらく、老若男女、世界に顔を知られた、富山県出身でもっとも有名な役者といってもいいんじゃないだろうか。
 ところが黒部さん、富山県が唯一東宝特撮で登場した『地球最大の決戦』ではあろうことか、殺し屋の一味―マルメスの手下―を演じている。せっかく黒部峡谷も出てくるんですよ、その役ってどうなのよ……と思わずにはいられない。まあ、そういう脇を固める大部屋俳優の良さが黄金期の東宝特撮のよさでもあるし、ういう経験がハヤタ役にも活きてるわけだからしょうがないか。
 ちなみに富山県でTBS系列が開局して民放が3局になったのはのは平成2年のこと。『ウルトラマン』本放映時には富山では『ウルトラマン』は放送されてなかった可能性が高い。実際どうだったんでしょう?さほど遅れずにローカル局で放送されたのか、全然放映されなかったのか。黒部さんのご実家の方では主役張ってるその雄姿を見ることができたのだろうか。

大映特撮と富山県

 雪山を舞台にした『大魔神逆襲』のロケは立山の室堂を中心に行われた。今では遊歩道もある程度整備されてしまい、印象が異なるが、十数年前までは、映画のロングシーンで観られる風景とほとんど変わらぬ景色を見ることができた。
 立山観光に行かれる際は、「ああこの山に武人像が…」と思いをはせてみて下さい。
 ちなみに本作の悪役は荒川飛騨守。官名はあんまり関係ないけど、飛騨は越中富山のお隣。地獄谷というのも立山にある。本作は立山周辺を換骨奪胎したような舞台設定だと思われます。

 しばらく見直していないので詳細は書けないが『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』にて、宇宙に追放されていたガメラが帰還するのも黒部ダム。黒部峡谷には宇宙から飛来するものをひきつける何かがあるのでしょうか……?


さて、アナタの県と特撮映画のかかわりはどうですか?


(おまけ)


写真はウチの職場に富山ローカルの番組の収録に訪れた黒部進さんにサインしていただいたもの。
担当は後輩だったので、私は姿をお見かけすることもなく泣く泣く彼に『大ウルトラマン図鑑』と色紙を託したのです。これで、この『大ウルトラマン図鑑』は造型資料として使えなくなりました・・・。

(2005.10.5了)
 

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