「私は西部劇のそこが理解できなかったんだ」―

クリント・イーストウッド 自らを語る 前編

〜アクターズ・スタジオ・インタビュー〜

(NHK-BS2 2005年3月11日放送)

収 録:2003年 ゲフィン劇場(アメリカ)

司 会:ジェームズ・リプトン

 

<2>

『ローハイド』〜マカロニ・ウエスタン3部作で大ブレイクの頃

<1>出生〜駆けだし俳優の頃

<3>演じる側から監督へ『恐怖のメロディ』の頃

<4>『ダーティハリー』〜『ダーティファイター』の頃

 

 

 

「『ローハイド』には何年間?」

「撮影していた時期は1958年から65年までだ」

「7年間ですね。多くを学んだとか?」

「ああ。とてもね。

シリーズだと縛られて嫌だと

俳優たちは皆思っていたが、いい勉強の場だったよ。

失敗してもすぐ取り戻すチャンスがある。

毎回、実験できるんだ」

 

「『ローハイド』出演中、転機が訪れましたね。

1964年から66年にかけて

レオーネのマカロニ・ウエスタン3部作が

あなたを大きく変え、

米国が独占していた西部劇の世界をも変化させました。

『荒野の用心棒』出演の経緯は?」

「『ローハイド』の撮影が3ヶ月間休みになる時、

ヨーロッパで作る西部劇の話が来た。

イタリアの製作会社がスペインで撮影し、

ドイツも参加し予算は20万ドル。

私は断る気だった。

まだ『ローハイド』の途中だし休みたかった。

でも君に脚本を読ませると約束したと言われて

読んだら『用心棒』そっくりでやる気になった。

あれは大好きなんだ」

「まねていた?」

「ああ。意識的に『用心棒』をまねたんだ。

ただ彼らはそれを日本に言わなかった」

(会場笑)

「レオーネ監督は役柄にかなり指示を?」

「彼は英語を話せず、私はイタリア語が話せないから・・・

ほぼ私の独断だ(笑)」

(会場笑)

「衣装は?」

「私が米国で買い込んで持っていった」

「(劇中で吸っていた)葉巻は?」

「ビバリーヒルズで買った。

(会場笑)

ビバリーヒルズで私が調達した。

長い葉巻なので、1本を3つに切って使った。

撮影終了まで1箱で間に合ったよ」

「あの役は寡黙さが非常に印象的です。

脚本どおりですか、あなたの意見でそうした?」

「私の意見だ。

自分で話すより、人のセリフを聞くことを楽しんだよ。

私の考えでは、彼は周りで起きることをいつも観察している人間だ。

口を開けば開くほど、役柄が損なわれる。

だから寡黙にしたんだ」

「忘れ難い人物像です。

あの3部作は映画のいくつかのルールを破った。

普通、登場人物には名前があるものですが・・・

あの役には?」

ジョーだ」

「誰も言わない」

「ああ、役名はジョーだが一度も呼ばれない」

「名前の無い男だ」

「米国ではそう紹介された。

製作時のイタリア語題名は、『偉大なる見知らぬ男』で、

米国では名無しの男というアピールをした。

私の名前をアピールするのもとりやめになった。

映画の内容を重視してね。

一介のテレビ俳優の私は、それでいいと同意したよ」

「そのテレビ俳優がたちまち

世界的スターになり、

西部劇の新しい神話を作った。

E・ウォーラックはこの番組

(アクターズ・スタジオ・インタビュー)で、

『続・夕陽のガンマン』の話をしました。

アクターズ・スタジオの役員会でもあなたの話を。

共演したあなたの冷静な演技を彼は称賛しています。

皆が熱演する中、抑えた演技でしたね」

「ウォーラックは殺気立ったラテン的な男を演じていた。

私たちはいいコンビだった。

とても楽しかったよ」

 

 J

「あの3部作は西部劇の基本原則の1つを壊しました。

明白な善玉と悪玉という構図を変えたのです。

敵が銃を抜くのを待たずに撃つ人物は、

あの映画以前にはなかったと思います」

「だってナンセンスだよ。相手が抜くのを待つなんて。

(会場笑、拍手喝さい)

私は西部劇の、そこが納得できなかったんだ。

ドン・シーゲル監督は『ラスト・シューテスト』撮影中に、

ジョン・ウェインとちょっともめたらしい。

ウェインが悪党の背後に迫る場面で、

シーゲルは撃てと指示した。

ウェインは長い沈黙の後こう言った。

後ろから撃つのか?

シーゲルがああ、撃つんだ。敵はさらに4人・・・と言うと、

ウェインは言った。

後ろからは撃たん

(会場笑)

シーゲルは口をすべらせて、

イーストウッドなら、後ろから撃つぞと。

ウェインは青ざめてこう言ったそうだ。

あのガキがどうしようと関係無い

私は後ろからは撃たん(笑)」

(会場爆笑)

「『続・夕陽のガンマン』で有名なシーンは、

西部劇史上、おそらく最も長いにらみ合いです。

あなたとL・V・クリーフと

ウォーラックの目が大写しになる」

―映画『続・夕陽のガンマン』のそのシーンが流れる

「3部作を撮っている間、

大成功するだろうという予感はありましたか?」

「1作目の時は、

何とか採算がとれる程度だろうと思った。

撮影後、何週間かたって業界紙を見たら

『Per un Pugno・・・』とかいう映画が大ヒットだという。

気にもしなかった。

だって私の出演作は『偉大なる見知らぬ男』だ。

(会場笑)

さらに数週間たつと詳しい情報が載って、

クリント・イーストウッド主演の『荒野の用心棒』だという。

驚いたよ。やっと気付いた(笑)。

突然、代理人に電話が次々と掛かってきて、

いろんな作品の話が舞い込んだ。

急に面白くなってきたんだ」

 

「そして興味深い作品を選んだ。

『奴らを高く吊るせ!』

2社の共同製作です。どんな会社?」

マルパソは私の会社だ」

「なぜ自分で製作会社を?」

「小規模な映画を作りたかったし、

キャリアを少しでも自分でコントロールしたかった。

人が見過ごしたり、興味を持たない脚本でも、

映画化の価値があるかもしれない」

マルパソとは何です?」

 

 

「カリフォルニアの海岸にある場所の名だ」

「地元?」

「そうだ。

“マルパソ”とは スペイン語で

“悪い道”という意味だが

私は縁起をかつぐ方じゃないからね」

つづく

 

制作総括:ジェームズ・リプトン

演 出:ジェフ・ビュルツ

制 作:ブラボーTV、ザ・モーメント・プロダクションズ

(2003年、アメリカ)

日本語字幕:米沢啓子

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『ローハイド』〜マカロニ・ウエスタン3部作で大ブレイクの頃

<1>出生〜駆けだし俳優の頃

<3>演じる側から監督へ『恐怖のメロディ』の頃

<4>『ダーティハリー』〜『ダーティファイター』の頃

 

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