テステス

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唐突に異能力バトルを書きたくなったので勢いで書いてしまった。
メチャノリノリだった、今は反省している。
設定とか考えるのがすげぇ楽しかった。なんか中二に戻った気がした。
最近『ジョジョの奇妙な冒険』を読み直して、モロに影響うけてます。
やっぱり荒木神はすげぇ、台詞回しに知能戦、能力の使い方。
普通の漫画家にはない『すご味』を感じるぜーッ!


●登場人物

・主人公:『村上 沙弥』(高校生 女)
  『あの人(誰?)』に心を救われたという設定の異能力者。
  いつも図書室にいるような女。胸は普通サイズ……に見える。
  尽くすタイプだが度が行きすぎていてヤンデレ気味。
  『心を読む能力』を持つが、色々と面倒くさい制約あり。
  特に天気とかそういうの重要な感じ。どんな能力やねん(ビシッ
  彼女が能力者と闘うのです。キャー頑張ってね〜(テキトー


・敵役:『男』(組織員 男)
  名前考えるのがタルくなって最後まで『男』で通してしもた。
  戦闘大好きでいわゆるふつうのバトルジャンキー。
  柄の悪いヤンキーをイメージしてくんろ。
  普通に強そうな『能力』を持ってます。普通すぎる能力ですが。
  結構、頭の回転とか良いんじゃないかな多分。

・あの人:『あの人』(高校生 男)
  あんまり考えてなかった。名前もまだない。
  つうかこいつ主人公で書こうとしたのに脇役考えてたら
  後回しにされてチョイ役すぎる存在になった人。
  衝撃波を出したり引っ込めたりする能力を持つ……らしい。

・敵役B:『相棒/相方』(組織員 性別不明)
  『男』の仕事のパートナー。それ以外なにも無い。
  いちおうこの話の裏側で『あの人』と闘ってるそうな。
  能力すら考えてないし、二行ぐらいしか話に出てこない人。



●あらすじ
  異能力を持った私立高校生二人(『あの人』と『沙弥』)が放課後に
  なんかの組織の能力者と闘うことになってさぁ大変。
  分断されて一対一、沙弥は無事に敵を倒せるのか?

  ストーリーの流れとかへったくれもなく、いきなり戦闘から。
  えぇ、まったく物語とか頭になかったですよ。
  戦闘が書きたかっただけなんです。


ではどうぞ〜


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------体育倉庫裏-------















村上 沙弥は、
いつも考えていた事がある。





私は【能力】を持っていて、そしてソレは非常に希有すぎるものだと。

誰も理解してくれない、誰も理解できやしない私だけの孤独感。
世界に自分がぽつんと一人だけ立っているような寂しさ。

けれども私は同じように【能力】を持つ『あの人』に出逢い、救われた。
どんな確率、どんな運命だろうか。私はこの偶然を心の底から神様に感謝する。


そして、それはきっと同じように能力を発現できる人間が存在するということ。






『あの人』の能力は非常に使い勝手が悪く、日常生活には使えない。
逆に私の能力は『簡単』に悪事を犯せてしまう代物。
決して悪用しないと誓ったが、一般人は知らないこの能力……。

もし犯罪に使ったとしたら。

粛正にくるのは【能力者】なのではないか、と。
そういう組織だった団体が存在しているのではないか、と。

いつも考えていたのだ。

しかし、その中にある可能性を忘れていた。
罪の有無など些細な事であると。
【能力者】とは他の【能力者】にとっては危険物と同義だ。
発見次第すぐに始末するなり懐柔するなりの処置をして当然。




……つまり、この男が私の前に現れたのは必然ッ!



「ふん、たかだか心を読むしか能のないお子ちゃまの相手を
 この俺にやらせるとはねぇ……まったく宮仕えってのはつれぇぜ。
 ターゲットは二人とも餓鬼だし、こんな仕事受けやがって糞相棒めが……」




男はそうぼやきながらも敵意有る視線を沙弥へ向けた。
まったく揺るぐことなく、捕食者が狩りを始める時のように油断なく。
男の正確な能力は不明だが、こうして対峙しているだけで分かった事がある。



何故か【読心術】が上手く発動しない。



否、発動はしているがまるでノイズがかったビデオみたいに鮮明に捉える事が不可能となっている。

完全に心を読むには幾つかの天候、気象条件が必要になるのだが、
奴はその条件を無効化しうる【能力者】である可能性が非常に高い。
こちらの【能力】はバレていたが、どこまで情報が流れているのかが鍵だ。


計算尽くでこの男を派遣してきたのか、それともまったくの偶然なのか……。
何にせよ自分は【心を読む】能力を奪われたなら、まさしく雑魚にすぎないのだ。




つまり、眼前の男は村上 沙弥にとっての天敵。





いまだ攻撃をしてこないが、既に緊張から汗が止まらない。
あの人の所にも刺客が送られている焦りもあってか、
喉が渇き、額には玉の汗が浮かんでいるのが分かる。




……汗、




…………汗?





プレッシャーと混同してしまっていたが、何かが【おかしい】のだ。
まだ5月の初め、しかも太陽がそろそろ沈む時刻である。
なのに男の足元が陽炎に揺らいでいた。

【暑すぎる】のである。

これで違和感の正体に手が届いた。





……空気が『乾ききって』いる。



……気温が『高すぎ』る。



……急激な『温度差』による陽炎。





そして、






……心を読む事を【副次的に阻害】する能力





そこから導かれる最も高い可能性。





「すでにですが……。
 貴方の能力、分かりましたよ」




少しばかりの動揺が読心から窺える。
男は黙ったまま、言ってみろと眼で語っていた。



「物体や空間を発熱、あるいは点火させる……
 いわゆる【発火念動力保持者】(パイロキネシスト)ですね」




      轟ッ!!!




その言葉を合図として車大の火球が沙弥を襲ったが、
放たれたと同時に身体を投げ出して事なきを得た。
かすれ声まで弱まった読心が【燃えろ】と念じる瞬間を察知したから。



……良し。



推測はおそらく正しかったのだ。

口にして相手に告げることは一種の賭けでもあった。
現在、相手の心を【正確に読むことは出来ない】のである。
このまま戦闘に移行した場合、確実なる敗北の未来が待っているのだ。

攻撃に疑念が生じるように、追撃に不安を覚えるように、
慎重を期すぎるぐらいに過度な警戒を与える。
そして僅かでも必勝するため策を練る『時間』を稼ぐ。


つまりは、自分が【能力】を完全に発揮しているという【ブラフ】を刷り込まねばいけない。


失敗すれば追い込まれる。
ミスは許されない、成功するしかない唯一の選択肢。

沙弥は相手も知らぬ賭けに勝ったのだ。




「避けたのも、攻撃が『読まれた』からってぇことか……。
 強力な読心ってぇのは意外と厄介なやつだな。
 まだ近寄られてもいないのにまったくもって馬鹿らしい。

 規格外の能力者だな。
 だが、その【能力】是非とも組織(うち)に欲しいもんだ。

 どうだい、スカウトしてやるよ。
 世のため人のために存分に力を振るう気はないかい?」



「残念ですが、私はもう売却済みです、よッ!」



次は火炎で薙ぎ払ってきたが射程が短かったのでコートを盾にしながら後退した。
お気に入りであったのだがしょうがあるまい。自分が焦げ付きたくはないのだから。
チラリと横を窺うと桜の樹がブスブスと汚い音を立てながら炭化している。
最初の一撃。その餌食になったものの末路。

『火炎』ならばまだ良いのだ。
だがしかし『火球』に触れては駄目だ。

思いのほか威力が高すぎる。あれは一度でも直撃すると不味い。



「あの小僧の事か?
 趣味悪いなお嬢ちゃん、あんなつまらなそうな男に操立てしてんのかい」


「私の審美眼は、私に正しければ良いのです」


「俺の相方と闘り合って生き残れてたら良い男だろうがな」



沙弥は目論見どおりに『時間』を手に入れた。
反撃する手段は幾つか持ち合わせていたが、実行するには状況が悪い。

ここは逃げる。
移動先は相手に不利でかつ自分に絶対有利なポジション。
逃げなければいけない。

奴に勝利するために!


















沙弥が思考回路を必死に回転させる一方で、男は会話を続けながら情報を整理しなおしていた。




(今回の任務は能力者二人組の捕縛、不可能なら処理。
 情報収集をしたのは特務四課の変態野郎だが……)


片方は『物体を媒介に衝撃を生む』能力者。
もう片割れは『心を読む』ことのできる能力者。
回ってきた情報は顔写真と名前に能力。
別に取り立てて強力な能力ではないとあったが……。


(あいつの情報を疑うわけじゃねぇが、コイツはそれだけじゃないぜ)


……確信だ。

間違いなく目の前の少女が強敵であるという確信。



男は、たとえ攻撃手段が読まれようとも関係なく仕留める自信があった。
さすがにいきなり自分の【能力】を読まれた時は多少驚きはしたものの、
【読解者(リーディング)系】の能力は戦闘に圧倒的に向かないのである。

何故ならば与えられた情報を一度自分で消化しなおすタイムラグが発生するからだ。
秒単位で切り替わる状況を繰り返し【読み直す】行為は隙でしかない。


だが、反応してみせた。
それも二度。


(コレはただの読心じゃあない。
 こんな速度で思考を盗む事などできない)


認めるしかない。強敵であると。


「つまらん任務かと思ってたが逆だな……。
 謝るぜ、お嬢ちゃん、アンタ最高だよッ!
 久しぶりに楽しく戦える相手が出てきてくれたってぇわけだッ」


忘れていた昂揚感。
自分は戦闘中毒者(バトルジャンキー)だ。

……こうでなくっちゃあいけねぇ。


「楽しいぜ、畜生めッ!!」


炎を纏いて獅子が吼える。
狩りの始まりだ、と。




















……この気違い男め。



逃げ続ける影と追い続ける影が踊っている。
終わらぬ猛攻に毒づいた沙弥はひたすら防戦一方であった。

相変わらず熱波と火焔による【能力】の妨害は続いていたが、
相手の殊更巨大な攻撃、一撃必殺級の火球は繰り出す時に込められる念の大きさからか
ハッキリとタイミングを読みとる事に成功し、全て回避できている。
無論、地面を転がり回るという無様な逃げ方で全身擦過傷だらけであるし……、



盾代わりのコートはボロ布と化していた。



しかし、尊い代償は対価として『時間』を与えてくれている。
沙弥は逃走を続けている間中に敵の能力を分析していたのだ。

それは予測していたものとほぼ同一の結果だったが『予測』と『事実』は決定的に重要度が違う。
前もって立てた仮説を実証し、発火能力の【限界】を探る。


(そう、見極める必要が……ある)


非力な自分が戦闘者を打ち倒すには策が要る。
決して逃れない、不可避かつ必勝を約束する罠。
罠に嵌めるにはデータが必要。


今までに判明したのは


・【発火】は身に付けている物質あるいは2m範囲内の空間に限定される。
 確実に必殺できる手段、私の衣服や身体を【直接発火】させていないことから分かる。
 空間発火は遠距離からは行えない。生み出された火球は全て手元から生まれていた。
 2mはもしかしたらありえるかもという予測範囲。
 実はもっと狭い【発火射程】の可能性もある。

・生み出した【火球】は簡単な操作が可能。
 単純な射出から、僅かながらのカーブを描く操作を確認。
 飛び出した火球の射程は不明。少なくとも10mは飛行できるようだ。
 意識を向けなくなった(放置した)火球、射程を超えた火球は5秒以内に消失する。

・現段階での最大火炎はおよそ乗用車サイズまでを確認。
 発火時に込められた【念】の強さでおおよその判別ができた。
 制御を無視すればひょっとすると大型バスくらいのサイズは出せそうだ。
 推測と穴だらけの未確定情報ではあるが、
 攻撃に使用するにはサッカーボール〜車ぐらいが威力、制御ともに適しているのではないか。

・生み出された炎は【焼却物の選別】が可能。
 その証拠に拳や靴に炎を纏わせての格闘攻撃を放ってきているが、
 衣服および本人への火傷などが見受けられない。
 選別が可能となると、次は何を【燃やせて】何を【燃やせない】のかが重要になる。
 例えば水中での発火や燃焼の可否はこれから行う策にあたってのキーになる。



……これだけ。


完璧とは言い辛いがココから仕掛けざるを得ない。
盾は二秒前に火炎を防ぎ、塵となって消えた。


……まずいですね。


もう身を守るものは薄手の制服しかない。
この状態で火炎を直撃させられたならただじゃあすまない。
次なる盾を用意しなければ危険だ。




だが、見えている。




私が勝利を手にする場所。
そして奴に敗北を手渡す絶好の舞台が
すでに視界の端に捉えられているのだ。


それは一抹の油断を生んでしまう。


今まで冷静だったが故に致命傷をさけてきた沙弥にとって
あってはならない心の隙。




瞬間ッ!




完璧な回避を続けていた沙弥にとって、その瞬間は決定的なミスだった。
突如として背後に火炎が迸り深紅の滝となって迫りきていたのだ。


……しまったッ!


読み損ねてしまい、完全に退路を断たれてしまった。
その上、追撃として男は特大の【発火】を起こそうとしている。



「……俺の勝ちだ。

 さぁ、どうする。

 すでに『炎の壁』はお前を包囲した。

 この攻撃は『完全に回避不能』ッ!!」






放たれる猛火。



赤く、紅く、朱い。
総ての【あか】を内包する熱の塊が、
暴食な舌をうねらせて酸素を貪っている。

今や背後だけでなく周囲を取り囲むように燃え広がっていた。




だが、沙弥は笑う。
この時を待っていたのだから。

最悪の事態が
最高のタイミングで転がってくる……

……その瞬間をッ!




「『不可避』……。
 攻撃側からですと、実に良い響きですね。

 これは偶然の産物なのでしょうか、
 それとも私が引き寄せたのでしょうか……。

 この攻撃を避けられない【運命】。


 ですがッ!

 
 じつに好都合ですッ!!」




なんと沙弥は怯む事なく炎の渦へ自分から突っ込んだ。
そう、敵の真正面へ身を放り出す形を取ったのだ。



「馬鹿なッ!?」



炎に包まれながらも鋭い視線でこちらの顔を見据えている。

(あの眼はまだ死んじゃいねぇ。
 鋭い牙を持った獣みてぇな眼だ。
 コイツァまだ、諦めちゃいねェッ!)

驚きながらも男は反射的に迎え撃つべく身体が動いていた。
有り得ない反撃策に動揺しつつも完璧な迎撃体勢。


「ふははッ、特攻か!
 
 最後まで楽しませてくれるぜぇッ」


男は向かってくる沙弥へ渾身のミドルキックを放つ。
もちろん火炎を纏わせての一撃必倒の技。
微塵の躊躇なく。



だが、空を切った。






「私は……『好都合』だと、……言ったんですよ」




「何ィッ?!」



当たらなかった。



何故、当たらなかったのか。
沙弥は蹴りの射程から僅かにズレた、男の右脇を走り抜けたのからだ。

行動は【攻撃】でも【回避】でもなく、
自らを焼く炎を目くらましにした、ただの【逃走】だった。




「導いたのは私ですが、道を開いたのは貴方です。
 私は始めから攻撃するために炎に飛び込んだのではないんです。

 罠に嵌め『炎』を直撃させた、

 勝利から生まれる『油断』、

 更に『動揺』が貴方を支配したはずです。


 【貴方の勝利条件】は私を捕縛、あるいは殺してしまう事。
 その条件さえ不成立にしてしまえば、
 【私の勝利条件】は満たされるんですよ。


 ……つまるところですね、
 私は『逃げる』為に火だるまになったということです」





全身を炎に舐め回されながらも彼女は冷静沈着。
だが、男はカウンター待ちの体勢だった事と急展開があいまって追うのが遅れたのだ。
この一瞬は眼に見える差になって現れる。

5m、10mと、ただ一息の間に離れていく。

そして距離に比例し、沙弥に纏わりついていた炎が段々と弱まってきた。





「射程距離『10m』で【発火炎】は消える。
 服に燃え移った【自然炎】は……」



カシャーンッ!



「ココは学校ですよ。

 『便利な物』があるじゃあないですか。

 どの部屋にも取り付けてある物が……」



窓ガラスを割って飛び込んだのは家庭科室。
体育倉庫から逃げながら誘導した場所。


(土足で失礼します)




     PiPiPiPiPiPi!!!!!




けたたましい電子音と同時に降り注ぐ水飛沫。
制服に燃え移った炎に【スプリンクラー】が反応したのだ。
それはみるみる内に火を消し去っていく。



「私立高校だけあって防火設備がしっかりしてます。
 貴方は読み負けたんです、この私に
 
 しかし……。

 制服を買い直さないといけませんね」



手に持っていた布きれの残骸を投げ捨てる。
あの猛火の中で頭部を守りきった『ソレ』はスカートと呼ばれた物の成れの果てだった。

今の格好は、上は制服が焦げ痕だらけで所々に穴が空き、下着が露出している。
下はスカートの裏にハーフパンツを履いていたので見えてはいないが、
さすがに炎に耐えきれなかったのかボロボロの様相を呈していたのだった。


「もちろん、貴方に請求しますが」


ズバッと人差し指を突き出す。
割れた窓から唖然としている男の姿が覗いていた。

スプリンクラーは火を消し止めた後も停止することなく水を噴霧し続けている。

















男は大いに感心すると同時に苛立ちも憶えていた。



「おいおい、ぶっ飛んでんなぁお嬢ちゃん。
 まさかマグレで1回逃げ切れただけで俺を倒せる気でいるのか?
 室内じゃあ【発火能力】は使い難いとか考えてんだろ。

 スプリンクラーは厄介だが、他にも方法はあるんだぜッ!」



ゆっくりと割れたガラス戸を開け放ち、悲惨になった家庭科室に入る。
口では相手を称え、そして貶しながらも自分が上位者である余裕を見せつけた。

……ますますもってこの『お嬢ちゃん』もとい、この『女』は俺の上をいきやがる。

確かに水のある場所では【発火能力】は随分と威力が減衰してしまう。
ならばどうするのか? 簡単な事だ。全て『焼き払って』しまえば水など無くなる。
水は最早、炎の脅威ではないのだ。

この程度の状況下、何度も乗り越えてきている。
能力戦闘の経験をどれほど重ねてきたと思っている。

……俺の勝利は揺るがない!


「いいえ。スプリンクラーの【結界】がある以上、貴方の能力は無力です」


「勝手に心を読むんじゃねぇよ」



タイミング良く突っ込まれて苦笑が洩れた。



「だいたい『結界』だと? ただの霧吹きじゃねぇか。
 こんなもん、俺の炎の前じゃあチャチいぜッ!」

(なんだ? いやに自信をもってやがる。
 嫌な予感がするが、ふっ飛ばすしかねぇか)



熱を集め近くの水ごと大元のスプリンクラーを破壊する。
これで女の言う『結界』とやらは効果を失う。これ以上の水は絶たれたのだから。

……しかし、……チッ、くそ暑ぃな。

額から汗が垂れた。
蒸発した水は、高温の蒸気となってまとわりついてくる。
屋内で発火能力を使いづらい理由の一つがコレだ。
炎によるダメージを受けることはないが、発生する熱波で火傷することはある。
屋外と違って気流の移動が極端に制限されるために、通常よりも体力消費が激しくなったり、
自らの能力の煽りを受けてダメージを被ることもあるのだ。

特に水蒸気による火傷はかなりの深度で皮膚を侵し、
下手すると炎で炙られるよりも重傷になるケースが多い。
表面だけではなく、熱が内側に染み込んでいくからだ。

遠距離発火が無い。そして手元でしか熱能力を発揮できない。
このまま能力を使い続ければ自分の熱で自分を焼く。


なるほど、ここまで計算して『結界』と言ったわけか。



「だが『蒸気』を受けるのは俺だけじゃあねぇぜ。
 お前が呼んだ水はお前にも返っていくのさ……。

 火球と違って視づらいぜぇ〜。

 見えない『蒸気』ってぇのはよッ!」


完全不利など存在しない。
何故なら自分は戦闘者として誇りをもって生きている。
状況は全て自分のものにすればいい。


火球操作と同じ要領で不可視の弾丸を飛ばす。


それは摂氏百度を超え、気化した『水』が引き起こす灼熱の弾丸。
放った本人にも大体の位置しか掴めないのだ。
たとえ【読心】できようとも関係無い攻撃。



「貴方は勘違いをしています。
 【結界】と私は言ったんですよ。

 文字通り『完結した世界』なんです。
 創造したのは私。

 そして【無力】だと言ったんですよ。
 貴方が私にダメージを与える事は『もう無い』んです」



ドゴンッ!!

蒸気弾が命中し派手な音を立てた。




「……何故はずれた?」



「何故でしょう」



沙弥は一歩も動いてはいない。
放たれた蒸気弾は黒板へ直撃しただけだった。

……俺はちゃんと狙った。
  動いてはいない以上命中するはず。

まさか【能力】なのか?
コイツは今まで『読心』しか行っていないはずだ。
基本的に【一人につき一つの能力】それが原則なのだ。




「『水』って色々と面白い特性をもっていますよね。

 温まりにくく、冷めにくい熱エネルギーの保存性ですとか。
 あと、液体では摂氏4度の時が一番密度が高まるらしいですね。
 私たちの身近にあって空気と同じくらいの付き合いをしているのに
 こんなにも不思議な力をもっているんですよ。

 中でも面白いのは【表面張力】と【伝導力】ですね。
 まぁ、もっともコレらは液体ならどれも持っているのですが」




……何だ? 何を言っている?




……とりあえず接近だ。

自分がやるべきは知恵比べでもトリックを暴く事でもない。
任務の達成、すなわち目の前の女を倒すという目的の達成だ。
何かが【おかしい】が敵を屠るには『接近』しかない。
遠距離に居ることに強い不安を覚えた。




『接近』しかない、と。




今後の方針を決めて、いざ飛びかかろうとしたときに、女が下着に手を突っ込んだ。
何故かそこから【ゴム手袋】を取り出し、ギュッと音を立て手に填めた。

更に破れかけの制服の胸辺りから手を突っ込むと、
2つの小さな【スタンガン】らしきものが取り出される。
心なしか胸囲が小さくなったのが見てとれるので、
おそらくはパッドの代わりに入れておいたのか……。

両手に構え、自然体で立っている。


(パンツから【ゴム手袋】ブラジャーからは【スタンガン】とは。
 最近の女子高生は下着に『んなもん』を仕込んでるのが流行ってるのかね)


接近戦を望むのならこちらのものだ。
何と言っても相手は碌に闘ったことのない女に過ぎない。
その女にあしらわれていたのは事実だが、それは逃げる相手を追撃しようとしたからだ。
正面から殴り合いの出来る距離にきてくれるのならば、逃がす事なく確実に仕留められる。

……相手の獲物がえらく物騒だがな。

パッと見たところ、下着に仕込めるほど小さなサイズなので威力はさほど無いと思われるが、
いかんせんこちらの状態は『蒸気』のせいで汗だくになってしまっている。

人間の皮膚は意外と電気を通しにくい。
通常時ではおおよそ『20〜30%』の通電率といったところだが、
表面に程良く電解質が含まれた液体、つまり【汗】などに覆われている場合には
なんと『80%』以上の通電率を発揮する。ミニスタンガンでも心臓を止めかねない。
ゴム手袋は自らに漏電しないためのものだろう。準備の良いことだ。


「……ようは当たらなければ良いわけだ」



相手が必殺の武器を使ってこようとも、その全てを避ければ問題ない。

『蒸気弾』を牽制球として複数発生させ、命中軌道へ操作する。
しかし、予想通り【謎】ではあるが攻撃が外れた。
何の力場かは分からないがココまで追い詰めてこんな隠し球があろうとは。


……【結界】【読心】【完結した世界】【届かない攻撃】【絶対回避】か


糞ッ!どこかに鍵があるはずだ。
そう、奴の【能力】は『読心』であるのは確かだ。

高速で思考を読みとることができるほど洗練されているのか?
だが、もしそうならば今までは何なんだ、全てかわせたハズだ。
負う必要のない傷を負ったのも『演技』だとでもいうのか?
いや、なんとなくだがそういう無駄を嫌いそうな性格にみえる。


考えるのを止めようとする自分と、
考え続けようとする自分がぶつかり合い精神を乱す。


今度は直線軌道ではなく、3つの蒸気弾を湾曲させながら飛ばしてみる。
結果は同じく遠距離攻撃は完全に封鎖された形になっている。


ここに『違和感』を感じる。




まるで【始めから外れるように撃たされている】かのよう……?







やはり『接近』しかない、と。

一足飛びで距離を詰め、顔面へ向け右拳を振るう。



かわされた。



「ようは当たらなければ良いんですよ」



バリバリと放電しながら不敵に笑う。

しかし、これは想定済みだ。
『読心』によってある程度こちらの動きが読まれるのは、先の戦闘からも存分に理解した。

追撃の回し蹴りが空を切った。
潜り抜けた先で右腕を伸ばし迫ってくるスタンガン……!


……なかなか良い動きをする。


身体を捻りかわす。



だが、コレで終わりだ。

蹴りの勢いを殺さずに更に回転を加え、連続で回し蹴りを撃つ。
今まで逃げおおせたのは『攻撃』に転じなかったからだ。
『攻撃』は最大の『防御』とは言うものの、最大の隙を作り出すのもまた『攻撃』。
ならば攻めに転じた相手にコチラの一撃が届かないはずがない。


「終わりだ」


「貴方がですが」


強がりはよして欲しかった。
この女は実に強敵だったのだからこの攻撃を回避する事が不可能だと判るはずだ。
火傷を覚悟して蒸気を纏わせた蹴りは線ではなく面攻撃に近いもの。
それならばいっそのこと潔く負けを認めて欲しかった。

蹴り足は人一人を昏倒させるに過剰な力が込められている。





















「……な、何ィッ!?」


男の叫びを沙弥は無感動に聞いていた。
それは起こるべくして起こったことであり当然の結果に驚くなど有り得ない。

男の蹴り脚がズレた位置へ放たれる。
直撃は避けたとしてもこのままでは蒸気に焼かれるコースではあるのだが……




蒸気は初めから『無かった』のだ。




男の驚愕も仕方がない。発動していた能力が不発に終わっていたのだから。

あっさりと回避を終えた沙弥は胴体部にスタンガンを押し付ける。
バチンと弾く音と同時に男の身体が痙攣し、床に崩れ水に濡れた。


「……ガッ、……何…故だッ?!
 確かに……俺、は………熱を……」


そしてトドメとばかりに2つ同時に両肩に突き刺す。



……終わりです。



男は一際大きく痙攣して戦いが終わった。














痺れて身体が動かない。
腕が別の生き物みたいにビクンと跳ね回る。


「……グッ……ガ……」


なんとか声を出そうにも肺が酸素を運んでくれない。

身体の状態よりも気になったのは最後の一撃。
あの時、自身を焼く蒸気を脚に集積したハズなのだ。
その証拠に右脚はジクジクと火傷の痛みが残っている。



「驚いた、まだ喋れるんですね」



戦闘中と変わらないあまり抑揚の少ない声は目の前の勝者のもの。

両足首を教室内にあったエプロンを寄り合わせた物で縛られた。
水を含んでいるため発火まで時間がかかるようにしている。細かいことだ。
手首も同様に縛られ、身体にはバケツで水をぶっかけられ虐め現場の様相を呈している。



(畜生め、この俺が女に負けるとはな)


「油断大敵です。序盤なんて半分遊んでいたでしょうに。
 それにそれは女性蔑視発言です、女を侮ってはいけませんよ」



毒づいたのを読心され、突っ込まれる。
やはりこの女の能力は『読心』であるのは間違いない。
だが、攻撃を回避せずに避けた謎とキャンセルされた能力の謎が判らない。


心を読む能力でそんな事が可能なのか?
そもそも『読心』という前提条件が間違っているとしたら……。



【異常高速読解】

【水場で強化】

【回避結界】

【外れる攻撃】

【遠距離への不安】

【発動キャンセル】



……まさか。




「そのとおりです。
 私の能力は『読心』ありきではないのです。
 本質的な能力からこぼれ落ちた欠片が『読心』の形をとっているだけ」


















「人は誰しも心に壁を造っています。
 心が張り裂けないように、安定を保つための壁を。

 ですが、完全な防壁は存在しないのです。

 生きているとは誰かと繋がること……。
 心の壁には誰かと触れ合う為に無数の孔があります。

 私は『水』を媒介として心と心を繋げる能力を持っている」



純粋な力という意味合いでは非常に微弱な能力。
直接的に、物理的に何かを為すことなどできない能力。



「毛細管現象……ご存じですか?
 細い繊維の先端を水に浸すとポンプの様に水を吸い上げる現象です。

 いわゆる水が何かを伝おうとする【伝導力】ですね。

 宇宙空間で球体の形状をとる水も、
 物に触れるとまとわりつくようにくっつくそうですよ。

 一人が辛かった私の、誰かに縋ろうとする『弱い心』の具現。
 『心の皺』に入り込んで『心を共有する』のが私の真の能力です」



ただただ水が這っていくだけの弱すぎる力。
他人を信じれないクセに救って欲しいなんて浅ましい思いから生まれた力。



「共有した心はお互いに確認しあえる。
 心を読んでいるのではなく同一化している状態。
 ですから、読み直しなんていう手間も必要ありませんし、
 故意に攻撃を誘導する……なんてことも可能なんですよ。

 外れた攻撃は、わざと『外す』ように撃たされた攻撃で……、
 遠距離戦に『不安』を憶えたのは共有した私の心で……、
 『消し去られた能力』は思い込みで発動したと勘違いしただけ。

 完全に能力を発揮出来る『水』のある場所に移動出来た段階で
 私は勝利していて、貴方は敗北していたというわけです」



あの人に救われ、あの人の為だけに存在するこの能力は
胸を張って誇れる程になっているのだから負けなど無い。

私の水は『最弱』にして『最強』の力なのだから。



「……どう……り……で当たら…ない」



小さく男が呻く。
納得したと言うように。



「貴方からは記憶を読ませてもらった後、
 私たちについて記憶をいじらせてもらいます」


この言葉に男は心を通じて「好きにしろ」と答えた。
俺は負けたのだから敗者には権利なぞないのだ……と。













「……さて、あの人は勝ったでしょうか」








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●後書き的な……

ハイ、グダグダですか。そうですね。
戦闘を書いている時は楽しかったのに、今見るとなんだコレみたいな。

スピード感とか読み合いとか上手く出来てたらいいなぁ。
導入部の無理矢理感はすごくアホっぽい。
もっと格好良く入れたら良かったんですがいかんせん力量不足。


……あぁ、中二病が治らない。


●つっこみどころ

・なんで水が無いのに初め『読心』してるのか
  アレです、空気中の水蒸気とかです。渇いてると阻害されるん。
  冬場と除湿機は天敵です。湿気取りには勝てないんです。

・なんでいきなり読心能力バレてるのか
  ご都合です。だって能力者同士で闘う条件ってなにさ。
  その辺に能力持ちがいたら危ないから消そうって考えそうじゃね?
  というわけで主人公は組織の何者かに調査済みです。

・胸パッドがスタンガンとかどんだけ〜?
  普段から能力者が襲ってくるんじゃないかと思ってる沙弥は
  用心深いので仕込んでる……という事にしてください。
  この辺はノリで書いてたので自分でもよく判らないのだわさ。
  『あの人』が他の女に色目つかったらバチンとやるため……
  とかの妄想を膨らましてたのが原因ですわ。

・見た目が普通の胸からスタンガン取ったら貧ny(略
  妄想の産物です。頭がどうにかなってたんです。
  今思えばパンツからゴム手袋とかシュールすぎるわなぁ……。

・科学考証とか間違ってないか?
  通電率は適当です。昔テレビでスタンガンの威力を上げる方法
  みたいな深夜番組があって、塩水が危ないよなんて言ってたから。
  なので合ってるわけねぇ〜ッス。とんでも理論です。
  『水』の性質もかなりアバウトかつ空想はいってるかも。

・すべてがおかしい
  笑って許して……。



後書きよりもつっこみどころが多いのに自分で笑った。


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