1. アール
2. モーゼル・ザール・ルーヴァー
3. ミッテルライン
4. ナーエ
5. ラインガウ
6. フランケン
7. ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ
8. ラインヘッセン
9. ファルツ
10. ビュルテンベルク
11. バーデン
12. ザクセン
13. ザーレ・ウンストルート
展望:地球温暖化とドイツワイン







(トリアラー・マキシミーナー・クロイツベルクの冬景色)

アールは旧西ドイツ最北に位置する生産地帯で、生産されるワインのうち9割近くが赤ワインという、ドイツでも特異な
地区である。かつては軽くてほの甘い観光客向けの赤が多かったが、近年は濃いめの辛口が増えており、とくに
VDP加盟醸造所のシュペートブルグンダー、フリューブルグンダーの品質は注目に値する。

2005年は平年並みに寒冷で降雨の少なかった冬の後、4月末に芽吹きが始まった。5月の冷涼で不安定な天候−
日中の平均気温は13度と平年より若干低めだった−に対し、6月は日中の平均気温が18度と、平年の16.3度を上
回る温暖な天候で、遅れ気味だった生育は急速に進み、6月中旬に始まったシュペートブルグンダーの開花は数日
で順調に完了した。その後も夏のような天候は続き、充分な土壌の水分と相まって葡萄は急速に成長を続けたが、
バート・ノイエンアールとアールヴァイラーの一帯では雹の被害にみまわれた。

フリューブルグンダーは7月中旬に色づき始め、シュペートブルグンダーの成熟は8月下旬に始まった。これは平年よ
り1週間ほど早い。この時点で葡萄畑のコンディションは完璧といえるもので、葉も房も健全、質的にも量的にも素晴
らしい生産年になる見込みだった。9月初旬に日中平均気温はいよいよ高くなり、それに伴って果汁糖度も週ごとに
確実に上昇していった。

8月を通して1平米あたり8リットルにすぎなかった降雨は、9月に平年の5割り増しに増加し、とりわけ9日から12日か
けての強い雨と蜂による被害で腐敗が一気に広がり、予定よりも早い収穫開始を余儀なくされた。9月中旬にはフリ
ューブルグンダーの収穫が完了し、続いてポルトギーザーの収穫が始まった。収穫期の天候には恵まれたものの、
腐敗の進行によってシュペートブルグンダーの収穫を遅らせることを不可能な状態だったため、9月末には収穫が開
始され、10月中旬には全ての収穫を完了した。

ボトリティスのついた房の厳密な選り分けを行った醸造所は、早期の収穫にもかかわらずシュペートブルグンダーで
85〜95エクスレに達する素晴らしい品質の果汁を得る事が出来た。平均収穫量は約70hl/haで、平年より15%前後
少ないが、エキス分の多い、フルーティでボディのしっかりした色の濃いワインとなりそうだという。









(伝統的な棒仕立てのリースリング。)


平年より5日ほど早い4月25日に芽吹いたリースリングの成長は、開花の直前に訪れた寒気で少し停滞したが、それ
でも平年よりも12日早い6月16日に開花を迎えた。8月の変わりやすい天候と、所により多量に降った雨が給水を助
け、秋の成熟へむけての備えとなった。反面降雨の少なかった地区は若干の渇水ストレスにみまわれた。6月後半
から7月にかけての温暖な気候で葡萄は急速に生長し、7月始めに果粒は小豆大となった。8月上旬には早熟品種
の果皮が柔らかくなりはじめた。しかしそれに続き寒く雨がちの天候が成熟を遅らせ、腐敗の進行に備えて房の間
引きが行われ、結果的に高糖度・高品質の収穫をもたらすこととなった。

9月と10月の記録的な長時間の日照と、25度に達する記録的な高温により葡萄は素晴らしく熟すとともに、夜間に気
温が2,3度まで下がったことで、アロマ成分の形成も早めに進行。果汁糖度は前年の同時期に比べ10エクスレ前後
高く、酸度は相応に低くなった。9月から10月にかけて葡萄は晴天の度に熟し、大半は健全な状態だったことから、
偉大な生産年となることへの期待もふくらんでいった。

9月末にボトリティスが広がり始めたことから、リースリングの収穫は2004年より数日早い10月8日に始まった。10月
19日から天候が崩れたが、それまでに9割方の収穫は完了しており、貴腐粒を選り分けてBA, TBAを造る機会にも
恵まれた。10月26日に天候は再び回復、28日はブラウネベルク村で24.9度に達し、ドイツの10月の最高気温を記録
した。

最終的に果汁糖度は期待以上の高さとなり、殆どがQmPの基準をクリアし、平均値は90エクスレ前後。アウスレー
ゼ、BA、TBAも多く、急斜面の畑では200エクスレを越えたものも少なくない。一方で生産量は前年より10%減となっ
た。

ルーヴァー、ピースポート、ミンハイム、モーゼル下流とオーバーモーゼルの一部で雹の被害があり、生産量の50%前
後を失った所もある。前年深刻な問題となった黒腐病は農薬散布による予防と病菌の温床となった荒廃した畑を整
備したことなどが功を奏し、今年はほとんど見られなかった。一方、蛾やダニなど害虫の被害とともに、夏期の高温と
乾燥は長期的な傾向になりつつあり、急斜面の岩がちな畑では渇水ストレスに見舞われた。地球温暖化現象の一
部と思われる。

全般には完熟してロマの豊かなワインとなる見込みで、消費者は大いに期待してよい。QmPのうち需要に応えるた
めにQbAに格下げしてリリースされるワインも多くなると見られる。








(3月下旬、冬眠から目覚めた葡萄が樹液を滴らせ始めた。)


成長速度は平年より若干速く、リースリングの発芽は5月1日(平年と同じ)、開花は6月13日(平年6月17日)に始ま
った。結実後の実は小さく、順調に成長したことから、質・量ともに恵まれた年になることが期待されていた。しかし7
月27日の豪雨と雹で、オーバーヴェーゼルとカウプ一帯で深刻な被害に見舞われ、ウルバー、ダムシャイド、エンゲ
ヘル、デルホーフェンの村々では収穫の全てが失われ、ローレライ一帯の葡萄畑では30〜80%の損害を被ったが、
その他の地区、特にポッパルトから下流では雨が却って好影響をもたらした。

7月より若干冷涼な8月には適度な降雨が畑を潤したが、実際には5月から9月にかけての降雨量は若干不足気味
だった。しかし感覚とは異なり、実際にデータを比較すると、月間平均気温は常に平年を上回っていたことがわかる。
成熟が始まった8月14日(平年8月21日)以降、果汁糖度は週ごとに6〜7エクスレ上昇し、当初の酸度は25g/Liter
と平年並みに高かったが12〜10g/Literまでは急速に低下し、それ以上は収穫までほとんど下がらなかった。

9月末に一部の果粒にボトリティス菌による損傷が見られた。その後の好天続きで貴腐となり、10月中旬には125エ
クスレ以上に達するベーレンアウスレーゼの収穫に成功した一方で、同じボトリティス菌の影響で地面に自然落下す
る房もあり、収穫量減少の一因となった。黒腐病や果実の日焼けで果皮が痛んだり、蛾の被害も若干あった。ほど
ほどに雨が降ったため、葡萄の組織は乾燥した昨年、一昨年ほどしっかりしておらず、雨、露、霧などで繁殖したボト
リティスに対する抵抗力が弱かったようだ。

早熟品種の収穫は10月初旬に始まり、リースリングの収穫は腐敗の進み具合で開始時期が異なったが、10月10日
前後に収穫の山場を迎え、月末まで続いた。一部で雹により全滅の被害を被った一方、リースリングの収穫量は
100hl/haに達したところもあるが、大半は50hl/ha前後にとどまった。果汁糖度も地区により70エクスレから90エクス
レとバラツキがあるが、最終的にほとんどのリースリングは糖度85〜90エクスレ、酸度8g/Literに達した。力強くフル
ーティでストラクチャのしっかりしたワインになりそうだという。








(発芽して間もないリースリング。)


2005年の生育は平年より数日早く進み、リースリングの発芽は4月27日(平年5月2日)、開花は6月19日(平年6月
21日)に観察された。

6月、7月の順調な天候の後、8月は冷涼で変わりやすい天気が続き、平均気温は平年並みだが、降雨量は平年の
半分ほどで、8月末に一部の畑で乾燥ストレスの兆候が見られた。一気に夏らしい暑さが戻って来たその頃、葡萄の
果皮が暗緑色に染まり、やがて茶色に変色し、粒がしぼむ症状が、早熟品種のバッフスやミュラートゥルガウに現
れ、後に他の品種にも観察された。直射日光のあたる部分にとくに多く見られたそれは、当初ボトリティスによるもの
と推測されたが、実際は日焼けによる被害であった。丁度成熟がはじまりかけた時期と症状の出たタイミングが一致
することから、物質交代が成熟へ転換する時期の葡萄の敏感さを示したものといえるが、オゾン層破壊との関連も考
えられる。

9月に入り引き続き乾燥した天気が続いたため、黴の被害にあった房も乾き、非常に順調に成熟した。実の付きぐあ
いは粒がやや小さく、粒と粒の間隔もあいていたが、9月の平年並みの降雨量で、乾燥ストレスから葡萄は回復する
ことができた。9月上旬に普通は地中に生息しているはさみ虫がしばしば葡萄の房に生息しているのがみられた。葡
萄に損傷を与えた様子もないこと、9月下旬から10月はじめの雨の後に再び地中に戻ったことから、暑く乾燥した地
面から一時的に避難してきたものと思われる。

秋が深まるにつれて腐敗が広がり、リースリングでは地面に落下する房も目に付くようになった。一方で葡萄を極限
まで完熟させつつ、一方でベーシックなワインにする健全な収穫の充分な量を確保するため、収穫時期の決定には
経験と勘が必要とされる。多くの醸造所では秋の好天を充分に活用して完熟した房を収穫したが、そのぶん腐敗に
よる損失で収穫量は減った。

ミュラートゥルガウの収穫は9月26日(平年9月30日)リースリングの収穫は平年より5日早い10月14日に始まり、リ
ースリングの平均果汁糖度は90エクスレ(平年74エクスレ)に達し、収穫量は75hl/ha (平年81hl/ha)に留まった。
ナーエの中でもばらつきがあり、早期に収穫を始めた地区は収穫量が多く、遅くなるほど収穫量は少ない。しかし早
期に収穫を始めた地区でも、例年に比べて果汁糖度は高かった。リースリングでは30%がQbA、70%がQmPの基準を
クリアしているが、QmPの一部はQbAに格下げしてリリースされる見込み。







(葡萄の房になるつぼみ。)


2005年はまるでジェットコースターのように気温の上下が激しい年だった。年明けに訪れた春先のような暖かさは月
末には冬らしい寒さに戻り、それが3月まで続いた。それでも葡萄の芽吹きは平年より一週間早い4月21日に観測さ
れた。4月21日と22日には氷点下3度の寒気が訪れたが、とくに被害はなく、つづく4月末から5月上旬にかけて25度
に達する暑さとなった。

5月上旬に再び寒さが戻ったが、下旬には北アフリカからの亜熱帯高気圧がほとんど真夏の30度まで気温を押し上
げ、葡萄の急速な生育を促した。続く6月前半の寒冷な気候は開花を6月15日まで一週間ほど遅らせた。6月14日の
雨で湿度が95%に達し、翌日午前中はラインガウの大部分を覆った霧はペロノスペラの蔓延に絶好の条件となった
が、農薬散布とそれから3週間ほど続いた33度に達する暑さのお陰で、心配されたほどの被害にはならなかった。

開花は6月20日頃には終わり、暑さで一部に見られた花流れは適度な間引きとなった。結実10日後に果粒は大豆
ほどの大きさまで成長した頃、水不足の兆候が現れ始めた。乾燥ストレスは7月半ば、とりわけ急斜面の畑と樹齢の
若い畑で観察された。6月の降雨量はエルトヴィレでは平年60リットル/m2のところ30リットル/m2、7月は平年69リッ
トル/m2に対して41リットル/m2と半分近くに留まった。

8月上旬の低温で生育は遅れ、成熟の開始は8月13日に観察された。8月12日から15日にかけてまとまった雨が降
ったことと、8月末から9月10日にかけて25度から31度に達した高温により、果汁糖度は2003年にも勝る勢いで増
加。9月10日と12日の雨で乾燥ぎみだった土壌は救われたものの、同時に腐敗が広がるきっかけとなることが心配
された。しかし9月16日から夜間の気温が急激に下がり、これにより腐敗と酸の低下は心配されたほど急速にはす
すまなかった。

9月中旬の生育状態は2004年より早く、猛暑の2003年より一週間ほど遅れた。これは9月の平均気温が1885年に
ガイゼンハイムで気象観測が始まって以来6番目に暖かい、16.9度(30年平均14.7度、2003年は15.3度)という高温
の結果である。

腐敗が進行していたことも関係してシュペートブルグンダーは9月24日、リースリングは10月1日に収穫が始まり、し
ばしば選果が必要となった。10月3日から居座った高気圧で好天が続き、20度を超す暖かさの中で順調に収穫は進
み、10月10日の霧で腐敗がさらに広がり収穫量は減ったものの、果汁糖度は順調に増し、高貴な甘口も充分な量と
なった。10月22日頃の雨で一端中断されたが、月末までに若干の例外を除いて収穫は完了した。








(リースリングの開花。)

乾燥した寒い冬で予想外の雪に見舞われたもの、葡萄樹が凍るほどの寒さもなく過ぎ、4〜5月にかけて平年よりも
一週間ほど早い成長を示した。4月はフランケンにおいては雨が多く、5月も雨がちで畑仕事を延期しなければならな
い日が続いた。

降雨と高温は葡萄の急速な成長を促し、6月半ばに始まった開花は順調にすすんだものの、ミュラートゥルガウ、バッ
フスで花流れがあったが、これは却って果粒をまばらになって好結果をもたらした。逆に開花が早期に終わったブル
グンダー系の品種は実の付きが良すぎ、ぎっしりと詰まった果粒が圧迫しあって果皮が破裂するものも7月上旬から
見られた。こうした房は秋に内部から腐敗することが多い。

開花後も温暖な天候と充分な降雨に恵まれ、7月始めには非常に順調に結実がすすんだ。冷涼で乾燥気味の8月も
早いテンポで成長はすすみ、例年より1週間ほど早くミュラートゥルガウは8月5日、ジルヴァーナーは8月20に成熟が
はじまった。順調な天候に加えて6,7月の夜の低温と農薬散布などの対策により、ペロノスポラ、オイディウムなど例
年悩まされる黴や病気・害虫の発生はほとんど見られなかった。しかし今年は従来それほど悩まされることのなかっ
たハエ、蜂、鳥、ネズミなどが葡萄を傷める例が増えた。損傷を被った葡萄は黴や病気が蔓延するきっかけとなる。

早い成熟と損傷による腐敗や、9月の高温と2週目週末の豪雨により、果皮が破裂して地面に落ちる葡萄があったた
め、収穫開始は一部で予定より1〜2週間繰り上げて始まった。一方で健全な房を確保するとともに、一方で出来る
だけ完熟させることを考慮しつつ、厳密なセレクションを行うことが高品質なワイン造りに求められた。収穫作業はミュ
ラートゥルガウは9月24日、ジルヴァーナーは10月4日、リースリングは10月10日から始まり、大半は10月15日まで
に、晩熟品種もその一週間後には終了。9月末から10月半ばまで好天が続いたため、豪雨の被害は幸い予想した
ほど深刻ではなく、平均糖度は88エクスレだが、なかでもジルヴァーナーは健全なまま熟して100エクスレに達する
ものもあり、非常によい年となった。










(結実したリースリング。これが次第にふくらんでいく。)


ドイツで最も小さく、隣接するバーデンの付け足しのような生産地域であるが、地元では皇帝ヨーゼフ2世が『ドイツの
イタリア』と賞賛した温暖な気候を誇りにしているという。2005年の葡萄の生育は、他の産地と比べても確かに早い。
4月18〜20日にかけて発芽し、4〜5月に充分に降ってくれた雨と温暖な天候のお陰で葡萄は急速に成長するととも
に、ペロノスポラの発生が危惧されたが、大した問題にはならなかった。

6月8日にリースリングの開花が始まった。これはバーデンに次いでファルツとともにドイツでもっとも早い開花である。
しかしその後急に気温が氷点近くまで下がり、開花が長引くとともに花震いの被害も少なくなかった。6〜8月にかけ
て控え気味の雨で、降雨量は平年をかなり少まわったが、7月末の時点では平年より10〜12日前後早い速度で勢
いよく成長し、8月初旬には早くも成熟が始まった。続く8月は冷涼な月だった。

9月の雨は土壌のミネラルの吸収と蓄積を助けた一方で、腐敗がとりわけリースリングで広がるきっかけとなった。9
月20日に早熟品種から始まった収穫作業は、10月のこれ以上ないほど理想的な天候の中で進み、前年よりも14日
も早い10月20日終了した。果汁の品質は2003年に勝るとも劣らない出来栄えで、平均果汁糖度は88エクスレ前
後、リースリングのTBAは205エクスレに達した。平均収穫量は65〜75hl/haで昨年を16%あまり下回るが、高品質な
収穫に生産者は非常に満足しているという。







(すっかり葡萄らしくなったが、まだ果皮は厚い。)


ラインヘッセンはドイツ最大の栽培面積を占めるワイン生産地区で、それぞれ南と西に境界を接するファルツおよびナ
ーエと生産年の状況はほぼ似ているものの、栽培されている葡萄品種のうちリースリングはラインヘッセンではミュラ
ートゥルガウ(18.0%)、ドルンフェルダー(12.5%)、ジルヴァーナー(10.3%)に続いて10.1%で4位であるのに対し、ファル
ツ、ナーエではそれぞれ20.1%、25.1%で最も栽培されている。ここからもラインヘッセンで生産されているのは日常消
費向け量産品が中心であることが見て取れるが、近年は若手醸造家を中心に品質向上とマーケティングに意欲的な
動きが見られる。

発芽は平年より数日早く4月17日から24日かけて始まり、6月7日にシュペートブルグンダーが開花、9日にミュラート
ゥルガウ、翌10日にドルンフェルダー、12日にジルヴァーナー、そして最後に13日にリースリングと続き、22日ごろに
全ての畑で開花が完了した。花震いと花序ペロノスポラにより果粒が密集しすぎることもなく、予測された過度の高
温も訪れなかったため、果実は順調に糖度を増した。夏の乾燥と水不足が収穫量を抑え、8月中旬の雨も地区によっ
て差があり、水不足を全域で解決することにはならなかった。

夏を通じて病害虫の被害もほとんど無かったが、9月10日頃に降った雨でボトリティスが一気に広がり、果皮が破れ
る房も出てきたことから、収穫開始時期の決定に腐敗の進行状況を考慮する必要が生じた。幸い秋の好天が腐敗
部分を乾燥させたため、果汁糖度の増加を伴う貴腐への転換が見られた。

収穫作業はミュラートゥルガウが平年より10日ほど早い9月19日に、ドルンフェルダー、シュペートブルグンダー、ジル
ヴァーナーがそれぞれ9月26日、リースリングは10月4日に始まった。平均果汁糖度は期待以上で、リースリングで
86エクスレ(平年72エクスレ)、シュペートブルグンダーでは95エクスレ(平年76エクスレ)に達した。酸度はリースリ
ングで7.6g/リットルと低めなこともあり、調和のとれた味わいになりそうだという。平均収穫量はリースリングで80hl/
ha(平年85hl/ha)、ミュラートゥルガウで108hl/ha(平年110hl/ha)。ボトリティスの被害にあった収穫は醸造過程での
改善−恐らく活性炭による雑味の除去−が必要となりそうだ。








(やや果皮が薄くなり、光が透けて見えるようになったら成熟を開始したしるしだ。)


乾燥した冬の後、ノイシュタットでは葡萄の芽吹きが4月17日に観察された。これは平年よりも一週間ほど早い。この
先行状態は開花期まで続き、ミッテルハート地区で6月8日から開花が始まったが、寒気の訪れが開花状態を長引
かせるとともに、南ヴァインシュトラーセ地区での開花を遅らせた。その後再び天候は回復し、結実はほぼ順調に終
わった。多少の花ながれはあったが、却って適度の間引きとなった。続いて訪れた温暖な天候で葡萄は勢いよく成
長し、多くの醸造所では畝の片側の葉を取り除き風通しをよくする作業を行った。

夏にはドイツの至る所で多量の降雨のあったが、ファルツの森に風を遮られた一帯では雨不足が続き、7月中旬を過
ぎると局地的に猛暑だった2003年よりも総降雨量が下回り、とくに平地にある砂質土壌の畑の被害が心配された
が、8月上旬まで葡萄は持ちこたえる事が出来た。ここ数年の乾燥ぎみの天候に適応した葡萄が、地下深くまで根を
伸ばしていたためと思われる。8月中旬から乾燥ストレスの兆候を示す葡萄が増え、ミッテルハート地区の多くの醸
造所では潅漑を行った。雨不足は一方で病気を減らし、ペロノスポラやオイディウムの発生もごく一部に留まった。ま
た、雹もごく一部に降っただけですんだ。

降雨と土壌によって収穫にはバラツキがあり、乾燥した砂質土壌では果粒も小さく、収穫量は対前年比20〜25%減
となった。9月中旬の降雨の際、乾燥ストレスに見舞われていた葡萄が急速に吸水した結果、とりわけリースリング
で果皮の破裂が見られ、その後の温暖な気候でペニシリン黴と酸敗が広がり、収穫の際の入念な選果が必要とな
った。反面グラウブルグンダーを除くブルグンダー系品種は破裂することもなく、順調に成熟した。

収穫は9月3週目に始まった。平均的な果汁糖度は70〜95エクスレ、酸度は5.5〜9g/Literで理想的な状態。フルー
ティで酸も穏やかな、しっかりしたストラクチャのワインとなる見込みだが、乾燥ストレスに見舞われた畑では、やや苦
みが目立つ例もみられる。







(黄色に色づいたリースリング。)


ドイツの13生産地域の中で5番目に大きく、シュトゥットガルトとハイルブロンの間に大半が位置する生産地域ビュル
テンベルクは、アールと同様赤ワインが主力の産地で、栽培面積の7割前後を赤用品種が占める。他の産地ではあ
まり聞かないシュヴァルツリースリング(=ピノ・ムニエ)、レンベルガー(=ブラウフレンキッシュ)に加え、近年では意
欲的な醸造所のソーヴィニヨン・ブランが注目を集めつつある。相変わらずトロリンガーの栽培面積が22.4%と最も大き
いが、レンベルガー、ザムトロート、シュペートブルグンダーをバリックで長期間寝かせた濃厚な赤をリリースする醸造
所も増えており、大半が地元で消費される口当たりのいいロゼかほの甘い赤がメインの生産地域というイメージは、
様変わりしつつある。

4月14日にケルナーとレンベルガーから始まった発芽は、ジルヴァーナー(4/15)、ミュラートゥルガウ(4/16)、リースリ
ング(4/18)、シュヴァルツリースリング(4/19)、そして最後にトロリンガー(4/21)と続いた。開花はシュヴァルツリース
リングの6月12日から始まったが、6月15日までには全ての品種で開花が観察された。開花の期間中は理想的な天
候が続き、平年並みに結実。冬の降雨量も充分だったため、葡萄は順調に成長した。7月末の雹を伴う豪雨も大した
被害ももたらすことなく、逆に不足ぎみだった降雨量を平年並みにした。

成長期に順調な天候が続いたことから、質・量ともに上々の収穫が期待されたため、8月中旬から下旬にかけての成
熟開始時期に房の間引きが行われ、高品質な収穫を確かなものとした。病害虫も対応しうる範囲内に留まり、とりわ
けフェロモン誘因による蛾の対策は地域全体で効果を発揮し、その結果殺虫剤の散布も行わずに済んだ。

収穫作業は9月20日のミュラートゥルガウから始まり、続いてケルナーとシュヴァルツリースリング(9/26)、ジルヴァ
ーナー(10/4)、トロリンガーとリースリング(10/10)、最後にレンベルガー(10/17)へと進んだ。まさにゴールデン・オク
トーバーと言える10月の好天により、大半が健全な状態で収穫され、どの品種もほとんどがQmP以上の果汁糖度に
達したが、うち25%が実際にQmPとしてリリースされ、残りはQbAとなる見込み。平均収穫量は80〜120hl/haで、生
産者は非常に満足しているという。








(11月初旬、ベルンカステラー・バートシュトゥーベでのリースリングの収穫。)


前年の12月から2005年3月にかけて、降雨量が平年の3割前後に留まったものの、安定して穏やかな冬だったが、
それ以降は暖かく湿度の高い日と極端に寒い日とが交互に訪れる変わりやすい天候が続いた。葡萄の芽吹きは4
月6日にはじまった。4月下旬は非常に暖かかったが、その後雨がちになり、続く5月には最高気温が33度に達した。
葡萄は勢いよく成長したが、同時にペロノスポラも急速に広がった。

開花が観察された6月3日から10日前後、夜間の気温が5〜7度まで下がり、10〜15%が花震いをおこした一方、ペロ
ノスポラの進行は抑制された。しかし6月18日から気温は再び30度を超え、葡萄の成長を促進するとともにペロノス
ペラとオイディウムの被害は拡大した。7月末の時点で葡萄の房は土壌の給水状況を反映して、平年より25%ほど重
かった。

8月中旬に二週間続いた雨と、9月と10月初旬の豪雨で葡萄の成長は停滞したが、房の重量と実に含まれる成分濃
度は非常に高くなった。収穫作業は9月23日から始まった。10月初旬の雨とそれに続く好天と高温で、果汁糖度は
増したものの腐敗も急速に広がったので、健全なうちに収穫するべく作業は急ピッチで進み、非常にあわただしい収
穫となり、ハーヴェストマシンによる効率のよい収穫が成果をあげた。平均収穫量はリースリングで90hl/ha前後、果
汁糖度は72〜88エクスレ。非常にフルーティでミネラルとエキス分に富んだワインになりそうだという。








(アフェルスバッハのトリアー国営醸造所。)


リースリングの発芽は4月27日に始まり、6月12日に開花を迎えた。9月初旬までの天候は平年並みであった。ペロノ
スポラ、オイディウムや蛾の被害は抑制出来る範囲に留まった。9月中旬の、所により100mmを越える雨が熟しはじ
めた葡萄に深刻な影響を与え、びっしりと詰まった粒同士でつぶし合ったり破裂したりした。この為これまでにない腐
敗が急速に広がり、ボトリティス用の農薬を散布しても手の施しようがなく、秋の霧が菌類の拡散を促したため、健全
な房まで短期間で傷み始めた。収穫作業はミュラートゥルガウの9月29日から、リースリングは10月18日から始まっ
た。収穫の際には念入りな選別作業が必要となり、ハーベストマシンの利用は不可能な状況であった。平年でも収
穫量は他の生産地区に対し少なかったのが、2005年はさらに少なくなり、一部の生産者に深刻な状況であったが、
手間はかかったものの品質的には上々の収穫となった。平均果汁糖度は65〜87エクスレ、収穫量は35〜63hl/ha。








(収穫が終わると葡萄畑は静けさを取り戻し、再び春が訪れるまで休息する。)


2004年10月の霜害、氷点下20度に達した長い冬、そして2005年5月の遅霜の後、低温で遅れ気味だった発芽は4
月30日頃に始まったが、その後の好天で挽回し、品種によって異なるが6月11〜18日に開花がはじまり、月末には
花震いもほとんどなく結実した。

7月の高温と多雨で葡萄は非常に早い速度で成長し、平年よりも2週間ほど先行するまでに至ったが、同時にペロノ
スポラに冒されるリスクが高まるとともに、一部に嵐と雹および洪水による被害があった。

8月は比較的冷涼な日が続いたため成長速度は遅くなり、8月21〜25日にかけて成熟期に入った。9月初旬から中
旬まで葡萄は健全そのものだったが、9月末に収穫が始まる頃に腐敗が広がったため、収穫量は昨年に比べてかな
り減少し、平均38〜55hl/haに留まった。収穫開始はバフースが9月26日、ミュラートゥルガウとポルトギーザーが9月
30日、ジルヴァーナーとドルンフェルダーが10月10日、ヴァイスブルグンダーが10月15日、そしてリースリングが10月
16日である。果汁糖度は平均すると70〜85エクスレだが、10月中旬に収穫されたブルグンダー系品種の果汁糖度
は95〜100エクスレに達したことから、品質については生産者は満足しているという。







(2005年7月中旬のオーバーエンメル村付近。)


2005年の13地域にはそれぞれ違いがあって興味深いが、ドイツ全体として生育が前倒しぎみに早くすすむ傾向がこ
こ数年続いており、それが地球温暖化の影響であることは専門家の一致した意見だ。温暖化の影響と考えられる主
な現象には、以下があげられる。

(1) 毎年の様に葡萄が完熟する。
(2) ソーヴィニヨン・ブランやメルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンなどボルドー系品種の成功。
(3) ミュラートゥルガウなど日光に敏感な品種が日焼けを起こす。
(4) 本来温暖な南欧の病気であった黒腐病が昨年深刻な被害を与えた。
(5) 昔は例外的に温暖な年に現れた蛾の一種が毎年現れるようになった。
(6) 葡萄の房の成熟が早く進みすぎ、新酒の段階からすでにペトロール系の熟成香が出て不自然な印象を与える。
これを避けるために近年では葡萄の葉を意図的に取り除いて、光合成の進捗を遅らせることが行れている。
(7) モーゼルの岩場の急斜面など、かつて高温が生育を助けた畑では年々乾燥ストレスが深刻化している。

この傾向がさらに続くと、40〜50年後には葡萄栽培地域の北限が200〜400km、つまり北ドイツやデンマークの近辺
まで移動すると同時に、ラインガウがローヌとほぼ同等の気候になり、暑さに弱いミュラートゥルガウやジルヴァーナ
ーは現在より北方で栽培されるようになることが予測される。

今後ワイン生産地帯が北へ移動する可能性は、すでに現実のものとなりつつあることが、ベルリン近郊
(Werderaner Wachtelberg)やスウェーデンのゴットランド島での葡萄栽培の成功として現れている(Sueddeutsche
Zeitung Nr. 287, 13. Dezember 2005)。

2006年の葡萄の生育が温暖化の傾向を反映したものとなるのか、それともその逆となるのか。今年も見守りたい。


参考文献:Das Deutsche Weinmagazin 24/ 19. November 2005; Die Winzer-Zeitschrift, Dezember 2005.

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