今風「フィガロの結婚」(ミュージカル版)
台本創作準備室 第2幕

    

≪第1景≫ SCENA 1

荒馬婦人の部屋。立派なドアが3つあり、大きな窓から陽が差している。
部屋の中には、趣味のいいベッド、ソファ、鏡台、デスク、書棚などがあり、
あたかもこの部屋の中だけで暮らせるかのよう。
荒馬夫人が独りで窓辺にたたずんでいる。


(第11曲 カヴァティーナ)
「当時を思う。
浮気な夫(ひと)も
愛に溢れる 夢にいざない
本気で尽くしてくれたのよ。
”愛してる”とおっしゃる目が懐かしい。

お願い、シャキッとして!
これじゃ、嘆きの天使じゃないの...。
あしたも、泣いて、泣いて、過ぎる。
お願い、神様!
浮気が もう起きないように、彼を戻して。
それとも私が、死ぬことお許しください。」


(須沙奈が部屋に入ってくる。須沙奈の方に振り向いて、荒馬夫人のセリフ。)
「こちらへ。須沙奈。
嘆かわしい。で、主人はあなたを誘惑しようとしたわけ?」

(須沙奈のセリフ)
「いいえ奥様。センセイはそんな回りくどいことはなさいません。
なまじ愛だの恋だので政治生命奪われるリスクなんか張りたかぁないって、
分っていらっしゃいます。」

(荒馬夫人のセリフ)
「じゃあ...、どうやって?」

(須沙奈のセリフ)
「合意のうえのオ・カ・ネ。
あら、誤解しないで下さいね、奥様。
私、結婚を前にして、そんな話、お受けする訳ありませんでしょ。」

(荒馬夫人のセリフ)
「彼はとっくに、もう、私のことなんか心に無いのね。」

(須沙奈のセリフ)
「それにしては奥様に対して嫉妬深い...。」

(荒馬夫人のセリフ)
「そうね。それが男の性(さが)なのかもね。
モーツアルトのオペラにあったじゃないの。”男はみんなこうしたもの”って。」

(須沙奈のセリフ)
「それ、”女はみんなこうしたもの”でしょ。
女はオカネで男をゲットしようなんて、思わない。
オカネでヴィトンやブルガリは手に入れちゃうけど。」

(飛軽、舞台裏で歌いながら)
「ラララ、ラララ、ラララ、ラ〜、ラララララララ、ラララ〜」
(飛軽、舞台に登場)

(荒馬夫人のセリフ)
「ほら、あなたがゲットした殿方がいらしたわよ。」

(須沙奈のセリフ。飛軽に向かって)
「ねぇ、こっちに来て頂戴、奥様がお待ちかねよ!
ねっ、あのこと、奥様に話してさしあげて!」

(飛軽のセリフ。ガッテンとばかり)
「奥様、ご心配にはおよびません。
早い話が、センセイは、私の花嫁を好きになっちゃって、
オカネで私の須沙奈と、一度、その、ナニをしたくなっちゃって。
そこでセンセイ、ふと気がついた。
戦争放棄の憲法9条はそのままで、自衛隊も作れれば、
戦争中のイラクにも派遣しちゃう、あのコジツケ論法。
つまり、婚姻法の後見人の部分を拡大解釈しちゃいましてね。
花嫁須沙奈の後見人であるセンセイは、結納代を花嫁にあげる見返りに、
花嫁がほんとうに花婿を引きつける魅力があるかどうか、
結婚前に試してみることが出来るって決めちゃった訳です。
まぁ、充分に実現し得ることですがね。」

(荒馬夫人のセリフ)
「実現し得る!?」

(須沙奈のセリフ)
「充分に!?」

(飛軽のセリフ。冗談っぽく)
「そう、須沙奈が望めば、充分に実現し得ること。」

(須沙奈のセリフ)
「バカ!冗談やめてよ!」

(飛軽のセリフ)
「ごめん。
でもね、センセイは、票田の札幌に、私を行かせようとしてるのは事実。
そして、須沙奈には、センセイの”特別秘書官”とやらを命じようとしてる。
ところが、須沙奈がかたくなに断るもんだから、
丸手理奈を使って嫌がらせや脅しをしようとしている。
ってなワケでさぁ。」

(須沙奈のセリフ)
「あなた、こんな大変なことになってるのに、放っておく気なの!?」

(飛軽、歌うように)
「いえいえそれは、ありません。」

(須沙奈のセリフ)
「じゃあ、どうすんのよ。私をあのオッチャンの餌食にさせようって気!?
(夫人に向かって)
あら、ごめんあそばせ。」

(飛軽のセリフ)
「いいえ、ちゃ〜んと考えが...。聞きたい?」

(飛軽、二人を両脇に呼び寄せ、何やら小声で話し出す。飛軽のセリフ)
「ひとつ、秘密の手紙をしたためましてね、
ドン橋龍を通じてセンセイに渡るように 私が段取りしましょう。
手紙はね、
奥様から、とあるダンディーな商社マンに宛てたもの。
”こんどのサントリーホールでのコンサートが終わったら、
全日空ホテルのスウィートをとってあるのでお逢いしましょう”
とか何とか書いておく...。」

(荒馬夫人のセリフ)
「止めてちょうだい、バカな!
それでなくても嫉妬深いんですからね、あの人。」

(飛軽のセリフ)
「だからいいんじゃないですか。
そんな手紙を見せられたら、あのセンセ、カ〜ッとなっちゃって、混乱しちゃって、
須沙奈にナニしよう、なんてことも忘れて、
”頭にきた、どうしよう!”なんて、ジタバタしてる間に、
私たちの結婚式の時間が来てしまう。」

(須沙奈のセリフ)
「そりゃまぁ、時間稼ぎは出来るかもしれないけど、たぶん、
丸手理奈が邪魔に入ると思うわよ。」

(飛軽のセリフ)
「まぁまぁ、聞きなさいな。
キミがセンセイに直ぐに伝えるんだ。
”今夜、庭のベンチのとこで、こっそりお逢いしたいから、待ってて”って。」

(須沙奈のセリフ)
「ええ〜ッ?」

(飛軽のセリフ)
「ケン日野のヤツは、ボクが言っといたから入隊はまだしてない。ここにいる。
そいでね、とっておきの作戦!
ヤツを女装させて、
(須沙奈に向かって)キミの代わりに、夜、庭のベンチに行かせるんだ。
そして、センセイが登場して、
口説き始めたところに奥様が登場して、”アナタ!何してんの!”となって、
センセの悪さはお流れ、ってな具合。」

(荒馬夫人のセリフ。須沙奈に向かって)
「どう思う?」

(須沙奈のセリフ)
「悪くない!」

(荒馬夫人のセリフ)
「危機的状況ですからね、何もしないで指くわえている訳にはいかないし...」

(須沙奈のセリフ)
「飛軽が自信があるんなら...」

(荒馬夫人のセリフ)
「で、いつ始めるの?」

(飛軽のセリフ)
「センセは今、靖国神社に行って、支持率上がるようにお祈りしてる。
その後、宮司とカラオケに行って好きな軍歌を歌いまくってくるって言ってたから、
あと何時間かは戻らないでしょう。
(飛軽、退場しながら)
私はこれから、ケン日野のとこ行って、直ぐにここに来るように言ってきます。
女装の段取りは、お二人に任せますんで、よろしく!」

(荒馬夫人のセリフ)
「そのあとは?」

(飛軽のセリフ)
「そのあとは...
(飛軽、歌い出す)
「せまるバカタレ! センセ、こん畜生!
出すぎた人ョ、ベソ書くぞ、いい!?
ベソ書くぞ、いい!?
ベソ書くぞ!」


(飛軽、退場する)


≪第2景≫ SCENA 2

(荒馬夫人のセリフ)
「つらいことよね、須沙奈。
主人の口説き文句をあの子が聞いてたなんて。
あぁ、あなたは知らないけど、
あの子はどうして私のところには来なかったのかしら?
で、その歌っていうのは、どこのあるの?」

(須沙奈のセリフ)
「ほら、これです。
ちょうどいいから、彼に歌わせましょ。
シッ、お静かに。誰かまいります。
あっ、彼ですわ。」

(ケン日野が舞台に登場する。須沙奈のセリフ。ケン日野に向かって)
「さあ、お入りなさい、自衛官殿!」

(ケン日野のセリフ)
「そんなふうに呼ばないでヨ。
せっかく お優しい奥様に、お別れを申し上げに来たのに...」

(須沙奈のセリフ)
「憧れの奥様に、でしょ?」

(ケン日野のセリフ。ため息をつきながら)
「うん、そう、もちろん...」

(須沙奈のセリフ。ケン日野の真似をしながらおどけて)
「うん、そう、もちろん...、カマトトちゃん。
さぁ、早く、今朝、私にくれたあの歌を、
奥様に歌ってさしあげなさいな。」

(荒馬夫人のセリフ)
「どなたが創ったの?」

(須沙奈のセリフ。ケン日野を指差して)
「ほら、真っ赤になって照れちゃってる、このウブな子ですわ!」

(荒馬夫人のセリフ。面白くなってきたという表情で、須沙奈に向かって)
「私のギターを持ってきて、伴奏してあげなさいな。」

(須沙奈、Fenderのエレキを持ってくる)
(ケン日野、照れながらのセリフ。夫人に向かって)
「ふ、震えちゃって、歌えるかどうかわかりませんけど、
あの、奥様がお望みなら...」

(須沙奈のセリフ)
「そりゃ、お望みですよ。さぁ、歌って!」

(ケン日野、歌い出す)

「恋に目覚めて、詩、こさえたの。
どうして? なんで、身をこがすのか?
どんなに悩んで 身を細らすの?」

(客席のほうを見渡しながら)
「ねぇ、東京の女のコ、
気になるのヨ。
いっぺんに会うと、カ〜ッツとなりそう。」

(最前列の客席の女性を指さしながら)
「先頭の人、自然で美人!
こらえきれないよ
ちょうだい! 投げキッス。」

(通路側の女性を指さしながら)
「通路沿いの人、春和さんか?
黄色い木綿のコートが似合う。」

(オーケストラピットをチラッと見、チェロを弾くマネをしながら)
「いいチェロの音(ね)で 気を引いて、
望みの いい娘(ひと)をここに。

そして振り切るよ、その他おおぜい。
何びととても、前座だね。

本命アプローチ!
ホンネで。
い〜まの気持ち
分かって欲しい。

恋に目覚めて、詩、こさえたの。
どうして? なんで、身をこがすのか?
どんなに悩んで 身を細らすの?
どんなに悩んで 身を細らすの?」

(荒馬夫人のセリフ)
「ステキ! まるでヨンさまを10歳若くして歌手にしたみたい!」

(須沙奈のセリフ)
「でしょ。この子、ほんとに器用なんです。
(ケン日野に向かって)
さぁ、こっちへいらっしゃい。早く。
飛軽から、計画、聞いたでしょ?」

(ケン日野のセリフ)
「うん。」

(須沙奈のセリフ)
「さぁ、見せてちょうだい。
あ〜ら、同じくらいのサイズだし、きっとうまくいくわ。
コートを脱いで。」

(須沙奈がケン日野のコートを脱がせる)

(荒馬夫人のセリフ)
「どうするつもり?」

(須沙奈のセリフ)
「フフ、ご心配なく。」

(荒馬夫人のセリフ)
「もし、誰か入ってきたら?」

(須沙奈のセリフ)
「べつに構いませんでしょ。悪いことしてるワケじゃないし...。
でも、念のため、ドアは閉めときましょ。(ドアをロックする)
(ケン日野の髪の毛に触れながら)
ねえ奥様。この子の髪、何とかしないと...。

(荒馬夫人のセリフ)
「私のヘアウィグかぶらせたら?
ワードローブから持ってらっしゃい。早く。」


第2景つづく。to be continued.


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