|
企業年金受給権を守る連絡会は、厚労省宛に質問状を出しました。四月の政省令施行の新
たな段階に至り、これまで提出した質問も踏まえて問題点を絞り込んだ内容です。確定給付企 業年金だけでなく厚年基金も含めて企業年金の基本点について問い質す内容です。
2014年5月30日
厚生労働省年金局
局長 香取 照幸 様
企業年金の受給権を守る連絡会
代表世話人 佐々木 哲夫
同 上 夏野 弘司
拝啓 時下公務、ご苦労の多いことと存じます。
さて、「企業年金の受給権を守る連絡会」は、これまでに貴省宛に厚生年金基金制度見直し内
容に関して意見書(2013年1月11日付)、質問書(2013年9月13日付)を提出してきました が、ご回答を戴けていないことは遺憾です。「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のた めの厚生年金保険法等の一部を改正する法律」および関連政省令が公布・施行された現段 階、あらためて下記の通り質問します。 敬具
記
1 国会附帯決議の実行について
今回の厚生年金基金改廃で母体企業・基金の立場優先の解散や減額が行われ、代行返上
後に「上乗せ部分」が失われれば、受給権が侵害されます。
本来、企業年金は賃金の後払いであり、就業規則、退職金規程等に基づく退職給付義務が
あります。健全化法の国会附帯決議第三項は「厚生年金基金の解散・移行にあたり、母体企 業が退職金規程等に基づく退職給付義務を履行するよう指導を行うこと。」と明記しています。
また、同決議第二項では「総合型の厚生年金基金の解散に当たっては、加入員、受給者等に
移行先の選択肢を含めて必要な情報が行き届き、その上で最善の意思決定が行われるよう、 基金及び母体企業への支援を行うこと。」とあります。
これらは解散、減額、移行などによって受給者及び加入者が退職給付の受給権を侵害されな
いためにも重要な決議です。
ところが、貴省は年発0324第4号において「第一 解散手続に関する基準」の中の一つの手
続として(3)(6)で軽く触れている程度です。
(3)では、「代議員会における議決前に、全受給者に対して、解散理由等に係る説明を文書又
は口頭で行なっていること。」とありますが、受給者は母体企業から基金の財務状況等の情報 開示を受けていない実情が広範にあることから、文書での情報開示を義務付け、一定比率以 上参加の説明会開催や質疑応答の義務を課すべきではありませんか。
(6)では「・・・母体企業が退職金規程等に基づく退職給付義務を履行することが必要であるこ
とについて周知等を図ること。」と述べるに止まっています。これでは、基金が母体企業に知ら せる程度であり、受給者・加入者に対して周知と理解を図る実効が期待できず、国会の附帯 決議の趣旨・真意が生かされません。
国会決議を受けて実行の任にあたる貴省としては、誠実に受給者・加入者の受給権を守るた
めの施策展開が求められています。受給権は加入者にとっては労働条件であり原則的に引下 げは許されないこと、受給者にとっては金銭債権であり民法上の保護があること、など法的基 本点を周知することは必須です。
また、解散、減額、移行について心配・疑問・苦情など抱え相談ニーズのある加入者・受給者・
労働組合などに対応できる窓口を全国各地に設ける必要があります。
受給権保護を母体企業まかせにすることなく、厚生労働省が積極的、具体的に退職給付義
務の履行について監視、指導を行う施策、個別に相談を受ける体制をどのような内容で行なう のかお伺いします。
2 受給権保護について
(1)昨秋の公募意見では、厚年基金の解散について受給者の同意が求められない点につい
て問題とする意見が出ました。確定給付企業年金についても現行は解散にあたり受給者の同 意は求めることが不要とされています。受給権が消滅する重大事案について当事者が同意も 求められないで一方的に受忍するほか無いとすることは、母体企業・基金、加入者との均衡を 欠き、不公正な定めです。前項の国会附帯決議の趣旨に照らしても許されないことです。減額 については受給者の同意を求めていることと比べても問題の重大性に沿わない手続です。
貴省として、受給者の同意を求める手続を課す意向は無いのか、無くてよいとすればその根
拠は何かお伺いします。
(2)企業年金制度を健全に維持し受給権を保護するには受託者責任の強化が求められてい
ます。企業年金部会の検討内容では「今後の検討課題とする。」「来年の春以降、企業年金部 会で議論してはどうか。」とされていますが、貴省としてどのような事項について何時までに結 論を出す方針なのかお伺いします。
(3) 貴省は2012年に厚生年金基金規則および「厚生年金基金の資産運用関係者の役割及
び責任に関するガイドラインについて」の改正を行ないました。このQ&Aでは、基金から代議 員会への報告や加入員・事業主等への周知・情報開示は重要としていますが、受給者に対し ては言及がありません。受給権を保護する上で受給者への周知・情報開示は加入員と同等に 義務化する必要があります。貴省の見解をお伺いします。
3 キャッシュバランスプランについて
キャッシュバランスプランの設計弾力化について、昨年の専門委員会では厚労省案に対して
異論が出ていたし、公募意見の中でも反対、批判の意見が出ていました。
(1)キャッシュバランスプランは給付額が変動する制度であり、基準利率の下限などゼロ以上
であればよしとする今回の設計弾力化は、経団連が前々から要求してきた規制緩和に合致し ており、労働者の老後保障に一段と沿わない措置です。キャッシュバランスプラン自体が、確 定給付企業年金法の第1条「公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄 与することを目的とする」とどのように合致するのかお伺いします。
(2)確定給付企業年金の受給者に対してキャッシュバランスプランへ移行することは、不利益
をもたらす問題が生じます。NTT年金裁判で国が提訴された時に貴省は、「キャッシュバラン ス制度移行時の支給金利が現行金利を下回る場合には、原則給付減額にあたる」との反論 を第三準備書面(平成19年7月6日)で行ない、東京地裁は判決(平成19年10月19日)でこ の通り判示しています。このたび省令に盛り込まれたキャッシュバランスプランの設計弾力化 は、この判示に照らして、貴省として全く問題は無いとお考えなのか、お伺いします。
(3)キャッシュバランスプランへの移行は、規約変更などの手続要件を満たすだけで可能とし
ています。しかし、実質的に減額となるキャッシュバランスプランへの移行であれば、前項NTT 裁判での地裁判示からすれば移行を必要とするやむを得ない客観的理由要件を定めること が必要だと考えますが、どのようにお考えでしようか。
さらに規約変更に不同意の受給者にとっては受給権の侵害となります。実際に前項NTT年金
裁判で、原告NTTが「受給権者の三分の二以上の同意を得ているので理由要件は不要」と主 張したのに対して、地裁は、「同意しなかった少数の受給権等の受給権を多数者の意思に委 ねることとなり、三分の一未満の受給権者の受給権の保護を図ることができない」と判示しまし た。
したがって、不同意者への移行は当然に認めるべきでないと考えられるのであり、これを保障
する措置はどのようにお考えなのか、お伺いします。
4 支払保証制度について
2001年に確定給付企業年金法が国会で議決された時の附帯決議は「支払保証制度につい
ては、企業年金の加入者及び受給者の受給権保護を図る観点から、モラルハザードの回避な どに留意しつつ、引き続き、検討を加えること。」としています。
ところが、社会保障審議会企業年金部会の論議では「支払保証制度については、制度を創設
する費用、公平性の観点で課題があるため、来年春以降の検討としてはどうか。」と貴省意見 が示されています。 昨秋の公募意見の中に示された制度創設の要望意見に対しても同様の 貴省意見が示されていますが、看過できないのは、制度創設の必要性までもが新たに検討の 対象と明記されたことです。(3月24日付「・・・寄せられたご意見について」No.110)これは国 会決議から後退していると判断せざるを得ず、何故このような記述としたのか見解をお伺いし ます。国民多数が影響を受ける制度について危殆・破綻に備える制度創設は当然のことであ り必要性を問題にする余地は無い筈です。
国会の附帯決議から13年が経過し、一段と必要性が高まっている情勢下なのに、貴省の見
解では行政府として怠慢のそしりを免れません。
創設に当たりどんな課題、障害があるのか、いつまでを目処に議論を終えるのか、議論を行な
う場に労働団体、受給者団体などに参加を求めて加入者・受給者の利益・権利を反映する措 置を講ずるお考えはあるのか、お伺いします。
なお、この質問書について文書での早期回答を要請しますが、6月16日までの回答が困難な
場合は口頭での回答を戴きたくご都合をご連絡下さい。
以上
9月8日 定例会議 厚労省に質問状提出
厚生年金基金改廃に伴い重大問題となる受給権の軽視は、確定給付企業年金にも共通する
問題であり、企業年金受給権を守る連絡会として厚生労働省に下記の質問状を提出しまし た。
2013年9月12日
厚生労働省年金局
局長 香取 照幸 様
東京都北区志茂2−43−1 木村方
電話・Fax 03−3902−2189
企業年金の受給権を守る連絡会
代表世話人 佐々木 哲夫、夏野 弘司
拝啓 異常気象・猛暑下での公務、ご苦労の多いことと存じます。
さて、 厚生年金基金制度の見直しに関する改正法が成立したことを受けて、貴省から移行
措置概要やFAQなどが発表されました、これらの内容について下記の質問をいたします。御多 忙のなか誠に恐縮ですが、ご回答は書面にて今月中に戴けますよう宜しくお願いいたします。 敬具
1. 受給権について
田村厚生労働大臣は、第183回国会 厚生労働委員会 第12号平成25年5月17日(金曜
日)において以下のように企業年金は労働契約上賃金の後払いという認識のご答弁をしてい ます。
(1)国の見解として、法的には企業年金は賃金の後払いという認識をされているということでよ
ろしいでしょうか。
(2)この認識に立てば、企業年金受給者の減額は後払いたる賃金の一部不払いとなり、一般
的な賃金の不払いと本質的に共通しますので、貴省としては指導監督の対象になるのではな いでしょうか。受給者の給付減額について貴省としてはどのように保護すべき方針を持ってい られるのでしょうか、お伺いします。
○高橋(千)委員 今日、随分議論をされてきたところでありますけれども、改めて質問しま
す。
まず、簡単な認識を確認いたします。企業年金は賃金の後払いであり、賃金の一部である、
だからこそ受給権が保護されるのは大前提である、これはよろしいですよね。
○田村国務大臣 今そのような形で、労働契約といいますか、就業規則等々に書かれておっ
たりですとか契約されている場合には、そういうふうになるわけでございます。賃金の後払いの 部分という意味、この上乗せ部分に関してそういう意味合いというものは、仮にそうであったと するならば、当然、これは企業とそれから働く方との契約の中で成り立っているというような、 そんなものであろうというふうに思っております。
2. 受給権の保護について
受給者への減額が行われる際の最低積立基準額相当の特別一時金は選択肢として貴省通
達にて明示されています。しかしながら、減額についての同意・不同意を求める際に、同意の 場合は、その時点で特別一時金の選択の放棄を求められる実例が見受けられます。この実 例について貴省としては把握しておられるでしょうか。通達の内容の変更や弾力化が行われた ことがあるのでしょうか、或いはその予定がおありなのか、お伺いします。
3. 第183国会の附帯決議を受けての貴省の対応について
厚生年金保険法の一部改正の参議院における附帯決議では、「政府は本法の施行にあたり
次の事項について適切な措置を講ずるべきである」として、第三項目で「厚生年金基金の解 散・移行に当たり、母体企業が退職金規程等に基づく退職給付義務を履行するよう指導を行 うこと」が掲げられています。
これについて、貴省は本年8月2日に発表したFAQで、第9項の「現時点での考え方」として「退
職金規程に基づき、労使間で適切な対応がなされるよう、厚生労働省としても基金の解散に 向けた指導を行う中で関係者に周知を図っていきたいと考えています」と述べています。
(1)附帯決議の文脈からしますと、この項の「指導を行う」中心点は、退職給付義務の履行につ
いてではないでしょうか。附帯決議文の貴省としての解釈、受け止め方についてお伺いしま す。
(2)「関係者への周知を図る」とは具体的にどういう施策を考えておられるのでしょうか。関係者
の中には受給者を含めるのか、受給者団体、労働組合、労働団体、ナショナルセンターの参 加も含めての説明会は無いのか、今後どのように周知を図る予定なのか、お伺いします。
(3)FAQ第四項には「丁寧な説明」を基金に行わせるとし、その説明対象として「加入者、事業
主等」と述べており、受給者が欠落していますが、受給者の位置づけはどのようになっている のか、お伺いします。
(4)基金の「丁寧な説明」や「指導」があったとしても、これに納得できない受給者が貴省に直接
指導を求めることは可能でしょうか、その場合、受付窓口(担当部署)はどこになるのでしょう か、お伺いします。
4. キャッシュバランスプランの設計弾力化について
昨年、貴省が専門委員会に提出された「試案」では、キャッシュバランスプランの設計弾力化
の具体策の中に指標選択肢の多様化がありました。これについて専門委員会の2月1日付意 見書には、@大筋賛同の意見、A別の施策を求める意見、B反対の意見が併記されていまし た。しかし貴省は「試案」そのままの施策を推進するご意向です。
(1)専門委員会でのAやBの意見を貴省はどのように評価されたのか、何故排除されたのか、
お伺いします。
(2)もともとキャッシュバランスプランは給付額が変動する制度であり、この指標がゼロ以上で
あればよしとする仕組みは、労働者の老後保障に資することを目的にする確定給付企業年金 法の第1条「公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目 的とする」とどのように合致するのかお伺いします。
(3)これの更なる弾力化が実施された場合に、受給者にはどんな問題が起こり得るとお考えな
のかお伺いします。
(4)基金が受給者に対してこの弾力化措置を含むキャッシュバランスプランを導入する場合の
理由要件、手続き要件はどういうものでしょうか。全受給者に対して規約変更の提案を行って 三分の二以上の同意があれば宜しいのでしょうか。改めてお伺いします。
(5) ゼロ以上の指標を導入する規約変更により、受給者の退職給付たる金銭債権が履行され
なくなるリスクが発生しますが、貴省としてはどのような見解かお伺いします。
5. 企業年金の選択肢の多様化について
(1)制度維持のための救済措置として財政検証の基準値、予定利率の適用の弾力措置が予
定されていますが、これは二重基準となり、その一律適用は優良な年金基金であっても本来 の基準値による積立義務などを負わず、モラルハザードを生じ得ます。
同時にこれは、受給者・加入員にとって不安材料となります。この点を考慮し一律適用を回避
するなどの必要性や今後の措置についてどのようにお考えか、お伺いします。
(2)キャッシュバランスプランの設計弾力化は、既存のDBも活用できることとなるため、モラー
ルハザードの問題を作り出しますし、受給者・加入員にとっては不安材料である上、結果として 不利益を生じる可能性を有しています。この点を考慮し一律適用を回避するなどの必要性や 今後の措置についてどのようにお考えか、お伺いします。
6. 所得代替率の努力目標について
国会答弁(171国会衆議院厚生労働委員会10号平成21年4月15日)で当時の厚生労働省渡
辺年金局長は「企業年金は公的年金とあいまって、より豊かな老後生活を送るための制度と いう位置付けであり、公的年金と合わせて退職前所得の六割程度を努力目標としており、六 割程度という努力目標は企業年金の基本となっている」と企業年金の役割について答えていま す。
この努力目標は現在どのようになっていますか。また現状の公的年金及び企業年金の代替
率のそれぞれの割合及び過去からの変化状況をお教え下さい。
7. 中小企業と大企業の企業年金制度の格差解消について
現在存続している総合型厚生年金基金制度は中小企業が中心に構成され多くが代行割れ
の状況にあることは貴省の分析の通りです。今回の法改正で多くが解散に追い込まれ受給権 が反故にされる状況があります。代行部分が制度全体の8割相当となっており、他のDC、DB などの制度に移行できても、多くは減額などの措置が講じられます。その結果、大企業と中小 企業の老後所得格差が拡大していきます。
こうした格差について貴省は検討されているのでしょうか。お伺いします。
また、格差解消のために貴省が考えておられる施策があればお示し下さい。
8. 支払保証制度の確立について
当会では、貴省宛に2013年1月11日付け「厚生年金基金制度見直しについて(試案)に対す
る意見と要望」にて以下のように支払保証制度の早期確立について要望を提出しています が、ご回答を戴いていません。
この要望は確定給付企業年金法が制定・施行(平成14年4月)された際の附帯決議「支払
い保証制度については、企業年金の加入者及び受給者の受給権保護を図る観点から、モラ ルハザードの回避などに留意しつつ、引き続き、検討を加えること。」を根拠とした要望です。
運用難などで企業年金制度の破綻が多発する状況が危惧される中、支払保証制度の確立
は切実な課題となっています。附帯決議の実行をどのように実施されるのか、お伺いします。
(1月11日付け要望書から)
4.「支払保証制度」の早期確立を
最後に支払い保証制度の早期創設を求めたい。
この問題は当連絡会設立当時から、厚労大臣、「連合」、全労連など労働組合の全国組織、
全日本年金者組合などにことあるごとに要請してきているところである。
本年4月の民主党「AIJ問題ワーキングチーム」の報告書の中にも『日本版エリサ法』の制定を
考えようという件があった。
私たちはAIJ問題の教訓として厚労省は早期に『日本版支払保証制度創設についての有識
者会議』の立ち上げ、国会附帯決議の具体化に着手するよう訴えるものである。
以上
6月9日 定例会議 各党に公開質問状を提出
企業年金を巡る動向として、厚生年金基金改廃に伴う国会審議状況など討議。
厚生年金基金改廃に伴い重大問題となる受給権の軽視は、確定給付企業年金にも共通する
問題です。各政党に対して厚生年金保険法改定案への基本姿勢、受給権の基本、キャッシュ バランスプランの設計弾力化に対する態度、など重要ポイントについて、次の公開質問状を6 月14日に各政党に送付。回答は6月30日目処で要請しました。
各党からの回答は、このホームページの末尾にある「リンク」をクリックし、「企業年金受
給権を守る連絡会」のホームページを開けるとご覧になれます。
******************************************************
2013年6月14日
党 政策御担当
東京都北区志茂2丁目43−1
木村文男方
企業年金の受給権を守る連絡会
代表世話人 佐々木 哲夫
同 上 夏野 弘司
はじめに
「企業年金の受給権を守る連絡会」について
私ども企業年金の受給権を守る連絡会(以下「企業年金連絡会」という。)は、企業からの一方
的な企業年金減額や制度の変質化を止めさせ、受給権の完全な法的保護と支払保証制度の 確立を求めるセンターとして活動している団体です。(創立は2005年1月、現参加団体は12 団体。)
質問状提出の趣旨
AIJ事件を契機に厚生年金基金の改廃を柱とする「厚生年金保険法等の一部改正」案が国会
で審議され、また確定給付企業年金などの制度改変が厚生労働省で検討されています。
これらに、広範な受給者及び加入者から受給権の侵害にならないか不安と疑問の声が挙がっ
ています。
(厚生労働省の2012年11月集計では、厚生年金基金の加入員は426万人、受給者は293万
人、確定給付企業年金の加入員は796万人[受給者数は不公表]となっております。)
貴党として企業年金と受給権に関わる諸問題について、どのような政策、方針を掲げておられ
るかお示し頂き、各種選挙での政党選択の一助に致したくお伺いする次第です。
ご多忙のなか。誠に恐れ入りますが今月30日を目途にご回答頂ければ幸いです。宜しくお願
いします。
質 問
1.「厚生年金保険法等の一部改正」案について
今国会(第183回)衆議院において厚生年金基金制度の改廃に関する「厚生年金保険法等の
一部改正」案が審議、可決されました。結果として企業や基金の負担は軽減されるものの、受 給者の受給権が侵害されることとなった点についてどのようにお考えでしょうか。
2.企業年金の受給権について
企業年金は、賃金の後払いである退職金の延払いであり、受給者にとっては退職の時点で
確定した金銭債権です。この受給権を法律や厚生労働省令・局長通知などで削減すること は、憲法の保障する財産権・生存権の侵害になります。企業年金の受給権について貴党の見 解をお伺いします。
3.企業年金の減額要件緩和について
昨年、厚生労働省は、企業年金受給者に対して減額可能とする例外的条件を緩和する省令
を発出しました。
(1)この結果、黒字企業であっても一定条件に適合する場合は減額できることとなりましたが、
この省令は厚生年金保険法もしくは確定給付企業年金法に照らして適切であったか、のご判 断と、その理由についてお伺いします。
(2)受給者の減額については、三分の二以上の同意を得れば実施できることとされています
が、企業や基金と債権債務関係が個別に成立・確定した年金額を、他の三分の二以上の受 給者が賛成しているからと強制的に減額できるという多数決制を適用することは妥当・適法な のか、その根拠と併せてお伺いします。
4.企業年金の持続可能性を高めるための施策について
(1)厚生労働省が昨年発表した試案で、「企業年金の持続可能性を高めるため」と称して@キ
ャッシュバランスプランの「給付設計弾力化」や更なる「規制緩和」、A「集団運用型の確定拠 出年金の創設」を打ち出したことについてご見解をお伺いします。
(2)この試案は社会保障審議会専門委員会での検討を終えて厚生労働省が法律「改正」でなく
省令公布で施行する意向ですが、この方策の妥当性についてお伺いします。
5.支払保障制度の法制化について
2001年、確定給付企業年金法の審議における衆参両院の厚生労働委員会での付帯決議で
は、企業年金の加入者及び受給者の受給権保護の観点から「支払保障制度」につき引き続き 検討を加えることとされていました。貴党としては、母体企業の都合や倒産、企業年金制度の 終了、年金基金の解散などで給付額の一部または全部が支払われない場合に備え、年金給 付を保障する支払保障制度の法制化について、現在どのようにお考えでしょうか。
企業年金連絡会参加団体(五十音順)
企業年金受給者ユニオンKDDI東京
銀行年金を守る会
国際人権活動日本委員会有志
商工中金懇話会
全日本損害保険労働組合三井住友支部
南海放送年金受給者の会
西日本放送年金受給者の会
JAL退職者懇談会
法政大学年金裁判の会
松下(パナソニック)年金を知る会
三菱東京UFJ銀行の企業年金を考える会
明治大学年金受給者の会
![]()
5月12日 定例会議
会計基準の変更と企業年金・受給権について討論しました。
2014年3月31日以後の連結決算から国際会計基準に準じて日本の会計基準も変更されること
が決まっています。
企業の退職給付会計では、年金資産の「積立不足」の計上方法が変わります。これまで「積立
不足」は母体企業が特別掛金の拠出により、十数年かけて償却すればよく、負債としての計上 も当該年度分のみでしたが、今後は積立不足全額を貸借対照表上の負債として計上すること が求められます。企業会計と基金財政のつながりが鮮明になるため、母体企業は積立不足の 早期解消に努める方向が強まります。
企業経営も短期にどれだけ利益を上げるかが最大の目標になり、会計基準もそれに都合の
良いものになってゆくし、投資家だけに目を向けた経営に傾く、など意見交換がされました。
また、企業が積み立て不足回避のために制度そのものを教育基本法は確定拠出年金に切り
替える方向が強まることも指摘され、NTT、ANA(全日空)、パナソニックが確定拠出年金へ の変更提案をしている事例が紹介されました。
第四回総会 (13.3.10.)
企業年金受給権を守る連絡会は、企業年金受給者ユニオンKDDI東京、銀行年金を守る会、
商工中金懇話会、日本航空労働組合OB・OG会、法政大学年金受給者の会、松下(パナソニ ック)・年金を知る会など14団体が加盟し、毎月一回の定例会議開催を軸として、勉強会や労 働団体などとの共同呼びかけ、厚労省への要請行動など受給権を守るための運動を推進して きました。当会は下記三月の総会で加盟し、共に力を合わせて活動することとなりました。
総会の概要
3月10日「企業年金の受給権を守る連絡会」の第4回総会が各団体から参加して開催され、
昨年の活動を振り返った上で今年の活動方針を決めました。以下に概要を記します。
■ 企業年金をめぐる昨年の動向と会の活動
〇この1年は、企業年金と共済年金の受給権に対する攻撃が一段と強まり、厚労省が財界意
向に沿って有識者会議・専門委員会などの討議を経て様々な改悪が強行、提言された年であ った。
〇企業年金分野では、昨年2月に発覚したAIJ投資顧問の巨額年金資産消失事件が、その後
の年金政策・施策に及ぼした影響は大であった。財界の意を体した厚労省は、この事件をま たとない機会として、母体企業が黒字でも年金減額ができるように確定給付企業年金法施行 規則と厚生年金基金関係通知を改悪した。
〇さらに厚年基金自体の抜本的見直しも社会保障審議会年金部会によって提言されたほか、
「持続可能な企業年金」の名の下にキャッシュバランスの一層の弾力化などいくつかの方策が 検討されている。
〇連絡会は、こうした攻撃に対して反撃するとともに、労働団体、政党に共闘の働きかけを行
ったが、運動化するまでには至らなかった。
■ 2013年活動方針
企業年金連絡会は、企業年金受給者の受給権を守るセンターとして、自他ともに認知されるよ
うな運動を推進する。
〇正当な権利である企業年金受給権の法的基礎を明確にするとともに、企業年金受給権に
関する論点整理を進め、例会で討議し、まとまったものをパンフレット、HPなどで普及を図る。
〇企業年金財政の正確かつ十分な情報開示がなされているか否かの検証活動と年金基金の
投機的運用への監視を強め、財政悪化には当該基金に早期に対応するよう要請するととも に、厚労省、金融庁等に指導強化を求める。
〇法政大学「年金減額無効訴訟」、キヤノン電子労組の年金減額に伴う「不当解雇事件」「損
害賠償請求事件」を支援し、AIJ事件など企業年金減額などの被害団体・個人へ連絡会への 参加を呼びかける。
〇連合、全労連、全日本年金者組合、国公労連等と情報・意見交換する回数や協力共同する
場をふやす。
〇企業年金の受給権保護と支払保証制度の法制化を、確給法制定当時の衆参両院の付帯
決議などを武器に、政府、政党、国会議員などへの要請行動を強める。
〇運動の活性化のために例会を重視する。例会では会員の経験と知見(例えば情報開示を
求める活動など)に学ぶ機会を増やし、また会員の関心に応える学習会を計画する。
〇企業年金問題に関する情報の発信、収集に努め、マスメディアに積極的にアプローチする。
〇親しみやすく、分かりやすいHPへ、内容の充実に努める。
![]()
★十月定例会開催 (10.14.)
KDDIユニオン、JAL・パナソニックなどの受給者有志、法政大学裁判原告、銀行年金守る会、
他の参加者が集まり、
★確定給付企業年金、厚年基金の制度改悪( 厚労省案パブコメの結果について、規則、通知
の改悪内容について、今後の活動方向などについて討議しました。
★各団体の活動についても報告、討議
★裁判の問題では下記二件について取り組み中です。
法政大学教職員の自社型年金減額の裁判
10月25日(木)東京地方裁判所 527号法廷(5階) 10時開廷
キャノン電子労組書記損害賠償請求裁判
12月11日(火)13:30〜 さいたま地裁熊谷支部
★九月定例会開催 (9.9.)
1 確給、厚年基金の制度改悪案パブコメに対する取組みについて
当会としてのパブコメ提出内容確認。当会構成メンバー、個人からの提 出状況確認。
2 企業年金財務諸表勘定科目、資産評価方法等の見直しについて
一月末の厚労省通知について概要報告、討議。
3 厚労省に対する再質問
確定給付企業年金の加入者減額の手続について厚労省の見解を問い
質し中。不的確な回答に対して再度質問。
4 法政大学年金減額訴訟の提訴と提訴日の行動について
大学当局が三回目の給付減額を強行したことについて9月10日、受給 者が東京地裁
に提訴。
5 各団体の活動報告
銀行年金守る会他の団体・個人から報告。
★厚労省の企業年金施策などで国会議員に要請 (8.20. )
連絡会の世話人五人が日本共産党田村とも子参議院事務所を訪問、 議員が委員会出席の
ため秘書が応対、概要下記を話し合いました。
(連絡会)厚労省が受給者減額の要件緩和を目的に省令の改定を提案してきている。
有識者会議を受けてとあるが、有識者会議はAIJ事件で 被害を受けた厚生年金基金をどうす
るかを討議したもので、確定給付企業年金の減額問題は、両論併記となった。財界の強い要 求に押されたためと思われるが、 我々としては絶対認めるわけにはいかない。何とか止めた いと思っている、力を貸して欲しい。
企業年金行政は、徹底した秘密主義だ。企業年金受給者の数、受給者減額を実施した基金
の数など我々の知りたい情報は一切開示しない。
有識者会議なども討議の時間は短くセレモニーの感もある。情報開示を要求し続けることと共
に、今度の提案の中身も広く知らせていく必要がある。
どう世論化していくかが課題だ。
(田村議員秘書)赤旗での報道、質問主意書の提出を検討したい。
日本共産党議員の数が減っている上に、民主党政権になってから質問時間が減らされてい
る。更に最近は会派数が増え、質問時間が10分ということもあり、相当に絞ってやらないと何も 聞き出せない。そういうわけで委員会質問はちょっと無理と思われ「質問主意書」を出すことを 考えたい。
★八月定例会開催 (8.9)
●企業年金を巡る新たな動向について討議。
●厚労省が給付減額要件緩和を図る確給法施行規則等の改定案を公表し、この改定案に対
する意見を求めていることに対して、連絡会としての対処を検討する緊急会議を8月2日開い て世話人会の案文を討議のうえ下記を最終決定し提出。
●国会議員への訪問要請について討議、決定。
企業年金受給権を守る連絡会としてのパブリックコメント
(給付減額の手続の明確化・簡素化の項目について)
我々「企業年金の受給権を守る連絡会」は、2005年創立以来、企業年金の受給権保護と支
払保証制度の法制化を求めて運動を進めてきており、このたびの給付減額の手続の明確化・ 簡素化を含めた確定給付企業年金法施行規則等の見直し案には、絶対反対であることを強く 訴えたい。反対理由は次のとおり。
1.AIJ問題発生の責任の一旦は厚労省にある。国民の高齢期における所得を確保するた
めに必要な年金資金をハイリスク商品の運用まで認めた1997年の資産運用規制撤廃と、そ の後の基金に対する杜撰な監督指導がつづけられてきたことが、今回の事件の主要な背景で あり、厚労省の責任は重大である。また、今回の有識者会議の報告書では、給付減額の手続 の明確化・簡素化については求めていないものである。
2.このたびの確定給付企業年金法施行規則等の見直し案は、今回のAIJ問題に便乗して、
厚生年金基金だけでなく確定給付企業年金の加入者・受給者の給付減額要件を緩和しようと するものであり、確定給付企業年金法第一条の目的「・・・国民の高齢期における所得の確保 に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の 向上に寄与することを目的とする。」を踏みにじるものであり、国民の生活の安定より企業の 負担軽減を図るためのものであるといわざるを得ない。
NTT企業年金減額問題訴訟でも、受給者給付減額については厳しい判断が下され、受給
権者の企業年金を減額することは生存権を侵し、既に発生している受給権者の財産権をも侵 すことであるとして、受給権保護の重要性が強調された。
3.わが国の企業年金の多くが、退職金を年金原資として給付設計がされており、過去の労働
に対する対価として受給しているものである。退職時に年金額で確定して約束された年金であ り、これを退職後になって企業の都合で一方的な年金減額を押し付けることは、法治国家とし てあってはならないことである。
もみじ銀行役員退職慰労年金打ち切り訴訟の判例(最高裁平成22年3月16日)でも、「契
約は守られるべき」「同意のない契約変更は認められない」と、きわめて当然の判断が示され ている。
4.確定給付企業年金法の審議の際に、確定給付という名にふさわしく企業が万一のときは、
支払保証制度で受給者の年金権を保護すべきという議論がされたが、条文に取り入れられ ず、衆・参両院の付帯決議とされた。このような歴史的経過がありそれから10年以上経過して いる。今回の見直しでこそ米国のエリサ法に倣って、企業年金の受給権保護と支払保証制度 を実現すべきである。
「企業年金受給権を守る連絡会」が
厚生労働省・ 有識者会議に要請書提出(2012.6)
厚生労働省はAIJ問題を契機に「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会
議」を立ち上げ、制度見直しの検討を進めており「連絡会」では、受給権を守り、受給者への情 報開示強化を求める二本の要請書を提出しました。
要請書は全体として長文ですが以下にポイントをご紹介します。圧縮しても長めですが、企業
年金の重要な基本点、重視すべき問題点を提起していますので是非ご覧下さい。
「減額要件の緩和は行うべきでなく、受給権の完全な保護と支払保証制度
の早期確立を求める要請書」(6月7日)
(要請の理由)
厚生労働省は、有識者会議の名称に「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する…」と
「等」の文字を付してAIJ事件で露わになった厚生年金基金を巡る問題点に的を絞るのではな く、確定給付型企業年金一般に広げ、給付水準引下げの基準緩和に言及しています。一般新 聞の論調でも、狙いは、確定給付型企業年金の減額要件の緩和、とくに受給者の減額要件を 緩和にあると報じています。当「連絡会」は受給権の完全保護と支払保証制度の確立を求め る団体として、このような動きを黙過できず、次の事項を要請します。
(要請項目)
1. 現行の給付水準引下げの基準を緩和すべき理由は全くなく、むしろ、より厳格化するか、
「確定した給付額は減額も廃止もできない」旨の規定を関係法令中に設けるべきであること。
2. 確定給付企業年金にまつわる不祥事を繰りかえさせないためには、厚生労働省はこれま
での規制緩和政策と監督、指導のあり方を抜本的に見直し、透明性の高いものに改めるこ と。
3. 支払保証制度を早期に確立すること。厚生労働省は、
そのための作業を直ちに開始すること。
(要請の趣旨)
1. 受給権の完全な保護は確定給付型企業年金の本来のあり方です
もみじ銀行での最高裁判決は、ほぼ全員の同意を得た上で年金規定を廃止しても、不同意
者に廃止の効力を及ぼすことはできないと指摘しています。
厚生労働省は、上記最高裁判決に基いて減額要件を廃止し、欧米諸国のように、確定した企
業年金受給権は剥奪できない旨の規定を関係法令に設けるようにすべきです。
2. 受給額減額は高齢者の生存権を脅かします。
受給者は、減額が襲ったら生存権が脅かされます。厚生労働省は、高齢者が怯えずに安定的
に暮らしていけるようにするという点からも、確定した企業年金受給権は剥奪できない旨の規 定を関係法令に設けるようにすべきです。
3. 減額とか、要件緩和は企業のモラルハザードを招きます。
企業経営の悪化、企業年金資産運用市況の低迷などを「理由」に、受給者減額が容易に認め
られると、企業は積立不足を起こさないようにするよりは、逆に積立不足を増やして、減額の 道を探るほうが合理的となり企業のモラルハザードを誘発する要因となります。
減額は法治国家として許されないことを前提とすべきです。そうしてこそ、運用成績に無関係に
高報酬を得ている信託銀行、生命保険会社、投資顧問会社の委託手数料にメスを入れて透 明化を図るなど、企業年金基金の経営悪化に対する有効な手立てが探求可能となります。
4. 減額を認めるとしても減額要件の緩和は許されません。
@確定給付企業年金法案審議における政府答弁では、減額の理由要件は企業存亡にかか
る場合であり、手続き要件についても「大変厳しい手続き、例えば3分の2以上の関係者の合 意が要る」と答弁している。これを無視して緩和を図ることは国会の権威を冒涜するものです。
ANTT訴訟で、国=厚生労働省は、企業年金は事業主が従業員に支給を約束したものであ
り、守られなければ年金受給者の生活が脅かされる、受給者の権利を多数決で一部奪うこと になるのだから減額可否の判断は厳格になるのは当然と主張し、判決もこれを首肯していま す。
B税法上も減額要件の緩和は許されない
NTT訴訟で、東京高裁は、税法上からも厳格な要件を設けている現行法令は合理的と判断し
ました。
C「3分の2以上の同意」は他分野の法律よりも緩い要件
マンション関係の基本法である区分所有法は、権利義務の規定を含む規約の設定、変更は、
4分の3以上の多数決によると定めています。集団的
拘束が3分の2以上の多数決によるというのは緩い要件で
す。過半数による多数決などはとんでもないことです。
5. 現役労使の合意で受給者の企業年金減額をすることはできません。
経団連は、現役労使の合意だけで受給者の年金減額を可能にせよという要求を掲げていま
す。しかし、神戸港湾労働安定協会事件での判決(受給者原告は神戸地裁で勝訴、大阪高裁 支持、最高裁までゆき勝訴確定)で、受給者は、労使合意に参加する機会が全く与えられてお らず、また現役労働者とは利益が共通する関係にあるとは言えないから、現役労使間の合意 を受給者に及ぼすことはできないと判断して、年金減額を認めませんでした。
さらに、もみじ銀行での最高裁判決が明らかにしているように、企業年金受給額の変更は、
当事者の合意があって初めて行い得るものです。「当事者の合意なくして契約内容の変更な し」です。これを覆すことは法治国家である限りできないことです。
6. 支払保証制度の確立こそ現実の課題です。
米国のように、弁護士、公認会計士、年金数理人などによる多数の専門家チームによる監査
活動を伴う早期警告プログラムを構築して本格的に資産運用および企業年金財政を監督する かどうかが問われています。経済不況のもと企業倒産によって企業年金を失うか、大きく減額 される受給者が増大しつつある現在、受給権を完全に保護し、支払保証制度でそれを裏付け ることこそ、最も急ぐべき課題です。
厚生労働省は、確定給付企業年金法案審議において衆参両院の厚生労働委員会が求めた
支払保証制度を早期に実現することを目指して直ちに作業を開始すべきです。 ![]()
二つ目の要請書 「受給者に対する周知を義務化するとともに、加入者および受
給者に対する周知項目の拡大を求める要請書」
(6月12日)
(要請の趣旨)
企業年金の業務概況の周知が義務化されているにもかかわらず、徹底が図られていない事
例が見受けられ、企業年金制度の複雑さもあって基金の実情を良く知らない加入者が多く生 まれています。ましてや、企業を退職した受給者等にとっては、基金の実情を知ることは不可 能に近くなっています。また情報開示を進めることによって基金のガバナンス(=統治)を高める ことができます。
(要請事項)
次の要請事項を、貴有識者会議の報告書に取り入れられるよう要請します。
1 事業主や加入者等に対する情報公開の在り方について、次のような法令の改正等
がなされるべきであること。
@厚生年金保険法および確定給付企業年金法に定める基金の業務概況を周知しなければな
らない対象を加入者にとどめず、受給者等を加えること。
A「確定給付企業年金に係る資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドライン」にある
「基金代議員会への報告」に示されている次の事項を例示から報告義務事項に改めること。
〇運用の基本方針及び運用ガイドライン
〇運用結果 (時価による資産額、資産構成、収益率、運用受託機関ごとの運用実績等)
〇理事会における議事の状況
B確定給付企業年金法施行規則に定める周知事項に次の各事項を追加すること。
〇運用の基本方針及び運用ガイドライン
〇運用結果 (時価による資産額、資産構成、収益率、運用受託機関ごとの運用実績等)
〇理事会における議事の状況
C周知事項には、業務概況のほか、規約等、基金の制定した諸規程が含まれる旨の規定を
関係法令中に設けること。
2 法令の改正要請ではありませんが、加入者に対する業務概況の周知は義務規定で
あるにもかかわらず徹底されていない事例が見受けられます。事業主および基金に、業 務概況は周知しなければならないとの徹底を図ること。 ![]()
「企業年金受給権を守る連絡会」が各団体を
訪問、文書を手渡す
連絡会は、受給者の減額を阻止したいと、基本的な考え方を「企業年金受給権の完全な保
護と支払保証制度の確立を求め、減額要件緩和をやめさせるための連絡会の見解」として文 書化し、同文書をもってナショナルセンター「連合」「全労連」さらには、全日本年金者組合を五 月から六月にかけて訪問し、協力共同を申し入れています。
連合は厚生労働省の有識者会議に労働側委員として政策局長が参加しており、同局長
には、加入者・受給者の立場で主張して貰いたい、その裏づけとしてこの文書を役立てて貰い たいと訪問し要請をしたものです。
「見解」は、二つの柱を立て主張と根拠を
述べており、ポイントをご紹介します。
1.企業年金受給権の保護と支払保証制度の確立
現在の「確定給付企業年金法」が審議されていた2001年5月の国会で、厚労省年金局長が次
のように述べています。「1973年当時の米国は、第1次石油ショックを含む経済不況が続く中 で、約束した年金が払えないという事態が社会的な議論となり、ERISA法を制定し、年金受給 権は剥奪できないとし、その経済的裏付けとして支払保証制度の仕組みを設けています。」日 本も「支払保証制度」を確立すべきであり、厚労省はすぐにでもその作業に取り掛かるべきで す。
2.減額要件の緩和を行ってはならない理由と主張
★企業年金減額は、高齢期にある受給者の生活に回復しがたい打撃を与え続ける。
★現行の減額要件は国会で確認されたものであり、その緩和は国会の権威を冒涜する。
★減額が検討できるのは企業存亡の場合のみであり、受給者の減額要件とその解釈・適用
が厳しいのは当然。
★税法上も減額要件の緩和は許されない。掛け金の拠出時には損金算入という形で事業主
が利益を享受していたにもかかわらず、給付を減額するとなればその分の減税恩典を食い逃 げするも同然。
★企業年金受給権は賃金債権。少なくとも他の金銭債権と同等の保護が当然。
幸福銀行の企業年金打ち切り事件で「預金債権その他の債権は保全されるのに、これらに優
先されるはずの労働債権たる年金請求権が打ち切られるのは不当不合理である」と主張し大 阪地裁は受給者たちの請求を認め、年金支払いを命じた。受給者だけ減額し他の債権者は 無傷という不当・不合理を解消するべきである。
★現役労使の合意で受給者の企業年金を減額することはできない。
★NTT裁判で国は「いくら年金資産の積立基準などを定めても、ゆるい要件で給付減額を認
めてしまえば、受給権の保護を図ることは到底できない」と主張しており、これこそ確定給付企 業年金の要である。減額要件を緩和する企ては、確定給付企業年金制度を日本から実質的 になくしてしまう企てであり、今こそ一致協力してこれを打破する闘いを進めるべきである。
全労連
ナショナルセンター「全労連」では連合と同様の内容に、更に次の点を加えた書面を手交し懇
談しました。
★減額要件「3分の2」条項はゆるい規制であり、この緩和は行うべきでなく、厳
格化すべきである。
厚生労働省に対し「減額同意はなぜ3分の2以上としたのか、その根拠はなにか」と尋ねたと
ころ「1997年に厚生年金基金設立認可基準に減額要件を定めたときの基準で、それを踏襲 した」と答えたことがある。
そこで、「区分所有法(マンション法)では区分所有者相互間の権利に対する団体的拘束を含
む規約の制定および変更は、1983年に4分の3以上の決議を要すると改正したが、このこと をご存知かどうか。個人の権利に対する団体的拘束性という点では、少なくとも4分の3による べきではなかったか」と重ねて尋ねたところ「そういうことは知らなかった。これまでこれで通し てきたから3分の2にした」という答えでした。
厚生労働省は受給権という生存権に関わる個人の重要な権利に対する団体的拘束について
研究した経験がないらしく、したがって3分2には根拠がないといっても過言ではない。
いま、この3分の2をさらに過半数に引下げようかという動きは何を根拠にするのか。むしろ3
分の2を区分所有法の規約制定および改正にならって4分の3に改正するのが筋というべき。 団体的拘束を強めて個人の権利を圧迫して生存権を脅かすことはもう民主主義ではなく圧制 そのものではないか。
企業年金受給権を守る連絡会が第三回総会
2012年3月18日に企業年金受給権を守る連絡会の第三回総会が開催されました。
13団体から25人(オブザーバー2人含む)が出席し、活動経過や今後の方針など討議・決定しま
した。
1. 前回総会以降の活動内容
この一年間は、連絡会が企業年金受給者の受給権を守るセンターとして自他ともに認知され
るような運動を展開しようと、@連絡会の企業年金受給権に関する主張の法的基礎、論点を より明確にし、学び普及する活動、A連絡会と協力共同する団体、個人との関係を深め、増や す活動、B受給権を侵害されるか、されようとしている個人、団体を支援し、また連絡会への 参加を呼びかける活動、C厚労省、政党、全日本年金者組合、連合、全労連等への要請とい った柱に力を入れてきました。
この中で具体的な点では、
○早大年金減額裁判から、早大理事会が年金財政を恣意的に改変して大学が負うべき責任
を受給者と現役教職員に転化した手口について、小笠原・早大教授から学ぶ学習会「年金数 理不正計算による偽装企業年金破綻」を開催
○ホームページの開設、
○キャノン電子の企業年金減額に絡んだ労組の解雇事件(脚注1)への支援、東電有志のオブ
ザーバー参加者との意見交換・交流など、
○受給者への減額条件緩和問題には厚生労働省に問い質した活動も特筆されます。(脚注2)
(脚注1)
年金減額不同意を理由にキャノン電子労組を解雇され、提訴したものの地裁で敗訴となり、高
裁へ抗告している真壁とし子氏が連絡会に加入しました。詳しくはホームページhttp://nenkin- kaiko.angry.jp/index.html ご参照
(脚注2)
厚生労働省には昨年九月次の2つの問題を取り上げ折衝しました。
@多額の積立不足を抱える基金が多発し、関係加入者・受給者の受給権侵害が懸念されるこ
とに対して、厚労省は、監査を強化し積立不足解消の指導を強めているという問題。
これら基金が中小企業からなる総合型基金であることから厚労省の対処では、基金を解散に
追い込み年金減額・廃止をもたらしかねないと会は指摘し、監査の形式的強化からこれら基 金の援助、受給権保護の施策に転換すべきことを要請した。
A黒字企業にも年金減額を認可したと報道された減額基準緩和問題。
淺沼組、文化シャッター2社の減額認可の事実関係を確認したうえ、両社が黒字経営である証
拠を示して追及しました。厚労省は、認可基準も問答形式の解釈ケースも変更していないと弁 解しましたが、認可した根拠は最後まで示せませんでした。連絡会は認可に抗議し、確定給付 企業年金法の受給権保護の立場を守ること、また確定給付企業年金法制定時の国会の付帯 決議でもある支払保証制度の創設が未着手であることに抗議し、作業に直ちに入るよう求め ました。
上記のように第2回総会以降の活動は意義あるものでしたが、多くの年金減額の裁判闘争が
終結し、いわば平時における受給者活動の探求過程にあることも踏まえて情勢および向後一 年間の活動方針を決定しました。
2. 最近の企業年金を巡る特徴的な動向
●昨年から政府が進めている「社会保障と税の一体改革」と称する制度改悪は公的年金につ
いては、4月からの0.3%引き下げに続いて、10月からは「特例水準の解消」としてさらに0. 9%引き下げを強行しようとしており重大。
●厚年基金や確定給付企業年金の2010年度利回りはいずれもマイナスであったが、投資格
付情報センター(R&I)調査による2011年上半期の企業年金全資産収益率はマイナス5.1 3%。厚生年金基金の2010年度財政状況(厚労省公表)では、595基金のうち213基金で 総資産が最低責任準備金を下回る、いわゆる「代行割れ」。
12年度の運用環境は好転の兆しが見られないなか、AIJ投資顧問会社に運用委託した年金
資産が消失したという事件がおきている。
●民主党はAIJ問題を契機に減額認可の要件=3分の2以上の同意者を2分の1以上に改悪し
ようと検討開始。
●企業年金連合会は昨今の運用環境の厳しいなかで、企業年金関係者が危機感を高めてお
り、受給者減額を代議員会で決められるようにして貰いたいなどと、厚労省に規制緩和を要 求。
●東京電力は昨年11月、退職者に対して給付利率引き下げによる給付減額を提案し、今年
10月実施を目途に事業所ごとの説明会を開催中。
3. 活動方針
―企業年金連絡会を企業年金受給者の受給権を守るセンターとして、自他ともに認知される
ような運動を推進する。
@ 正当な権利である企業年金受給権の法的基礎を明確にするとともに、企業年金受給権に
関する論点整理を進め、例会で討議し、まとまったものをパンフレット、HPなどで普及を図る。
A 企業年金財政の正確かつ十分な情報開示がなされているか否かの検証活動と年金基金
の投機的運用への監視を強め、財政悪化には当該基金に早期に対応するよう要請するととも に、厚労省、金融庁等に指導強化を求める。
B 受給者減額に直面している団体、個人を支援し、連絡会への参加を呼びかける。
C 連合、全労連、全日本年金者組合等と情報・意見交換する回数や協力共同する場をふや
す。
D 企業年金の受給権保護と支払保証制度の法制化を、確給法制定当時の衆参両院の議事
録などを武器に、政府、政党、国会議員などへの要請行動を強める。
E 運動の活性化のために毎月の例会を重視する。例会では会員の経験と知見(例えば情報
開示を求める活動など)に学ぶ機会を増やし、また会員の関心に応える学習会を計画する。
F 企業年金問題に関する情報の発信、収集に努め、マスメディアに積極的にアプローチす
る。
G HPの充実に努める。
![]()
4. 討論
当会から「銀行年金守る会」の世話人に就いている出席者が次の点を発言しました。
●経団連は受給者の年金減額をし易くするよう規制改革を政府に毎年続けているが、昨年は
非公開とし、内容のエスカレートが危惧される。連絡会として経団連に内容を公開させ、受給 権擁護に向けて要請活動を行なうとよい。
●大銀行は数年先に国債の暴落=金利上昇があると見て対策を練っているが、もしそうなる
とインフレで受給者の年金は実質減額という被害が発生する。現役に多いキャッシュバランス 制度は金利が上昇すると頭打ちとなり、現役も受給者も連帯し金融財政政策への警戒と行動 が必要となる。
●厚生労働省は1月末の通達で非継続基準(基金解散に至る場合に備えての財政健全度測
定数値基準)の強化など示した。受給権強化に?がる部分があるが、不安な面もありよく吟味し て知らせていく必要あり。また同日の法令解釈通達は確定給付企業年金での受給権維持・強 化になる面があり、吟味と宣伝が必要。
★他の団体からの発言など含めて、企業年金受給権を守る連絡会の
HP(=本ホームページの「リンク」項目にリンク)をご覧下さい。
総会で特に注目されたのは次の発言です。
●キヤノン電子労組
不当解雇事件の審尋が一旦終わったが、再開するとの通知が来た(五月に開催)。「公正な審
理を求める要請署名」を個人でも団体でも取組み、強めているところ。幅広い協力を頂きた い。
●JAL
年金が減額された後、「退職者懇談会」を立ち上げた。2月には公的年金問題を中心に学習
会を開き57名が参加した。こうした身近な問題をキッカケに今の社会の矛盾について考える、 そういう会に発展するよう願っている。不当解雇撤回の集団訴訟の判決が近く出る。
●東京電力
会社は賠償金捻出のためと称して、現役20%、管理職25%の給与カット、退職者には、年金
30%減額を提案し各地で説明会を開いているが減額問題というより会社の置かれている事 情説明に終始している。事故後、仲間と原発反対、電気料金値上げ反対のビラまきをした。年 金減額について会社は、賠償金確保の一環と言っている。
4月末頃に減額になった場合の計算書が送られてくる模様。その時同意書も入っており、同
意、不同意が問われることになる。
●法政大学
減額が強行されたため、5月上旬に提訴することを決め弁護団も決まった。
●明治大学
明大の「受給者の会」会員は減額を阻止できる3分の1を超えている。労働組合の活動と結ん
で「受給権を守る」目的を達成する。
●商工中金
基金に情報開示を求めていくことが必要かつ重要。正確な情報開示があれば、赤字の原因も
つかめるし、改善を求めることもできる。情報開示に消極的であれば、厚労省にも強く指導す るよう会として申し入れることも必要。
●西日本放送
AIJ問題で民放も7千人が被害の惧れがある。基金は50億〜60億の損害の惧れ。民放労連
も一枚岩ではない。 ![]()
|