船上の日々
女将が船内でバイトしてたときの思い出を綴っています。
かなり痛かった
アルバイト2年目の夏も、もうすぐ過ぎ去ろうとしていた。船は順調に港に向かって進んでいた。
入港したら、この夏の仕事も終わりだ。お世話になった社員さん、一緒に働いたアルバイトの
みんなともお別れしなければならない。そんなときに起こった、痛いお話。
いつものように売店を開けて、レジを打っていた。夕方近くなった頃だっただろうか。
お客様にお釣りを手渡してレジを閉める。いつも、当たり前のようにしていることだ。しかし
このときは違った。レジ閉めようとしたとき、船体が少し動揺し、いつもより勢いついてレジが
閉まったのである。それは女将も予期せぬ出来事だった。
レジを閉めるときは、必ず両手で閉めるようにしていたのだが、なんと、右手の小指が
レジの内側に入ったまま、勢いよく「ガシャン!」そのまま指はレジに挟まれてしまった。
ひぃ〜〜痛いよ〜〜!っと、レジを開けようとしたが、これがうまく挟まったのか、
レジ蓋を押しても引いても、ビクともしない。上下にゆすっても、余計はさんだ指が痛いだけ。
このままじゃ痛すぎる!どうしよう!まさか、レジを壊して!?そうこうしている間にお客様が来た。
どうしよう。このままレジが開かなかったら、お釣り渡すことすら出来ないよぅ。幸か不幸か、
そのお客様は何も買わずに出て行ったが、相変わらず指は抜けないまま。女将一人だし、
誰か呼ぼうにも、船内電話に手が届かない。誰か通りかからないかな
。。。。。。
でもこういうときに限って、誰も着てくれないんだよね。もうこうなったら、イジでも無理矢理
抜くしかない!もう一度力任せに思いっきり引っ張ってみた。でも、でも、
やっぱりダメなの〜〜〜。痛いよ〜〜〜。
またお客様がやってきた。今度は手に商品を持っているから買物してくれるようだ。
でもこのままじゃ、ホントお釣りも渡せないよ!と思って、なんとなく指を横に動かすと、
なんと、あれだけビクともしなかったくせに、あっさり外れてくれたのだ!
うぉ〜〜いだがっだよぉぉぉぉぉぅ!
10分以上もはさまれていて、さすがに爪は変形。色も変色していた。何とかお客様には
お釣りを渡すことが出来たが、痛くて包装するのがちょっと辛かった。
その後、すぐに社員の人が来た。指をはさんでしまったことを話すと、直ぐにレストランから
氷の入った袋を持って来てくれて、それでしばらく冷していた。「最後の最後だっていうのに、
何やってんのさ〜〜〜」って笑われちゃった。
あれだけ痛い思いをしたけど、幸い軽症で済んだ。仕事でレジ打ってる皆様、気を付けてね。
納涼話
そのお話を聞いたときは冬だったが、夏にupするにはふさわしい内容だと思うので
今書くことにした。 どの船でのお話かは、あえて書くのは控えよう。とにかくちょっと怖い話。
甲板員の方から聞いたのだが、その方の体験ではなくて、その方にお話を教えてくれた人が
体験したことだという。だから、又聞きってことになるのだが。
当直が終わって、船内を巡検していたときのこと。車両甲板を回っていたのだが、
いつもと雰囲気が何か違う。
おかしい。イヤな予感がしたそうだ。でも車両甲板の巡検は仕事だから、怖いからといって
途中で引き返すわけにはいかない。恐る恐る、歩き回っていた。すると、誰もいないはずの
場所から、なにやら低い唸り声のような、うめき声のようなヘンな音が聞こえてきたという。
「もしかして、お・ば・け?」という思いが彼の脳裏をかすめた。まさか……。しかし、
何か異常があるかもしれない場所を、見過ごすわけにはいかない。近づくのはイヤだったが、
音の正体を確認しないわけにもいかないので、勇気を振り絞って近づいていった。
近づくに連れ、その音はだんだん大きくなっていった。気持ち悪い……。その音は、
おそらくこの壁の向こうから出ているに違いない。思い切って、そこを覗いてみた。
すると…………
びっくり!なんとそこには上司がいて、鼻歌を歌っていたのだった。うめき声というのは、
どうやらその上司の鼻歌だったらしい。しかし、部下にお化けと間違えられた上司も
気の毒だなぁ。
やくざが来る?
女将が初めて船に乗って、3航海目くらいのときのことである。売店のお仕事にも少し
慣れてきた頃。しかし、まだ社員の人が居てくれないと不安な仕事振り。そんなとき、
やくざの団体が乗ってくるという話だ!
ハッキリいってコワ〜イ!どんな方々がいらっしゃるのでしょうか!?果たして、やくざ
御一行様の御乗船。
ドキドキして迎えたが、特にこれといって恐ろしいことも無く、時間は過ぎていった。ところが、
安心したのはまだ早かった。な、なんと夕食の営業のとき、レストランで人手不足なので、
一緒に仕事をしていた社員の人が手伝いに行ってしまうことになってしまったのである。
ということは、女将は社員の人がレストランに行っている間、一人で売店を守って
いかなければならないのである。もし、御一行様と何かトラブルにでもなってしまったら、
どうしましょー。
「大丈夫でしょう?何かあったら、レストランに電話して。」とだけ言い残して、社員の人は
レストランへと去って行ってしまった。
さあ、女将一人。いざとなったら、近くにある案内所に助けを求めればいいか・・・・・・。
一人でカウンターの中に立っていると、ロビーで話す御一行様の話し声が聞こえてくる。
おじいさんやくざが若いのに自分の武勇伝(!?)を話していた。「わしが替わりに警察に
捕まってやったんだ」得意げに話すおじいさんやくざ。若いのは、うなずきながら聞いていた。
それとも、先輩やくざのお話だけに、聞かなきゃならぬ!と仕方なく聞いていたのか・・・・・・。
が、当時の女将としては、こんな会話を聞いてもただただ恐ろしいだけで、早く社員の人が
売店に戻ってきてくれないか、と祈るのみであった。
長かった時はやがて過ぎ、社員の人は戻った。あとは無事に閉店の時間を待った。
次の日の朝、無事に船は入港し、とりあえず何事も無く御一行様は下船していったので
あった。ふぅーーーーっ。
時化と夢と大地震
’95冬、女将は冬の海上にいた。正月前は冬とは思えない程穏やかだった海も、
明年けには大時化の、いかにも冬の日本海といった演歌に出てきそうな雰囲気になっていた。
船酔いした乗客が多発したため、売店の客足は伸びなかった。が、時々棚の物が落ちて
くるのを元に戻したり、もう落ちないように並べ替えたりしていたためヒマすることはなかった。
そんな日々が続いたある夜のこと。その日はいつもに増して、ひどい時化だった。女将は
揺れのせいで何度も目を覚ました。どのくらい経ったのかわからないが、夢を見ていた。
夢の中で、大地震が起こっていた。女将は一緒に働いていた社員やアルバイトの方々と
車に乗って逃げていた。ものすごい揺れだった。車は津波を逃れるために山へ向かって
走っていた。何とか安全なところにたどり着いたが、そこの揺れ方もひどかった。車から降りて
振り返った女将の目に、とんでもない光景が飛び込んできた。なんと、頑丈なはずの
高速道路の橋げたが折れて、道路が次々と倒れていったのである。
「うわー、ひどいなー」高速道路を走っていた車も、橋もろとも落ちていった。
「あの車の人、助かっただろうか・・・・・・」そのあとは、覚えていない。ひどい時化のせいで
地震の夢でも見たのだろうか?しかし、高速道路が倒されていったあのシーンが、
目に焼き付いて離れなかった。
それからちょうど1週間後、女将は同じ光景を、テレビの画面で見ることとなった。
阪神大震災である。高速道路が倒れている様子は、女将が夢で見たそのものだった。
唖然とした。女将は予知夢を見たのだろうか?それとも単なる偶然なのか?
毎年、一月になるとこの夢のことを思い出すのである。