「考える会」の方針

 
当会の情勢の捉え方と運動方針を2月20日の会議で決定しま
した。

T. 私たちを取り巻く情勢―2019年
1.全体的にどんな変化が? 
安倍政権が「アベノミクス」を推進して六年余、混迷と矛盾の度合いを一段と深めていま
す。戦後最長の景気拡大と報じられ、大企業の内部留保は増え続けているものの、肝
心の国民の賃金、年金は抑え込まれ購買力は減退したままです。  
世界的にバブル化やリスク増大が進むなか、昨年から株価が内外ともに乱高下、方向
感の見えない状況となり、企業年金の運用難も生じています。マイナス金利政策とディジ
タル革新進行の下、銀行業界は事業の進め方を変えつつありますが、海外でのリスクも
高まる下で 銀行経営陣の危機感は強まっています。
三菱UFJ銀行は`15年、脱法的な年金制度を現役に導入し、最高益を達成しながらベア
見送りを重ねてきましたが、リスク分担型企業年金が施行されて二年、さらなる年金改
悪などが受給者にまで及ばないか警戒する必要があります。
国の社会保障政策後退と共に受給者の暮らしが厳しくなってきている今、当会は受給権
を守るために、会員の皆様と共に広範な受給者に必要な情報を提供しながら活動を展
開します。

 2. いま経済・金融はどうなっているか? 
永年続いてきたデフレは、大企業を先頭にした非正規労働者増、賃金抑え込み、年金
削減などで国民の購買力が低下した点に大きな要因がありました。しかし、安倍政権は
この要因の是正克服を目指すのではなくて、インフレ目標を掲げて「異次元の金融緩
和」で資金を過剰に供給し、先行き値上がりの期待感で需要を喚起して大企業が儲か
れば、おこぼれが国民にしたたり落ちるという筋書きの政策を推進してきました。
金融緩和によって円安・株価上昇となり大企業は利益増となったものの、アメリカ依存の
政治経済体質も相まって、昨年以降、株・債券・外為など金融相場は乱高下しました。
この根底には、リーマン・ショック以降、各国が採った金融緩和政策でバブル化が進んだ
こと、この是正のためアメリカが「出口戦略」を進めてきたこと、しかしながらアメリカが出
口政策を停止し、世界的に過剰債務が膨れたまま、方向感のない展開となっています。
日本独自の問題としては、アベノミクスが国民にとって所得・生活の向上に繋がるどころ
か逆方向に進み、大企業・富裕層が恩恵を受けたことが六年余の経過で明確になりまし
た。
今は米中貿易摩擦、イギリスのEU離脱、ドイツ・イタリア・フランスなどの経済減速で世
界的なリスク顕在化と不況入りが懸念され、IMFは世界経済見通しを下方修正しました。
日本の輸出産業や建設業を中心に来年頃からの業績低下、つれて実体経済の悪化が
予測もされていますが、主要国の経済減速と相まって日本の不況入りが早まる観測も高
まっています。
しかし、マイナス金利を更に引き下げると弊害が広がるなどにより金融政策の選択肢が
なく、赤字国債による財政出動は国債下落の引き金になる危険があるなど、安倍政権
の金融・財政・産業政策は壁に突き当たっています。
こういう状況下、公的年金の積立金を運用しているGPIFは18年10〜12月期に14兆円規
模の損失と発表。企業年金の2018年運用利回り(格付け投資情報センター1.13主要先
平均値の推計値)はマイナス3.13%と七年ぶりのマイナスとの報道です。
実体経済の悪化と共に投機的な金融市場は一段と荒れやすくなり、リーマン・ショック以
上の混乱が生じ得るとの警告も少なくありません。こうして企業年金も個人の金融資産
も危なっかしい事態に入りつつあり、基本的な政策転換が求められています。

 
   3.財界の動向はどうか? 
財界は安倍政権に、円安・株高のアベノミクスを推進させ、輸出企業を中心に大企業は
利益を挙げ続け、内部留保は440兆円を超えるに至りました(資本金10億円以上)。財界
言いなりの安倍政権は、法人税率を下げる他方で公的年金を含む社会保障改悪、消費
税増税など進めようとしています。
特に、社会保障では「全世代型社会保障」なる言葉で世代分断を図りつつ、消費税増税
とセットで僅かな若年層向け施策と医療保険料の引き上げ、マクロ経済スライドによる年
金の実質減額など、国民負担増と企業負担減、給付削減を推進していることは重大で
す。
  4.公的年金の動向はどうか? 
財界と自公政権により公的年金の抑え込みが続いています。2013 年10 月に特例水準
の解消を理由に1%引き下げられて以来、昨年まで物価は5.45%(暦年単純合計)上が
ったにもかかわらず、年金額は逆に0.8%も下がっています。年金の実質的価値・消費
購買力を維持するための本来的な物価・賃金スライドが全く機能していません。しかも
2016 年12 月に強行可決された「年金カット法」で導入された仕組み(=キャリーオーバー
制度)も合わせて発動され、今年の公的年金は名目0.1%増額=実質0.5%の減額です。
更に政府は五年に一度の財政検証の今年、財界の意向に即して「世代間の公平」と「年
金制度の持続可能性」を掲げて新たな画策を志向しています。そして細る公的年金の
「補完」のために社会保障審議会の企業年金部会を改組して「企業年金・個人年金部
会」を二月にスタートさせたことに警戒が必要です。                 

5.企業年金の動向はどうか?
(1)近時の経過
経団連は前々から企業年金の改悪を厚労省に要求し実現させてきた経過を直視する必
要があります。
▲12年9月、黒字企業でも一定の条件により受給者の給付減額を可能とする省令を公
布。
▲14年4月、キャッシュバランスプラン(=CB)の更なる「設計弾力化」などの政省令を公
布。
(三菱UFJ銀行は8年前にこのCBを導入。)
▲17年1月、リスク分担型企業年金の厚労省令施行。
この間の、確定拠出年金(DC)の相次ぐ改定とリスク分担型の導入は、アベノミクス「日
本再興戦略」の一環であり、「金融市場の活性化」の名目で金融機関の収益源拡大の
他方で、元本保証のないDCで庶民が老後資金の確保が困難になる危険や、リスク分担
型で不安定不確定給付になる危険があります。
 
(2)リスク分担型企業年金の問題点 
厚労省施行のリスク分担型は次のような特徴と問題点があります。
▲企業年金は企業の責任でコストとリスクを担って実施するものなのに、加入者(現役)・
受給者にもリスクを分担させる。
▲金融市場激変・年金積立の不足金発生に備えて企業は一定金額を所定期間に拠
出、損金扱いで節税となり、不足金発生の場合は追加拠出義務を免れる、などのメリッ
トがある。
▲企業が掛金を前もって多く出せば、受給者として安心な一面があるが、積立の途中段
階や想定外の不足金発生の場合は、加入者・受給者の減額負担が企業の分担以上に
過大となる可能性もある。
▲企業と加入者受給者の分担は1:1の建前ながら、保障の限りではない。
▲現役労働組合と企業の合意のみで現行の確定給付年金からリスク分担型へ移行可
能、
▲この移行の時に減額が無ければ、受給者の同意を求める必要はなく「説明」するのみ
で可、
▲移行に不同意なら一時金を選ぶことが可能だが、この算定に当っても受給者は排除
される、

 (3)受給者を無視軽視の厚労省
厚労省はリスク分担型の持つ問題点への追及に対して、次のような見解で受給権を守
る立場が極めて弱い姿勢です。
▲リスク分担型への移行は受給者に同意は求めない(移行時に減額なら必要)し、移行
後、リスク分担の規約通りに減額となっても、その時点で受給者の同意を求める必要は
無い。
▲金銭債権である受給権の変更には個別同意が必要というのは民法の基本点だが、減
額の場合以外は不要。
▲政省令施行日(17.1.1.)前の受給者をもリスク分担型に移行可能とし、不遡及の原則
に反する。
▲一時金の算定は大臣告示の予定利率で計算するが、労使合意により0.8〜1.2を乗じ
たものを用いることも可能としており、受給権の侵害とは考えていない。
▲終身年金を一時金で給付する場合、平均死亡率等の指標を基に画一的な計算とな
る。したがって長生きの人は結果的に得るハズの金額を貰えない。
▲移行時、受給者向けの十分な説明が必要だが、どの程度のものかあいまいで、厚労
省は「総合的に判断」と言うのみ。周知期間の妥当性、受給者の説明会参加率、説明会
での質疑応答の時間と内容など、厚労省としては具体的に報告書・書式など整えていな
い。「個別に判断すべきで一律的な取り決めは適切でない」としている。

(4)更なる問題点
リスク分担型は複雑な仕組みで他にも様々な問題点がありますが重要な問題点は次の
ようにあります。▲企業が責任とリスクを負うべき退職年金の本質を歪め、責任を退職
者に転嫁する、▲企業の人事労務政策の改悪を政府が促進する、▲法制化に当り法案
を国会に提出して決めるべきなのに厚労省令で済ませた。
しかも、これまでは厚年基金の行き詰まりからDB、DCの改定へ転換してきたものの、本
件は大企業が史上最高益を挙げながら更なるメリット追求のために先手を打って画策し
てきたものであり、DB、DC制度化以来17年ぶりの大攻撃です。この動機と構え方から
すると、私達としては軽視できません。
さらに、安倍内閣は昨年2月発表の「高齢社会対策大綱」の中の「資産形成等の支援」
の項目で「確定給付企業年金についてリスク分担型企業年金制度等の周知等を行うこ
とにより、私的年金制度の普及・充実を図る」としています。
本来は労使間で決める退職年金であるのに、公的年金の「補完」と位置づけ社会保障
審議会の中で企業年金部会を改組してまで新たな画策を進めることは筋違いなことで
す。

(5)個別企業の改定状況
リスク分担型は2月1日現在で、@「掛金制度のみ導入」は123件、A減額もある「柔軟な
給付制度」の全面実施は6件となっています。銀行業界では@をりそな銀行、三井住友
銀行が採り入れています。三菱UFJ銀行は基金の会計規程を変更し、いつでも移行でき
る態勢です。
経団連の要請で長期間かけて練り上げた割に導入数が少ないとも見られますが、使い
勝手が悪いとの見方も企業側に出ています。金融市場の激動が予測される先行きに、
前掲「充実を図る」の言葉が、リスク分担型の更なる改悪に進まないか警戒が必要と考
えられます。
 この間、注目すべきは、日立製作所とソニーの施策です。
 日立製作所は1月に確定給付からリスク分担型に四月から移行することを発表しまし
た。
同社は確定給付の名称を冠していますが、実はキャッシュバランスプラン(国債市況に連
動して給付が一年単位で変動。指標は10年国債応募者利回り) 方式へ03年に移行して
おり、企業側の負担は軽減される措置を実施済みでした。
今般の発表は給付変動の計算基礎となる指標を見直すと共に、リスク分担型へ移行す
るもので、受給者にとっては二重の不安定化であり、確定給付企業年金の名に値しない
ものです。
今のところ、既に退職している受給者をもリスク分担型に組み込むのかどうかは明らか
にされていませんが、同社は「企業年金制度のさらなる持続可能性の向上に向けて」と
述べています。原発事業頓挫で3千億円の損失計上の下、企業の都合で退職年金を変
える措置ともいえます。三菱UFJ銀行でも2011年にキャッシュバランスプランへ移行して
おり(これ以前の退職者には不遡及)、他人事とも言えない事例と考えられます。

 ソニーは二期連続最高益を更新しながら、確定給付企業年金を確定拠出年金に移行
(四月予定)し、金融市場が悪化しても積立不足による資金拠出の必要を断ち切る施策
を講ずるとの発表です。このような施策で受給者がどういう扱いになるのか、懸念されま
す。受給者のみ別枠とする「閉鎖型」に移行するとしても、企業の都合で解散した事例
(現・日産東京販売ホールディングス)もあり、受給権を守る運動は一段と発展が求めら
れています。
 
6. 銀行の経営実態と問題は?
(1)業況
三菱UFJフィナンシャルグループ(以下FG)の前期(18/3)決算は、純利益が9,896億円(17/3期
比632億円6.8%増加)で過去2番目の水準でした。傘下の主柱である三菱UFJ銀行(以下
「銀行」)の純利益は、4,377億円(17/3期比▲9.1%、437億円減益)でした。
今期4〜12月までは、FGが純利益0.4%増益に比し、銀行は同48.1%増益となっていま
す。マイナス金利政策下、資金利益は微増(3.5%)で、国債売買益や株式売却益の減少
もありますが、貸倒引当金の戻入などにより銀行は大幅増益となっています。これにより
FGとしては今期の利益見込みは1千億円引き上げ、五月に発表済みの増配(年間22
円、配当性向30.3%へ)を確実なものとしています(中間期ディスクロージャー誌)。同誌で
は「配当性向40%の2023%までの実現」を掲げており、利益獲得に拍車がかかるものと考
えられます。
今後はフィンテック活用等の事業と人員合理化で更に利益増大を図ろうとしています
が、銀行のこの間の業況には次のような特徴点があります。
●融資は競争激化のなか増やしたものの、低金利下での利ザヤ縮小は更に進みました
(預貸金利回差は、16/4〜12期=0.86、17/4〜12=0.88%、と改善していたものが18/4
〜12=0.80へと低下)。
●従来より経営陣が重視している経費率は、16/4〜12期=60.6%→17/4〜12=64.9%、
18/4〜12=71.7%へと増大。資金利益や国債等売買益など減少で分母が減ってのもの
ですが、更なる経費圧縮に傾くと見られます。
●こういう下で「経費削減に聖域なし」と言われ「長期趨勢的に負担になることは一個一
個詰めてゆく」(MUFG徳成専務)との発言が出ていますし、頭取は行員向け年頭挨拶で
「経費や業務の再設計」に言及したとのことで、受給者として銀行の人事労務施策にも
目が離せません。

 (2)人事労務
銀行は`14年に19年ぶり0.5%のベアを実施、`15年は1.5%のベアで前年物価上昇率以
下、16年以降は見送りを続けています。既に「9,500人分の業務量削減」「本部組織のス
リム化」「効率化」など督励し、今年は四月から給与体系の大きな変更(成果主義の要素
を強め格差拡大)を決めています。
注視すべきは、巨額の利益と内部留保を得ながら、現役に脱法的な「確定拠出年金」な
るものを`15年に実施したことです。退職金の改善は28年間も放置しておきながら、法律
に背馳した制度を他行・他企業よりも突出先行して開始した銀行の経営姿勢を受給者と
しても重視する必要があります。
銀行が高水準の利益・内部留保を維持していることで「安心」との意識もありますが、現
役を踏み台にしての利益であり、利益第一の経営姿勢からは、次に受給者にも施策が
及ぶ可能性を排除できません。銀行が現役と受給者の負担不均衡を口実に受給者に何
らかの画策をしないか警戒する必要があります。

 7. 銀行の企業年金基金はどんな状況?
決算の特徴点などは会報に掲載していますので、このホームページトップ記載のアドレ
スへお申込み頂ければ送付します。その上でご覧下さい。

8.受給権を守る運動の必要は?
「銀行の業績も基金の財政状態も共に良好」と、多くの受給者には安心感があります。し
かし、銀行経営陣の危機意識が強いこと、リスク分担型が施行されたことから、私達の
確定給付企業年金が現行のまま存続し続けるかどうかは予断を許しません。
私達としては、受給者に情報を届け広報活動に取り組みながら、会員を増やし大きな組
織として年金基金や銀行と協議できるようにしたいと考えています。
また、政府・日銀の施策から、物価上昇を当然視する受け止め方が拡散していますが、
私達の企業年金に物価スライドはありません。
こういう点からも、企業年金は私達だけで守り切れるものではなく、受給者団体との連
携、協同も必要となっています。国民の暮らしを直撃するアベノミクスや金融持株会社の
規制緩和などの政治の方向についても目を向けていくことが欠かせません。
以上のような情勢を踏まえて、次の運動方針によって活動を展開することとします。
                 

U.2019年の活動方針
1. 広報活動
(1) 会員向け「会報」の発行
私たちを取り巻く情勢、企業年金をめぐる動向、会の運営に関する報知、などについて
二ヶ月間隔で分かり易い内容で発行します。会員からの寄稿を戴き、親しみやすい会報
とするよう努めます。会員の要望や意見などを聞く努力を強め会報に反映します。
(2) ホームページの充実
これまでより更に機敏・的確な発信に努めます。多数の受給者に必要で正確な情報を提
供します。「交流の場」、「Q&A」の項の内容充実に努め、受給者と双方向型のコミュニ
ケーシヨンをめざします。レイアウトなどについても引続き改善に努めます。
(3)勉強会などの開催
企業年金の制度・動向などについて、さらに理解を深めホットな情報を共有するために
適時に開催します。また、会員相互の交流ができる懇親会なども企画します。

2. 組織
(1)受給者総数に比べて会員数は少なく、まだまだ緒についた段階です。リスク分担型が
施行されたことを考慮し、会員皆様のご理解ご支援を頂きながら会員を更に増やしてい
くことを目指します。
(2)受給者が全国的に散在していることを視野に入れて、首都圏以外の広範な人達にも
PRしながら入会を推奨します。
(3)入会に至らない受給者には、会報の講読を推奨します。情報と知識の普及共有に資
すると共に会組織の裾野を広げることができます。
 
3. 他団体との連携
私達の受給権は単独では守りきれものではなく、他団体との連携と共同に努めます。
(1) 銀行年金を守る会
都市銀行の退職者が自覚的に結集し、ほぼ定期的に世話人会を開き、情報交換しなが
らニュースを発行しています。当会から参加する世話人を増やします。
(2) 企業年金受給権を守る連絡会
民間企業や私立大学の受給者有志が、受給権を守るために毎月会議を開催して、情報
交換、意見交換を行ない、勉強会や厚労省との質疑応答、政党への質問・働きかけなど
対外活動を行なっています。減額などで企業と交渉したり提訴した団体・当事者への支
援も行なってきた経過があります。

4. 会の運営 
事務局が、会の目的と活動方針に基づいて日常的な運営を円滑に推進します。
事務局は、ホームページの更新、会員の事務管理、会計事務、など行います。

5. 財政 
会の目的と活動方針を遂行するための必要経費は、入会金千円と翌年度以降千円の
会費および寄付金で賄いま
す。

 
戻る
戻る